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姫様を助けたのは失敗だったが、割と好き勝手に生きています。  作者: 井田六
第十二章 異世界生活編07 新・新生活編
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< 24 新・王宮での生活21 ナナシ、メイドさんたちの役に立つ魔道具を考える05 洗濯物を乾燥させる魔道具02end >


今日もメイドさんたちの役に立つ魔道具を考えていた。

検討した結果、今回は『洗濯物を乾燥させる魔道具』を作ろうと決めた。

【ドライ】の魔法を使って乾かして回ると、魔力消費量が多くなってしまいそうだったので、専用の部屋を用意してもらって、その部屋全体に【ドライ】の魔法を掛ける方法を思い付いた。

専用の部屋を用意してもらえるかニーナに訊きに行ってもらっている間に、魔道具の具体的な検討をしよう。



ソファーに座り、魔道具の具体的な検討をしていたら、頭の中で【多重思考さん(多重思考された人(?)たちのリーダー)】に言われた。

『室内で使うのなら、魔法は【分離】の方が向いていると思います。』

あれれ? そうなの?

『【ドライ】は、対象から水分をのぞいて周囲に拡散させます。室内で使うのには向いていません。』

あー、そうだったのかー。

それぢゃあ、【分離】魔法さんを使うか?

でも、【分離】魔法さんを使って大丈夫かな?

転移魔法の仲間だから、『【転移】の魔道具を作ってくれ。』とか言われちゃうかもしれないよね。

【転移】の魔道具は、犯罪に使われそうだから、作っちゃ駄目だよね。

安全策を採って、やっぱり【ドライ】を使う方向で検討してみようかな?

『分離した水を見えないところに捨ててしまえば、気付かれないんじゃないでしょうか?』

ふむ。

確かに、【多重思考さん】の言う通り、分離した水を見せずに『洗濯物が乾いた』という現象だけを見せれば、【ドライ】の魔法だと思ってくれるかな?

そうだね。

分離した水を見せなければ、バレないよね。

それで大丈夫だろう。うん。

それでいこう。


次は、どの様に魔法を掛けるか考える。

【分離】魔法さんを掛ける範囲は、部屋のなか全体だ。

でも、【分離】魔法さんって、『部屋のなか全体』っていう範囲を認識できるのかな?

誰にでも簡単に使えて魔力消費量が少ない魔道具にする為には、『部屋のなか全体』っていう範囲を認識して、その範囲に【分離】魔法さんを掛ける様にしておかないといけないよね。

そうする為には、どうすればいいのかな?

部屋のなか全体を結界でおおってあげればいい気がするな。

結界でおおってしまえば、後は【分離】魔法さんで結界の内側から水分をのぞけばいいだけだからね。

でも、どうやったら、部屋のなか全体を結界でおおう事が出来るのかな?

結界を張って、それを広げていくだけで、『壁に当たったところだけはそれ以上広がらない』って状態になって、結界の形が部屋の壁に沿った形になってくれるんだったっけ?

そんな結界の張り方はした事が無いから、実験してみないと分からないね。

ちょっと実験してみよう。


さて。

実験するとして…、【侵入不可】の結界で試すのは駄目だよね。

室内に在る物をすべて壁に押し付けてしまうだろうからね。(苦笑)

【遮音】結界なら、変な事は起きないかな?

大きな音だけさえぎる状態にした【遮音】結界で試せばいいよね。

それなら、何の影響も無いだろう。

ケイトに一言ひとこと断っておこう。

「ケイト、今から結界の実験をするけど、何の危険も無いから安心してね。」

「はーい。」

相変わらず緊張感の無い返事だ。

ペンギン型ゴーレムを胸元に抱きかかえてニコニコしているだけだしな。

護衛の仕事って、そんなんで良いんだっけ?

ちょっと疑問に思ったけど、まぁいいや。ケイトだし。(←ニーナとは逆の、謎ではない諦め感)

さぁ、実験だ。


ず、【遮音】結界を張る。半径2mくらいの半球状で。

このままだと結界が見えないので、薄く色を付けよう。

そう思っただけで、結界に薄く黒い色が付いた。

【闇魔法さん】、いつもありがとうございます。助かってます。

気配きくばりの出来る【闇魔法さん】に感謝しつつ、結界を広げていく。

結界が広がっていく様子を観察していたら、ソファーなどはそのまま通り抜ける様に結界が広がっていった。

それを見て、結界が壁で止まるのか不安になったのだが、壁に触れると、壁に触れた部分だけがそこで止まった。

さらに結界を広げていくと、部屋の内側全体に沿う様に四角しかくく結界が張られた。

おお。望んでいた通りの結果になったぞ。

望んでいた通りの結果になったのだが、ソファーとかが無視された理由は何だろう?

