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姫様を助けたのは失敗だったが、割と好き勝手に生きています。  作者: 井田六
第十二章 異世界生活編07 新・新生活編
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< 16 新・王宮での生活15 ナナシ、メイドさんたちの役に立つ魔道具を考える02 >


おやつの時間です。


幸せそうな表情でおやつをパクつくシルフィの頭を時々なでなでしながら、頭の中で【多重思考さん(多重思考された人(?)たちのリーダー)】から報告を聞く。

【多重思考さん】には、魔晶石の大きさをどの様な測定器を使ってはかっているのかを調べてもらっていた。その調査結果だ。

『魔石や魔晶石は、”大きさ”ではなく”重さ”で測っていました。』

『形状が一定でないので、大きさを測っても比較がしにくいからなのかもしれませんね。』

あぁ、なるほどね。

そうすると、ノギスみたいな測定器ではなく、ハカリが必要になるのか。

『どんなハカリが必要になるのかな?』と頭の中で考えていたら、【多重思考さん】に言われた。

『重さは【鑑定】でも【魔道具鑑定】でも分かりますので、ハカリは必要ありません。』

おお。【鑑定】で済むのか。

それなら、何も必要にならなくて助かるね。

魔晶石の大きさ(=重さ)の測り方が分かったので、改めて【多重思考さん】に依頼をする。

魔晶石の大きさ(=重さ)によって、どのくらいの魔力を充填しておけるのかをね。

よろしく頼んだよー。(←いつもの丸投げ)


おやつの時間が終わり、シルフィが部屋に戻って行く。

今回も「頑張ってお仕事して来ます。(キリッ)」と俺に言ってから、自分の部屋に向かった。

シルフィのMND(Mind)の値を上げた事が、良い影響を与えているみたいだね。

俺はシルフィの様子に満足して、検討中の魔道具の改良内容を考えることにした。


今、俺は、メイドさんたちへの”ゴマスリ”の為に、『高所こうしょ作業用の魔道具』を作っている。

この王宮の建物は天井が高いから、高所作業がそれなりに有る。

メイドさんたちの安全の為になる魔道具を作ってプレゼントすれば、メイドさんたちの俺への評価が上がるだろうと考えてのことだ。


実験をしてみたら、おもいのほか、魔力を消費してしまう事が分かったので、魔力の消費量を抑える方法を考えないといけなくなった。

魔力の消費量が多いのは、【ブロック】で空中に足場を作る回数が多い事が原因の様だった。

足場を作るのは作業をする場所だけにして、空中での移動には【フライ】を使った方が、魔力の消費量を抑えられる気がする。

でも、【フライ】は操作が難しい気がするんだよね。

前後左右と上下にも動けるのは良いのだが、そのぶん自由度が高過ぎて、操作がめんどくさくなりそうに思う。

【レビテーション】で浮いて、【ブロック】を蹴って空中を移動する方が、操作は楽かな?

全く経験の無い人に【フライ】を使わせるよりは、そっちの方が操作が楽そうだよね。

チラリと脳裏を、立体機動で巨人をほふるメイドさんの姿がよぎりましたが、もちろん気の所為せいです。


変な幻視げんしを、頭の中から振り払い、検討を続ける。

【レビテーション】の他に、さらに【軽量化】の魔法を併用すれば、魔力の消費量をさらに減らせるかな?

いや、【軽量化】の魔法まで使ってしまうと、空中で姿勢をたもったり、移動したりするさいに戸惑ってしまうことになるかな? 普段と勝手が違くて。

いっその事、機能をガッツリと減らして、ハシゴから誤って転落してしまった時に【レビテーション】でゆっくりと床に降ろす機能だけにしようかな?

