< 19 新・王宮での生活17 ナナシ、癒やし系ゴーレムを作る02 ペンギン型01 >
癒やしが必要だ。
昨日。
作ろうと思っていた魔道具が、魔力の消費量が多過ぎて日常的に使うには難しい代物になってしまい、結局、機能を削りまくった物を作ってお茶を濁した。
その所為で、まだ、少し落ち込んでいる。
癒やしが必要だと思ったので、前回失敗した癒やし系ゴーレム作りに再挑戦する事にした。
前回、ネコ型ゴーレムを作ろうとしたのだが、上手くいかなかった。
上手く四足歩行させる事が出来なくて。
そこで、『二足歩行』で『歩いているところ見ているだけで癒やされる動物』を考えてみた。
『そんな都合の良い動物なんて居ないよなぁ。』と思ったのだが、ちょうどいい動物が思い浮かんだ。
ペンギンだ。
ペンギンなら、歩いているのを見ているだけでも癒やされるだろう。
ヨタヨタ歩きだから、歩かせるプログラムが多少おかしくても問題無いだろうし。
ちょうどいいよね。
よし。ペンギン型ゴーレムを作るぜ。
早速、ゴーレム作りに取り掛かる。
【ブロック】で作業台を作り、その上に【無限収納】から小石を沢山取り出す。
ペンギン型ゴーレムのプログラムを頭の中で考えて、魔晶石に書き込み、魔力を充填する。
魔力の充填にも大分慣れたので、変な声が出る事はありませんでした。
ケイトが残念そうな表情をしていた事には気が付かなかった事にします。
魔晶石を小石の山の上に置き、ペンギン型ゴーレムのプログラムを起動させた。
小石が魔力により繋がっていき、高さ40cmほどのペンギン型ゴーレムが形作られた。
よし。早速、床に降ろして歩かせてみよう。
重そうだったので【魔法の腕】を使って床に降ろし、歩かせてみた。
ヨタヨタヨタヨタ
手(?)を横に広げてバランスを取りながら、短い足でヨタヨタと歩くペンギン型ゴーレム。
うはー。
いい感じに癒やされるね。(ニコニコ)
そのまま部屋の中を歩かせる。
ヨタヨタヨタヨタ
ヨタヨタヨタヨタ
むほー。
よし、上手くいっているね。(ニコニコ)
ペンギン型ゴーレムの完成です。
やったね。
むはー。
「これは何ですか?」
ニーナに訊かれた。
「ペンギン型ゴーレム。」
「ペンギンとは?」
「そういう名前の、飛べないけれど鳥の仲間。この世界には居ない?」
「この世界?」
あ、しまった。『この国』って言えば良かった。
「………………。」
「………………。」
無かった事にしよう。
「ペンギンです。(キリッ)」
「ペンギンですね。」
ふう。無かった事になった様だ。(←それでいいのか?)
ニーナはペンギン型ゴーレムに近付き、両手で持ち上げようとする。
だが、思ったよりも重かったのか、持ち上げるのを諦めた様だ。
「重いですね。」
「石だからね。」
「それに冷たいです。」
「石だからね。」
「軽くて、ほんのり暖かいと良いですね。」
「…ゴーレムだよ?」
「軽くて、柔らかくて、ほんのり暖かいと良いですねっ。」
「………。」
「重くて、硬くて、冷たいモノが足元で動いていると、危ないと思います。」
…そう言われてみれば、そうかもしれないな。
躓いて転んで、怪我をしてしまうかもしれないね。
確かに危ない気がするな。
でも、『冷たい』は関係なくない?
足元がひんやりするのかな?
それとも、『気分的に足元がひんやりする』という感じなのかな?
そんな事を考えていたら、もう一度ニーナに言われた。
「軽くて、柔らかくて、ほんのり暖かいと良いですねっ。壁に傷が付く事もありませんしっ。(ニッコリ)」
「…お、おう。」
有無を言わせぬ”圧”をニーナの笑顔から感じる。
壁に傷を付けた、ネコ型ゴーレムの失敗の件を持ち出されると、困ってしまうよね。(ビクビク)
改良しなければならないね。このペンギン型ゴーレムを。
軽くて、柔らかくて、ほんのり暖かいモノに。
「はぁ。」
溜息が出た。
小石で作ったペンギン型ゴーレムは解体し、小石を【無限収納】に仕舞った。
そして、ニーナの要望を取り入れた、新たなペンギン型ゴーレム作りに取り掛かることした。
新たなペンギン型ゴーレムを考える。
ニーナの要望は、『軽くて』、『柔らかくて』、『ほんのり暖かい』だ。
軽くするには、素材を何にすればいいのかな?
