< 09 事件08 ナナシの自由時間 荒野に畑をつくってみよう >
朝食を済ませた後、隠れ家のソファーで寛いでいる。
昨日は色々な事があった。
朝は普通に起きた。
いや、久しぶりに良い目覚めだったんだったな。
シルフィと一緒に朝食を食べて、一緒にお茶をした。
肖像画を描くという話があって…。
俺が居なくてもいいよねって話をして…。
メイドさんたちが衣装を部屋に持って来て…。
その後、事態があさっての方向に吹っ飛んでしまった。
どうしてそうなったし…。orz
「はぁぁぁ。」
長い溜息が出た。
起きてしまったことは仕方が無い。
せっかく自由になる時間が有るのだから、この時間を使って何かしよう。
それが世の中の為になる事だったら、尚、良いよね。
この自由になる時間に、何をしようか考える。
畑を作ってみるか。
荒野に。
本格的なモノは自分の領地に作るとして、実験として、一度畑を作ってみよう。
食材を収穫できれば、食材を買いに行く手間が省けて助かるし。
それに、荒野の緑地化は世の中の為にもなるしね。
うん。そうしよう。
今日の予定をそう決めたら、頭の中で【多重思考さん(多重思考された人(?)たちのリーダー)】に『食材を買って下さい。食材が無くなりました。』と言われた。
昨日、魔法だけを使って【多重思考さん】たちだけで料理が出来る事が分かったので、料理を作ってもらって【無限収納】に時間停止状態で仕舞ってもらっている。
昨日買って来た食材は、もう使い切ってしまった様だ。
食材を買いに行く時は、今は大きな背負い袋を使っている。
以前、【マジックバック】を使って買い物をしたら、騒動が起きてしまったからだ。
大きな背負い袋では、大量に食材を買い込む事は出来ない。
背負い袋に仕舞った物を時々【無限収納】に移していたが、不審に思われない程度にしか出来ないので、せいぜい大きな背負い袋二つ分くらいしか一度に買い物が出来ない。
その程度の量の食材では、一日で料理し切ってしまう様だ。
何も毎日料理を作ってもらわなければならない訳では無いのだが、創作意欲が湧いた【多重思考さん】たちを抑えるのも面倒だから、大人しく食材を買っておこう。(苦笑)
今日の予定は、食材の買い出しと畑を作る実験だね。
予定を決めたので、支度をして、食材を買いに海沿いの街の中に転移した。
食材の買い出しを終え、精神的に疲れて隠れ家に帰って来た。
疲れているのは、【多重思考さん】たちにアレコレ買わされたからだ。
創作意欲が湧いた【多重思考さん】たちを抑えるのは面倒だと思っていたが、付き合うのも面倒だということが今回分かった。(苦笑)
頑張って、もう一仕事する。
買って来た食材の内、袋に入っている物は、袋から出して一つずつ【無限収納】に仕舞わなければならない。
こうしておかないと、食材を一つずつ取り出せなくて、料理をする時に困ってしまうからね。
この作業も面倒だった。(苦笑)
次からはゴーレムにしてもらおうかな?
頭の中で、ゴーレムが荷解きをする様子を思い浮かべる。
何となく微笑ましい光景に思えて、ちょっと和んだ。
食材を【無限収納】に仕舞い終えた俺は、今度は荒野に転移した。
荒野に来た。
畑を作る実験をする為にね。
場所は、西端の街のさらに南西の方だ。
以前、クレーターを作った…、げほん。クレーターが出来ちゃった場所のさらに先だ。
魔法の実験なんかでボッコボコにしたところを畑にしようかと思ったのだが、クレーターが出来ちゃった場所まで人が調査に来た様なので、さらに街から離れた場所にすることにした。
さぁ、やるぜ。
先ずは、石を取り除くか。
周りを見ると、一面に石がゴロゴロしているからね。
歩きながら、70cmくらいの深さまで、石を【分離】魔法さんで取り除いていく。
取り除いた石は【無限収納】に仕舞っておく。何かに利用できるかもしれないから。
30m x 30mくらいの範囲から、石を取り除いた。
次にゴーレムを呼び寄せる。
このゴーレムたちは、【製作グループ(多重思考された人(?)たちの内の、物品製作をしているグループ)】のゴーレムたちだ。
畑を作ろうと思ったら、やる気を出し始めたのでお願いした。
この場で自分でゴーレムを作って…、なんて出来る状況ではありませんでした。(苦笑)
ちょっとだけ、やろうと思ったけど。(おい)
ゴーレムたちは、既に手に自作の鍬を持っている。
やる気に溢れているなー。(苦笑)
よろしく頼む。
ゴーレムたちが地面を耕しているの眺めながら、何を植えるか考える。
最初はどんな作物がいいのかな? それとも木とか植えた方がいいのかな?
