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姫様を助けたのは失敗だったが、割と好き勝手に生きています。  作者: 井田六
第十一章 異世界生活編06 新生活編
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< 17 事件16 ナナシの自由時間 ゴマスリに使えるモノを見付けた それと、苗木作り >


『ゴマスリに使えそうなモノを見付けました。』


朝食後にソファーでくつろぎながらお茶を飲んでいたら、頭の中で【多重思考さん(多重思考された人(?)たちのリーダー)】にそう言われた。

ほう。何を見付けたんだろうな。

あちらこちらに【目玉】を派遣しているから、何処どこからどんなモノを見付けて来たのか、まったく想像がつかないな。

『ゴマスリに使えそうなモノ』って言っているのだから、変なモノではないだろう。

大丈夫だよね?(ちょっと不安)


【多重思考さん】たちには、今回の騒動に腹を立てているであろうメイドさんたちの機嫌を取る為に、『ゴマスリに使えそうなモノ』を探してもらっていた。

さて、どんなモノかな?

わくわくよりも不安の方が大きいのは、どうしてなんだろうなっ。(苦笑)

俺がティーカップをテーブルに置くと、そのすぐ隣にビンが置かれた。

ビンは、以前、市場で買っておいた物の一つの様だ。

そのビンの中には、何か液体っぽいモノが入っている。

ねばっこそうな琥珀色の液体には、もちろん見覚みおぼえがある。

「ハチミツ?」

『そうです。』

ほうほう。ハチミツか。

女性は甘い物が好きだから、これは喜ばれそうだね。(ニッコリ)

「これの価値は? 高かったりする?」

『価値は不明です。売られているところを見ることが出来ませんでしたので。』

「それは、ハチミツ自体が売られていなかったってこと?」

『ハチミツ自体は売られています。ミツバチっぽいハチの巣から採取された物が売られています。』

『砂糖が高価ですので、ハチミツはそれ以上に高価です。』

「このハチミツは、何か特別なハチの蜜だったりする?」

『ウォーリアービーと言う名のハチの魔物の蜜です。』

『ウォーリアービーは凶暴なハチの様で、冒険者ギルドの資料には『見付かったら逃げろ。』と記載されています。このハチの蜜を採取している人は居ないかもしれません。』

あじ…は、【多重思考さん】たちには分からないんだったね。俺が確認しないといけない訳ね。」

【無限収納】からスプーンを取り出して、ひとさじすくう。

『【殺菌】の魔法を掛けてありますので、食中毒の恐れは無いと思います。』

まぁ、それ以前に【毒物】耐性があるから大丈夫だと思うけどね。

ハチミツを口に入れる。

甘い。

そして、うまい。

うん。うまい。

「うまい、うますぎる!」

思わず、そう声が出た。

「すごく美味うまい。何万(ごく)だ、これ?(←美味おいしさの単位がおかしい。)」

俺は美味しさに感動した。

もうひとさじ食べようと思って、手を伸ばす。

が、やめた。

このハチミツは、ゴマスリに使おう。

うん。そうしよう。

未練を断ち切る為に、スプーンを【無限収納】に仕舞い、ビンに蓋をした。

そして、【多重思考さん】に訊く。

「これは十分な量を確保できる?」

『最初の一回は大丈夫だと思います。ですが、安定供給は現状では難しいですね。』

「安定供給が難しい理由は?」

『森の中に花が少ないからです。』

ほう。

それならば、『花を増やせばいい。』ってことだな。

俺のその考えを、【多重思考さん】が頭の中で肯定してくれて、さらに言われる。

『森の中で見付けたリンゴとミカンとアンズの種を、いくつか確保しています。』

苗木なえぎを作ってください。私たちは花畑を作ります。』

ふむふむ。

苗木なえぎ作りか。

この前やった、ジャガイモや大豆の芽を出させた方法が使えそうだな。

うん。出来る気がする。

花畑を作るほうは、【多重思考さん】たちに任せておいて大丈夫だろう。

木を切り倒すのも、畑を作るのも、既にやってもらったことがあるからね。

よし、俺は苗木なえぎを作るほうを任されよう。


苗木なえぎ作りに取り掛かる前に、頭の中で手順を考える。

バットに水を入れて、種を入れて、時間を早く進める箱に入れて、種から芽と根を出させる。

ここまでは、この前のジャガイモや大豆の時と同じだね。

その後、植木鉢に植えて、時間を早く進める箱に入れて育てて、苗木の出来上がり。

こんな感じだよね。

植木鉢と、前回よりも背の高い、高さが2.5mくらいのロッカーみたいな箱が必要になるのかな?