それなら、俺が変な不安をいだかなくて済むだろう。

立体機動をするメイドさんなど存在しないのです。


うーーん。

考えがまとまらないねー。(遠い目)


『ちょっと、いいでしょうか?』

俺が遠い目をしていたら、頭の中で【多重思考さん】から声を掛けられた。

『魔晶石の重さと魔力量の関係の調査が終わりました。』

おお。意外と早かったな。

いや、俺の方の作業がとどこおっていただけデスネ。(ドンヨリ)

『魔晶石1g当たりに充填できる魔力量は、約50でした。』

『直径1cmの球状の魔晶石の重さは2gでしたので、『直径1cmの魔晶石の魔力量が”100”』だと覚えておくと、分かり易いかもしれません。』

『直径2cmの魔晶石なら魔力量が”805”ですので、この大きさの魔晶石ならば、一応、本体ほんたいさん(=俺のこと)が作ろうとしている魔道具は作れると思います。』

そう【多重思考さん】が教えてくれて、俺が作ろうとしていた魔道具が作れそうな事が分かってホッとした。

ホッとしたのだが、”一応”ってところに少し引っ掛かったので、訊いてみる。

『”一応”っていうのは?』

『直径2cmの魔晶石を作るのには、それなりの数の魔石が必要になります。その為、多くは作れないでしょう。』

『それと、”800”もの魔力を充填できる人は、この王宮には本体ほんたいさん(=俺のこと)以外には居ませんので、魔道具が有っても、日常的に使う事は不可能です。』

ガーーン。

そんなー。

企画きかくだおれ”確定ぢゃないですかー。かー。かー。

いや、【フライ】を使うことで魔力の消費量を減らせば何とかなるかな?

それで魔力の消費量を減らせたとしても、せいぜい半分くらいかな?

やっぱり、『魔力を充填できる人が居なくて使えない』って事になるのかな? なりそうだね。

ダメっぽいね。

ダメだね。

ガックリです。

「はぁぁぁ。」

長い溜息ためいきが出た。


落ち込んでいる俺に【多重思考さん】が話を続ける。

『【製作グループ(多重思考された人(?)たちのうちの、物品製作をしているグループ)】が女性によろこばれそうな魔道具を作りました。ご覧ください。』

コトリ

【無限収納】からテーブルの上に出されたソレを見る。

長さ5cmほどの、ガラスで作られたT字型の物だ。

T字型のヒゲソリを小さくして、少し太くした様な形をしている。

そして、Tの字の一番下になる部分に魔晶石が一つ取り付けられている。

ただそれだけの、とてもシンプルな物だ。

うん。シンプル過ぎて、どんな魔道具なのかサッパリ分からないね。

説明プリーズ。

頭の中で【製作グループ】のうちの誰かが説明してくれる。

『これは、毛穴の汚れを取り除く魔道具です。【吸着】により毛穴の汚れを安全確実に取り除きます。Tの字の横棒部分はヒゲソリの要領で広い範囲の毛穴の汚れを取り除きます。両端部分は小鼻こばな用です。さらに弱い【ヒール】も掛けてお肌の状態を改善。女性たちによろこばれることいですぜ、ダンナ。』

誰がダンナかっ。

思いの外、ノリノリな説明だった。(苦笑)

それはそれとして。

たしかに、メイドさんたちによろこばれそうな物だね。

プレゼントするのはいいけど、先ほど問題となった”魔力の充填”はどうなのかな?

魔力を充填する方法も考えておかないと、『魔力を充填できる人が居なくて使えない』って状態になりかねないよね。

…別にトラウマになんてなってないですよ?(←誰に言ってるんだろうね?)

そう思っていたら、テーブルの上に魔晶石の付いた板状の物が置かれた。

手に取って、それを見る。

横長よこながのその木の板には、T字型のみぞが三つられていた。

先ほどの魔道具がちょうどまりそうな大きさだ。

Tの字の溝の一番下になる部分には、細い線状の銀色の金属が埋め込まれていて、板に取り付けられている魔晶石に繋げられている様だ。

魔晶石からは別の方向にも細い線状の銀色の金属が出ていて、その先にも、何かを置く為にある様なみぞられていた。

『これは、先ほどの魔道具に魔力を充填する為の魔道具です。』

『T字型の溝には、先ほどの魔道具を三つ置けます。別の溝には魔石を置き、魔石から魔力を吸い出して魔道具に充填します。また、周囲からも魔力を集めて魔晶石に溜めておけます。』

