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姫様を助けたのは失敗だったが、割と好き勝手に生きています。  作者: 井田六
第十二章 異世界生活編07 新・新生活編
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< 28 新・王宮での生活25 ナナシ、量産型ペンギン型ゴーレムを作る00 >


被服部ひふくぶ エイラ視点 >


私の作業部屋にケイトが来た。

ペンギン型ゴーレムを抱きかかえて。


抱きかかえているのは”完成品”のほう

”骨”は、持って来ていないみたい。

発注は無いのかなー。

作りたいなー。作りたいなー。

私も欲しいなー。私も欲しいなー。

「この子、良い出来だよねー。(ニコニコ)」

笑顔でケイトが言う。

「ふ。当然。」

私が作ったのだから。

『作った』と言っても、渡された骨格を綿わたくるんで、毛皮をかぶせて縫い合わせただけだけど。

「欲しがるが、きっと沢山たくさん居るよねー。」

「そうね。」

私も欲しい。

「こっちに問い合わせが来てたりしてないー?」

「うん。来てる。」

「何件ぐらい?」

「50件くらい?」

「ふーん。」

「次の発注はいつ? いつでもいいんだけど。」

「んー。作らないっぽいかなー?」

「ええっ、作らないの?」

ガッカリして視線が下がってしまう。

ニヤリ (ケイト)

気を取り直して、ケイトに訊く。

「で、今日は何の用? スカートに何か有った?」

「スカートは快調だよー。ほんとイイ仕事するよねー。」

「ふ。当然。」

ケイトの専属だからね。

でも、ケイトがここに来る理由って、それ以外に有る?

「じゃあ、その子を見せびらかしに来たの?」

「えへへー。そうだと言ったらー?(ニコニコ)」

「殺してでも奪い取る。」

絶対に無理だけどね。

「キャー、コワーイ。(ニコニコ)」

明るくそう言ったケイトは、私の作業部屋から出て行った。

そして、作業部屋の外から「またねー。」って声が聞こえた。

…本当に、見せびらかしに来ただけだった?

でも、今のケイトの仕事は、ナナシ様の護衛よね?

フラフラしてていいの?

それも、ペンギン型ゴーレムを抱きかかえて。

「…まぁ、ケイトだし。」

ケイトのやる事にあまり意味は無いからね。スカートの事以外は。

考えるだけ無駄。

私は、ケイトが来る前までしていた、毛皮の見本をモフモフする作業に戻った。



今日も自分の作業部屋で毛皮の見本をモフモフする。

あー、ペンギン型ゴーレム作りたいなー。作りたいなー。(モフモフ)

私も欲しいなー。私も欲しいなー。(モフモフ)

でも、作る予定は無いみたいだしなー。(モフモフ)

私も欲しいなー。私も欲しいなー。(モフモフ)


ケイトが来た。

ペンギン型ゴーレムを抱きかかえて。

「殺してでも奪い取る。」

「ちょっと待とうねー。」

ちょっと待つ。

以前、ケイトに教えてもらった”あらぶるたかのポーズ”は疲れるので、かまえをく。

「………で?」

「ペンギン型ゴーレムについての問い合わせが、100件を超えたみたいだねー。」

「そうみたいね。」

部長オバサンがそう言っていた。

服作り一筋ひとすじ部長オバサンは、『王宮の被服部ひふくぶを何だと思っているのっ。』とか『毛皮の無駄遣いよっ。』とか言ってたけど。

「ペンギン型ゴーレムを量産してくれる様に、陳情ちんじょうしに行く事になったよー。」

やった。

作れる。ペンギン型ゴーレムを。

やった。

「被服部の代表はエイラ。部長の許可は取ったよー。」

「えっ? いつの間に?」

「抱かせたら一発だったよー。」

なんと破廉恥ハレンチな。

「ペンギン型ゴーレムをだよー?」

…モチロン、シッテマシタヨ?

「じゃあ、打ち合わせしよっかー。」

そう言って、資料とソレをケイトから手渡てわたされた。

資料に目を通すと、既に企画書の体裁ていさいでまとめられていた。

『いつの間に、こんな準備を?』とか『誰がこの企画書を?』とか思わないでもなかったけど、ほんのりあたたかくてモフモフでフニフニだったので、そんな事はどうでもいいや。(ニコニコ)



< ナナシ視点 >


やし系ゴーレムをながめてやされよう計画』が頓挫とんざして何日か後。

俺への依頼を取り仕切るようになったシルフィのところに、ペンギン型ゴーレムの製作を直訴じきそする為に駆け込んで来たメイドさんたちが居たんだそうです。

その時に持ち込まれた大量の鳥の骨を見て、シルフィがキレちゃったんだそうです。

………なんか、ごめん。

俺のした事の”ながだま”が当たってしまったシルフィに、申し訳ない気持ちになる。


その話を俺に教えてくれた【多重思考さん】に、『ペンギン型ゴーレムは、メイドさんたちへの”ゴマスリ”になるのではないですか?』と言われた。

うーーん。

そう言われても、被服部ひふくぶのメイドさんたちの協力が無いと作れないからねー。無理なんぢゃないかなぁ。

メイドさんたちに負担をいたら、”ゴマスリ”にならないよね。


そんな事のあった翌日。

ケイトが、メイドさんとシルフィを連れて俺の部屋にやって来て、「ペンギン型ゴーレム作ってー。」と言った。

シルフィを連れて来たところを見ると、正式な依頼なのかな?

