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姫様を助けたのは失敗だったが、割と好き勝手に生きています。  作者: 井田六
第十二章 異世界生活編07 新・新生活編
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< 08 新・王宮での生活07 ナナシ、ダンジョンの街の冒険者ギルドに行く01 >


ソファーでダラァーっとしています。

”こたつの失敗”と”ネコ型ゴーレムの失敗”で、絶賛落ち込み中です。

「はぁぁぁ。」

何度目かの長い溜息ためいきが出た。


「あ。」

ゴーレムで思い出した。

ダンジョンの在る街の冒険者ギルドに行く用事が有ったね。

ダンジョンで得た物を売りに出して、それを見た冒険者たちが、一獲千金を狙ってダンジョンに押し寄せる様になるのを期待してね。

ゴーレムで思い出したのは、ミスリルゴーレムの腕を売ろうと思っていたからだ。

全身分が【無限収納】の中に有るんだけど、腕だけを売りに出せば、『ミスリルゴーレム本体がダンジョンにまだ居る証拠』と気付いてくれることを期待してね。

しかも、腕を切断する事が可能な事の証明にもなるから、冒険者たちをダンジョンに呼び込む効果を考えれば、”全身”よりも”腕だけ”の方がイイよね。


さて。

俺は冒険者ギルドに登録していないし、する気も無い。

『冒険者ギルドに登録していないと素材を買い取ってもらえない』ことは、既に経験済みだ。

しかし、貴重な素材を持っているから、交渉すれば買い取ってもらえるだろうと思っている。

コカトリスの素材なんかは、ギルドに依頼が複数出されているのに長い期間そのままになっていると、【多重思考さん】たちが調査をしてくれて、分かっているからね。

でも、それだけでは不十分かもしれない。

ここは、貴族であることも活用することにしよう。

貴族っぽい格好をして行って交渉すれば、より成功確率が上がるだろう。


ニーナに相談する。

「ちょっとした交渉に出掛けるので、貴族っぽい服装をしたい。」と。

「準備に少々お時間が掛かります。外出はおやつの後にお願いします。」

ニーナにそう言われた。

ふむ。ぢゃあ、出掛けるのはおやつの後にしよう。

「今日のおやつは楽しみにしていてください。昨日いただいたハチミツを使ったおやつです。私も楽しみです。(ニッコリ)」

ニーナはそう言った。イイ笑顔で。

ほう。

『ハチミツを使ったおやつ』とやらに興味が湧くね。

あのハチミツは、すごく美味しかったからね。

”準備”とやらの為に部屋を出て行くニーナを見送り、ソファーでダラァーっとした。


この時間に、冒険者ギルドに買い取りをお願いする素材を【マジックバック】に移しておくか。

コートハンガーに掛けられている【マジックバック】を【無限収納】に仕舞い、【多重思考さん】にお願いする。

すぐに『移し終わりました。』と報告が来た。

【マジックバック】を【無限収納】から手元に出した。

が、うっかり忘れて行ってしまうと困るから、【無限収納】に仕舞っておくことにしよう。

よし。後は、おやつの時間までダラダラすることにしよう。(ダラダラ)



そろそろ、おやつの時間だ。

既に部屋に来て俺にべったりしているシルフィを、なでなでする。

しばらく『シルなで』していたら、ニーナが部屋に戻って来た。

おやつを載せたワゴンを押しながら。

「おお、おやつだ。」

ニーナに『楽しみにしていてください。』と言われていたので、思わず声が出た。

テーブルに置かれた、そのおやつを見る。

アップルパイっぽい見た目のものにハチミツが掛けられている。

美味おいしそうです。(ニッコリ)

『シルなで』をめてフォークを手に取り、早速さっそく一口ひとくちいただく。

甘さを抑えたアップルパイにハチミツの甘さがガツンときて、すんごく美味おいしいです。(ニッコリ)

無言でパクパク食べて、完食しました。

うむ。満足満足。(ニッコリ)

隣を見ると、シルフィはとろけた表情で味わって食べていました。

シルフィのこの表情が見れただけでも満足だね。(ニッコリ)