ん?

今欲しいのは、ハチミツを得る為の”花”だったよね?

”苗木”では不十分ぢゃなくね? もっと大きく育てないといけなくね?

もっと大きく育てないとダメだよね。うん。

もっと大きく育てようとすると、デカい箱が必要になる?

植木鉢もすごく大きくなっちゃう?

でも、大きく育ててから植えると、根が張っていなくて、風で倒れちゃうよな。

大きく育てればいいって訳でもないのか。

あれ? そうなると、花を咲かすまで育ててはいけない?

となると、リンゴとミカンとアンズだけではダメだね。別の花も必要になるよね?

そう言えば、【多重思考さん】たちは『”花畑”を作る。』って言っていたね。

その畑に苗木を植えるのだと思い込んでいたけど、別口べつくちなのかな?

別口べつくちっぽい気がしてきたな。

ちょっと訊いてみよう。

「おーい、【多重思考さん】。そのへんどうなのー。」

『はい。別口べつくちです。』

『大きく育てすぎると倒れてしまいますので、ほどほどの大きさの苗木をお願いします。』

「はーい…。」orz


もう一度、手順をおさらいしよう。

いじけてなんていませんよ?(←誰に言ってるんだろうね)

バットに水を入れて、種を入れて、時間を早く進める箱に入れて、種から芽と根を出させる。

植木鉢に植えて、時間を早く進める箱に入れて育てて、苗木の出来上がり。

植木鉢と、前回よりも背の高い、高さが2.5mくらいのロッカーみたいな箱が必要になる。

こうだよね。

あれ?

”ロッカーみたいな箱”は必要無いのかな?

前回、箱を作った理由は、『芽が出る様子を観察したかったから』だったよね。

観察しないのであれば、【無限収納】で足りるはずだ。

苗木くらいの大きさになる為には、それなりの時間が掛かるだろうし、目で確認しながらする必要は無いね。

そうだね。

ほどほどの大きさまで育てるのは、【無限収納】の中でやればいいね。

”ロッカーみたいな箱”は要らないね。

新たに必要になるのは植木鉢だけだね。

よし、種の数だけ…ぢゃなくて、芽が出た種の数だけ植木鉢が必要になるね。

【製作グループ(多重思考された人(?)たちのうちの、物品製作をしているグループ)】に植木鉢の製作をお願いして、俺は種から芽を出させる作業に取り掛かった。


テーブルの上に、【無限収納】からバットやら扉付き箱やらを取り出す。

前回と同じ工程で、リンゴとミカンとアンズの種から芽と根を出させた。

一度、すべてを【無限収納】に仕舞い、植木鉢を作ってもらっている工房へ転移した。


工房へ来た。

工房の中には、”植木鉢の山”と”土の山”が在った。

植木鉢を木の板を組んで作っているゴーレムたちと、植木鉢に土を入れているゴーレムたちが居る。

植木鉢の数が揃うまで、まだ時間が掛かりそうだ。

待ち時間の間に、苗木を育てるのに、どのくらい時間を早めればいいのかを計算しておこう。

先ほど、種から芽と根を出させる時に使った箱は、時間経過の設定が”100倍速”にしてあって、0.24時間(=14.4分)で1日(ぶん)の時間が経過する様になっていた。

苗木を育てるとなると、年単位の時間が掛かるのかな? 掛かるよね?

この星の1年は350日だから、350倍速にすれば、1日で1年(ぶん)の時間が経過することになる。

このくらいでいいのかな?

それとも、もっと早くしないといけないかな?

うーーん。

時間経過を早くしてしまうと失敗(=育ち過ぎ)してしまう確率が高まるな。

育てた苗木を植えて、さらに育って花を咲かせる様になるのは、まだまだ先の話なのだから、そんなに急ぐ必要は無いんだよね。

350倍速(1日で1年(ぶん)の時間経過)くらいでいいかな?

そうすると、苗木が育つタイミングが、王宮に帰る頃と重なってしまうな。

時間をガッツリと早めて、サクッと育ててしまうおうか。

うん。そうしよう。

でも、そうなると育っている様子を確認する為に、なかの観察が出来る箱が必要になるね。

やっぱり、箱が必要になるのかな?


