< 32 新・王宮での生活29 ナナシ、量産型ペンギン型ゴーレムを作る04 >
エイラさんたちが帰った後。
俺はソファーに座り、量産型ペンギン型ゴーレムのプログラムの修正を行う。
『所有者登録モード』を追加しないといけないので、その内容を考える。
ペンギン型ゴーレムを起動した後の動きは、所有者が登録されているかをチェックして…。
登録されていれば、『歩行モード』にする。
登録されていなければ、『所有者登録モード』にする。
『所有者登録モード』は、『ぬいぐるみモード』みたいに動かない状態で、『所有者登録』を待っている状態だね。
そして、所有者登録を済ませたら、自動的に『歩行モード』にする。
『歩行モード』になると、『所有者追尾』がデフォルトでONになっているはずなので、『所有者追尾』を利用して『所有者登録』が上手くいっているのかを確認する。
これだけだね。
簡単だね。
所有者登録をしない状況っていうのは、あるのかな?
動作確認なんかをする時は、所有者登録をしないかな? しないね。
所有者登録をパスする仕組みも必要か。
そうすると…。
ペンギン型ゴーレムを起動して、所有者が登録されているかをチェックして…。
登録されていれば、『歩行モード』にする。
登録されていなければ、『所有者登録モード』にする。
『所有者登録モード』になったら『所有者登録』を待っている状態だが、その状態でもモード変更できる様にしておけばいいね。
『所有者登録モード』でも、「歩行モード。」と「ぬいぐるみモード。」の”ワード”で、それぞれのモードに切り替えられる。と。
『所有者登録モード』へも「所有者登録モード。」の”ワード”で切り替えられる様にしておく必要があるかな?
あまり使わない気もするが、『起動直後でないと『所有者登録モード』にならない』というのもアレだから、一応、切り替えられる様にしておこう。
所有者が登録されている場合は、パスしてしまえばいいんだしね。
うん。
『所有者登録モード』は、これでいいね。
次に、『呼び掛けると返事をする』機能の確認をする。
ちゃんと働いていない感じがしたからね。
そうは言っても、【多重思考さん】たちにゴーレムのプログラムの確認をお願いしていたので、その報告を聞くだけですが。
『確認が出来ました。『呼び掛けると返事をする』機能は、所有者に対してしか働かない状態になっています。』
『『呼び掛けると返事をする』機能を実行する際に、自動的にワードを作成して、そのワードを実行することによって返事をしていました。』
『これは、呼び掛けられた言葉を判別した後、その言葉に似た言葉を返す為にワードの作成と実行が必要になっていることが原因の様です。』
『この仕組みで返事をしている為、所有者以外のワードを弾く様にしている現状では、『呼び掛けると返事をする』機能は、所有者だけにしか働かない状態になってしまっています。』
ほう。
そんな仕組みが有ったんだね。
その仕組みを回避して返事をさせるのは、めんどくさそうだ。
これは、今の状態のままでもいいかな?
わざわざ手間を掛けてまで、変更するほどのモノではないからね。
うん。
これは、このままでいいや。
それぢゃあ、しなければならない変更は、『所有者登録モード』の追加と、『所有者登録モード』に関する細々とした設定だけだね。
よし。
既に骨格が出来上がっている量産型二号機に、この変更を適用してもらおう。
『よろしく。』(←相変わらすの丸投げです)
『量産型ペンギン型ゴーレム』のプログラムの修正を終えた。
安堵の溜息を一つ吐いて、ソファーでダラーーっとする。
全身の力を抜いて、全力でダラーーっとしていたら、声を掛けられた。
「よろしくお願いします。」
ん?