笑顔の絶えないおやつタイムでした。(ニコニコ)


シルフィがドナドナされるのを見送った後。

本日二回目のえタイムです。

今回はこちらからお願いしたことだとは言え…。

「何で、こんなに人が居るんですかね?」

部屋の中は、ニーナにそう訊かざるを得ない状況になっていた。

メイドさんが、いっぱい居て。

「必要だからです。むしろ、少ないくらいです。(キッパリ)」

「ソーカー。貴族って、めんどくさいんダネー。」

「って、そんな訳ないだろっ。」

「絶対、こんなに必要無いよねっ。20人以上居るよね!」

ただ見ているだけのメイドさんの多いこと、多いこと。

着せ替え作業をしているのは四人だけで、残りのメイドさんたちは、少し離れたところから俺の体のごく一部(具体的には鎖骨)を凝視しているだけの様に見えるんですがっ。 見えるんですが!

ニーナはニーナで、俺の苦情をスルーして、「手を上げてください。」とか「もう少しこちらを向いてください。」とか「もう少し笑顔で。はぁはぁ。」とか指示してくる。

笑顔は関係無いよね?

今、やっているのは『着替え』だよね?

今、やっているのは『着替え』だよね?!

それと、『はぁはぁ。』はめてください。

他にも『はぁはぁ。』しているメイドさんの存在に、気付かない様にしているのでっ!


とてつもなく疲れる『着替え』が終わった。

『着替え』とは名ばかりの、『名状しがたき他の何か』の様に思いましたがっ。

SAN値が心配です。

グッタリです。

疲労困憊ひろうこんぱいです。

これから出掛けるというのに、大丈夫なのだろうか?

「身分証がここで、ハンカチはここです。」

そんなことを言っているニーナの声と、「馬車での移動でないのが残念です。」とか言っている誰かの声をボンヤリと聞きながら、「…ぢゃあ、行ってくる。」と言って、俺はダンジョンの在る街の近くに転移した。



街道に立っています。

少し離れたところに、街を囲む外壁と門が見えています。

ダンジョンの在る街グシククの近くです。

「はぁぁぁ。」

長い溜息ためいきが出た。

既に疲労困憊ひろうこんぱいで。


素材を入れた【マジックバック】を【無限収納】から取り出して肩に掛け、街に向かって歩く。

門まで歩き、いつもの様に街に入る手続きをしようとした。

が、特に何もチェックされずに、街の中に入れた。

『あれ? いいのかな?』と思ったが、頭の中で【多重思考さん】が『この街は出入り自由の様です。沢山たくさんの荷物を持ち込む者だけチェックが行われている様です。』と、教えてくれた。

余計な手間が掛からずに済むのは、がたいね。

身分証が立派過ぎて、あまり使いたくなかったからね。

でも、俺みたいに【マジックバック】を持っている人に対しては、ザル過ぎるよね?

緩過ゆるすぎる気もしたが、『まぁ、いいか。』と思い、俺は、【多重思考さん】たちの道案内で、冒険者ギルドに向かった。


ダンジョンの在る街なので冒険者は多かったが、何も問題が起こる事も無く、無事に冒険者ギルドに着いた。

さっさと建物の中に入る。サクサクと用事を済ませて帰ろうと思ってね。

建物の中は、以前に行った事のある冒険者ギルドとたいして変わらなかった。

カウンターが在り、依頼を貼り出す掲示板が在り、酒場が併設されている。そんな、異世界モノによくあるタイプだ。

カウンターの列に並び、大人おとなしく順番を待った。


順番が来た。

「ようこそ冒険者ギルドへ。どういったご用件でしょうか?(ニッコリ)」

笑顔でそう言う、受付の綺麗な女性に用件を伝える。

「は、はじめまして。(←どもった。) 私、グラストリィ公爵と言う者ですが、素材の買い取りについてギルドマスターと相談したいのですが会えますでしょうか? 今日が無理なら後日ごじつ会う約束だけでもしていきたいのですが。」

「………………。」

「………………?」

何だか、受付の女性は、驚いた様な困った様な表情をしている。

「………『素材の買い取りについて』とは、具体的にはどういった内容でしょうか?」

うーむ。『冒険者ギルドに登録をしていないけど買い取ってほしい。』とは言っていい内容なのかな?