どういう理屈でこうなったんだろうね?

うーーん。

裏側にまわめるかどうかなのかな?

それなら、壁で止まる理由にもなる………のかな?

ハッキリとは分からないが、望んでいた結果が出たから、理由なんかどうでもいいや。

魔法バンザイ。(←考えるのを、強引に終わらせました)


さて。

結界が張れたから、この内側に別の結界を張る事も出来るよね。

俺の体に複数張っている結界で、それが出来ているからね。

この【遮音】結界の内側に、水だけを通さない様に設定した【侵入不可】の結界を張ればいいだろう。

そして、その結界の内側で【分離】魔法さんを発動させて水分をのぞけば、『洗濯物を乾燥させる魔道具』の出来上がりだよね。

うん。いけるね。

よし。製作に取り掛かろう。


実際に魔道具を使う様子を頭の中でイメージする。

最初に、机の上にでも魔道具を置いてもらおうかな。

部屋の内側に結界を張るのに、魔道具の位置が動いてしまうのは良くない気がするからね。

魔道具を置いてもらったら、「起動。」のワードで魔道具を起動させる。

起動した魔道具は、ず、大きな音だけをさえぎる【遮音】結界を半球状に張って、それを広げていき、部屋の内側全体に沿う様に結界を広げる。

次に、その【遮音】結界の内側に、水だけを通さない様に設定した【侵入不可】の結界を張る。

その次に、【分離】魔法さんで、結界の内側の水分をのぞく。

のぞいた水分は、転移先を森の中にしておいて、森にポイッてする。【ドライ】の魔法を使っていると思ってもらう様にね。

すぐに終わるはずなので、終了を知らせる機能は必要無いだろう。

「停止。」のワードも必要無いな。自動で停止する様にしておこう。

これだけか。

意外と簡単だね。

簡単だったので、サクッと頭の中でプログラムが作れた。

よし。魔道具もサクッと作ってしまおう。

【無限収納】から魔晶石を一つ取り出す。

これに、先ほど頭の中で作ったプログラムと、魔法を書き込んでいく。

次に魔力を充填して、『洗濯物を乾燥させる魔道具』の完成です。

やったね。



メイド長のところに『専用の部屋を用意できるのか』を訊きに行ってもらっていたニーナが戻って来た。

ペンギン型ゴーレムは胸元に抱きかかえたままだ。

没収されたりは、しなかったみたいだね。

それはそれで良かったのだが、『没収しなくても良かったのかな?』という気もする。

仕事中にぬいぐるみを抱きかかえている状態だからね。

駄目だよね。

没収するのが当然な気がするよね。

何でメイド長に没収されなかったのかな?

一番可能性が高いのは、ニーナが『こいつには何を言っても無駄だ』と思われている事だな。

うん。きっとそれだな。

なるほどなるほど。

納得だね。

「何か失礼な事を考えていませんか?」

そう、ニーナに言われた。

少し前に、ケイトにもそんなことを言われましたねー。

もちろん「ソンナコトナイヨ。」と返事しておきました。


ジットリとした目で俺を見ながら、ニーナが報告してくれる。

「メイド長に訊いてきました。『部屋を三つ用意するので、魔道具を三つ欲しい。』とのことです。」

ほう。

『洗濯物を乾燥させる魔道具』を高く評価してくれているみたいだね。まだ実物を見せてもいないのに。

「報酬は魔道具で支払われるそうです。ですので、これの報酬の話も後日ごじつになりますね。」

「そうだね。」

こっちの報酬も、『魔晶石の品質を上げる実験』の結果待ちだね。

「既に魔道具が出来ていたりしますか?」

「うん。一つは作ったよ。」

「『実験したいでしょうから、すぐに部屋を一つ用意させます。』とメイド長がおっしゃっていましたので、もう部屋が用意されていると思います。実験しに行きますか?」

「うん。行く。(笑顔)」

すぐに実験できるのは有り難いね。メイド長の配慮に感謝しよう。

ただ単に、外に干せなくなった洗濯物を乾かしたいだけだと思いますがっ。

配慮する振りをして、洗濯物を乾かせようとするあたり、上に立つ人のしたたかさを感じます。

まぁ、俺は実験が出来れば、それでいいんだけどねっ。(←ただのwin-winの関係です。)

早速さっそく、実験をしに行くぜ。(ワクワク)


ニーナと一緒に移動する。

ケイトは付いて来ていない。

部屋を出る時に『ケイトは付いて来なくていいのかなー?』って感情を込めて見たのだが、目をらされました。(苦笑)

護衛役ェ…。

王宮内とは言え、本当にそれでいいのか?

