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姫様を助けたのは失敗だったが、割と好き勝手に生きています。  作者: 井田六
第十一章 異世界生活編06 新生活編
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< 08 事件07 王妃様視点 >


ふと、目を覚ましました。

真夜中です。

走る馬車の中です。

少し体を動かして、固まった体をほぐします。


今、私たちは走る馬車の中に居ます。

馬車は、王宮を出てからほとんどの時間を走り続けています。

引く馬を、先行している部隊が用意してくれた馬と途中で何度か交換しながら。

こんな強行軍きょうこうぐんは初めてです。

人目ひとめけたかったり、迂闊うかつに街に寄れなかったりするのは分かりますが、ここまでの強行軍きょうこうぐんは必要だったのでしょうか?

もしもの時の為の訓練を兼ねているのかもしれませんね。

今のメイド長は真面目まじめですから。

でも、私と娘の居ないところでやってくれても、良かったのではないでしょうか?

文句を言っても、『本番でないと緊迫感が出ませんから。』とか言われそうですね。

今のメイド長は真面目ですから。

ふぅ。

諦めましょう。

昼には目的地に着くのですし。


私の肩にもたれ掛かっている娘を見ます。

よく眠っています。

一度だけ、おトイレ休憩で起きた以外、ずっと眠っていますね。

泣かれるよりは眠っていてくれた方ががたいのですが、ずっと眠っていられると、それはそれで心配になります。

娘の寝顔を眺めます。

可愛い寝顔です。

人妻になったのが信じられない気がします。

もっとも、新婚早々に問題が起こって、こうして人目ひとめけて移動しているのですが…。

気持ちがモヤモヤします。

もうひとねむりしましょう。

今の私に出来る事など何も無いのですから。



朝。

街道の脇に馬車を止めています。

馬車の外ではメイドたちが朝食の準備をしてくれています。

ちょうど、馬車の中で娘と二人きりですので、娘と話をします。

ここに来るまで娘はほとんど眠っていたので、休憩の時に行先いきさきを教えたくらいしか言葉をわせていませんでしたので。

娘に、メイド長から聞いた内容と、メイド長が予測したナナシさんが戻って来るまでの日数について話します。

娘は涙を流しながら黙って聞いていました。

「ナナシさんは戻って来てくれます。」

「書き置きを残してくれたのがその証拠です。戻って来る気が無ければ、書き置きなど残しません。」

「あなたは、ナナシさんに見捨てられていません。その事を誇りに思いなさい。」

「ナナシさんがあなたのところに戻って来るのは、あなたがナナシさんの妻だからです。」

「ナナシさんが戻って来たら笑顔で迎えてあげなさい。それが妻の役目です。」

うつむく娘は、小さくうなずきました。

馬車の中で娘と朝食を食べました。

ちゃんと食べてくれたことに安堵あんどしました。

そう言えば、娘は昨日、朝食しか食べていませんでしたね。

ずっと眠っていましたから。

なかいていて当然ですよね。

メイドが食器を下げに来ました。

娘が「ありがとう。」と声を掛けました。

メイドが笑顔を見せます。

これで重苦しい雰囲気がやわらげばいいですね。



昼過ぎ。

目的地の街が大きく見えています。

馬に乗った衛兵えいへい先導せんどうしてくれて、そのまま門を通過して街に入りました。

先行していた部隊が話を付けてくれていたのでしょう。

そのまま衛兵の先導で、アンの実家であるサーリス伯爵邸に着きました。

開け放たれた裏門を滑り込み、屋敷の裏口に馬車が横付けされました。

見事な手際てぎわです。

伯爵の手腕しゅわん垣間かいま見えますね。

屋敷に入ると、アンが出迎えてくれました。

シルフィと抱き合い、久しぶりの再会を喜んでいます。

シルフィのことはアンに任せましょう。


客間きゃくまに通されると、すぐに伯爵が会いに来てくれました。

急な訪問を伯爵に詫びます。

そして大まかな事情を説明し、しばらくの間シルフィをここに置いておいてもらう様にお願いします。

伯爵はこころよく引き受けてくれました。


そして、もう一件のお願いをします。

ナナシさんが勝負の報酬で受け取った公爵領の経営について、人を貸してもらえる様にです。

このサーリス伯爵領は伯爵の手腕により発展、成長しましたが、それは間も無く頭打あたまうちになります。

そうなるとこの先、領地を発展させる手腕と経験を持ちながら、手柄を立てられなくなる者が出てくるということです。

その者たちに別の領地でその手腕を振るう機会を与えれば、手柄を立てる機会が無かった者たちにその機会を与えることが出来ます。

伯爵にとっても利益のある話です。

こちらのお願いも、こころよく引き受けてくれました。

詳細は後日、大臣と詰めてもらうことにしてもらい、私がここでしなけばならない仕事は終わりました。

伯爵に断って休ませてもらいます。

明日は、その公爵領へ行かなければなりませんので。


ずっと馬車にられどおしだったので、もうクタクタです。

メイドに【クリーン】の魔法を掛けてもらい、着替えてベッドに入ります。

横になり、明日の予定を頭の中に思い浮かべます。

明日は、公爵領へ行きます。視察と言う名目で。

娘と一緒にここに来る為に、急に作った用事です。

明日の朝にここをち、途中で私が乗っている事になっている馬車と合流し、乗り換えて公爵領に入ります。

明日も長い時間馬車に揺られることになります。

そう思うと、うんざりしますね。


そんなことを考えていたら、意識が落ちていきました。


2020.01.30 修正

年末年始にの第一章から第三章までの加筆修正をした際に、アンの実家の伯爵家の家名をまだ付けていなかったと思って付けたのですが、既にここで家名を付けていました。

新しい方の家名で統一します。

アンの実家の家名は”サーリス伯爵家”です。

ついでに、ルビの追加と、語尾の見直しをしました。


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