ギルドマスターには話す内容だから言っていいのかな? いいよな。

「えーっと。私は冒険者ギルドには登録していなくて、登録する予定も無いんですけど、貴重な素材を持っているので買い取ってほしいと思って来たんです。」

「『貴重な素材』について、お聞きしてもよろしいですか?」

「ええ。コカトリスと、ミスリルゴーレムの腕ですね。」

「………どの様に入手にゅうしゅされた物なのでしょうか?」

「ダンジョンで手に入れました。」

「………どちらのパーティーに所属していらっしゃるのでしょうか?」

「いえ、パーティーには所属していません。」

「………ご自身で手に入れたということですか?」

「はい、そうです。」

「………………。」

「………………。」

「………少々お待ちください。」

そう言って受付の女性は、奥へ行ってしまった。


建物の中を何となく眺めながら待つ。

しばらく待つと、「お待たせしました。こちらにお越しください。」と、後ろから声を掛けられた。

振り返ると、ギルドの男性職員らしき人が居た。

うながされるまま、その男性職員のあとを付いて、建物の奥に入って行く。


かなり建物の奥まで歩いて来た。

『結構、大きな建物なんだなぁ。』とか思いながら、男性職員の後を付いて行く。

正面にドアが見えた。

ドアのわきには、男が一人、ひかえている。

あそこがギルドマスターの部屋なのだろう。

ドアの前まで来ると、控えている男がドアを開け、男性職員に「どうぞ。」と言われたので、中に入る。

「あれ?」

なか”に入ったと思ったら”そと”だった。

何を言ってるのか分からないと思いますが、俺にも何が起きているのか分かりません。

後ろでドアが閉まる音がします。

俺、ポカーンです。

後ろを振り返り…。ドアが閉まっているのを見て、また正面を見る。

建物の外です。

薄暗い路地裏です。

あルゥぇーー?

「………………。」

これは…、アレ…かな?

『とっとと帰れ。』ってこと…なのかな?

あルゥぇーー?


うーーむ。

どうしてこうなった?

薄暗い路地裏で立ち尽くして、悩む。

うーーむ。

変な奴だと思われたのかな?

そうだろうね。

俺は、受付の女性と話した内容を思い出す。

コカトリスとミスリルゴーレムの素材を持っていると言って、でもギルドにもパーティーにも所属していないとか言ったよね。

あと、素材はダンジョンで手に入れたとも言ったな。

コカトリスは、長いこと依頼が放置されたままになっている。

きっと、難易度が高い依頼なのだろう。

それを『自分一人でダンジョンで獲って来た。』と言っている様なものだったから、怪しまれたのかな?

実際は、ダンジョンに行く事すら無く、【多重思考さん】たちがいつの間にか仕留めていたんだけどねー。今は、それはおいておきますが。

ふむ。

それ以外に原因は無いだろうね。

今の俺は、キチンとした貴族らしい格好をしているはずだし。

ニーナたちに着せ替えてもらった服装なのだからね。

一応、自分の服装を確かめる。念の為にね。

ニーナたちが、何か”おふざけ”をしたとか疑ってる訳ではナイデスヨー。

確かめたところ、服装にはおかしいところは無かった。(ホッ。)

やはり、受付の女性と話した内容が問題だったのだろう。

その所為せいで、変な奴だと思われたのだろうね。まったく自覚は無かったけど。

で。変な奴だから普通に拒否して暴れられると困ると思って、裏口からリリースした。と。

ふむふむ。ほうほう。

ちょっとムカついた。(黒い笑顔)

納得は出来ないし、不本意だが、もう一度行ったところで、事態が悪化するだけだろうね。

仕方が無い。

腹は立つが、後日ごじつ出直でなおすことにして、今日は帰るか。

ギルドの建物をかす訳にはいかないからね。フフフフフ。(悪い笑顔)


