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姫様を助けたのは失敗だったが、割と好き勝手に生きています。  作者: 井田六
第十一章 異世界生活編06 新生活編
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< 07 事件06 ナナシの自由時間 【物理無効】の結界の弱点を考える >


隠れ家で昼食を終えた。

【多重思考さん】たちには、料理をお願いすることにした。

これで俺が何もしなくても、【無限収納】の中に料理が溜まって行くね。

そう思ったが、頭の中で【多重思考さん(多重思考された人(?)たちのリーダー)】にツッコまれた。

『食材が無いと作れませんからね。』と。

ああ、そうだったね。忘れちゃいけないよね。

うん。食材、大事だいじ

『ですが、畑があれば作物を育てて、収穫して、料理して、種まきして、また収穫しますよ。』

………………。

あれ?

すごくない?

畑があれば、食材を用意する必要も無くなるの?

すげぇ。

畑が欲しくなるね。

領地が在るから、畑も何とかなりそうだね。

いや、いっそのこと荒野に畑を作るか。

荒野を緑地化できるのだったらしたいよね。

ボッコボコにした荒野の埋め合わせ的な意味でも。(苦笑)

荒野に畑を作るのは魔法で何とかなるかな? なるよね。

ゴーレムで耕して、石があったら【分離】魔法さんで取り除いて、水は魔法で作り出して、お日様だって【ゲート】を使えば自由自在だよね。

あれ?

魔法って農業に最適ぢゃね?

俺、最強の農家になれちゃわない?

【多重思考さん】たちが畑を作り、作物を作り、収穫して、料理して。

そして、俺は食べるだけ。

すげぇ。

最高ですね。

うん。夢が広がるね。


俺が頭の中で夢を広げていると、【多重思考さん】に話し掛けられた。

『結界魔法を改良しましょう。』と。

「なんで?」

意識が夢の中へ行っていたので、ぶっきらぼうな返事になってしまった。

ちゃんと意識を向けて考えよう。

結界魔法に何か問題って在ったっけ?

ああ、【目玉】が【魔法無効】の結界を無効化してしまう問題が在ったね。

『それは対策不可能です。』

【多重思考さん】にさらりと言われた。

「あれ? そうなの?」

対策を頭の中で考える。

考える。考える。

「うん。無理! 確かに対策不可能だわ。」

俺が考えている間待ってくれていた【多重思考さん】が頭の中で言う。

『姫様の身を守る為の魔道具の結界魔法を改良しましょう。まだまだ改良の余地があると思います。』

そう言われて少し考える。

昼食前に、シルフィの体に結界を張った。

改めて、魔道具をどうこうする必要って有るのかな? 無いんぢゃないのかな?

『やれやれだぜ。』って感情を、頭の中に感じます。

時々失礼だよね、【多重思考さん】。(苦笑)

『姫様に身を守る為の魔道具をプレゼントする事に、大きな意味が有るのです。』

ああ、そうか。

謝罪の意味でだね。

うん。重要だね。

はい。重要です。

『それに、本体さん(=俺のこと)が死んだ後は、結界を張り直す事が出来なくなりますから。』

ああ、そうか。

そう考えると、魔道具も大事だいじだね。

それぢゃ、結界の『改良の余地がある』と言う内容について、【多重思考さん】から話を聞くことにしよう。


【多重思考さん】いわく。

『【物理無効】の結界は、”熱”や”強い光”には効果が無いのではないでしょうか?』

『結界の効果範囲の確認と、効果範囲外のモノに対する対策を考えるべきでしょう。』

とのことだった。

言われてみたら、この【物理無効】の”物理”って、漠然ばくぜんと”魔法の反対語”みたいな感じに考えていたね。

でも、キチンと考えたら、この場合の”物理”って、剣の攻撃や打撃みたいなモノの事だよね。

【多重思考さん】に言われた”熱”や”強い光”の他にも”大きな音”なんてのも、この場合の”物理”からははずれていそうな気がするね。

うん。

一度、【物理無効】の結界の効果範囲の確認をしてみた方が良さそうだね。

その後、対策が必要なら、その対策も考えることにしよう。

よし、実験してみるか。


この隠れ家から移動する前に釘を刺しておく。

「新魔法の披露は要らないからね。」

『………………。』

俺はさっさと、いつもの荒野に転移した。


いつもの荒野に来た。

【多重思考さん】は無言だ。

ねているのかもしれないね。(苦笑)


よし、実験方法を考えよう。

いや、実験の目的を明確にするのが先かな? 先だね。

これをしておかないと、レポートが纏まらないからね。(経験談)

思わず、レポートを何度も書き直す羽目になった過去の出来事を思い出して、遠い目になってしまいます。(苦笑)


考えた結果、こうなった。

実験目的:【物理無効】の結界の効果範囲を調べる。(出来る範囲で)

実験項目:強い光、熱、大きな音

実験方法:【物理無効】の結界で、上記のものから保護対象を守れるか確認する。


実験項目は、体にダメージを受けそうなモノに限ったのだが、他に無いよね?