木かな? 木だろうな。
そうだね、木で作ろうか。
木なら、【無限収納】の中に沢山入ッテルカラネー。(ちょっと遠い目)
木でペンギンの骨格を作って、綿で包んで、毛皮を被せて、『動くぬいぐるみ』みたいにする感じかな?
木よりも軽くて、手に入り易い素材なんて有るかな? 無いよな?
いや、鳥の骨の方が軽いかな?
そうだね。鳥の骨の方が木よりも軽そうだね。
骨だから強度も期待できるだろうし、そこそこ手に入り易いだろう。
カモメとかトンビくらいの大きさの鳥の骨が、ちょうどいいのかな?
ちょっと小さいかな?
もっと大きい鳥の方がいいのかな?
でも、居るかね? ちょうどいい大きさの鳥なんて?
ペンギンって、そこそこ大きいから、それと同じくらいの大きさの鳥って、なかなか居ない気がするね。
数羽分の鳥の骨を集めて、組み立てることにしようか。
手に入り易い鳥の骨となると、ニワトリの骨かな?
ゴミ捨て場に捨てられていそうだよね、ニワトリの骨なら。
最初の一体は、試しにニワトリの骨で組み立てて作ってみよう。
そう思い、【多重思考さん】たちにニワトリの骨を探してくれるように頼む。
よろしく頼む。(←いつもの丸投げです)
ニワトリの骨を組み立てて骨格を作るとして、ペンギンの脚はどうしようかな?
ペンギンの脚って、結構太かった覚えがある。
ニワトリの細い脚では、ダメそうな気がするね。
そう言えば、ペンギンの足に”水かき”って有ったっけ?
有った様な気もするし、無かった様な気もするな。
うーーん。
ダメだ、思い出せない。
取り敢えず、最初の一体はカモの足でも使ってみるか。
カモの骨も【多重思考さん】たちに探してくれるように頼む。
よろしく。(←丸投げするのが雑になってきました)
綿や、毛皮も必要だな。
それと、毛皮を縫う技術も必要だ。
【製作グループ(多重思考された人(?)たちの内の、物品製作をしているグループ)】に出来るかな? 服を縫ったりなんてしたこと無いよね?
無理っぽいよね。
俺の手には余る気がするね。
メイドさんたちに頼むか?
先ず、骨格だけ作ってから、メイドさんたちにお願いしてみよう。
どのくらいの大きさになるのかも分からない状態では、頼み難いからね。
【多重思考さん】たちがニワトリの骨を用意してくれた。
ありがとうございます。
足は、カモの足っぽいモノを木で作って用意してくれた。
カモの骨は見付からなかったそうだ。
そうそう都合良く落ちてなんかないよねー。
まぁ、木でも大して重さは変わらないだろう。問題無いよね。
用意してもらった、大体3羽分くらいのニワトリの骨を【ブロック】で作った作業台の上に置き、ペンギンっぽくなる様に骨を並べていく。
ニワトリの脚をそのまま使うと細過ぎるので、他の部分の骨を流用する。
『確かペンギンは膝を曲げた状態で歩いていたはずだ。』と、朧げな記憶を頼りに、脚っぽくなる様に骨を並べた。
手(?)、それともヒレ(?)の部分の骨格って、どうなっているのかな?
よく分からなかったが、綿で包んで、毛皮を被せ易そうな構造になる様に骨を並べてみた。
しばらく試行錯誤して、いい感じに骨を並べ終えた。
よし。
次に魔晶石に書き込むプログラムを考える。
ゴーレムをペンギンの形で組み上げるプログラムと、歩かせるプログラム。それと、障害物を避けるプログラムだね。
これだけかな?