せっかくの外出なので、街を見たり、買い物したりしてから帰ろう。

うん。そうしよう。

「はぁ。」

一つ、溜息ためいきいてから、おもてどおりまで歩いて行った。


表通りを歩く。

通りには冒険者(ふう)の者が多い。

お店も、冒険者向けの商品を扱うお店が多い様だ。

お店を見ながらブラブラ歩いていると、頭の中で【多重思考さん】に『ヒモを買って下さい。』と言われた。

『ん? ヒモ?』

【多重思考さん】に『ヒモを買って下さい。』と言われたが、何に使う物なのかさっぱり分からなかった。

『後日、また畳を作る時に必要になりますので。』

頭の中で【多重思考さん】にそう言われて理解した。

ああ、わらを縛ったり、畳表たたみおもてを縫い付けたりするのに使うんだね。

でも、今まで、ヒモを買った事って有ったっけ? 無かったよね?

『今までは、盗賊のアジトから回収したロープをほぐして使っていました。』

ああ、そうだったのか。

余計な手間を掛けさせてしまっていた様たが、ゴーレムとかは一日中いちにちじゅう活動できるから、たいした手間ではなかったのかな?

『これからは花畑の世話がありますので、そういった事に手間は掛けられなくなります。買って済ませられる物は、買ってもらうことになると思います。』

そうかー、これからは花畑の方に”手”を取られるんだねー。

花畑の世話とハチミツの採取は、とても重要だから仕方が無いよね。俺の命が懸かっているしね。

よし。ヒモを買いに行くか。


冒険者向けの商品を扱っているお店に入った。

色々な商品を眺める。

キャンプ用品を眺める様な、ちょっとワクワクした気持ちになったが、『俺が必要とする様な物って、特に無いよなー。』と気が付き、少しテンションが下がった。

大抵たいていの事が魔法で何とかなるからねー。

火を着ける道具も、水を運ぶ容器も必要無いし、荷物を運ぶリュックサックすら必要無い。

テントを張るよりも、隠れ家に【転移】する方が楽ダシネー。

そう思うと、少し残念な気持ちになった。

低いテンションのまま、かなりの長さの丈夫じょうぶなヒモを一巻ひとまき買って、お店を出た。


門に向かって通りを歩く。

こたつ布団も買わないといけなかった事を思い出いた。

でも、サイズが特殊だよな。

発注して、後日、受け取りに行く事になるよね。

自分が受け取りに行けない可能性を考えると、王都で発注すべきかな?

【マジックバック】が必要になる事を考えると、ニーナが行きやすい王都一択(いったく)か。

そうだね。この街では買えないね。

こたつ布団を買う事は諦めて、門に向かって通りを歩く。


つえを売っているお店が在った。

魔術師が持つ杖のお店の様だ。

立ち止まって、杖を眺める。

『そもそも魔術師って、何の為につえを持つんだろう?』と、今更いまさらながらそんなことを考えた。

そのことを教えてくれる人って居なかったからねー。

いや、今も居ませんが。

…ボッチぢゃないですよ。(←誰に言ってるんだろうね。)

杖は別に必要無いからいいよね。使い方を知らないけど。(←おい)

「あんた魔術師か?」

お店を離れようとしたら、そう声を掛けられた。後ろから。

また、勧誘かな? 勧誘だろうね。

相手にするのはめんどくさいよね。

よし、結界を張って、【転移】魔法で逃げよう。

そう決めて、【隠蔽】、【人除け】、【不可視】の結界を張ってから、【転移】魔法で王宮に帰った。

ふぅ。

やれやれ。



王宮の部屋に帰って来た。

「ただいま。」

「お帰りなさいませ。すぐに来ますので、少々お待ちください。」

ニーナにそう言われて、『ん? 何が来るのかな?』と思ったら、ドアがノックされ、メイドさんたちが部屋に入って来た。大勢おおぜい

「………………。」

また、大勢のメイドさんたちに見られながら、えをされました。

SAN値が削られました。

グッタリです。

疲労困憊ひろうこんぱいです。


疲労困憊ひろうこんぱいになったので、夕食までベッドにもぐんで、夕食後も、さっさと寝ました。


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