木を植えると、地面の深いところから水を吸い上げたり、根に水分を保持するとかして、他の植物が育ちやすい環境を作ってくれるなんて話を聞いた覚えがあるのだが。
うーん。
四隅に木を植えて、他は育ちやすそうな作物を植えるか。
【多重思考さん】たちに、植える木を森の中で探してもらおう。
1.5mくらいに育っている木とかあればいいかな?
それと、植える木は落葉樹が良いだろうね。落ちた葉が栄養になるからね。
あと、腐葉土っぽいのも探してもらって、この畑に撒こう。
色々と【多重思考さん】たち頼りですが、いつものことです。(ニッコリ)
植える作物はどうしようか?
種とかを入手しやすいのは芋かな? 芋の場合は種ぢゃないけど。
でも、芋は既に隠れ家の畑で作られている。
しかし、芋は荒れ地でも育つらしいから、ここで育てるのには最適の様に思えるな。
ここにも芋を植えるか。
そうしよう。
フライドポテト作りが捗るね。(ニッコリ)
他に植える作物は何かないかな?
豆は土に栄養を与えるとか聞いた事が有るな。豆も植えるか。
豆の種ってどんな物だったっけ?
んー。何だか記憶に無い気がするなぁ、豆の種って。
…いや、豆は放っておくと、芽と根が生えてくるか。
そうだね。豆は、豆を植えればいいんだね。
最初に植えるのは、芋と豆でいいね。手に入りやすいし。
そもそも、普通の作物があっさりと育つとも思えないから、トマトとかナスとかは無理っぽいしね。
そうしよう。
よし、植える為の芋と豆を買って来よう。
ここは、【多重思考さん】さんたちに任せておけばいいしね。
よし、行くか。
海沿いの街に来た。
本日二回目だ。
そう思うと、少し残念な気分もするが、転移して来ているので、大した手間は掛かっていない。
だから、気にしない方向で行くことにする。
市場に向かおうと思ったところで、頭の中で【多重思考さん】にお願いされた。
『鍋を買って下さい。』と。
鍋が必要な理由に心当たりがあるが、一応、確認の為に頭の中で訊く。
『それは、スープを作っておく為の鍋かな?』
『そうです。よろしくお願いします。』
いくつかの種類のスープを作っておきたいのだろうね。
同じスープを毎食飲むと、すぐに飽きそうだからね。
そうだね。鍋は買わないとダメだね。うん。
【多重思考さん】さんの道案内で、金物屋に来た。
【多重思考さん】さんにおねだりされるまま、鍋を三つ買った。
大きな寸胴鍋でも買わされるのかと思っていたのだが、普通の鍋だった。
スープを飲むのは俺一人なのだから、大きな寸胴鍋なんて要らなかったね。
金物屋で買い物を済ませて、改めて市場に向かう。芋と豆を買う為にね。
歩きながら、『植える豆は、何豆にしようかな?』と考える。
芋はジャガイモでいいと思うが、豆はどうしようか?
大豆かな?
それとも、何か他の物がいいかな?
仮に大豆を育てて収穫したとして、大豆をどうやって食べようか?
スープに入れるのが一番簡単だが、他にも何かないかな?
納豆が作れそうな気がするけど、ご飯も醤油も無いから納豆だけ有ってもダメだよね。
何かないかなぁ?
