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姫様を助けたのは失敗だったが、割と好き勝手に生きています。  作者: 井田六
第十二章 異世界生活編07 新・新生活編
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< 35 新・王宮での生活32 新魔法披露 四回目 >


メイドさんたちへの”ゴマスリ”が一段落いちだんらくした。

結婚式の時の衣装を着る話が先送りなったので、やる事の無くなった俺は、のんびりとごしています。

目指していた、ごとけて、のんびりごす生活です。


『新魔法披露がやりたいです。』


ソファーでくつろいでいたら、唐突とうとつに、頭の中で【多重思考さん(多重思考された人(?)たちのリーダー)】にそう言われた。

新魔法披露か…。

あまりやりたくはないのだが、最近、【多重思考さん】たちには沢山たくさん負担を掛けてしまっている。

花畑作りや、色々な魔道具とか、量産型ペンギン型ゴーレムの製作なんかでね。

ここらで【多重思考さん】たちが望む新魔法披露をさせてあげるのもいいのかな?

いや、でもまた、とんでもない魔法を見せられるんぢゃないのかな? 見せられるよね?

『【水属性魔法グループ】も楽しみにしています。』

おや?

新魔法披露で【水属性魔法グループ】が出てくるのは初めてかな?

【水属性魔法】なら、(これまでの様な)ヤバイ魔法を見せられる事は無さそうかな?

安全、安心な感じがするよね。

気持ちが新魔法披露をする方向にかたむく。

うん。そうだよね。

負担を掛けてしまっている【多重思考さん】たちの為に、【多重思考さん】たちの望む新魔法披露をさせてあげるのもいいかもしれないね。

俺がそう思った直後。

あの荒野に転移させられた。


あの荒野に来ています。

ソファーに座った姿勢のまま空中に浮かされています。

「…心の準備とかあるし、せめて立つのを『新魔法披露 四回目です。3キロほど前方をご覧ください。(ワクワク)』」

…聞いちゃいねぇ。

空中に”→”とか”←”の矢印がいくつか浮かび、その矢印に導かれるまま視線を動かすと、”↓”と”このあたり”という文字が見えた。

【闇魔法さん】、ありがとうございます。いつも助かってます。

さらに”侵入不可”と”減音”という文字が空中に浮ぶのが見えた。

それぞれの結界を張ったみたいだ。

そこで違和感に気付く。

『【水属性魔法グループ】も楽しみにしています。』と言われたから、水芸みずげい(てき)なモノを想像していた。

だが、【侵入不可】結界と【減音】結界を張ったのは、前回、クレーターを作った時と一緒だ。

それと、クレーターを作った時は『2キロ先』だった。

さっき、『3キロほど前方をご覧ください。』と言われたぞ。

”クレーター”以上の事が起こるのか?(ビクビク)

ビビっていたら、頭の中で『いきます。』と言う【多重思考さん】の声がした。

そして、大きな砂埃すなぼこりが下から上へ放射状に広がっていくのが、遠くに見えた。


…あれは爆発なのかな?

でも、炎は出ていないな。

戦隊モノで、背後にあんな爆発を起こす場面を何度も見た事が有るが、何が起きたのだろうか?

少ししたら、『ドオオオォォォン!』という音がした。

その後しばらく待ってみたが、クレーターを作った時の様に衝撃波が発生したりはしていない様だ。

上から砂が降って来ないのは、距離が離れていたからかな?

でも、本当に何が起きたんだろうか?

視線の先では、砂埃の立ち方が、まるで火山が噴火したかの様な状態に変わっていた。

…本当に何が起きたんだろうか?

上へ上へとがり続ける砂埃を呆然と見上げながら、何が起きたのか頭の中で考えた。


少しの間、呆然としていたら、頭の中で【多重思考さん】の声がした。

『ただいまの魔法について、ご説明いたします。』

「大相撲の物言ものいいが付いた時みたいなセリフと口調くちょうはやめれ!」

『今回は、【転移魔法グループ】と【水属性魔法グループ】と【結界魔法グループ】の共作です。』

そう言われても、何をしたのかサッパリ分からないな。

【転移魔法】っぽさも、【水属性魔法】っぽさも、【結界魔法】っぽさも無かったからね。

ず、【転移】で土を退かして、地下に空間を作りました。』

ふむふむ。

その様子を頭の中で思い浮かべる。

『次に、その空間を【クリエイトウォーター】で水で満たしました。』

ふむふむ。

『そこへ、【転移】で『こたつの熱源』を送り込みました。』

へ?!

