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姫様を助けたのは失敗だったが、割と好き勝手に生きています。  作者: 井田六
第十二章 異世界生活編07 新・新生活編
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< 20 新・王宮での生活18 ナナシ、癒やし系ゴーレムを作る03 ペンギン型02 >


朝。

起きて、着替えを済ませて、朝食の時間までソファーでくつろぐ。

しばらくダラァーっとしていたのだが、ふと、昨日作ったペンギン型ゴーレムの事を思い出した。

部屋の中を歩き回っているものだと思っていたのだが、見回みまわしてもペンギン型ゴーレムは見当みあたたらない。

テーブルの影に居るのかと思い、テーブルの下をのぞむが、そこにも居ない。

ソファーの向こう側に居るのかと思い、テーブルの下をのぞんだ姿勢のまま、向かいのソファーの下の空間を見るが、ペンギン型ゴーレムが居る様には見えなかった。

自分が座っているソファーの背もたれの裏側も見るが、そこにもペンギン型ゴーレムは居なかった。

はて?

ニーナに訊こうと思って、壁際かべぎわひかえるニーナに視線を向ける。

探していたペンギン型ゴーレムが、俺の視界に入った。

ペンギン型ゴーレムは、壁際かべぎわひかえるニーナに抱きかかえられ、ニーナの腕の中でジタバタしていた。

………………。

ニーナの表情を見る。

イイ笑顔だ。

ニーナの腕の中ではペンギン型ゴーレムがジタバタしているのだが、ニーナにそれを気にしている様子は微塵みじんも無く、実にイイ笑顔で壁際かべぎわひかえていた。

………………。

あまりにもイイ笑顔なニーナのことはスルーして、ペンギン型ゴーレムを見る。

ニーナの腕の中でジタバタしている。

ニーナの腕から抜け出そうとしているみたいだ。

ジタバタしているのは、『障害物を避ける』プログラムが働いているからなのかな?

何だか、可哀想かわいそうに見えるんですが…。

えーーっと。

そのペンギン型ゴーレムは、部屋の中を歩かせておいて、ヨタヨタと歩く姿を見てやされようと思って作ったんですけどねぇ。

抱きかかえられてジタバタしている姿を見せられても、やされないよね。

俺は、ニーナに言う。

「ニーナ、床に置いてあげて。」

「や。(キッパリ)」

拒否された。

キッパリと。

うーーん。どうするかな?

「もう一体、作ればいいんじゃないかなっ。」

いつの間にか俺の斜め後ろに来ていたケイトに、そう言われた。

うーーん。どうしよう。

どうしようか考えていたら、頭の中で【多重思考さん(多重思考された人(?)たちのリーダー)】に言われた。

『五体(ぶん)の骨格が組み上がっています。すぐにガワをお願いできる状態です。』

俺が寝ている間に【製作グループ(多重思考された人(?)たちのうちの、物品製作をしているグループ)】が作ってくれていたみたいだね。

でも、五体(ぶん)も作る必要は無かったんぢゃないかな?

一体作ったら、改良したい箇所に気が付いてしまって、ついつい作り過ぎちゃったのかな?

その様子が容易よういに想像できるね。

むしろ、魔改造されていないか心配です。(苦笑)

【無限収納】から、ペンギン型ゴーレムの骨格を一体取り出して、魔改造具合…ぢゃなくて、出来具合を確認する。

ふむ。

昨日作ったものと、ほとんど同じだね。(ホッ)

頭蓋骨の目の部分には黒い石がまれている。

昨日はすっかり忘れてしまって、メイドさんに余計な手間を掛けさせちゃったからね。

足は、カモの足っぽいな。黄色くて水かきが有る足が付いている。

ペンギンの足がどの様な足だったのかはいまだに思い出せないが、これはこれでいいね。

ふむふむ。

イイ出来です。(ニッコリ)

イイ出来なのはいいのだが…。

うっかり、もう一体作るかどうかを決めていないのに、組み上がっていたペンギン型ゴーレムの骨格を取り出して見てしまった。

これを見ちゃうと完成させた物が欲しくなっちゃうよね。

失敗したね。

期待しているかの様な視線をすぐ近くから感じるしね!

もう作るしかないよね。

このまま【無限収納】に仕舞える気がしないからね!