もう一度、しっかりと考えて、手順を確認しよう。

やることは、リンゴとミカンとアンズの苗木なえぎを育てること。

目的は、ハチミツを採る為に花が咲く木を植えること。

期限は、王宮に帰るまで。

しかし、苗木を植えること自体は、急いでいる訳ではない。すぐに花は咲かないからね。

こんな感じだね。


苗木は全部育てないといけないのかな?

一度に全部育てて、植えるタイミングを変えれば、一年を通して花が咲いている状態に出来るか。

この星には季節が無い(と勉強させられていた時に知った)から、そうすることが出来るよね。

よし。苗木は一度に全部育てよう。


手順は、なかの様子が観察できる箱で苗木を1本育てて、育つ年数(時間)を調べる。

残りは【無限収納】の中で時間経過を早めて育てる。

苗木が育ったら一度【無限収納】から出して、時間停止状態で【無限収納】に仕舞い直す。

苗木を、タイミングを変えて植えることで、一年を通して花が咲いている状態にする。

こうだね。

よし。

それじゃあ、背の高い扉付きの箱を【製作グループ】に作ってもらってから、苗木を育てる作業を始めよう。


箱を作ってもらっている間に、時間経過を何倍速にするか考えておこう。

1時間で10年くらい時間が進む様にすれば、3種類の苗木を育てても、大した時間が掛からないね。

350倍速だと、1日で1年(ぶん)の時間が経過する。

3,500倍速にすれば、1日で10年。

3,500x24の84,000倍速にすれば、1時間で10年だね。

よし、時間経過は84,000倍速だ。


『箱が出来ました。』

頭の中で【製作グループ】の誰かが教えてくれた。

箱を作ってくれたゴーレムの居るところまで移動して、箱を見る。

正面の扉にガラスがめ込まれた、扉付きの箱だ。

高さは2.5mほど。幅と奥行きはそれぞれ80cmほどだろうか。

少し幅の広いロッカーみたいな形状だ。

正面の扉にガラスがめ込まれている…のだが、なんだこれ?

大きさがバラバラなガラスがいくつも取り付けられているんだが…。

そう思ったら、すかさず【製作グループ】の誰かに頭の中で言われた。

『ちょうどいい大きさのガラスがありませんでしたので。ガラスは、これですべて使い切りました。』

ああ、そうか。

ガラスを買ったのは、隠れ家で使う為に買った、その一回だけだったね。

残っていたガラスを使って、この扉付きの箱を作ってくれたから、大きさと形が揃っていないガラスがいくつもめられているんだね。

納得です。

ガラスを買っておかないといけないね。

また何かを作ってもらう事があるだろうからね。

でも、【マジックバック】を使って買い物をすると問題が起こるから、ガラスを買うのは大変そうだな。

後日、ガラスを買う方法を考えることにしよう。


ガラスのことは置いておいて、目の前の扉付きの箱の作業を進めよう。

この箱の内部に【空間魔法】で異空間を作って、その異空間に”時間経過84,000倍速”で【時間魔法】を掛ける。

その作業を頭の中で確認してから、箱にそれぞれの魔法を掛けた。

リンゴの種を植えた植木鉢を一つ、箱の中に入れる。

『扉を閉めて、苗木と呼べるくらいまで育てて、そこまで育つまでの所要時間を測る。』

そう頭の中で手順を思い描いたところで、時間を測る為の時計が無い事に気が付いた。

「あっ、時計が無い!」

「うわー、そーだよ。時計が無いよ。」

「………どうすんだよ。」

作業は一時中断だ。


「そーだよ。時計が無いんだよ、この世界。」

以前居た世界では普通に在ったので、在る物だと無意識に考えちゃっていたね。

「あー、どうすんだよ。」

ガックリした。


「時間を測る方法を考えよう。」

うん。そうしよう。

時間を測る方法を考える。

時間を測れそうなのは日時計くらいかな?

影の角度で15分(きざ)みくらいなら、時間が測れそうな気がするな。

だが、箱の中の時間経過は84,000倍速だ。

1分の誤差でも、かなりの時間になってしまう。

日時計ではダメかな? ダメっぽいね。

日時計は却下だな。


他に何か時間を測る方法はないだろうか?