言い方は、ぜんぜんそんな感じぢゃなかったけどなっ。

取り敢えず、ソファーに座ってもらう。

俺の向かいのソファーに、被服部のメイドさんとニーナとケイトが座る。

被服部のメイドさんは、以前、作ってもらったペンギン型ゴーレムを部屋に持って来てくれたメイドさんだ。

エイラさんというお名前だそうです。

それと、ニーナも交渉に参加するみたいです。

まぁ、ニーナが一番『ペンギン型ゴーレム』れきが長いからね。

ニーナの隣に並んで座るケイトを見る。

さも、交渉しに来たかの様なていでケイトも座っているのだが、君は俺の護衛役だったよね?

最近、部屋に居ない事が時々あったよね?

護衛対象を放っておいて何をしているのかと思ったら、ペンギン型ゴーレム関連の何かをしていたんだね。

まぁ、ケイトだしなー。

それで済まして良いのかは分からないが、まぁいいや。

だって、ケイトだし。(←ケイトに対する、謎ではない諦め感)


それはともかく。

ペンギン型ゴーレムを作ること自体は歓迎だ。

メイドさんたちへの”ゴマスリ”になるからね。

だから、俺はその依頼を受ける事にした。

俺が依頼を受けると、エイラさんは喜んでくれた。

ケイトが言うには、既に100件を超える問い合わせが、被服部にあったんだそうです。

え? いつの間にそんな事に?

そもそも、何でそんなにペンギン型ゴーレムの事を知ってる人が居るの?!

ニーナとケイトが持ち歩いていたからかな?

それにしても多過ぎぢゃね?


交渉を、俺の隣に座るシルフィにお願いして、一日に二体のペンギン型ゴーレムを作る事になった。

報酬は、今回は金貨で支払われることになった。

魔石で報酬を貰おうとしても、品薄になってしまっているからね。

現状からさらに魔石を品薄にさせてしまう様な事は、出来ないよね。


それに、魔石は魔道具を動かす為に必要だから、品薄にさせてしまうと、実は俺も困ることになってしまう。

魔石が手に入らなくなってしまうと、魔道具に魔力を充填できなくなってしまって、俺の作った魔道具も『魔力を充填できなくて使えない、役に立たない魔道具』に成り下がってしまうからね。

そうなってしまったら、”ゴマスリ”にならなくなってしまって、俺の命が危なくなるよね!

切実せつじつな問題だよね。

くっ。

まさか自分で自分の首を絞める事になろうとは!

俺は、メイドさんたちへの”ゴマスリ”になると思って魔道具を作って、その報酬を魔道具を作る為に必要な魔石で貰っただけだったのにね。

どうしてこうなった。



(裏話的なもの)

シルフィのところに突撃しちゃったメイドさんたちは、ケイトたちの動きを知らなかった一部のメイドさんたちです。

全体の状況をよく理解していないけど、行動力だけは有る人というのは、何処にでも居るのです。


(突発的メイドさん紹介)

< 『ケイト専属』 エイラ >

被服部ひふくぶのメイド。少々マッドな一匹狼タイプ。

『鉄壁』のケイトの専属として、ケイトの要求に応えて、日々スカートの改良、改造を行っている。

以前、スカートへの要求が厳しいケイトが被服部をマジギレさせて大喧嘩になった際、王妃様の提案によりケイト専属になった。

ケイトと意気投合し、専用の仕事部屋で暴走しながら試作品を作り出している。

その暴走の結果、メイド服が大幅に改善されることになったので、メイドたちからは感謝されている。


(事件メモ)

『ケイトと被服部との騒動』

多彩な蹴り技を持つケイトは、以前から頻繁ひんぱんに被服部にスカートの改造を依頼していた。

被服部も、ふた持ちで最強格のケイトに配慮して、その要求に応えていた。

ウエスト部の締め付けが気に入らなかったケイトは、スカートを吊り下げ式に改造してもらおうと考え、吊り下げ位置や吊り下げ方法を変えた大量の試作品の製作を被服部に依頼。

大量の試作品を要求された被服部は他の仕事に支障が出てしまい、マジギレして大喧嘩になった。

この騒動はなかなか収まらず、騒動を収束させる為に王妃様まで駆り出される事態になった。

王妃様は、人員を一人、ケイト専属にすることを提案。

一人ですべての試作品を作ることになると完成に時間が掛かることになってしまうのだが、専属の人員が配置された事にケイトは大喜びした。

被服部も、通常の仕事への支障が出る事が無くなるので、王妃様の提案を喜んだ。

両者が王妃様の提案を受け入れ、この騒動は収束した。

被服部は、少々マッドな一匹狼タイプのエイラをケイト専属として配置し、専用の仕事部屋を与えた。

少々マッドなエイラはケイトと意気投合。様々な試作品を暴走しながら作り出した。

彼女たちが暴走した結果、メイド服が大幅に改善され、メイドたちからは感謝されている。

結果として、王妃様のした提案は、関係者全員を幸せにしたのだった。人員を一人、ケイト専属にしただけだったのに。

ケイトと被服部との騒動は、騒動を収束させた王妃様の神格化をさらに進めることにもなったのだった。


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