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姫様を助けたのは失敗だったが、割と好き勝手に生きています。  作者: 井田六
第十二章 異世界生活編07 新・新生活編
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< 14 新・王宮での生活13 ナナシ、シルフィに贈った魔道具の働きを披露する >


「今日はこの魔道具の働きを教えてほしいと、昨日の夕食の時に言いましたけど憶えていますか?」


朝食時。

そう言われてシルフィを見ると、俺が贈ったネックレスを軽くかかげながら俺を見ていた。

ああ。シルフィに贈った、シルフィの身を守る為の魔道具の件ね。

「うん。憶えてるよ。」

「………。」

『憶えてるよ。』と言ったのに、疑わしそうな目でシルフィに見られてしまった。

せぬ。

「昨日の夕食の時のナナシさんは、寝ているみたいでしたよ?」

「ちゃんと憶えてるよ。寝てたけど。」

そう正直に答えたら、呆れた様な表情をされてしまった。

ちゃんと憶えてますよー。

今朝、【多重思考さん(多重思考された人(?)たちのリーダー)】に聞いたからね。


朝食を済ませた後、部屋に戻ってシルフィと食後のお茶を楽しむ。

そんな俺に、ニーナが今日の予定を教えてくれた。

確認する様な感じだったので、昨日の俺の様子は、ニーナから見ても普通ではなかったのだろう。

昨日は『着せ替え』でグッタリしてしまって、夕食前に寝てしまった。

夕食は、寝ている俺の体を【多重思考さん】が操作してくれて済ましたそうなのだが、これまで何度もそうしていたので、すっかりバレてしまう様になっちゃったみたいだね。

でも、これからは【精神疲労耐性】さんが仕事してくれるはずなので、昨日の様に『着せ替え』でグッタリしてしまうことはもう無いだろう。…多分たぶん

いまいち、大丈夫な気がしませんが、大丈夫だと信じています。


お茶の時間を終えた後、ケイトとニーナに先導されて、王宮内を移動する。

シルフィは、もちろん俺の腕にべったりしています。

階数かいすう以上に階段を降りて、地下の一室までやって来た。

地下まで来たのは初めてだね。

この部屋は、メイドさんたちの訓練場だとニーナが教えてくれた。

中に入ると広いいたで、天井の低い体育館の様な感じがする空間だった。

地下なのに、思いのほか広い空間が在ったので、思わず「ほおぉ。」と声が出た。

シルフィも俺の隣で「ほおぉ。」とか言っています。

奥の方では、訓練着を着たメイドさんらしき人たちがストレッチをしているのが見える。

壁には、木剣ぼっけん木槍もくやりなど、様々な訓練用の武器らしき物が掛けられている。

如何いかにも訓練場って感じがします。

ふむふむ。

魔道具の働きを見せるのに、たてとか木槍もくやりとかが必要だと思うので、ここだと都合が良さそうだ。

必要そうな物を探してくれる様に、頭の中で【多重思考さん】に頼んでおく。


王妃様が来た。魔術師っぽい人たちを数人連れて。

「おはよう。今日はよろしくね。」

「はい。」

さぁ、やるか。


ず、魔道具の説明をしようか。

初めて見る人も居そうだからね。

「これからする実験について説明しますね。」

「これから実験をするこの魔道具は、シルフィの身を守る為に結界を張ってくれるものです。」

「張る結界は、【物理無効】と【魔法無効】。それと、調節された【遮音】と【遮光】と【リフレクション(熱)】です。」

「物理攻撃と魔法攻撃は無効化し、大きな音や強い光と火傷やけどしそうな熱からも身を守ってくれます。」

「これから、【物理無効】と【魔法無効】。それと【リフレクション(熱)】の実験をします。」

「大きな音と強い光は、この場所ではどうやって実験したらいいのかよく分からないので省略したいと思います。それほど重要な物でもありませんし。」

「それでいいですよね?」と王妃様に訊くと、「ええ。いいわよ。」と言ってくれた。

「ぢゃあ、実験を始めますね。」


【多重思考さん】から【無限収納】経由で、この訓練場に有ったたてを受け取り、シルフィに渡してかまえてもらう。

俺は木槍を持って、説明する。

「これからこの槍でシルフィの持つ盾を軽く叩きます。」

「【物理無効】が働いていれば、当たった感触はしないはずで、音もしないはずです。」

「ですが、盾が結界の範囲外かもしれませんので、【物理無効】が働かないかもしれません。」

「ちょっと、やってみます。」

木槍で、シルフィが構える盾を軽く叩く。

カツ

音がした。

結界の範囲外みたいだね。

結界は身体の表面に沿う様に張っているはずなので、これは予想してた通りだ。

