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姫様を助けたのは失敗だったが、割と好き勝手に生きています。  作者: 井田六
第十一章 異世界生活編06 新生活編
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< 11 事件10 ナナシの自由時間 畑完成 >


時間を早める魔法を使って、植える予定のジャガイモと大豆に芽と根を生やすことが出来た。

それらを植えるのをゴーレムに頼んだ。

その後、傷心(?)のゴーレムのケアをしてから、もう一度、俺も畑に来た。


畑を見る。

木を植えてくれているゴーレムと、ジャガイモを植えてくれているゴーレムが居る。

木は、二本目を植えている最中さいちゅうの様だ。

既にすみに植えられた木を見ると、倒れない様にであろう、腰くらいの高さのささえが組まれていた。

作業があまり進んでいない様に見えるのは、それに手間てまったのかもしれないね。

あるいは、植える木を探すのに手間取ったのかな?

俺の疑問に、頭の中で【多重思考さん】が答えてくれた。

ささえのほうに手間取りました。ガッチリ固定してしまっては育った時に困ると思いましたので。』

なるほど。

『考えた結果、三方向からつるゆるしばりました。』

とのことだった。


畑のなかほどを見ると、ゴーレムがジャガイモを植えている。

手で土を掘って、芽と根が出たジャガイモを置いて、土をかぶせる。

そんな風に作業をしている。

普通の作業なのだが、何か違和感があった。

よく見たら、ゴーレムの形状が変わっていた。

『小さくしたのかな?』と思ったのだが、それだけでは無く、人間っぽいスマートな形状に変わっていた。

頭の中で【多重思考さん】が説明してくれた。

『畑を耕すのには”パワータイプ”で作業しました。』

『作物を植えるのには、汎用性の高い”人間タイプ”で作業しています。』

『そもそもゴーレムはかたち自体も作っていますので、いくらでも形を変えることが可能ですので。』

『いつも、作業に合わせて最適な形を模索もさくしています。』

とのことだ。

【製作グループ(多重思考された人(?)たちのうちの、物品製作をしているグループ)】の創作意欲は、使うゴーレムにまでおよんでいた様だ。

さすがです。(何かを諦めた様な笑顔)


畑で作業するゴーレムたちの中に、一つ変な形状のゴーレムが混ざっていた。

どうにも見た目がキモイんですがっ。

これについても、頭の中で【多重思考さん】が説明してくれた。

『作物を植えるのに最適なかたち模索もさくして、あの様な形になりました。』

『土を踏み固めない様に四本足にする事は、すぐに決まりました。』

『さらに軽量化をする為に上半身を無くし、腕は、腰に当たる位置からやすことにしました。』

『腕を左右に一本ずつでは正面でしか作業が出来ないので、体の側面そくめんにも、両側りょうがわ一対いっついの腕をやしました。』

その姿を例えるなら、トカゲから頭としっぽを取り除いて足を長くして、胴体の正面と両側面にそれぞれ一対の手を生やした様な感じだ。

うん。見た目ェ…。

「最適な形を模索もさくするのは良いんだけど、キモぎぢゃないですかね?」

『フッ。見た目など重要ではありません。大事だいじなのは機能です。(キッパリ)』

いや、そう言われても限度があると思うんだよー。

あのゴーレムは、なるべく視界に入れない様にしよう。(何かを諦めた様な笑顔(さっきぶり二回目))


まだしばらくは作業は終わりそうにない。

そう思い、俺は畑をボーっと眺めていた。

そんな俺に、頭の中で【多重思考さん】が話し掛けて来た。

『水をく方法で少し悩みました。』

ほう。水をく方法か…。

『畑を耕した後、森から持って来た、落ち葉が腐葉土ふようどっぽくなった物をいて、水もき、もう一度、混ぜる様に畑を耕しました。』

『水をくのに、【クリエイトウォーター】で大きな水の球を作り、それをゴーレムの手ではたようにして水をいたり、小さい水の球を沢山たくさん作って畑にいたりしました。』

『ですが、水をく方法は、他に良い方法があるかもしれません。』

ふむふむ。

俺も水をく方法を考える。

水を作るのは【クリエイトウォーター】でいいとして、『水をく』と言うと、ジョウロやスプリンクラーだろうか?

ジョウロを作るのは、まぁいいとしても、スプリンクラーの方は面倒な事になるよね。

スプリンクラーの場合は水圧を掛ける装置も必要になるし。

うん。スプリンクラーは無いな。

【クリエイトウォーター】で作った水をジョウロに入れて、それを【魔法の腕】で持って、水をくのかな?

無いな。

もう少し、魔法で何とかしようぜ。(苦笑)

雨の様に畑に水がかれる様子を、頭の中で思い浮かべる。

ん? 雨?

ひらめいた。

雨がっているところで【ゲート(入口)】を作って雨を受けて、畑の上に【ゲート(出口)】を作って雨を出せば、水をけるよね。

早速さっそく、実験してみよう。

頭の中で【多重思考さん】に、『雨のっている場所に居る【目玉】ってある?』と訊こうと思ったら、既に動いてくれていた。

『いきます。』と頭の中で声がする。

すると、畑から少し離れた場所に雨がった。

畑ではまだゴーレムが作業しているから、畑をけた様だ。

『ザァ』という音を聞きながら、濡れて黒くなっていく地面を眺める。

【ゲート】の形は丸かったと思うのだが、濡れて黒くなっていくその形は四角い。

どうやら沢山の【ゲート】を四角く配置している様だ。畑の形に合わせる様に。

さすが【多重思考さん】。 無駄に芸が細かい。(笑)

これで、水をく方法は決まったね。(ニッコリ)

この方法なら、道具も水を労力ろうりょくらないから、これでいいね。

良い魔法の使い方を見付けて、俺は満足だった。


満足感にひたりながらる雨をしばらくながめていたら、畑の作業も終わった様だ。

畑に目を向ける。

ゴーレムは既に撤収てっしゅうしていた。

次の創作活動をする為に工房に帰ったのだろう。

工房で何かをやらかす危険も在るが、”アレ”が視界に入らないだけでも十分喜べるね。(苦笑)


畑の四隅よすみには木が植えられ、ジャガイモと大豆を植えられたところは、土がふかふかしている様に見える。

こう見ると、普通の畑にしか見えないね。

すげぇ。

ただの荒野だった場所には見えないよ。

半日も掛からずに、これだけの畑を作れたことに、俺は満足した。

やったね。


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