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姫様を助けたのは失敗だったが、割と好き勝手に生きています。  作者: 井田六
第十二章 異世界生活編07 新・新生活編
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< 09 新・王宮での生活08 ナナシ、杖を作る00 それと、「ニーナ、恐ろしい娘!」 >


朝食後。

俺にべったりするシルフィをなでなでしながらお茶をして、シルフィがドナドナされて行くのを見送った。

うーーむ。

毎回毎回、シルフィがドナドナされて行くのを見送るのは、気が滅入めいってしまうから、何か対策を考えないといけないね。


でも、一先ひとまず、それは置いておいて。

先に、昨日失敗した、冒険者ギルドに行く用事を終わらせたいね。

何故なぜ失敗したのかな?

俺は、普通にお願いしただけだったよな?

高圧的にお願いした訳でもなかったし。

うーーむ。

考えるが、裏口からリリースされた原因がよく分からない。

俺の『常識の無さ』が原因なのかもしれないな。

そうだとしたら、いくら俺が一人で悩んでいても解決しないよね。

ニーナに相談することにしよう。


ニーナを呼んで、昨日のダンジョンの在る街の冒険者ギルドでの出来事を話して、何が失敗だったのか訊いた。

俺の話を聞いたニーナは、呆れた様な笑った様な怒った様な、何とも微妙な表情をした後、溜息ためいきいてから説明してくれた。

「貴族が一人で、馬車に乗らずに歩いて冒険者ギルドを訪れるなんてことは、普通はありません。」と、言われた。

普通は、本人は行かずに使いの者に行かせて用事を済ませるのだそうだ。

かりに本人が行くとしても、事前に使いの者に行かせて約束を取り付けておく。

公爵の様な高位貴族ならば、尚更なおさら一人で訪れることなどないのだそうだ。

「グラストリィ公爵と言えば、姫様の夫で王宮に住んでいらっしゃるのですから、そう名乗ったとしても、ご本人だとは思われないでしょう。わざわざ王都から離れた街の冒険者ギルドに行く用事なんて思い浮かばないでしょうし。」

「グラストリィ公爵は、最近、爵位を与えられたばかりで、あまり顔を知られていません。その為、名前をかたるのには都合が良いですから、怪しい男がグラストリィ公爵の名をかたって訪ねて来たと思われたのでしょう。」

なるほどねー。

そう言われれば、確かに本人だとは思ってもらえないかもしれないね。

「イタズラにしては頭が悪過わるすぎますし、かと言って高圧的な態度で何かを要求する訳でもない。訳が分からなくて、受付の人も対応に困ったと思いますよ。(クスクス)」

ニーナに、そんな事まで言われた。

すみませんねー、訳が分からなくてー。

ぐぬぬん。

不本意だが、原因は分かった。

では、どの様にすればいいのかな?

使いの者を行かせて約束を取り付けてから、その後で馬車で向かうの?

王都から遠いから、何日も掛かるよね。

すっごく、めんどくさいよね。


「私がご一緒して話を付けましょう。そうすれば大丈夫です。」

ニーナがそう言ってくれた。

自信満々な態度が頼もしいです。

ニーナが一緒に行ってくれるだけで大丈夫なら、【転移】魔法を使って用事を済ませられるね。

それなら、何日も掛かるなんて事はなく、半日も掛からないね。

うん。それでお願いしよう。

ニーナに一緒に行ってくれる様にお願いして、ニーナと、護衛としてケイトも一緒に行くことになった。


「そうなると、お着替えをしないといけませんね。(超ニッコリ)」

ニーナは、すごくイイ笑顔でそう言う。

「…ソ、ソウダネ。(げんなり)」

一方の俺は、げんなりしてしまいますが。

「午後は、手伝いに来られるメイドが少ないので、午前中に行きましょう。(ニッコリ)」

そう言うニーナに、俺はすかさず、「午後でお願いします。」と言った。

あまり人が多いのは、うんざりするからね。

こうして昼食後に、再びダンジョンの在る街の冒険者ギルドに行くことになった。



ソファーでくつろぎ、ダラァーっとする。

午前中はダラァーっとして居よう。

昨日は、のんびりと過ごそうと思ったのに、あまりのんびりしなかったからね。

うん。そうしよう。

そう思って、のんびりする。


ふと、つえの事を考えた。

昨日、ダンジョンの在る街のお店で見た、魔術師の杖の事を。

『何の為に持つのか?』とか、『どんな風に使うのか?』とかね。

誰かに訊いてみようかな?

