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姫様を助けたのは失敗だったが、割と好き勝手に生きています。  作者: 井田六
第十一章 異世界生活編06 新生活編
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< 10 事件09 ナナシの自由時間 【時間魔法】 >


『買って来たジャガイモと大豆だいずは、時間が進むのを早めて、今日中に植えられる状態にしてしまいましょう。』


頭の中で【多重思考さん(多重思考された人(?)たちのリーダー)】に、そう言われた。

買い物から帰って来て早々に。


『時間が進むのを早めて…?』

頭の中に疑問が浮かぶ。

そんな俺に【多重思考さん】が頭の中で説明してくれた。

『【無限収納】で時間を停めることが出来るのはご存知の通りですが、同様に時間が進むのを早めることも出来ます。』

おお、そういうことも出来るのか。

それを使えば、ジャガイモと大豆から早く芽と根を出させる事が出来そうだね。

頭の中で、ジャガイモから芽や根がにょきにょきとえる様子を想像する。

うん。いいね。

俺は、時間が進むのを早めて、ジャガイモと大豆から早く芽と根を出させて、今日中に畑に植えてしまうことに決めた。

実際に試すのは昼食後にすることにして、ずは、その【時間魔法】とやらの知識を【時間魔法グループ】から貰うことにした。


【時間魔法】の知識を【時間魔法グループ】から貰い、頭の中でおさらいしながら、昼食を食べ終えた。

さぁ、時間が進むのを早める実験だ。

と、その前に、もう一つの実験を行うことにする。

ジャガイモと大豆から芽や根がにょきにょきと生える様子を観察したいと思ったので、その観察方法の実験を先に行う。

時間が進むのを早めるのは、【無限収納】の中で行なう予定だ。

だが、そうすると観察が出来ない。

そこで、【無限収納】の中に【目玉】を入れて、【目玉】の視覚を通して観察しようと考えた。

そんな事が出来るのかを、実験で確かめる。

ず、【目玉】を一つ用意する。

【目玉】は、この隠れ家の居間に常駐しているモノを使うことにする。手近てぢかな場所に居たので。

隠れ家の居間に常駐している理由は、緊急時に、ここに常駐している【目玉】を目印に転移して来る為です。

それと留守番だね。必要ない気もするけど、何となくです。

さぁ、実験開始だ。

手元に移動させた【目玉】を【無限収納】の中に入れる様に念じる。

入らなかった。orz

何度も試してみたが、【目玉】は【無限収納】の中には入らない様だ。

そうかー。入らないのかー。残念。

期待した通りの結果は得られなかったが、『実験しないと分からなかった真実を知ることが出来た。』と喜ぼう。

うん。実験バンザイ。

さて、そうなると『観察をあきらめる。』か『他の方法を考える。』かなんだけど、当然『他の方法を考える。』だよね。

他の方法を考える。考える。

一部がガラスになっている箱を作って、その箱に時間が進むのを早める魔法を掛ければいいね。

これなら観察も出来るね。出来るよね?

箱の製作を【製作グループ(多重思考された人(?)たちのうちの、物品製作をしているグループ)】に頼んで、俺はキッチンに移動する。

【多重思考さん】たちが、ジャガイモと大豆の準備をしている様なので。


キッチンに入ると、作業台の上にバットが並べられ、切り分けられたジャガイモと大豆が水にひたされていた。

ちょっと多い様に感じたが、『ジャガイモはまだ余っていますよ。』と、頭の中で【多重思考さん】に言われてしまった。

ジャガイモを買い過ぎたね。

畑に植える専用としてしなびたモノを買って来たから、全部植えないといけないね。

『畑を拡張するか。』と思ったが、時間停止状態で【無限収納】に仕舞っておけばいいだけだったね。

実行する前に気付いて良かったです。(割と危なかった)