「シルフィ、手応てごたえは有った?」

「はい。」

「盾では、結界の範囲外になってしまう様です。」

シルフィから盾を受け取って【無限収納】に仕舞い、新たにガントレットを取り出して、シルフィの手に装着した。

そして、王妃様たちに「これなら、結界の範囲内になると思います。」と言って、実験を続ける。

シルフィに、ガントレットを装着した手を構えてもらう。

「いきます。」

木槍でガントレットを軽く叩いた。

音がしなかった。

王妃様が連れて来た魔術師さんたちから「お?」と小さい声が上がった。

「シルフィ、手応てごたえは有った?」

「いえ、何も。」

魔術師さんたちがざわついている。

「もう一回、やります。さっきより少し強めに。」

もう一度、シルフィに構えてもらって、さっきよりも少し強く木槍でガントレットを叩いた。

やはり音はしない。

「やっぱり、手応えが有りません。」

シルフィが嬉しそうに、そう言う。

「音がしないぞ。」、「本当に無効化しているんじゃないか? あれは。」、「すげぇ。」

魔術師さんたちが、ざわついています。

「【物理無効】の確認はこれでいいですよね?」

王妃様に訊く。

「ええ。いいわよ。」

王妃様にそう言ってもらえたので、次は【魔法無効】の確認をしよう。


「ぢゃあ、次は【魔法無効】の確認をしますね。」

「ガントレットに向けて【ウォーターボール】を撃ちます。【魔法無効】の結界に当たると、消滅するはずです。」

シルフィには、先ほどと同様にガントレットを装着した手を構えてもらい、ガントレットに向けて魔法を放つ。

「【ウォーターボール】。」

小さい水の球が飛んで行き、ガントレットに当たるか当たらないかのところで、水の球が消滅した。

「「「おおっ!」」」

魔術師さんたちには、魔法の方が反応がいい様です。

魔術師さんたちの反応が心地ここち良いね。(うむうむ)

「シルフィ、何かが当たった様な感触って有った?」

「いえ、何も有りませんでしたよ。」

うむうむ。上手くいってるね。

もう一度、同じ事をして、【魔法無効】の効果を確認してもらった。


「ぢゃあ、次は【リフレクション(熱)】の確認をしますね。」

魔術師さんの一人に協力してもらい、シルフィから少し離れたところに立ってもらう。

「これから二人の間に【ファイヤー】で火を起こします。」

「火の温度を上げても、シルフィには熱の影響が無い事を確認してもらいます。」

「二人とも、熱く感じたら火から離れてくださいね。いいですか?」

「分かりました。」

「分かった。」

二人から了解の返事を受けて、二人の間に【ファイヤー】で火を起こした。

魔力を上げて、火の温度を上げる。

「シルフィ、熱くない?」

「熱くないですよ。」

「魔術師さんは熱くないですか?」

「少し熱い。」

「温度を上げます。熱かったら、火から離れてくださいね。」

さらに魔力を上げて、火の温度を上げる。

火が放つ光が強くなり、やや黄色っぽく見える様になった。

「熱い。」

そう言って、魔術師さんが二歩ほど火から離れた。

「シルフィは、熱くない?」

「熱くないです。暖かい感じです。」

「温度をさらに上げます。熱かったら、もっと火から離れてくださいね。」

そう言ってから、さらに魔力を上げて、火の温度を上げた。

さらに火が放つ光が強くなり、白っぽく見える様になった。

「熱い。」

そう言って、魔術師さんが、さらに数歩すうほ火から離れた。

他の魔術師さんたちからも「うわ。」とか声が上がった。

「もういいわっ。」

王妃様にそう言われたので、火を消した。

火を消したら、「ふぅ。」とか「ほぅ。」とか言う声が、魔術師さんたちの方から聞こえた。

ちょっと、熱くしぎたのかな?

俺にも【リフレクション(熱)】の結界が張られているから、よく分かりませんでした。ちょっと失敗したかもしれないね。(てへ)

「シルフィは、どうだった? 熱くなかった?」

「熱くなかったですよ。暖かい感じでした。」

シルフィは平然としている。

その様子に、魔術師さんたちはざわついている。

「どうやっているんだ?」「すげぇ。」なんて声が聞こえます。

うむうむ。(←すごく満足気まんぞくげ


王妃様の方を向いて、「こんな感じで確認になりますかね?」と訊く。

王妃様は、連れて来た魔術師さんたちに「どうかしら?」と訊いている。

魔術師さんたちも納得してくれている様子だ。

一人が手を上げて「質問していいですか?」と訊いてきた。

「どうぞ。」

「【物理無効】の効いているガントレットで盾を殴ったら、どうなるんしょうか?」

ほう。

どうなるんだろうな?

ダメージがいかないのかな?

