< 34 新・王宮での生活31 ナナシ、企む。ウェディングドレス01 >
メイドさんたちへの”ゴマスリ”は十分に出来たと思う。
結婚式の後に起こしてしまった事件でメイドさんたちの怒りを買ってしまったと思うが、”ゴマスリ”でかなりリカバリー出来たと思う。
『よし殺ろう。』と思っていたメイドさんたちが居たとしても、俺に利用価値が有ると思わせて、思い留まらせる事が出来たはずだ。
王妃様にも評価してもらっていると思うしね。
殺りたくても殺れない状況にまで持って行けただろう。多分。きっと。そうだといいな!(切実)
多分、俺の身の安全が確保されたはずだから、計画をもう一歩進めても大丈夫だろう。
俺は、”本丸”へ、もう一手打つ事にした。
”本丸”への対応は、シルフィに身を守る為の魔道具を贈ったり、シルフィと仲良くしているところを見せたりしてきた。
だが、それ以上の事は控えていた。
下手を打つと死ぬので。(断言)
だから、外堀を埋めて命綱を張る的な意味も含めてメイドさんたちへの”ゴマスリ”をやってきた。
これまでの”ゴマスリ”で外堀を埋めたという手応えが有るので、本丸へ次の一手を打つ事にする。
やる事は決めているし、その準備も【製作グループ(多重思考された人(?)たちの内の、物品製作をしているグループ)】にしてもらって終わっている。
実行に移す為にシルフィのところのメイドさんに来てもらって、相談することにしよう。
シルフィのところのメイドさんたちのリーダーに部屋に来てもらった。
てっきり、アンの屋敷に滞在している時にもお世話になったマーリーンさんが来るものと思っていたのだが、来たのは別のメイドさんだった。
このメイドさんも、アンの屋敷でシルフィの傍に居た人だ。
って、言うか、シルフィに結婚式で新郎の席に座ってくれる様にお願いされた時に、俺にニッコリとして、その”怖いオーラ”で『断ったら死ぬやつだ。』と俺に超確信させたお方です。
ちょっと苦手です。
「…マーリーンさんは?(ビクビク)」
「マーリーンは結婚する事が決まったので、その準備の為に休職中です。」
そうなんだー。
おっとりした感じの人で、(目の前のメイドさんよりも)話し易かったのになー。
「私、クリスティーナがマーリーンの後任です。よろしくお願いいたします。」
そう言って綺麗な礼をするクリスティーナさん。
そうかー、彼女が後任かー。
クリスティーナさんはちょっと苦手だが、頑張ろう。うん。
クリスティーナさんに言う。
「シ、シルフィとの結婚式の時の衣装を飾って保存しておく為にぃ、時間経過を止めて劣化させないガラスケースを作ったんだけど、置いておける良い場所って何処かに在りませんか?」
少しだけ、どもった。
クリスティーナさんは、少し考えてから訊く。
「どのくらいの大きさですか? それなりの大きさになってしまいませんか?」
「今、見せますね。」
【無限収納】からガラスケースを取り出して、床に置く。
人がすっぽりと入れるほどの大きなガラスケースだ。それが二つ。
それと衣装を着せるマネキンも二体取り出して、クリスティーナさんに説明する。
「このマネキンに衣装を着せて、ガラスケースに入れて飾っておきたいと思ってるんです。二つ並べて。」
「このガラスケースは、扉を閉めると時間停止状態になるので、いつまでも劣化させずに保存しておけます。」
ガラスケースとマネキンを見たクリスティーナさんが言う。
「これは良いですね。ぜひ飾りましょう。(笑顔)」
おお。好感触だね。
やったね。
「この大きさなら姫様のお部屋に飾れそうです。きっとお喜びになるでしょう。」
よし。
【マジックバッグ】にガラスケースとマネキンを入れてクリスティーナさんに渡してお願いした。
丸投げぢゃないですよー。
シルフィの衣装を俺の手でマネキンに着せる訳にはいかないからです。
そう言いつつも俺の分も渡してますがっ。
これは並べて一緒に飾る為です。
丸投げぢゃないですよー。(←誰に言い訳をしてるんだろうね)
その日の夕方、俺の部屋に来たシルフィに腕を引かれて、シルフィの部屋に行く。
シルフィの部屋に飾られた二人の結婚式の衣装を、シルフィと一緒に眺める。
シルフィは俺の腕に抱き着いてデレデレっとしています。
そんなシルフィの様子を見ているメイドさんたちは、微笑ましいものを見ているかの様な笑顔です。
よし。ここまでは計画通りだ。(ニヤリ)
俺は、さらに計画を進める。
「シルフィのウェディングドレス姿をもう一度見たいなぁ。(棒)」
俺が少し緊張しながらそう言うと、シルフィが笑顔で言う。
「私も、ナナシさんがこの衣装を着たところをもう一度見たいです!」
こうして、二人して結婚式の時の衣装を着ることになった。
計画通り。(ニヤリ)
部屋に戻り、ソファーで寛ぎながら、計画が順調に進んでいる事を喜ぶ。
飾られた衣装を見たシルフィは喜んでくれていた。
メイドさんたちは、俺がシルフィを喜ばせた事と、衣装を劣化させずに保存するガラスケースを作った事を評価してくれていることだろう。
そして、俺が結婚式の衣装を着たところをシルフィに見せてあげればさらに喜んでくれるだろうし、もしかすると、衣装を着て肖像画を描く事が原因で起きたあの事件の記憶を上書きしてくれるかもしれない。
それと、シルフィがさらに喜んでくれる様子を見せれば、俺を殺ろうと思っているメイドさんが居たとしても考えを改めてくれるだろう。
うむうむ。
計画通りだね。(ニヤリ)
計画が順調に進んでいる事を喜んでいたら、シルフィのところのメイドさんが部屋にやって来た。
そして、衣装を着るのは10日後だと言われた。
『10日後』と言われて、『何で10日後なのだろう?』と疑問に思って首を傾げる。
そんな俺の様子を見たメイドさんから『女性には都合ってものが有るんです。余計な事を言いやがったらプチ頃がしますわよ。』ってオーラを感じたので、俺は「はい。」とだけ答えました。(ビクビク)
< シルフィサイドのお話 >
結婚式の時の衣装を着ることになったシルフィ。
念の為、採寸をするメイドさんたち。
「………………。」
「………………。(汗)」
衣装を着るのは10日後となった。
訓練場にれんk…連れてこられたシルフィ。
二つの踏み台と、それらを繋ぐロープを見て、訊く。
「これは何ですか?」
「姫様には綱渡りの練習をしていただきます。」
「綱渡り…。」
「全身の筋肉を使いますがそれほど疲労はしないので、これなら公務に支障は出ないと思います。」
「綱渡りなんてやった事ないんだけど…。難し過ぎない?」
「時々、王妃様もなさっておられますよ。」
普段の母親の様子を頭の中で思い出して、『それなら簡単そう』と思う、シルフィ。
でもシルフィさん、王妃様は元王宮のメイドですよー。普通じゃないですよー。
シルフィが悪戦苦闘する事、しばし。
「お母様がやってるって嘘でしょ!」
「本当になさっておられますよ。」
”ぐぬぬ”顔でメイドさんをしばらく見た後、渋々、綱渡りの練習を再開するシルフィだった。
「頑張ってください、姫様。」
「足の裏から頭の天辺まで真っ直ぐになるように!」
「憎き二の腕のプルプルを消し去るのです。プププ。」
メイドたちの心の籠もった声援(?)が耳に入らないほど意識を集中させて、頑張るシルフィだった。