疑問だよね。

部屋に一人残ったケイトですが…。

ペンギン型ゴーレムをもふもふすりすりしています。

その姿は、部屋に常駐している【目玉】を通してバッチリ見えています。

この事をケイトに教えてあげたりはしませんよ。

教えてあげた後に羞恥しゅうちもだえる姿を見てみたいという気持ちは有りますが。(←やめてさしあげろ)


ニーナに案内されて一階の一室いっしつに来た。

教室くらいの広さの部屋だ。

ヒモが張られていて、洗濯物が沢山たくさん干されています。

【無限収納】から『洗濯物を乾燥させる魔道具』を取り出す。

木で出来た、一辺いっぺんが10cm程度の大きさの立方体の台座に、俺が魔法を書き込んだ魔晶石がまれています。

【製作グループ(多重思考された人(?)たちのうちの、物品製作をしているグループ)】が作ってくれていました。ありがとうございます。

俺は魔晶石に魔法を書き込んだだけで『完成だ。』とか思っちゃっていましたが、それだけぢゃ駄目だよね。何処どこかにころがってっちゃうし。(苦笑)

しかも、この台座。

引き出し部分に魔石を入れると、魔晶石に魔力を充填してくれる機能まで組み込まれているんだそうです。

…そうでしたね。魔晶石に魔力を充填する物も必要デシタネ。

丸投げし過ぎて、そういった部分にまで気が回りませんでした。

反省しないといけないね。(しおしお)

それにしても、これは良い出来です。

【製作グループ】のした良い仕事にれします。

あと二つお願いします。(←流れる様に丸投げしていやがりますが、それを反省しろや!)


部屋の中に作業台が在ったので、そこに『洗濯物を乾燥させる魔道具』を置いて起動させる…のだが、その前に、洗濯物の今の状態を確認しておこう。魔道具の効果を確認したいからね。

手で触れた洗濯物は、半乾はんかわきくらいの状態だった。

ぢゃあ、起動させるか。

設定した”ワード”を唱える。

「起動。」

起動させても、何が起こるという訳では無い。見た目はね。

ニーナは、『何も起きませんね?』って表情でキョロキョロしています。

俺は、先ほど触れた洗濯物に、もう一度触れてみる。

「おお。」

触れた洗濯物がちゃんと乾いていたので、驚いて思わず声が出た。

「ニーナも触ってごらん。」

そう言って、ニーナにも触れさせる。

「あれ?」

ニーナも驚いている。

「あっと言う間なんですね。」

「魔法だからね。」

「『魔法だから』なのですか?」

「『魔法だから』でしょ。」

魔法で水分をのぞいたのだから、こうなるよね。

「なるほど。転移魔法ですね。」

「………………。」

お、おかしな事を言うのはめようか、ニーナさん。(ビクビク)