そうだね。ダメージを与えられなさそうだよね。

面白そうだから実験してみよう。

「ちょっと実験してみましょう。(ワクワク)」

俺は【無限収納】から、さっき使った盾を取り出して、シルフィの近くで構える。

「シルフィ、ちょっとそのガントレットで盾を殴ってみて。」

「はい。」

シルフィが構える。ちょっとカワイイ。

いや、シルフィは、いつもカワイイですが。(←ノロケ)

「いきます。」

シルフィがガントレットを装着した手で、俺の持つ盾を殴った。

ガツ

音がした。

あれ? 音がしたし、手応えも有ったぞ?

「手応えが有りました。シルフィ、殴った感触って有った?」

「はい。殴った感触が有りましたよ。」

ふむ。

と、いうことは…。

「【物理無効】の結界は一方向にしか働かないみたいですね。」

結界だから当然なのかな?

身を守る為に使う物だから、当然と言えば当然なのかもしれないね。

「双方向に働く【物理無効】の結界って存在するんでしょうか?」

先ほどの魔術師さんにそう訊かれた。

うーん。どうなんだろう?

結界の外側と内側の両方に【物理無効】を付与すると、出来たりするのかな?

…出来る気がするな。

やってみよう。面白そうだから。

「結界の外側と内側の両方に【物理無効】を付与すると出来そうな気がします。ちょっと実験してみましょう。(ワクワク)」


シルフィの手に装着したガントレットでやると、実験結果が分かりにくいかもしれない。結界が複数在るから。

【無限収納】から木槍もくやりを取り出して、【物理無効】の結界を張る。結界の外側にも内側にも【物理無効】を付与して。

「今、この槍に【物理無効】の結界を張りました。結界の外側にも内側にも【物理無効】を付与して。」

「この槍で盾を叩いても、ダメージを与えられないと思います。」

【物理無効】の結界を張った木槍もくやりを、先ほどの魔術師さんに渡し、俺は盾を構える。

そして、盾を叩いてもらった。

音がしなかった。

手応えも無い。

「手応えが有りませんでした。」

「こっちにも手応えが無かった…。」

驚いた様に魔術師さんがそう言った。

なるほど。こうなるのか。

「結界の外側と内側の両方に【物理無効】を付与すると、ダメージを与えられない武器が出来てしまう様ですね。」

新たな発見だね。

使い道は無さそうだけど。

いや、訓練用の武器に使うといいのかな?

他にも何か使い道が有るのかもしれないね。今は思い浮かばないけど。


これで、シルフィに贈った魔道具の働きを確認する実験は”おひらき”となった。

王妃様からは、「素晴らしい魔道具をシルフィに贈ってくれてありがとう。」と、改めてお礼を言われた。

『俺の大切なシルフィの為ですから。(キリッ)』とか男前おとこまえなセリフを言うのは恥ずかしかったので、「いえいえ、どういたしまして。」なんて、たりさわりの無い返事になってしまいました。

男前おとこまえなセリフなんて、俺には無理ですからー。


俺の腕にべったりしてデレまくるシルフィと一緒に、部屋に帰ろうとする。

が、ケイトが居なかった。

探したら、訓練をしている人たちに混じって、組み手をしていた。

君は何しているのかなー?

君は俺の護衛だよねー?

ニーナに連れ戻してもらって、一緒に帰る。

「もう少し、訓練に参加したかったー。」とか、ケイトがブータレている。

君は俺の護衛だよね? 分かってる?

あんまり護衛っぽい事をしていないよね?

移動する時に俺の前を歩く以外の事をしていない気がするよ。

その移動についても、時々居ないしな。

昨日、工房に行った時も居なかったし。

それと、ニーナが俺に抱き着いた時もめなかったしな。

割と護衛の仕事をしていないケイトに呆れながら、ケイトとニーナの後に付いて部屋に帰った。

シルフィは、ずっとデレてました。



昼食に向かう時、俺の腕にべったりするシルフィに言われた。

「ナナシさん、【物理無効】の働きがすごいですよ。」

「ん? 何かあったの?」

「開けたドアに足をぶつけても痛くなかったんです。(ニコニコ)」

「………。」

何それ?

自分で開けたドアに、自分の足をぶつけたってことかな?

自分で開けたドアに、足をぶつけんなよ…。(呆れ)

シルフィが喜ぶ様子を見ると、今まで何度もぶつけていたのかな?

それってどうなのかな? どうなのかなっ?

シルフィのステータスをいじったから、器用度とかも上がっているはずなんだけどね。

シルフィの残念()は、俺が思っていたよりもうえだったみたいだ。

まぁ、シルフィが喜んでくれているなら、それでいいかー。

追及するのはめておいたほうが良い様な気がするしねっ。(苦笑)


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