声のした方を見る。
見たら、ニーナがこちらに、ジタバタしているペンギン型ゴーレムを差し出していた。
…『プログラムの修正をしてね。』って事ですね。アッハイ。
受け取ったペンギン型ゴーレムを停止させて、魔晶石に書き込まれていたプログラムをサクッと書き換えた。
「起動。」と言って、再起動させる。
これで『所有者登録モード』になっているはずだ。ジタバタしていないしね。
「ニーナ、所有者登録をするから、顔を見ながら「所有者登録。」って言って。」
「私は所有者登録をしません。その子はナナシ様の所有物ですので。」
「………。」
『そう思っているのなら、持ち帰ったりしないでよ。』とか思いましたが、何も言いません。
言っても無駄だと知っているので。
ぢゃあ、名前登録をするか。
「ぬいぐるみモード。」と言って、『所有者登録モード』から『ぬいぐるみモード』に変更して、ニーナに言う。
「ぢゃあ、名前登録をするから、「名前登録。」と言ってからこの子の名前を言って。」
「はい。」
「名前登録。ペネラ。」
ペンギン型ゴーレムは何のリアクションもしないが、これで名前が登録されているはずだ。
「これで登録されているはずだから、名前を呼んでみてくれるかな。」
「はい。」
「ペネラ。」「キュウ」
よし。
デフォルトの鳴き声を返したね。
ちゃんと名前登録が出来ているね。うむうむ。
これで登録は終了だ。
『ぬいぐるみモード』の状態になっているから、このままニーナに渡そう。
「はい。」
「ありがとうございます。(ニッコリ)」
ペンギン型ゴーレムを抱いて壁際に移動するニーナを見送った。
そして振り返る。
そこには、ジタバタしているペンギン型ゴーレムを差し出しているケイトが居た。
ですよねー。
こちらのペンギン型ゴーレムも、プログラムの書き換えをしました。
ケイトも所有者登録をしないとのことなので、名前登録してからケイトに渡しました。
「ありがとー。(ニッコリ)」
そう言ってケイトは、ペンギン型ゴーレムを抱いて窓側の壁際に移動した。
ちなみに、ケイトが付けた名前は「クリス」でした。
男の子っぽい名前の様に感じるが、オスなのかな?
ペンギン型ゴーレムの性別は、俺はまったく気にしてなかったね。
まぁ、どうでもいいか。
好きに名前を付けてくれていいよね。
「ふぅ。」
一仕事終えた俺は、溜息を一つ吐いてから、ソファーでダラーーっとした。
お茶の時間です。
お茶を淹れてくれているニーナを眺めています。
堂々としていて、美しく滑らかな所作です。
その美しい所作に見惚れてしまいそうになります。
そして、淹れられたお茶が俺とシルフィの前に置かれました。
………………。
ニーナがペンギン型ゴーレムを抱きかかえたままお茶を淹れてくれるのも、大分見慣れました。
ですが…。
何でペンギン型ゴーレムはニーナの腕の中でジタバタしているんですかね?
何でわざわざ『歩行モード』にしちゃってるんですか? 『ぬいぐるみモード』で渡したのに。
腕の中でジタバタしちゃってるぢゃないですかー。
そうならない為の『ぬいぐるみモード』ですよー。
ニーナに何を言っても無駄だから、何も言いませんがっ。
ふと、ケイトの方を見る。
窓側の壁際で控えているケイト。
両腕でペンギン型ゴーレムを抱きかかえています。
そのペンギン型ゴーレムは、ケイトの腕の中でジタバタしていました。
「おいーー!」
思わず声が出た。
俺の隣に座るシルフィがビックリしています。
「ごめん、シルフィ。驚かしちゃって。」
シルフィに謝ってから、ニーナに訊く。
「ニーナっ、何で『歩行モード』にしてるのっ? 何で『ぬいぐるみモード』にしてないのっ?」
「この方が”抱き締めてる感”が有るからです。(キッパリニコニコ)」
それは、”抱き締めてる感”ではなく、”捕まえてる感”だと思うんですが!
ニーナのことは諦めて、ケイトに訊こう。
そう思いケイトを見たら、トロける様な笑顔でジタバタしているペンギン型ゴーレムに何やら話し掛けていた。
コイツもダメだ!
どうしたものかと考えたのだが、俺が何か言ったところでどうせ聞かないよね!
俺は、気にしない事にしました。
これまで、さんざん見ていた光景ですしねー。
そうです。
今更気にする必要なんか無いよねー。(諦めた目)