ボッチぢゃないから、教えてくれる人が居るだろう。何処どこかの部署に。

そう。ボッチぢゃないから。(←誰に言ってるんだろうね?)


ニーナに相談する。

「魔術師の使う杖について知りたいから、詳しい人を紹介してほしい。」とね。

「分かりました。訊いて来ますね。」

そう言って部屋を出て行こうとしたニーナだったが、ドアの前で立ち止まり、こちらに引き返して来た。

「ナナシ様。ナナシ様に引き取っていただきたい物が有りますので、一緒に行きましょう。」

「え? 引き取っていただきたい物?」

「はい。その…、腕…です。ナナシ様の。」

…ああ。あれか。

俺が起こした”騒動”の時のアレだね。

そうか、取って置いてくれていたのか。

引き取っても使い道は無いが、引き取らないと保管している方も迷惑だよね。どう扱っていいのか分からなくて。

引き取らないといけないよね。

「分かった。」と言って、ニーナと一緒に部屋を出た。



ニーナと一緒に”工房”とやらに来た。

ニーナは偉そうな人と何やら話をした後、「倉庫に行きますよ。」と言うので、俺は大人おとなしくニーナの後に付いて行く。

”倉庫”とやらでも、そこに居た職員らしき女性と何やら話をした後、三人で倉庫の中に入った。

”倉庫”の中は棚がいっぱいで、その棚は、多くの箱で埋まっていた。

うーむ。ここには何が有るのかな?

魔道具とかかな?

ちょっとワクワクしてしまう。

俺がワクワクしていたら、頭の中で【多重思考さん(多重思考された人(?)たちのリーダー)】が、『魔道具が沢山たくさん有る様です。』と教えてくれた。

ほうほう。魔道具ですかー。(ワクワク)

そして、『ちょっと調べておきますね。』とも言ってくれたので、そちらの方は【多重思考さん】にお任せしておこう。

全部調べるのは大変だからね。

頼んだよー。(←久しぶりの丸投げ。)

作業台らしき物の前に来たら、女性に「こちらで少々お待ちください。」と言われたので、ニーナと大人おとなしく待つ。

ニーナが俺の胸元をジッと見るので、体をスッ、スッ、と動かしたりした。

もちろん、ニーナが怒り出す前にめましたが。(←初めからやらなければいいだけの話です。)


しばらく待つと、女性が箱を持って戻って来た。

女性が、箱を作業台に置いてフタを開けると、中には腕が二本(はい)っていた。

自分の腕をこんな状態で見るのは初めての経験なので、何とも言えない気分になるね。

箱の中は、ひんやりとしている。

冷蔵庫(てき)な魔道具なのだろう。

俺は、腕をササっと【無限収納】に仕舞い、箱に【クリーン】を掛けた。

保管しておいてくれたことに礼を言って、ニーナを連れて倉庫を出た。



「会議室に行きます。そこで、魔術師の杖について詳しい人から話を聞きましょう。」

そう言うニーナのあとを、大人おとなしく付いて行く。

よく分からない場所だからね。大人おとなしくもなるよね。

別に、ニーナが怖いからではありません。(←どう見ても怖がっている人の発言です。)

「先ほどのは、転移魔法ですか?」

歩きながらニーナに訊かれた。

『先ほどの』とは、腕を【無限収納】に仕舞った件だろう。

体をスッ、スッ、と動かしたりした件ではないはずだ。(ビクビク)

さて。何と答えたものかな?

転移魔法でいいかな? 転移魔法でいいよな。

「…そうだよ。」

「そうですか、転移魔法ではないのですね。」

「ひとの話を聞こうか、ニーナさん。」

「少し””が有りましたので。(キッパリ)」

ぐぬぬ。

「と、なると、【マジックバッグ】と同様の空間魔法なのでしょうね。【マジックバッグ】を作れるのですからね。」

「………。」

取り敢えず、黙っておこう。

黙っている俺にかまわず、ニーナは話し続ける。

「意見が三つに割れていたので、判明して良かったです。『転移魔法』派と『空間魔法』派と『さすが、ナナシさんです!』派と。」

「最後のはシルフィだよね? 最後のはシルフィだよね! それって『意見が三つに割れる』とは言わないよね!」

ツッコミを入れる俺にかまわず、ニーナは話し続ける。

「”バッグ”が不要な【マジックバッグ】となると、容量ってどうなっているのでしょうか? 制限が無くなっていたりするんですかねぇ?」

何をおかしな事を。そんな事ある訳ないぢゃん。ははははは。

「…ソンナワケナイヂャン。」

「なるほど、無制限ですか。流石さすがですね。」

何?! この

ニーナ、恐ろしい

「オークキングは新鮮でしたね。時間を止められたりもするんですかねー?」

ニーナの声が少しはずんでいます。

楽しくなってきたのだろう。

こっちは、どう答えたものかなやんでしまうんですが!

