< 07 新・王宮での生活06 ナナシ、癒やし系ゴーレムを作る01 ネコ型 >
昼食後。
ソファーで、食後のお茶をしながら寛いでいます。
ですが、午前中の”こたつの失敗”で、絶賛落ち込み中です。
シルフィは、もちろん俺にべったりとしていますが、なでなでする元気はありません。
シルフィがドナドナされて行くのを見送り、ソファーでダラァーっとする。
「はぁぁぁ。」
長い溜息が出た。
ひたすら無心に、ソファーでダラァーっとする。
そう。
ひたすら! 無心に!
頭の中で【多重思考さん(多重思考された人(?)たちのリーダー)】が色々言ってくるのを、全力で無視して!
『あのままだと温度が上がり過ぎて危険だと判断して結界を解除してしまいましたが、結界が保ちさえすれば、どこまでも温度が上がったと思います。』
『もしかすると、一兆度を超えて、『〇ットン超え』を達成していたかもしれません。』
『一体、どこまで温度が上がるんですかねぇ。楽しみですねぇ。』
『もちろん、地表ではやりませんよ。実験は月でやりますので安心してください。』
『月へは、既に【目玉】を向かわせています。』
いつになくノリノリな【多重思考さん】が、無視できない事を言い出したので、流石に止める。
『実験すんな! 却下だ! 月の軌道が変わったらどうすんだよ!』
『そのくらい、魔法でどうにでもなります。(キッパリ)』
ソーカー、月の軌道が変わってもナントカナルノカー。
『それなら、って、良い訳あるか! 却下だ! 却下!』
『………仕方がありませんね。(隣の惑星で実験しましょう。(ボソッ))』
ふぅ。諦めてくれた様だ。
何かボソッっと言っていた様な気がしましたが。
危ない事を考えていた【多重思考さん】の説得を終えて、改めてソファーでダラァーっとしている。
ふと、『何か”癒やし”が欲しいなぁ。』と思った。
”癒やし”と言えば、何があるだろうか?
ぼんやりと考える。
頭の中に、ネコが思い浮かんだ。
膝の上に乗せたネコをなでなでする様子を思い浮かべる。
ふむ。ネコだな。
『膝の上に乗せてなでなでする』で、シルフィをなでなでしている様子が思い浮かんだ。
『シルなで』にも”癒やし”の効果が有るけど、あれはメイドさんたちに仲の良いところを見せる意図も少なからず有るからね。俺が死なない為に。
”癒やし”とは少し違うよね。
”癒やし”とは少し違う、もっと、”命の危険をはらんだ何か”です。(苦笑)
『癒やし=ネコ』はいいとして、王宮の部屋にネコを連れ込んではいけないだろうね。
壁を引っ掻いたり、粗相をしたりするかもしれないからね。
結界でそれらを防げたとしても、生き物だからね。
お世話をする人手が必要になってしまうよね。
ネコを連れ込むのはダメだよね。
改めて他のモノを考える。
”癒やし”になりそうな、他の何かを。
しかし、ネコ以外には、何も思い浮かばなかった。
ふと、『ネコが歩いているのを眺めているだけでも”癒やし”になるのではないか?』と思った。
それなら、ネコ型ゴーレムでもいいよね。
粗相もしないし、お世話をする人手も要らないしね。
よし、ネコ型ゴーレムを作ってみるか。
そう決めて、ネコ型ゴーレムを作る手順や材料などを考え始めた。
ネコ型ゴーレムを作る手順を考え始めると、すかさず、頭の中で【製作グループ(多重思考された人(?)たちの内の、物品製作をしているグループ)】が言ってきた。
『四足歩行ゴーレムの製作と運用の実績は有りますので、我々にお任せ下さい。』
そう言われて『おお、頼もしいな。』と思いつつ、『『ネコ型ゴーレム』の様なモノなんて作った事は無かったよな?』と思った。
少し考えて思い出した。
畑で作業をしていた、キモい四足歩行ゴーレムの姿を!
思わず、『お前たちは何もするな!』と、心の中で叫んだね。
危ないところだった。(苦笑)
改めて、ネコ型ゴーレムを作る手順を考える。
素材は小石だね。
畑を作る時に地面から取り除いた小石を【無限収納】に仕舞っておいたので、沢山有るからね。
ゴーレムを製作する為の知識を【製作グループ】から貰って、プログラムを考える。
ゴーレムを形作るプログラムを修正し、小さいネコの形になる様にする。
ゴーレムを歩かせるプログラムは、アレ以外には二足歩行の物しか存在しない様なので、ネコの歩き方を想像しながら、四足歩行のプログラムを作っていく。
障害物を避けるプログラムや、ON/OFFするプログラムを組み込み、歩行速度の上限を設定したりする。
【無限収納】から魔晶石を一つ取り出して、考えたプログラムを書き込んだ。
これで、魔晶石の準備は終了。
【無限収納】から敷物を出して、床に広げ、その上に小石をザラザラと出す。
魔晶石を一緒に置いて、ゴーレムを形作るプログラムを起動させる。
小石がネコの形に集まり、ネコ型ゴーレムが出来上がった。
ほう。
(自分では)初めてゴーレムを作ったのだが、何とかなるものだな。
ちゃんと、ネコっぽい形になっているし。
よし。
早速、歩かせてみよう。(ワクワク)
「起動。」、「歩け。」
起動させて、歩かせた。
ノテノテノテノテ
歩き方がおかしい。(苦笑)
下手くそな歩き方で、歩いて行く。
それと、後ろ脚の膝関節は逆向きだったね。
馬の着ぐるみ(人間が二人で演じるアレ)を見ている様で、何ともアレです。(苦笑)
ノテノテノテノテ
ネコ型ゴーレムは、下手くそな歩き方で壁に近付く。
『障害物を避けるプログラムがあるので、壁を避けるだろう。』と思い、下手くそな歩き方を観察しながら、歩行プログラムの修正内容を考える。
ガツ
「あ。」
「あっ!」
ネコ型ゴーレムは、壁にぶつかった。
歩き方が下手くそ過ぎて壁を避けられなかったみたいな、ワタワタした変な動きだった。
「ストップ。」
慌てて止めた。
失敗だ。
ネコ型ゴーレムを【転移】魔法で手元に移動させる。
一度、ゴーレムを解体して、魔晶石に書き込んだプログラムの修正に取り掛かる。
壁の様子を確認するニーナの方は、怖くて見れませんでした。(ビクビク)
膝関節の向きを直したり、歩行プログラムを修正したりして、再び歩かせた。
ノテノテノテノテ
やっぱり歩き方がおかしい。(苦笑)
壁にぶつかる前に止めて、再度、歩行プログラムの修正を行った。
歩かせてはプログラムの修正、歩かせてはプログラムの修正を、何度も繰り返した。
歩き方が下手くそだったり、キモかったりして、なかなか上手くいかなかった。
四本の足を順番に動かすだけではなく、胴体もそれに連動させて動かさないといけないみたいだった。
予想していたよりも大分難しかった。
十回ほど修正したが、上手くいく気がしなかったので、諦めた。
「はぁ。」
溜息を吐いて、ネコ型ゴーレムを素材に解体して、【無限収納】に仕舞った。
こうして、『ネコ型ゴーレムが歩くのを眺めて癒やされよう計画』は終了した。
ただ落ち込んだだけだった。
「はぁぁぁ。」
長い溜息が出た。
注
”ネコの後ろ脚の膝関節”は、人間の足首に相当する部分らしいです。
どの様な見た目になっているのかが分かり易い様に、こう書きました。