「…【ドライ】ノマホウデスヨ。(汗)」

「【ドライ】の魔法ですね。(ニッコリ)」

「………………。(汗)」

「………………。(ニッコリ)」

分かっているのか、分かっていないのか、よく分からないニーナさんに戸惑とまどいます。

何か言うと墓穴を掘ってしまいそうなので、ニーナさんとの会話を打ち切って、ちゃんと部屋全体に魔法の効果が出ているのか確認します。

歩き回って確認したら、ちゃんと洗濯物は乾いていました。

やったね。

『洗濯物を乾燥させる魔道具』、完成です。



このままメイド長のところに行きます。

魔道具の引き渡しです。

現在、製作依頼を受けている魔道具は、『洗濯物を乾燥させる魔道具』が三つと、『ヒール』の魔道具が三つです。

『洗濯物を乾燥させる魔道具』はまだ一つしか完成していませんが、今、残りの二つを【製作グループ】に作ってもらっていますので、間も無く完成するでしょう。

魔道具製作依頼の報酬の話がまだ終わってないけど、先に魔道具を渡しちゃってもいいよね。


メイド長の執務室に来た。

「頼まれていた魔道具が出来上がったので、先にお渡ししちゃいます。」

そう言って、メイド長の執務机の上に魔道具を置く。

一辺いっぺんが10cm程度の大きさの立方体の『洗濯物を乾燥させる魔道具』が三つと、それより二回りほど小さい箱に収められた、指輪型の【ヒール】の魔道具が三つだ。

ちなみに、【ヒール】の魔道具が収められている箱にも、魔力を充填する機能が組み込まれているんだそうです。

【製作グループ】さん。本当にありがとうございます。

次回も、またお願いします。(←おい! 反省しろや!)


「こっちが『洗濯物を乾燥させる魔道具』です。これが説明書です。」

メイド長にそう言って『洗濯物を乾燥させる魔道具』を指差しながら、これも【製作グループ】が用意してくれた説明書を渡す。

説明書を用意したが、書かれている内容は少ない。

置いて、「起動。」と言うだけで、すぐに終わるからね。

使い方よりは、注意事項の方が多いくらいです。『ドアを閉めてから起動させてください。』とかね。

【ヒール】の魔道具の方については何も言わない。

口止くちどめされている品物だからね。

この部屋に今居る人たちに、どこまで知られていいのか分からないから、俺からは何も言いません。

「素晴らしい魔道具をありがとうございます。」

メイド長にお礼を言われた。

お礼を言われるのは気分が良いよね。

用事が済んだ俺たちは、メイド長の執務室を後にして部屋に戻ります。


廊下を歩きながら考える。

メイド長が、ニーナが胸元に抱きかかえているペンギン型ゴーレムについて、何も言わなかった事を。

ニーナは、さも当然とでも言いたげに俺の隣に立っていたしな。ペンギン型ゴーレムを抱きかかえたまま。

せないよね。

ますます、ニーナが『『こいつには何を言っても無駄だ』と思われている』疑惑が深まったね。

うむうむ。

「何か失礼な事を考えていませんか?」

そう、ニーナに言われた。

俺の少し後ろを歩いているニーナには、俺の表情が見えないはずなのに何で分かるのかな?

おかしいよね?

もちろんニーナには「ソンナコトナイヨ。」と返事しておきました。


部屋に戻り、ソファーに座ってくつろぐ。

俺は、魔道具の製作依頼をやり終えた達成感と、メイド長にお礼を言われた事で上機嫌だ。

でも、俺が魔道具を作っている理由は、メイドさんたちにゴマを擦っておく為だったね。お礼を言われる為ぢゃなくてね。

もちろん憶えてイマスヨ。

ちょびっとだけ忘れ掛けていましたが。


『魔晶石の品質を上げる実験』の様子を【多重思考さん】に訊いたら、まだ終わらないそうだ。

ふむ。

ぢゃあ、隠れ家に行ってお風呂にでも入るかな?

ヒマな訳ぢゃないですよー。

頑張ったから休息が必要なだけです。

納得できる理由だね。うん。


おやつを食べた後、隠れ家に行ってお風呂に入ったりして、のんびりと過ごしました。


(裏話的なモノ)

ペンギン型ゴーレムを胸元に抱きかかえたままメイド長のところに行ってしまったニーナでしたが、メイド長にペンギン型ゴーレムを没収されませんでした。

没収されなかった理由は、ペンギン型ゴーレムの所有者がナナシなので、”ドラゴン案件”になっているからです。

没収して、ニーナに泣き付かれたナナシが動く事になると返さないといけなくなるので、メイド長は没収しようとしなかったのです。

ニーナは、一回目でその事に気付いたので、二回目にナナシと一緒に訪れた時は、さも当然とで言いたげに、ペンギン型ゴーレムを胸元に抱きかかえたままでいたのです。

これからは安心して持ち歩いてムフムフスリスリしていくことでしょう。

尚、ケイトはそんな事には気付きませんので、これからもコッソリと持ち歩くことでしょう。周りのメイドさんたちにバレたとしても、”ドラゴン案件”だから何も言われないと思いますが、ケイトはそんな事に気付く娘ではないんです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 一話から通しで読んでいる途中ですが全く飽きる事なく読み続けています!とても面白いと思います!更新分まで一気に読み切りたいと思います! [気になる点] 水分を弾く様にする魔導具なのに人が近く…
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