そう考えていたら、頭の中で『ふぅ、やれやれだぜ。』って感情がした。

何か言われる前に、こちらから訊いた。

「たじゅえもーん、何か方法ない?」

『『たじゅえもーん』じゃありません。』

頼りになる相棒なので、何となくそんな呼び方をしたら、呆れた様に返された。

改めて訊く。

「何か方法ない?」

『簡単です。箱に入れると同時に【無限収納】に入れればいいのです。それなら時間を測る必要はありません。』

「ああ、そうか。」

リンゴならリンゴで、すべての種を植木鉢に植えて、一つは箱の中に、残りは【無限収納】に箱と同じ”時間経過84,000倍速”で入れればいいんだね。

箱に入れたヤツが育つ様子を観察しながら苗木に育てて、箱から出すと同時に、【無限収納】に入れたやつも出せばいいんだね。

これなら時間を測る必要は無い。

よし、これで行こう。


工房の中を見渡みわたして、ゴーレムたちの作業の進み具合を見る。

リンゴの種を植木鉢に植える作業は終わっている様だ。

リンゴの種を植えた植木鉢が、一塊ひとかたまりに並べて置かれている。


扉付き箱の中には、既にリンゴの種を植えた植木鉢が一つ入れられている。

扉を閉めるのと同時に、残りのリンゴの植木鉢を”時間経過84,000倍速”で【無限収納】に仕舞う。

【無限収納】に仕舞う作業の方は、【多重思考さん】にやってもらおう。

俺は、扉付き箱の扉を閉める方を担当する。

「頼むよ、【多重思考さん】。」

『はい。』

扉に手を掛け、カウントダウンをする。

「3,2,1、ゼロ。」

パタン

扉を閉めた。

植木鉢が置かれていた場所に視線を向けると、植木鉢は姿を消していた。

【多重思考さん】、ありがとう。

出す時もよろしく。


俺はガラス越しに、箱の中を覗き込む。

リンゴの種から芽が真っ直ぐ上に伸びていく。

伸びた芽は、すぐに緑色から茶色に変わり、みきっぽい見た目になった。

80cmくらいまで伸びたら、生長せいちょうにぶくなった。

その後はみきが徐々に太くなっていく。

ここから先の生長せいちょうは、時間が掛かりそうだ。

変化がとぼししいと、余計な事を考えてしまいそうだ。気を付けよう。

箱の中を覗き込みながら、どのくらいの時間が掛かりそうか考える。

『1時間で10年分の時間が経過するんだったな。30分で5年、15分で2年半か。』

『15分くらい掛かりそうな感じかな?』

そんなことを考えながら、集中を切らさぬ様に、頑張って観察を続ける。

椅子が欲しいな。(ぼそっ)


15分くらい掛かって、苗木は箱の天井近くまで生長せいちょうした。

よし、もういいだろう。

ゴーレムさんに作ってもらった椅子から立ち上がって、【多重思考さん】に声を掛ける。

「出すよー、【多重思考さん】。」

『はい。』

カウントダウンを始める。

「3,2,1、ゼロ。」

扉をガバッと開けた。

背後で沢山の植木鉢が出された音と気配がする。

箱の中から植木鉢を引き擦り出して、育った苗木を眺める。

苗木はしっかりと生長している。

ただ、植木鉢の中は根でギッシリになっていた。

「育たせ過ぎたかな?」

育たせ過ぎたっぽいね。ちょっと失敗したかもしれない。

次にやるミカンの時は、もう少し時間を短くしよう。

育てたリンゴの苗木は、すべて【無限収納】に時間停止状態で仕舞っておく。

植えるタイミングは【多重思考さん】たちに任せよう。

頼んだよー。(←この丸投げ感よ)

よし、同じ手順でミカンとアンズの苗木も育てるぜ。


その後、1時間も掛からずにミカンとアンズの苗木も育てることが出来た。

苗木をすべて【無限収納】に時間停止状態で仕舞って、一息ひといきく。

「ふう。」

お昼くらいの時間になったので、隠れ家に戻って、昼食を食べることにしよう。


昼食後、ソファーでくつろぎながら、頭の中で【多重思考さん】に訊く。

「他に何か手伝う事って有る?」

『花の鉢植えを買ってほしいです。』

ああ、花畑に植えるのにね。

『はい。十分な数の花を集められそうにありません。』

そう言われて考える。

『この世界って、花屋さんとか在るのかな?』

街中まちなかで花に意識を向けた事が無かったので、そう言った習慣があるのかすら、さっぱり分からない。

王宮には花が飾られていた気がするが、それは花屋の有無とは直接関係無いよね。

でも、【多重思考さん】が『買ってほしい。』と言うのだから、花屋は在るのだろう。

花を買って来るのは良いのだが…。

花の鉢植えを買ってもはこづらいよね。

一度に沢山たくさんの鉢植えをはこぶ事は出来ない気がするな。

たなみたいなモノを作って、それを背負って買いに行くのかな?