「………………。」

俺はかいになる事にした。

「なるほど、時間も止められるんですね。(ニッコリ)」

何で分かるのかなっ? 何で分かるのかなっ?!

俺は背中にジットリと汗を掻いているのを感じた。

ニーナ、恐ろしい


会議室に着いた。

ニーナは、「魔術師の杖について詳しい人を連れて来ますね。」と言って、来た廊下を戻って行った。

「ふぅぅ。」

何となく溜息ためいきいてしまった。

ニーナと少し話しただけで、色々とバレてしまった所為せいだね。

ニーナ、恐ろしい

背中に嫌な汗を掻いてしまったので、体に【クリーン】を掛けて、椅子に座って待つ。

「ふぅぅ。」

もう一度、溜息ためいきが出た。


待っている間に、杖を作る材料が在るか【無限収納】の中を確認しておこうか。

【無限収納】の中を確認する。

木材は、いっぱい在るね。

むしろ、いっぱい在り過ぎて、軽く引いた。

軽く引く俺に、頭の中で【多重思考さん】が説明してくれた。

『花畑を…『分かった。』』

俺は、【多重思考さん】の説明を途中でさえぎった。

森で行われている環境破壊から、目をそむけていたかったから。(←そむけんなや。)


木材以外の材料を確認する。

魔晶石は、魔術師の杖を作るのに要るのかな?

要る様な気がするな。

【無限収納】の中には、魔晶石も、それなりの数が在った。

魔物を狩って魔石を手に入れて、それを加工して作ってくれていた様だ。ありがとうございます。

木材と魔晶石が有れば、魔術師の杖は出来そうな気がするね。

…そもそも、何に使う物なのかすら知らないのに、俺は何を言ってるんだろう。

まぁいいや。

ついでに、【無限収納】に中に在る物に、一通ひととおり目を通しておいた。


ニーナが戻って来た。

杖を持ち、ローブを着た、魔術師っぽい女性を連れて。

そのオネーサンは、オリヴィアと名乗り、「何でも訊きな。」と言う。

姐御あねごっぽい雰囲気に頼もしさを感じます。

よろしくお願いします。

オリヴィアさんに、色々と質問させてもらおう。


オリヴィアさんに訊いたところ、魔術師の杖は、魔法を溜めておくのに使うのだそうだ。

溜めておいた魔法は、簡単な”ワード”で発動させることが出来て、その発動には魔力を消費しないとのこと。

その為、魔力に余裕が有る時に魔法を溜めておいて、魔法が必要になった時には、杖に溜めておいた魔法から使うのだそうだ。

特にダンジョンに行くのには、絶対に必要な装備だと言われた。

だから、ダンジョンの在るあの街でも、それなりの数が売られていたんだね。

杖に必要不可欠な素材は魔晶石だけで、『杖である必要も、本当は無い。』とのことだった。

しかし、杖を持っていないと、低レベルの魔術師と思われてしまうのだそうで、駆け出しの魔術師は、お金を貯めて杖を買うのを初期の目標にするのだそうだ。

そう言われて、ふと、思い当たる事があった。

街で冒険者のパーティーに勧誘されたのって、杖を持っていなかったから駆け出しの魔樹師だと思われたからなのかな?

そうだよね。

皆、やたらと”上から目線”だったしね。

なるほど、納得だね。

なら、杖を持っていれば、勧誘される事が少なくなっていたのかな?

『魔術師レベルが低い様に見せ掛けていれば勧誘されないだろう。』と思っていたのに、実際はそうでもなかったからね。

失敗だったね。

もっと早く知っていれば、怪我をする冒険者が少なくなっていたかもしれないね。

でも、そんなことを俺に教えてくれる人って居なかったのだから、仕方が無いよね。

みんなボッチが悪いんです。俺が悪いんぢゃありません。

いや、高圧的にパーティーに加えようとしたバカが悪いんだね。

うん。”俺”も”ボッチ”も悪くなかったね。

よかったよかった。うん。


魔術師の杖について、色々と話を聞けた。

オリヴィアオネーサンにお礼を言う。

「また何か困った事が有ったら、私に訊きな。」

そう言って、オリヴィアオネーサンは会議室を出て行った。

うん。頼もしい。

ありがとうございました。


よし。

部屋に戻って、杖を作るぜ。


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