うん、無いな。これでいこう。


先ず、”強い光”からやるか。

前に新魔法披露で見せてもらった、光を集めてゴブリンを燃やした時のやり方で良さそうだしね。

保護対象マトは、何にするかな?

【無限収納】のリストを見る。

”ビッグベアの頭”というのが有った。

これは、毛皮をいで、肉を料理に使った後の、その残りっぽいな。他にも”ビッグベアの手”とか”ビッグベアの足”とか有るし。

これにしよう。

10mくらい離れた場所に”ビッグベアの頭”を出して、【物理無効】の結界を張った。

よし、やるぞ。

沢山たくさんの【ゲート】を使って、”ビッグベアの頭”に光を当てると同時に光を曲げて収束させる。

”ビッグベアの頭”は、あっさりと燃えた。

全然ダメっぽかった。(苦笑)

でも、ダメなのは分かったが、今のやり方だと熱も発生するから、光の影響なのか熱の影響なのかが分からなかったね。

実験方法を考え直さないといけないな。

純粋に光だけで実験できる方法を考えよう。

考える。考える。

しかし、良さそうな別の実験方法が思い浮かばない。

何をしても熱が発生してしまう気がするな。

うーん。

分からん。

別の実験を先に済まそう。


今度は”熱”の実験をするか。

そのへんに転がっている石に【ヒート】の魔法を掛けて発熱させて、【物理無効】の結界で覆った紙でも近付ければいいよね。

【無限収納】のリストを見たら、”枯れ葉”がいっぱい有ったので、手の平の上に一枚出す。

枯れ葉に【フライ】の魔法を掛けて浮かせ、【物理無効】の結界で覆う。

それを、【ヒート】の魔法を掛けて発熱させた石の上に移動させた。

「………………。」

ちょっと時間が掛かりそうだったが、『実験なんだから仕方が無い。』と自分に言い聞かせる。

「………………。」

が、待ち切れなくなったので、【ヒート】の魔法に魔力をマシマシして石を赤熱せきねつさせた。

それで無事に、枯れ葉が燃えた。

よし。

…石を発熱させる事にばかり意識(と魔力)が集中してしまったが、【物理無効】の結界が”熱”に対して有効かどうかの実験だったね。

そうそう。

忘れてなんかナイデスヨー。(苦笑)

【物理無効】の結界が”熱”を防ぐ効果が無い事が分かった。


次は”大きな音”の実験をするか。

”大きな音”は、どうやって作り出したらいいんだろうな?

大きな音を考えていたら、打ち上げ花火を思い出した。

「爆発か…。」

爆発から音以外をのぞけばいいのかな?

うーん。

爆発は、急激な燃焼で、体積の膨張によってまわりの物を退けるんだったよな。

音は、空気の振動だ。

少し考えたら、爆発によって発生する、空気を押し退けようとする”力”は、【物理無効】の結界で防げる気がした。

【物理無効】の結界の中で爆発を起こせば、爆発の衝撃は結界の外に出ないで、音だけが外に出るのかな?

そんな気がするな。

確認してみよう。すぐに出来るから。

【物理無効】の結界を張り、その中で【ファイヤーボール】を爆発させた。

ドーーン

音だけが出て来た様だ。

…音だけ抽出ちゅうしゅつして、【物理無効】の結界の実験に使おうと思っていたのだが、音を抽出するのに【物理無効】の結界を使うことになって、結果として『【物理無効】の結界には”音”を防ぐ効果が無い。』ということが分かった。

「………………。」

「よし。(←何となく納得できないが、結果が出た事は理解できた)」


『改めて、光の実験を。』と思ったが、ダメージを受けそうなのは結局”熱”の様な気がするので、最初の実験でもういいや。

それに、よく考えたら【物理無効】の結界を張っても向こう側が見えるのだから、光を”無効化”していないよね。

【物理無効】の結界では”光”を防いでなかったね。

もっと早く気付こうな、俺。

色々とグダグダですが、いつものことです。(開き直んなよ)


”強い光”と”熱”と”大きな音”を防ぐ方法を考えよう。

これらの中で”光”と”音”については、すでに【遮光しゃこう】と【遮音しゃおん】の結界が在る。

これらの結界の持つ”防ぐ能力”が十分なのかを確認すれば良いだけなので、これらは後回しでいいよね。


”熱”を防ぐ方法について考えよう。

熱を防ぐと言えば”断熱”だね。

魔法瓶(てき)な考えでいいのかな?

