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姫様を助けたのは失敗だったが、割と好き勝手に生きています。  作者: 井田六
第十一章 異世界生活編06 新生活編
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< 20 事件19 ナナシ帰る03 ナナシが不在中のナナシの部屋でのお話 >


なんてことでしょう。

こんなことになってしまうなんて…。


「最近おかしいよー。(ニコニコ)」

「…楽しそうに言わない様に。」

私は、同僚の失礼な発言に、そう言い返します。

おかしいのは、自分でも分かっています。

でも、自分ではどうしようもありません。

無意識のうちに部屋の中をウロウロしながら、思わずつぶやきます。

「…鎖骨。」

背後から『ブフォッ。』とか聞こえて来ますが無視します。


ナナシ様が姿を消されてから何日()ったのでしょうか?

分かりません。

いつ、帰って来られるのでしょうか?

もっと、分かりません。

困りました。

ああ…、鎖骨…。

あの素晴らしい鎖骨…。

ああ…、本当になんてことでしょう。


まさか、禁断症状が出るなんて!



いつになく人の少ない部屋の中をウロウロします。

いつもはもっと人が多いのですが、今は二人だけです。

他の者たちは、”作戦”の為に連れて行かれてしまったので。

今、ここには『馬車酔いをするから。』という理由で外された者が残っているだけです。

ここまで人が少なくなるのは、珍しい事の様に思います。

隣の姫様の部屋でも、三人しか残っていませんし。

よほど、人手ひとでの要る作戦なのでしょう。


同僚を見ます。

有名人です。

メイドたちの最強格の一人で、『鉄壁』のふた持ちです。

ナナシ様の護衛の一人です。

私と目が合うと噴き出しやがります。

本当に失礼です。

私は困っているというのに!


クソ失礼な同僚に相談します。

他に誰も居ないので、仕方がありません。

「ちょっと相談に乗ってください。」

「いいよー。クククク…。」

すでに笑いをこらえていやがります。

本当に失礼です。

ちょっとイラッとしましたが、他に相談できる人が居ないのですから、仕方がありません。

「さk「ブフッ。」」

『鎖骨』と言う前に噴き出されました。

ぶん殴っても文句は言われないと思います。



………見慣れた天井です。

いつもより遠くに見えますが。

「これは何本なんぼん?」

そんな声が聞こえました。

横から差し出されたソレに、目の焦点を合わせていきます。

「…二本。」

「うん。頭は大丈夫そうだねー。何があったのかは憶えてるー?」

「………殴り掛かった?」

「うん、そう。」

「………。」

「ダメだよー、笑いをこらえているところに殴り掛かっちゃー。思わず足が出ちゃったじゃない。」

蹴られた様です。

そんな記憶は有りませんが。

「あなた、『足癖あしぐせが悪い。』とか言われたことない?」

「失礼な。足癖は悪くないよー。今回はたまたまだよ。笑いをこらえているところに来られたから仕方がなくだよー。」

ぐぬぬ。

「今日はもう、掃除も終わったし、のんびりしてていいよー。」

「………。」

そうですね。休ませてもらいましょう。

頭がふらふらしますし。

この日はずっとソファーで休んでいました。



翌日。

「相談があります。」

「………。」

「微妙な顔をしない!」

「えー、でもー。」

「いいから相談に乗りなさい。」

「はーい。」

「鎖骨が不足しています。」

「骨そのものが?」

「そんな猟奇的りょうきてきな話ではありません。」

「猟奇的…。」

「ナナシ様の素晴らしい鎖骨を、見る事もスリスリする事もむふむふする事も出来ていなくて、私はそろそろ限界です。」

「あー、確かに駄目っぽいねー。字面じづらてきにも。」

「鎖骨が必要です。」

「ボクはノーマルだからね。」

「ナナシ様の素晴らしい鎖骨に代わる何かが! 早急に!」

「男の人に頼めば? 少ないけど居るよね? 魔道具関係の部署とかにさ。」

そう言われて、ふと、以前この部屋に来た白衣のおじいさんの姿が、頭をよぎりました。

アレは無い。無理。そう、魂レベルで。

「以前、この部屋に来た白衣のおじいさんとか。」

「うがーー!」



「これは何本なんぼん?」

「………………。」

「………………。」

「…あなた、『足癖あしぐせが悪い。』とか言われたことない?」

「言われたことナイカナー。」

「………………。」

「今日はもう、掃除も終わったし、のんびりしてていいよー。」

「………………。」

昨日も同じセリフを言われた様な気がします。

色々と諦めて、この日もずっとソファーで休んでいました。



翌朝。

「これは何本なんぼん?」

「………………。」

「………………。」

「…あなt「イワレタコトナイヨー。」」

「………………。」

「………………。」

どうやら蹴られた様ですね。

この足癖の悪い同僚に。

私は何をしたのでしょうか?

思い出せません。

「『ボクはノーマルだからね。』って言ったよねっ?」

あれ?

同僚は怒っている様です。

本当に私は何をしたのでしょうか?

焦ります。

何をしたのか訊くべきでしょうか?

それとも、訊かない方が良いのでしょうか?

ちょっとの間、そんな事を悩んでいたら、同僚に言われました。

「今日は、姫様とナナシ様が帰って来るから、シャンとしてねー。」

「!」

帰って来る!

鎖骨が!!

私の鎖骨が!!(←違います。)


私は頑張って立ち上がります。

お迎えする準備をしなければなりませんから。

万全な態勢でお迎えしましょう。

そう。

私の鎖骨を!!(←違うってば。)


正気さん帰って来てー。


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