ニーナから要望されている『ほんのり暖かい』は、表面に【リフレクション(熱)1倍】を掛ければいいだろう。
【リフレクション(熱)1倍】で試して、もっと暖かくしたい様だったら、その時は………。【ヒート】を試してみよう。
”2倍”とか”3倍”とかにはしませんヨー。
変なトラウマが刺激されてたりなんてシテイマセンカラネ。(ビクビク)
魔晶石にプログラムを書き込み、魔力を充填する。
魔力を充填する事にも慣れてきたので、今回も変な声を出さずに魔力を充填する事が出来た。
いつまでもケイトを笑わす訳にはいかないのです。
そのケイトが不満そうな表情をしている事には、どうにも納得できないものを感じますがっ。
この魔晶石を骨格に組み込むのだが、何処に組み込むかな?
頭蓋骨の中に入れるには少し大き過ぎるから、胸の中だね。
魔晶石を、並べた骨の胸元に置いて、プログラムを起動させる。
作業台の上に並べた骨を使って、ペンギン型ゴーレムが形作られていく。
そしてペンギン型ゴーレムが完成した。骨格だけだけど。
起動させたペンギン型ゴーレム(の骨格)なのだが、起き上がる事が出来ずにジタバタ…、いや、カシャカシャしている。(苦笑)
形状が普通のゴーレムとは違うから、専用のプログラムが必要だったりするのかもしれない。
脚が短くて、手がヒレだもんねー。
無理だよねー。
まぁ、今はそれは後回しにして、先に、ちゃんと歩けるか確認しよう。
ペンギン型ゴーレム(の骨格)を持ち上げて床に立たせて、歩かせる。
カシャ カシャ カシャ カシャ
うーーん。見た目ェ…。
ちゃんと歩いてくれたのだが、骨だけだと見た目が良くないね。まったく可愛いくありません。(苦笑)
あと、顔がニワトリなのもいまいちだね。
もっとペンギンっぽい顔にしたいね。
そう思ったら、作業台の上に”くちばし”っぽい物が現れた。
【製作グループ】が用意してくれた物みたいだ。
頭の中で、【製作グループ】の人(?)から、この”くちばし”の説明を聞く。
これは、頭蓋骨に【結合】して取り付ける物らしい。
ペンギン型ゴーレム(の骨格)を一旦停止させて、サクッと、くちばしを【結合】した。
さっきよりもペンギンらしい見た目になった。…様な気がしないでもない。(苦笑)
骨だけだから、いまいち良く分からないだけだったらイイナー。
骨だけの状態で歩かせておいても癒やされないので、停止させたまま次の作業に取り掛かる事にした。
毛皮を被せたペンギン型ゴーレムの完成予想図を紙に書く。
色の希望なんかも、併せて紙に書き込んでいく。
書き上げた完成予想図をニーナに見せながら訊く。
「この骨格を綿で包んで、毛皮を被せて、こんな感じになる様にしたいんだけど、そんな作業をしてもらえるような部署って在る?」
「でしたら、被服部にお願いしましょう。ケイト。」
そう言ってニーナは、ケイトを呼んだ。
「被服部なら僕の担当だね。」
そうなの?
”護衛”役のケイトと”被服部”って何だか繋がらない気もするが、そう言うのなら、そうなのだろう。
ケイトは興味津々という様子で完成予想図を覗き込む。
ニーナは、「ここの毛皮は…。」とか言いながら、何やら完成予想図に書き込みをしている。
ニーナはケイトにも意見を求めたりしながら、さらに色々と書き込んでいった。
色々と書き込まれた完成予想図とペンギン型ゴーレム(の骨格)を手に持ったケイトが、「じゃあ、行ってくるねー。」と言って、部屋を出ていった。
ケイトを見送った後。
俺はソファーに座って、ペンギン型ゴーレムに追加するプログラムを考える。
追加するプログラムは、『立ち上がる』だ。
さっきは、立ち上がれなかったからねー。
それに、脚の短いペンギンはすぐに転びそうだから、立ち上がるプログラムは必須だよね。
で。その立ち上がるプログラムを考えなければならないのだが、そもそも、ペンギンが立ち上がる時の動作ってどんな感じなのかな?
腹ばいになって、足の裏を地面に付けて、背中を丸めながら、腰から背中へと徐々に姿勢を立てていく感じなのかな?