水にひたされている大豆を見て、あることに気付いた。

『大豆は袋から出していなかったはずだよな…。』

お店で買って、袋に入った状態で背負い袋に入れて、そのままだったはずだ。

ふと、ゴーレムが袋から大豆を出している様子が頭の中に浮かんで、ちょっとなごんだ。

なごんでいたら、『やれやれ…。』って感情が頭の中に浮んだ。

【多重思考さん】が少し呆れた様に説明してくれた。

『袋から出すのには、【分離】魔法さんを使いました。』

『全部出す場合には問題がありませんので。』

ああ、そうか。

昨日、小麦粉を使いたい分だけ袋から出そうとして【分離】魔法さんを使ったら、袋から全部出てしまって『失敗した』って思った。

その印象が強かったので、『手作業で袋から出さないといけない。』と思い込んでたわ。

そうだねー。袋から全部出す場合は、【分離】魔法さんで問題無かったねー。

『さっきの俺の”なごみ”を返せ。』と、誰に言うでもなく思った。


残りのジャガイモと大豆の量の確認などをしていたら、頼んでいた箱が出来上がった様だ。

何処どこで実験しようかな?』と思ったのだが、工房へ行ってみようと思った。

いつの間にか【製作グループ(多重思考された人(?)たちのうちの、物品製作をしているグループ)】が作り上げていた工房。

まだ一度も行ったことが無かった。

いい機会だから、行ってみよう。

【多重思考さん】に指示された【目玉】を目印に、俺は工房に転移した。


工房に来た。

ぐるりとまわりを見回みまわす。

広さはそこそこだ。体育館よりはせまいかな? 町工場にありそうな広さかな?

壁と三角屋根が在るだけの、シンプルな建物の様だ。

天井が高く、高い位置に窓が多く在る。

いや、窓ではないな。ガラスが嵌っていないので。穴が明いているだけの様だ。

きっと結界を使っているのだろう。窓単位なのか建物全体なのかは知らないが。

『建物全体です。めんどくさかったので。』

建物全体だそうです。その方が簡単だよねー。

かどに、鍛冶場かじばっぽい雰囲気の場所が在った。

あそこで包丁とかを作ったのだろう。

あと、くわの金属部分なんかも。

別のかどで、ゴーレムが作業をしているのが見える。

今、ここに居るのは、このゴーレム一体だけの様だ。

他のゴーレムは、すべて畑に行っているのかな?

頭の中で【多重思考さん】にうながされて、ゴーレムが居る方へ向かう。

ゴーレムのかたわらには箱が一つ置かれている。

この箱が、今回作ってもらった物なのだろう。

地面にじかきされていたのでしゃがんで見ようと思ったら、作業台が出されてその上に箱が置き直された。

ありがとうございます。助かります。

サッと作業台が出て来たので、備品類はすべて【無限収納】に仕舞ってあるのだろう。

棚すら無い事を不思議に思っていたのだが、【無限収納】があるんだから、【無限収納】に仕舞っておいた方が便利だよね。

今みたいに、出したい場所に出したい物を出せるからね。

俺よりも上手じょうずに【無限収納】を活用している様に思えます。(苦笑)


作業台の上に置かれた箱は、一辺が70cmほどの立方体に近い形をしている。

正面には横に長いガラスが三枚、等間隔に取り付けられている。

正面は扉になっている様だ。取っ手を引いて開けてみた。

中には棚が有って、バットが三枚x三段の九枚置けそうだった。

早速さっそく、【時間魔法】を試してみよう。

【時間魔法】の効果を見る為には、中に何かを入れないと確認が出来ないよね。

水にひたされたジャガイモを使おう。試しにバット一枚分だけね。

『バットをキッチンにきっぱなしだった。』と思って焦ったが、『【無限収納】に移してあります。』と【多重思考さん】に言われてホッとした。ありがとうございます。

【無限収納】からジャガイモが入ったバットを一枚出して、箱の中に置いた。

箱に【時間魔法】を掛けよう。

時間経過の設定は”100倍速”にした。

これで0.24時間(=14.4分)で1日(ぶん)の時間が経過することになるはずだ。

箱に【時間魔法】を掛ける。

が、魔法が掛かった感じがしなかった。

「あれ? 失敗したぞ。」

もう一度、やってみる。

やっぱり、ダメだった。

「んー。何でだろう?」

魔法を掛けるのは、ただの木で出来た箱だ。

魔法がはじかれるなんて事は無いはずだ。

うーん。分からん。

頭の中で【時間魔法】の説明を読む。読む。

原因判明。

【時間魔法】は【空間魔法】で作った、”異空間”に対して使う魔法の様だった。

一番肝心(かんじん)な部分を、読み飛ばしてしまっていました。(てへぺろ)