となると、”真空”か。

結界を二枚張って、その間の空気を退かしてしまえば、真空の層が出来て熱を防げるよね。

簡単だね。

あ。

そうすると結界の外側から結界の内側に、空気を取り込めなくなるか。

呼吸が出来なくなっちゃうね。

アカンやん。

いや、真空の層に空気の通り道を作っても、その通り道の延長線上に人が居ない様にしておけば、熱によるダメージを受けないかな?

熱の移動は直線的ぢゃないからダメかな。

いや、真空の層を何層にもすれば大丈夫そうだね。

空気の通り道を熱が通っても、何度もくねくね曲げさせれば、熱が通るのを遅くする事が出来るよね?

でも、それだと、結界に厚さが無ければ効果が無さそうだね。

ペラペラの結界だったら、すぐに熱が届きそうだ。

いや、遅くするだけぢゃダメかな?

もっと、しっかりと防ぎたいね。

うーん。

”断熱”以外に何か別の方法って有るのかな?

考える。

”反射”かな?

有効なのは、”断熱”ではなく”反射”かもしれないな。

どうすれば、熱って反射できるんだ?

そう言えば【リフレクション】って魔法が在ったね。

【リフレクション】の魔法って”熱”は反射できないのかな?

「おーい、【多重思考さん】。そのへんどうなのー。」

少しのあと、頭の中に【多重思考さん】から返事か来た。

『調べました。【リフレクション】で熱を反射できます。』

やった。

さらに【多重思考さん】が続ける。

『結界に付与できますので、【物理無効】の結界に【リフレクション(熱)】を付与しましょう。』

おおっ。やったね。

熱に対する対策が出来た。


”熱”に対しては【リフレクション(熱)】。

”光”に対しては【遮光】結界。

”音”に対しては【遮音】結界。

これらで対策が出来そうな事が分かった。

次は、これらの性能を確かめないとね。

あまり性能が低い様だったら、身を守れないからね。


早速さっそく実験しました。

ドッカーーンでした。

『手加減ェ…。』

【多重思考さん】の心底しんそこあきれた様な声が頭の中でします。

さらに【多重思考さん】が頭の中で言う。

『またSTR(Strength)の値を上げて、体の調子を確認してみてはいかがでしょうか?』

「………………。」

どう見ても、『お前邪魔だから、どっか行けよ。』って言われている気がします。(半泣き)

俺はその言葉に従って、確認作業は【多重思考さん】に任せることにした。

『適材適所だから。適材適所なだけだから。』と自分に言い聞かせながら。

いじけてなんかいません。


自分のSTRの値を【ステータス】の魔法で少し上げて、走ったりして体の調子を確認した。

『慣れてきたかな?』と思ったところで、頭の中で【多重思考さん】から報告を受けた。

『”熱”と”光”と”音”についての対策は、それぞれ十分と言って良い性能が有ります。』

『非常識なほど強力な魔法でない限り防げます。』とのことだった。

「すいませんねー。非常識でー。(いじいじ)」


今回検証したそれぞれの結界は、俺に掛けて、しばらくの間実験するとのこと。

様子を見ながら、結界を通過させる設定範囲を、危険や不便が無い様に調整してくれるそうだ。

全部遮断すると、何も見えなくなっちゃりするから当然だよね。

調整は【多重思考さん】がしてくれるそうなので、任せておこう。


そして最後に【多重思考さん】からネックレスチェーンについての要望を受けた。

『姫様の身を守る為の魔道具に使うネックレスチェーンは、ミスリル製にしてください。』

『魔力が不足しそうなので、ミスリル製のネックレスチェーンをとおして姫様の体から少し魔力をもらいたいと思います。』

『姫様のMP(Magic Point)は十分に高くなっていますので、少し魔力を貰っても問題ありません。』

とのことだ。

うーん。まぁいいか。

そうしよう。

「ところで、そのミスリル製のネックレスチェーンなんだけど、王都で買えるのかな?」

『買えます。前に行った魔道具屋さんでも売られています。』

それぢゃあ、あの魔道具屋さんで買うことにするかね。

『よし、買いに行くか。』と思ったが、ダンジョンから帰って来てからでないと、買いに行けなかったね。

って、何度目だよ、これ。

その内、うっかり王都に行ってしまいそうです。冗談抜きで。

今の俺って、自由そうで、あんまり自由ぢゃないよね。

「はぁ。」

溜息ためいきが出た。


これで、【物理無効】の結界の弱点の、出来る対策は済んだのかな?

うん。済んだよね。

帰ろうと思いながら、すかさず、【多重思考さん】に言う。

「新魔法の披露は要らないからね。」

『………………。』


一仕事ひとしごとえた俺はさっさと、隠れ家に転移した。


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