俺は、肩越しに俺の手元をのぞんでいたケイトに、「これをお願い。」と言ってペンギン型ゴーレムの骨格を渡した。

「任してー。(笑顔)」

そう言ってケイトは、上機嫌な様子で部屋を出て行った。


ケイトは上機嫌な様子で部屋を出て行ったのだが、まだ、朝食前の時間だったね。

被服部の人たちは、まだ出社(でいいのかな?)していないだろう。

うっかりしちゃったね。

トボトボ帰って来た”うっかり者2(ケイト)号”の様子を見て、少しだけほっこりした。



昼前。

朝食前にケイトに渡したペンギン型ゴーレムの骨格は、今、綿わたくるみ、毛皮をかぶせてもらった状態で、被服部のメイドさんから受け取った。

お手数かけてすみません。ありがとうございます。

早速さっそく、この二体目のペンギン型ゴーレムも、昨日と同様に毛皮に魔法を付与してから床に置いて、起動させた。

立ち上がり、部屋の中を歩くペンギン型ゴーレム。

ヨタヨタヨタヨタ

ヨタヨタヨタヨタ

ヨタヨタ歩く姿を見て、やされた。

むはー。

しばらくの間、ペンギン型ゴーレムがヨタヨタと歩き回る様子を、ただながめた。


被服部のメイドさんは、一仕事ひとしごとやりえたイイ笑顔で帰って行った。

それと入れ違いに、別の人がやって来た。

昨日、王妃様に頼まれていた魔道具の引き渡しと、魔道具の材料と報酬の魔石の受け取りをした魔術師さんだ。

今日も、昨日と同様、完成した分の魔道具の引き渡しと、魔道具の材料と報酬の魔石の受け取りをした。

用事は済んだはずなのだが、その魔術師さんは床を歩くペンギン型ゴーレムをじーーーっと見て、帰ろうとする気配が有りません。(苦笑)

しばらくの間、ペンギン型ゴーレムがヨタヨタと歩き回る様子をながめた後、「この生き物は何ですか?」と俺に訊いた。

「生き物ではなくてゴーレムです。ペンギンという動物をして作りました。」

「………。」

もう一度、ペンギン型ゴーレムがヨタヨタと歩き回る様子をながめられています。

「えーっと、このゴーレムは警備…をしている…のですか?」

「いえ、ただ歩いているだけです。歩いているのを眺めて癒やされる為に作りました。」

「………。」

俺の返答に納得できていないご様子です。

おかしいね。

歩いているのを眺めているだけで癒やされるのにね。(←たぶん問題点はそこではありません)

納得できないご様子のまま、その魔術師さんは帰って行った。

ニーナに訊く。

「何かおかしかったのかな?」

「ただ歩かせる為だけのゴーレムを作るのがおかしいと思ったのではないですか?」

うーん。

お仕事でゴーレムを作る人からしたら、変な事をしている様に見えるのだろうか?

俺には、変な事をしている自覚など有りませんがっ。

それはそれとして。

朝からずっとペンギン型ゴーレムを抱いているニーナに言う。

「床に置いてあげて。」

「や。(キッパリ)」

『そういう態度のメイドはおかしくないのかな?』と少しだけ思いましたが、何も言いませんでした。

無駄だと思ったので。



昼食後。

ソファーでくつろぎながら、次に作る魔道具の構想を練ったりして過ごした。

一息ひといき入れようと思い、”やし”を求めて、部屋の中を見回みまわす。

が、部屋の中を歩いているはずのペンギン型ゴーレムが、一体も居なかった。

今朝の状況が脳裏をかすめたので、ニーナを見た。

壁際かべぎわひかえるニーナは、胸元にペンギン型ゴーレムを抱きかかえている。イイ笑顔で。

ペンギン型ゴーレムは、ニーナの腕の中でジタバタしている。

朝に見たのと同じ光景がそこには在った。

しかし、ペンギン型ゴーレムは、もう一体居たはずだ。

『もしかして』と思い、ケイトを見る。

窓側の壁際かべぎわひかえるケイトも、胸元にペンギン型ゴーレムを抱きかかえていた。イイ笑顔で。

そして、こちらのペンギン型ゴーレムも、ケイトの腕の中でジタバタしていた。

「………。」(俺)

「………。(ニコニコ)」(ニーナ)

「………。(♪)」(ケイト)

二人に言う。

「二人とも、床に置いてあげて。」

「や。(キッパリ)」

「………。」

明確に拒否する者(=ニーナ)と、『何の事かなー。』という態度の者(=ケイト)が、そこには居た。

「………。」(俺)

「………。(ニコニコ)」(ニーナ)

「………。(♪)」(ケイト)

二人とも、俺の言う事を聞いてくれそうにないねっ。

「はぁ。」

溜息ためいきが出た。


二人のことは諦めて、考える。

ペンギン型ゴーレムがヨタヨタと歩き回る様子をながめてやされたいのだが、そうする為には、一体いったい、何体のペンギン型ゴーレムを作らなければならないのかな?

沢山たくさん作らないとダメな気がするね。

ニーナは5~6体くらいは抱きかかえそうな気がするからなっ。

沢山たくさんのペンギン型ゴーレムを抱えて超イイ笑顔なニーナの姿が、容易よういに想像できた。

ペンギン型ゴーレムを作るには鳥の骨を拾い集める手間が掛かるし、被服部のメイドさんたちにも作業をお願いしないといけない。

寝ている間に完成する訳では無いので、沢山たくさん作るのは無理だよね。

もう諦めるか?

うん。

諦めよう。


俺の考えていた『やし系ゴーレムをながめてやされよう計画』は、こんな形で頓挫とんざしたのだった。


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