ヒレ?は使わないよな? 体を支えられるほどの強度は無さそうだしね。
何となく立ち上がれそうな気がするけど、実際にやってみないと分からないよね。
取り敢えず、そんな感じの動作で『立ち上がる』プログラムを作っておこう。
他に、腹ばいの状態になれる様に『転がる』動作も必要になりそうだが、これはゴーレム標準の動作で大丈夫だろう。
他に何か有るかな?
段差が有ると、すぐに転びそうだよね。脚が短いから。
映像なんかで見たことのあるペンギンは、飛び跳ねて段差を越えたりしていた気がする。
『段差を飛び越える』プログラムも必要になりそうだが、これもゴーレム標準の動作で大丈夫だろう。
脚を揃えて前にジャンプするだけだからね。
追加するのは、『立ち上がる』プログラムだけでよさそうだね。
『立ち上がる』プログラムを作り終えた。
一先ず、俺のやる事は無くなったので、王妃様に頼まれている、毛穴の汚れを取る魔道具の製作状況の確認をした。
その後、魔術師さんが毛穴の汚れを取る魔道具の材料と報酬の魔石を持って来てくれたので、それらを受け取った。
明日、残りの分の材料と報酬の魔石を持って来てくれるとのことだ。
毛穴の汚れを取る魔道具の完成した分を引き渡し、魔術師さんは帰って行った。
一仕事やり終えた気分になったので(←おい)、俺はソファーでダラダラした。
ソファーでダラダラしていたら、また部屋に人が来た。
『今度は何かな?』と思ったら、俺が頼んでいた物を持って来てくれた様だった。
…そう言えば、買い物を頼んでいたね。
モチロン、オボエテイマシタヨ。(←ダウト)
頼んでいた、蝶番とドアノブとニスを受け取った。
ありがとうございます。
サクッと【無限収納】に仕舞って、ソファーで寛ぎます。
そして考える。
他にも何か頼んでいて忘れている物なんて無いよね?
買い物を頼んでいた事をすっかり忘れていたので、自分の記憶力が心配になりました。
昼過ぎ。
メイドさんが部屋にやって来た。
『今度は何だったっけ?!』
記憶力が心配になっていた俺は、焦ります。(汗)
が、メイドさんが持っている物を見て、すぐに思い出した。
メイドさんは、胸元にぬいぐるみっぽい見た目になったペンギン型ゴーレムを抱きかかえていたので。
来たメイドさんは、被服部のメイドさんだそうです。
お礼を言って、ペンギン型ゴーレムを受け取った。
ぬいぐるみっぽい見た目になったペンギン型ゴーレムをじっくりと見る。
うむ。
なかなか良い出来です。手触りも良いし。(ニッコリ)
目の部分には、黒い石を入れてくれた様だ。
目をどうするのか、すっかり忘れていたね。
ありがとうございます。
さて。
早く歩かせたいのだが、先に、表面を覆っている毛皮に魔法を付与しよう。
【リフレクション(熱)1倍】の他に付与するのは【防汚】と【撥水】でいいかな。
サクッと魔法を付与したら、手で持っている部分が暖かく感じる様になった。
【リフレクション(熱)1倍】の効果だね。
ほんのり暖かいです。
この暖かさも、何ともいい感じです。(ニッコリ)
『さぁ、歩かせよう!』と思ったのだが、その前に『立ち上がる』プログラムを追加する。
『立ち上がる』動作を確認しないといけないからね。
プログラムを追加したら、腹ばいの状態で床に置き、「起動。」と言って起動させた。
起動したペンギン型ゴーレムは、足を床に置いて踏ん張り、背中を丸める様にしながら上体を引き起こして、立ち上がった。
「「「「おおっ。」」」」
ちゃんと立てた事に驚いて、思わず声が出た。
周りのメイドさんたちからも声が上がっていました。
立ち上がったペンギン型ゴーレムは、歩きだした。
ヨタヨタヨタヨタ
ヨタヨタヨタヨタ
うん。和む。
癒やされるね。(ニッコリ)
ヨタヨタヨタヨタ
ヨタヨタヨタヨタ
ヨタヨタヨタヨタ
ヨタヨタヨタヨタ
しばらくの間、ペンギン型ゴーレムが歩き回る様子を、ただ眺めた。
全員で。(ニッコリ)