きな粉って、大豆を炒ってすり潰したものだった気がするな。
きな粉で何か食べ方ってあったっけ?
閃いた。
揚げパンだ。
揚げパンだね。揚げパンにしよう。
揚げ物ばかりだけど、『揚げ物は正義』なのだから問題無い。うん。
大豆が収穫できたら、きな粉にして揚げパンにまぶして食べよう。
よし、育てる豆は大豆にしよう。
市場に着いた。
先ず、ジャガイモを買う。
お店で、「畑に植えるので芽が出ているやつでいいのですが…。」と言ったら、芽が少し伸びて、ちょっとだけ萎びているモノを半額で売ってもらえた。
やったね。
箱一つ分くらいの量のジャガイモを、お金を払ってから背負い袋に入れる。
入っている鍋をよけながらなので、ちょっと手間が掛かる。
時々、こっそりと【無限収納】へ移しながら、ジャガイモを背負い袋に入れ終えた。
礼を言って、お店を後にする。
歩きながら、頭の中で【多重思考さん】と話をする。
『今、気付いたんだけど、背負い袋から【無限収納】にモノを移すのは、俺でなくても【多重思考さん】でも出来るよね。』
『そうですね。人に注目されていないタイミングで、鍋とジャガイモを移しますね。』
これで、俺の手間が少し減るね。
『もっと早く気付けよ。』って思いますが、割とよくある、いつものことです。(苦笑)
豆を売っているお店に来た。
ジャガイモと同様に、芽が出てしまっているモノがあればそれでいいと思ったのだが、そういうモノは無いとのこと。
普通に大豆を買った。
買った大豆を背負い袋に入れて、買い物終了。
買い物を終えた俺は、少し市場をブラブラと見て回りながら、買ったジャガイモと大豆の下処理の事を考える。
ジャガイモは、芽の生えている部分を残す様に切り分けて、水に浸しておけば、根が生えてくるはずだ。
それから畑に植えればいいと思う。
大豆も水に浸しておいて、芽と根が出て来てから植えればいいだろう。
となると、水に浸しておける容れ物が必要になるな。
どんな容れ物がいいのかな?
頭の中で考える。
トンカツを作る時に小麦粉とかを付けるのに使ったバットみたいな物でいいのかな?
そうだね。
もう一度、金物屋に行くか。(苦笑)
金物屋に向けて歩いていたら、頭の中で【多重思考さん】に言われた。
『どうせ買うのなら、揚げた物を上げる網付きのバットを買ってください。』
うーん。
それでもいいのだが、【多重思考さん】が揚げ物をさらに大量生産しそうで少し怖い。(苦笑)
他にも、(味見を出来ないのに)葉っぱのてんぷらとか作り出しそうな、そんな怖さもある。(苦笑)
でも、揚げ物用のバットが少し少ない気がするのも確かだし、網付きのバットを買っておくか。
金物屋に来た。
揚げた物を上げる網付きのバットを買った。
売られているトングを見付けた【多重思考さん】が、『私たちが作った物の方がずっと良いです。(フンス)』とか頭の中で言っている。
ちょっとウザい。(苦笑)
それと、お店の中に居る【目玉】が徐々に増えている気がするのは、俺の気の所為ぢゃないよね?
頭の中で、『鍋の取っ手がー』とか『包丁の刃先の角度はー』とか『圧力鍋を作るのに必要なものはー』とか、何やら色々な会話がされています。
圧力鍋を作るのはやめてねー。何となく怖いから。
それに、結界で済みそうな気がするので、圧力鍋はやめて。
何だか、子供を連れてお店に来たみたいな感じがするのは、どういうことですかね? どういうことですかねっ?
『他に買う物なんか無いからねー。』
『ハイハイ、帰りますよー。』
何となく疲れた気分になりながらお店を出て、俺はさっさと隠れ家に転移した。
【目玉】が、ちゃんと付いて来たのかは知らん。
迷子になったり、誘拐されたりする心配が無いから、割とどうでもいいです。(ナゲヤリー)