『魔道具の魔力の消費量はそれほど多くないので、これで十分に長期間の使用が可能です。』

『また、魔道具に魔力を充填する際には、自動的に【クリーン】が発動して、魔道具を綺麗にします。』

ほう。

いいね。

やたらと気配きくばりがされていて、何だか負けた様な気分になりますがっ。

くそう。


それはそれとして。

試しに、この魔道具を使ってみるか。

手に持ち、「起動。」と言って魔道具を起動させる。

見た目には何の変化も無いが、起動しているのだろう。

ヒゲソリの要領で、ほおを軽くでてみる。

ガラスのひんやりした感触と、なめらかな感触がする。

数回(ほお)でてから魔道具を見てみると、毛穴の汚れがくっ付いていた。

小鼻の部分も試してみる。

しばし、スリスリぐにぐにとこすりり付けてから、魔道具を見る。

………………。

コウカハ、バツグンダッ。(←何故かカタコト)

『魔道具に付いた汚れはどうしたらいいのかな?』と思ったら、『ハンカチで拭き取ってください。』とのこと。

つい、魔法で何とかする方法を考えてしまったが、魔法で綺麗に取り除こうとすると、そのぶん魔力を消費してしまうからね。

ハンカチででも拭いてもらえばいいよね。

「停止。」と言って魔道具を停止させてから汚れをハンカチで拭き取って、ハンカチと魔道具に【クリーン】を掛けた。

うん。これはいいね。

これはメイドさんたちによろこばれそうだ。

よし。この魔道具をメイドさんたちにプレゼントしよう。

頭の中に、ドヤ顔をしている様な雰囲気を感じますが、放置します。

ちょっとくやしいので。

くそう。


自分用に一つ確保してから、魔力充填台(←今考えた仮称かしょう)に魔道具を三つセットして、魔石も置いて、ニーナを呼んで使い方を説明した。

一通ひととおり説明してから、「メイドさんたちへのプレゼントだよ。皆で使ってね。改善点なんかが有ったら教えくれると助かる。」と言って、ニーナに渡した。

魔道具を受け取ったニーナは、礼を言った後、笑顔で部屋を出て行った。

メイド長に報告しに行くんだろう。

よろしく頼みます。

俺の好感度を上げる為に。(←とても重要なことです)


今日はもう、あの魔道具だけでいいよね。

『高所作業用の魔道具』の方は、明日、また考えよう。

今日はもう考えたくないやー。負けた様な気がして。(うじうじ)

そう思って、俺はソファーでダラァーっとした。


ふと、『まだ、夕食まで時間が有るなぁ。』とか考えたら、お風呂に入りたくなった。

隠れ家に行って、お風呂に入って、また戻って来るくらいの時間は有りそうだ。まだ明るいから。

よし。お風呂に入りに隠れ家に行こう。


ニーナは居ないので、ケイトに一言ひとこと断る。

「ちょっと出掛けてくる。夕食までには帰って来るね。」

「はーい。」

ケイトのお気楽きらくな返事を聞いて、俺は隠れ家に転移した。


隠れ家に転移して来てから気が付いたのだが…。

『ちょっと出掛けてくる。』と言った俺に、ケイトはお気楽に返事をしただけだったのだが、護衛としてそれはどうなのだろう?

ちょっとだけ納得できないものを感じたけど、ケイトは割といつもこんな感じなので、深く考えるのはやめました。


さぁ、お風呂だ。


(設定)

魔晶石の重さと魔力量

魔晶石の比重:3.85 (ルビーより少し軽い)

直径1cmの球体(0.52cm3)の魔晶石の重さ:2.0g

重さ1g当たり充填できる魔力量:50 (ナナシ製作の不純物を取り除いた魔晶石の場合)


重さ2gの魔晶石に充填できる魔力量:100

(=直径1cmの球体(0.52cm3)の魔晶石の重さ:2.0g 魔力量:100)


直径1.5cmの球体(1.77cm3)の魔晶石の重さ:6.8g 魔力量:340

直径2.0cmの球体(4.19cm3)の魔晶石の重さ:16.1g 魔力量:805

直径2.5cmの球体(8.18cm3)の魔晶石の重さ:31.5g 魔力量:1575

直径3.0cmの球体(14.14cm3)の魔晶石の重さ:54.4g 魔力量:2720

直径4.0cmの球体(33.51cm3)の魔晶石の重さ:129.0g 魔力量:6450


魔力(MP)が多いと言われる人で100くらい。

200を超えると、かなり多いと言われる。

直径1cmの魔晶石に魔力を充填するだけでも、かなり大変。

それよりも大きな魔晶石に魔力を充填しようとすると、一人では無理です。

ナナシは常識外ですが。

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