『水蒸気爆発でドカンです。(ニヤリ)』

「をいいぃぃぃーーー!!」

「なに、危ない魔法を作ってるんだよ!!」

『危ない魔法なんて作っていませんよー。使い方を工夫しただけですぅー。』

「そう言われればそうだな! ぢゃあ、『”新魔法”披露』っていう言い方が悪いのか?! いや、そういう話ぢゃなくて!」

「それと、『こたつの熱源』とか言うなや!! あと、アレを変な事に使うな!!」

『じゃあ、現場がどうなっているか見に行きましょう。(ワクワク)』

そう頭の中で言われて、俺はまた転移させられた。

「ひとの話を聞けや!!」



現場に来ました。

砂埃は、キレイサッパリ無くなっています。

クレーターを作った時と同様に、【分離】魔法さんでのぞいたんだそうです。

【分離】魔法さん、マジ万能。本当に最高です。

それはそれとして。

俺はまだ、ソファーに座った姿勢のまま空中に浮かされています。

でも、地面に降ろしてほしいとは思いません。

地面に大きな穴がいていたので。

「………………。」

地面にいた直径70mほどの大きな穴を見て、言葉を失う。

『おおー、すごいですねぇ。』、『おおー、エグイ。』、『やるなー。』、『これを超えるにはどんな魔法が必要かな?(ワクワク)』

頭の中で、大勢おおぜいの声が聞こえる様な気がしないでもないですが、そちらに意識が向きません。

穴は、傾斜のキツイすり鉢状です。

周囲の状況を見ると、かなりの量の土砂どしゃがこの穴から噴き出した様に見ます。

「えーっと………。」

なかなかまわってくれない頭でその言葉を引っ張り出して、【多重思考さん】に言う。

「この魔法ってさ…、使つかみち…有る?」

『穴を掘るのに使えます。』

「いやいやいやいや、まわりの被害が甚大じんだいだから、そんな事には使えないよね。」

『街を吹き飛ばすのに使えます。』

「そんな事をする予定なんて無いから! それと、考えない様にしてたけど、やっぱり出来ちゃうよね!」

『一発です。(フッ。)』

…やべぇ。

街を一発で吹き飛ばせる魔法です。

やべぇ。

本気で使つかみちが有りません。

本気で使つかみちが有りません。

大事なことなので、二回言いました!!

なんで皆、使つかみちの無い物騒ぶっそうな魔法ばかり作るのかなー。

どうしてかなー。どうしてかなー。

地面にいた大きな穴を見て、俺は呆然とする。

「………はぁ。」

無意識のうち溜息ためいきが出た。



げんなりした気分のまま、王宮の部屋に帰って来ました。

『逃げて来た』とも言います。

ちなみに穴は、埋めてくれる様に指示して来ました。

証拠隠滅です。(←言い切った)

「ただいま…。(げんなり)」

「お帰りなさいませ。」

俺は、ソファーに体を沈めた。

ダラーーっと。

無心で。


しばらくソファーでダラーーっとしていたら、シルフィがやって来た。

俺の隣に座って、訊いてくる。

「先ほど地面が揺れたのですが、ナナシさん何かされましたか?」

「え? 地面が揺れたの?」

「はい。」

…そうか、ずっと浮かされたままだったから気が付かなかったのか。

ジッと俺を見ているシルフィに言う。

「…地面が揺れたのには気が付かなかったけど…。」

そう言いながら、砂埃が舞い上がった様子と『ドオオオォォォン!』という音を思い出す。

「…身におぼえは…有る。」

「………………。」

シルフィは驚いているみたいです。

「…えっと、…何を…されたんですか?」

「えーっと………。」

「………………。」

「ちょっと、………魔法の実験を…しまし…た。」

「…王都の外でですか?」

「いや、もっと遠い…、西端せいたんの街のさらに南西の方で…。」

「………そんなに遠くで…、ですか………。」

「………………。」

「………………。」

頭の中で【多重思考さん】に訊く。

『王都では、どのくらいの揺れだったの?』

『震度1くらいです。』

あまり揺れてはいなかったが、王都までの距離を考えると、相当な爆発だったことになるね。

地震を起こす為には、かなりのエネルギーが必要だったはずだ。

かなり距離がある王都まで揺れたとなると、相当なエネルギーだよね?

言葉を失うね。

「………………。」

「………………。」

シルフィも言葉を失っているご様子です。


しばらく静かだったシルフィですが、結局、無言のまま部屋を出て行ってしまいました。

頭の中で【多重思考さん】が俺に訊く。

『ちょっと、やり過ぎましたか?』

大分だいぶ、やり過ぎたと思う。』

『………………。』

『………………。』

【多重思考さん】も言葉が少なめです。

【多重思考さん】も反省してください。お願いします。



俺の部屋を出たシルフィは、王妃様のところに報告に行ったそうです。

シルフィから報告を受けた王妃様と、王妃様経由でその話を聞かされた大臣は、しばらくの間、静かになっちゃったそうです。

【目玉】を使って様子を見に行った【多重思考さん】が、そう教えてくれました。

なんか…、ごめんなさい。

それと、【多重思考さん】も反省しようなっ。



その日の夜。

シルフィに、「何か悩みごとはないですか?」とか「おっぱいむ?」とか、色々言われてしまいました。

めるほど無いのに、シルフィは何を言っているんだろうね?(←おい)

錯乱さくらんしているっぽかったので、【スリープ】を掛けて眠ってもらいました。

ふぅ。

ひどい錯乱さくらんぶりだったね。

無い物はめないのに。(←やめてさしあげろ)


シルフィを錯乱さくらんさせてしまう様な新魔法披露は、もうやめようと思いました。



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