そうやっても、やっぱり沢山は買えないよね。

【マジックバック】を使いたくなるね。

うーん。どうしたものか。

『鉢植えを買って、育てて、種を採取して、それをまた育てて、種を採取してって、種を増やしてほしいです。』

『そして、種の数が十分に増えたら、花畑に植えましょう。』

ああ、それなら沢山の鉢植えを買う必要は無いのか。

午前中にやったのと、同じ様な作業をして、花畑に植える花を育てるんだね。

でも、ちょっと手間が多いね。

「種は売っていないの?」

種の方が運びやすいよね。鉢植えよりもはるかに大量に運べるよね。

『花屋には売られていませんでした。』

「…花屋以外の店で、売られてるんぢゃないの?」

『…そうですね、種を売っているお店を探します。』

【多重思考さん】はそう言った。

きっと花屋ばかりを探してて、それ以外の店で種が売られている可能性を失念していたのだろう。

こういう事もあるよね。

所詮しょせん、俺だしね。(苦笑)


さて。

そうなると、種を売っているお店を探してもらっている間は暇になるね。

ソファーでダラダラしよう。

俺がそう思ったら、頭の中で【多重思考さん】に言われた。

『庭にも苗木を植えましょう。』

ふむ。

実を食べられるし、花を愛でることも出来るだろうし、いいかな?

うん。いいね。

よし。庭にも苗木を植えよう。

ソファーから立ち上がって、玄関を通って庭に出た。

………。

この玄関を使ったのは、久しぶりな気がするな。

前回、この玄関を使ったのって、いつだろう?

この隠れ家が出来上がった時に使って以来かな? そうだな。

普段は【転移魔法】で居間に直接来てるからね。

何気なにげに広くて立派な玄関が在るけど、玄関自体、要らなかったのかもね。

でも、玄関を無くして【転移魔法】でしか出入りが出来ない構造にすると、客間の存在がますます意味不明になるね。

そもそも、この隠れ家が在る場所が、道も無い森の奥だしね。

誰も来ないよね。

いや、やめよう。客間の存在意義が謎なのは、最初からだったからね。(微妙な笑顔)

一度、客間のベットに客(?)を寝かせたことが有りますが、あれはまねいた訳ではないのでカウントに入りません。


客間とか玄関のことはさておき。

庭の北のはしまで歩いて来た。苗木を植える為にね。

『北の端が一番日当たりが良いので、そこに植えます。』と、【多重思考さん】に言われたので。

ゴーレムが苗木を植えてくれるのを眺める。

荒野に作った畑に植えた経験があるので、サクサクと作業が進んでいく。

30分ほどで、リンゴとミカンとアンズの苗木が植えられた。

うんうん。しっかりと育ってくれれば嬉しいね。(ニッコリ)

俺は上機嫌で、歩いて隠れ家に戻る。

戻ったらソファーでダラダラしよう。

階段を上がり、玄関のドアに手を伸ばしたところで、違和感に気付いた。

玄関のドアの脇に、それを見付けた。

それは、木の板だった。高さ30cmほどの。

彫りが見事な逸品だ。

まるで、おたか欄間らんまの様な見事な彫刻がほどこされている。

【製作グループ】が作り上げたであろう、その見事すぎる表札にはこう書かれている。

『たかし』と。

「俺の名前は『たかし』ぢゃないって、言ってるぢゃん!」

「いつの間にこんなモノを作ってたんだよ!」

J( 'ー`)し『イイ出来でしょ、たかし。』

「『イイ出来でしょ。』ぢゃないよ! あと、『たかし』でもねぇ!」

ふざけた表札を外そうと、釘が打たれている場所を探す。

だが、彫り込まれた部分に目立たぬ様に釘が打たれていて、なかなか見付けられない。

「くそっ、無駄に手が込んでやがるな!」

ダメだ。外すどころか、何カ所で留められているのかさえ分からない。

見事な、”たくみの技”の無駄遣いだった。

くそう。

俺は寝室に直行して、ふて寝した。


花の種を買いに行くのは翌日になりましたが、俺の所為せいじゃないと思います。


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