”ただの木で出来た箱”に掛ける魔法では、そもそもなかっただけの話だった。

さて、どうするか。

この箱の中に”異空間”を作って、その異空間の時間が進むのを早めれば、その様子をガラス越しに観察する事が出来るのかな?

うーん。

やってみないと分からなさそうだな。

よし。気を取り直して、やってみよう。


ず、【空間魔法】の知識を【空間魔法グループ】から貰う。

次に、箱の中からバットを一度出す。

それと、一応、棚板たないたもすべて外しておく。

棚板で区切られた空間に魔法が掛かってしまったらイヤだったので。

そして、何も無くなった箱の中を見ながら【異空間作製】の魔法を掛けて、箱の中に異空間を作る。

………。

見た目は何も変わっていない。

失敗してないよね? 失敗してないよね?(←ちょっと弱気)

魔法が掛かったことを確認する方法って在るのかな?

取り敢えず、箱を【鑑定】してみることにする。

他の確認方法を思い付かなかったので。

箱を【鑑定】したら、『内部が異空間化されている。』という一文いちぶんが有った。

「よっしゃー!」

やったね。

いやいや、落ち着けよ、俺。

今日の目標は、畑にジャガイモと大豆を植えることだろ。

そのジャガイモと大豆は、まだバットの中で水にひたされているだけだろうが。

落ち着けー。

まだまだこれからだー。


扉付き棚(←箱を【鑑定】したらこんな名前だった)の中を見ながら、次は、さっき失敗した【時間魔法】を改めて掛けた。

目に見えない異空間に魔法を掛ける感じで。(←この慎重感よ)

今度は魔法が掛かった様な気がした。

もう一度【鑑定】する。

鑑定結果は、さっきと変わらなかった。orz

あれー?

うーん。分からん。

ジャガイモを入れて試してみるか。

ジャガイモが入ったバットを一枚、改めて箱の中に入れて、扉を閉めた。

ガラス越しにそれをながめる。

芽が伸びた。じわじわと。

「おお。」

思わず声が出る。

根が生えて、伸びた。にょにょにょって感じで。

芽と根がほどほどの長さまで伸びたところで、扉を開ける。

扉を開けたら、芽も根も伸びるのが止まった様に見えた。

扉の開け閉めがトリガーになっているのかな?

そんな設定をした記憶は無いのだが、扉が開いていると『【時間魔法】を作用させる範囲がさだまらない。』とか、何か理由が有るのかもしれないね。

バットを取り出してジャガイモを見てみると、芽と根が共に10cmほどまで伸びていた。

「やったね。成功だ。」

他のバットのやつも、芽と根を伸ばそう。

根が少しからんでいたので、少し間隔を広げる様に置き直し、バットを九枚、棚に入れて扉を閉じた。

芽と根がにょにょにょってなるのをガラス越しに眺める。

芽と根が伸びたら取り出し、ジャガイモが終わった後、大豆も同じ様にした。

これで、畑に植えるジャガイモと大豆の用意が出来た。

早速さっそく、【無限収納】に仕舞い、畑に居るゴーレムたちに植えてもらう様に頼んだ。


さて。

扉付き棚が、作業台の上にもう一つ在ります。

俺が色々している間に、ゴーレムがもう一つ作ってくれていたので。

でも、バットの数がそれほど無かったのと、芽と根が伸びる早さが想像以上だったので、もう一つのほうは使うタイミングが無かった。

何となく気落ちしている様に見えるゴーレムをなだめる。

「必ず使う機会があるから。」と。

魔法を掛けた方の扉付き棚に、『時間経過100倍速』と書かれたプレートを付けてくれる様に頼み、俺は畑に転移した。

何となく居辛いづらかったので。


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