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姫様を助けたのは失敗だったが、割と好き勝手に生きています。  作者: 井田六
第十一章 異世界生活編06 新生活編
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< 05 事件04 ナナシの自由時間 シルフィの為に出来る事 >


『やってしまったことは仕方がない。』

隠れ家で頭を抱えていた俺は、そう思うことにした。

取り敢えずお風呂に入って、心を落ち着かせた。


お風呂から上がって、ソファーに座って考える。

この10日間でやるべき事を。

そもそも俺は何をしようとしていたんだったっけ。

何かを買おうと思っていたよな…。

ぼーっとする頭で考える。

シルフィのペンダント…。シルフィの身を守る為の…。

あぁそうだ。ネックレスチェーンを買うんだったな。

シルフィの身を守る為の魔道具に付ける為のネックレスチェーンを。

そう。王都のアクセサリー屋さんで。

………。

今の俺は、王都を歩き回る訳にはいかなかったね。

ダンジョンに行っている事になっているんだからね。

そもそも、今、手に入れたところで、シルフィには渡せなかったね。

ダンジョンから帰って来てから渡さないとね。

いや、ダンジョンから帰って来て、それから買い物に行ってから渡すのか。

………。

肖像画を描いてもらってから外出して買い物すれば、今日中にシルフィに渡せたよね。

身を守る為のペンダントを。

シルフィの為に作った、シルフィの身を守る為のペンダントを。

そうだね。今日中に渡せたね。

………何をやってるんだろうね、俺は。

「はぁぁぁ。」

深い溜息ためいきが出た。


ソファーで横になり、落ち込む俺。

「ん?」

俺は、唐突とうとつにある事に気が付いた。

シルフィの身を守る方法は、魔道具以外にも有ったよな。

ステータスをいじって、HP(Hit Point)の値を大きくしておけば、万が一の場合も大丈夫だよな。

即死しなければ、治癒魔法で治せるし、ダンジョンに霊薬を取りに行ってもいいし。

他にも【耐性】を付与するって方法も有るよね。

そうだよ。

それなら、”今”でも出来るよね。

俺は早速さっそく、シルフィのステータスの値を上げる事にした。


シルフィの護衛に付けている【目玉】を通して、シルフィの姿を見ながら【ステータス】の魔法を発動する。

俺の目の前にシルフィの”ステータスの一覧”が表示された。

早速さっそくシルフィのステータスの値を書き換えていく。

ずHP(Hit Point)の値を上げよう。

最大値は9999だったはず。何の躊躇ためらいも無く9999にした。

MP(Magic Point)も同じく9999にした。

STR(Strength)の値はそのままの値でいいね。マッチョなシルフィなんて、かわいくないし。

DEX(Dexterity)は”器用さ”だったな。この値も少し上げておこう。

VIT(Vitality)の値は多めに上げて300にしておこう。ダメージをにくくなるはずだし。

AGI(Agility)は”敏捷さ”だったな。この値も多めに上げて300にする。

INT(Intelligence)の値も上げておこう。シルフィのお仕事に有益だろう。

MND(Mind)は”精神力”だよな。

精神力か…。

MNDの値を上げたら、泣いていたのがケロリを泣き止んでしまったりするのかな?

不自然なことになってしまうかもしれないな。

うーん。

取り敢えず今は値を変えないで、後で様子を見ながら値をいじることにしよう。


ステータスの値を書き換えて、再び”ステータスの一覧”を表示させる。

シルフィのステータスの値はこうなった。

”HP(Hit Point) :120/120”

”MP(Magic Point) :190/190”

”STR(Strength) :9”

”DEX(Dexterity) :72”

”VIT(Vitality) :70”

”AGI(Agility) :90”

”INT(Intelligence) :81”

”MND(Mind) :22”

”LUK(Luck) :80”


入力した値がそのままの値で反映される訳ではないのは、以前、自分の値をいじった時と同様だね。

HPが120というのは、どの程度の値なのだろうか?

『ベテラン冒険者の戦士並みです。』と、頭の中で【多重思考さん】が教えてくれた。

うーん。

不満ではあるが、9999と書き換えてこの値になっているのだから、俺に出来るのはここまでだよね。

納得するしかないよね。

それに、護衛として【目玉】を付けているのだから、そうそう滅多な事も起きないよね。

うん。OK。

少し間、シルフィの”一桁しかないSTRの値”をながめてなごんだ後、【耐性】を付与する作業に移る。


俺の体に付与されている【耐性】は以下の通りだ。

【毒耐性】、【麻痺耐性】、【状態異常耐性】、【疲労耐性】、【睡眠耐性】、【乗り物酔い耐性】、【精神魔法耐性】、【石化耐性】、【恐怖耐性】。

これらすべてをシルフィに付与して、問題無いかな?

【状態異常耐性】と【精神魔法耐性】と【恐怖耐性】が心配かな?

【精神魔法耐性】を、今、付与するのはダメだよね。

【スリープ】で眠らせたり、良い夢を見させたりしているからね。

【恐怖耐性】はどうだろう?

もし、シルフィが俺に捨てられると恐怖心をいだいていたら、付与した後でシルフィの様子に変化が出てしまったりするかな?

いや、無用の心配をして恐怖心をいだいているのなら、取り除いてあげないといけないか。

うん。【恐怖耐性】は付与しよう。

【状態異常耐性】は、効果範囲がよく分からないな。

うーん。

【状態異常耐性】は、今は見送っておこう。

よし、【状態異常耐性】と【精神魔法耐性】を除いた、他のすべての【耐性】を付与しよう。

俺は、サクッとシルフィに【耐性】を付与した。


満足していたら頭の中で【多重思考さん】に、『結界も張りましょう。本体さん(=俺のこと)と同様に【侵入不可】、【魔法無効】、【物理無効】、【偽装情報発信】の結界を。』と言われた。

ああ、そうだね。そうしよう。

ん?

「いやいや、【魔法無効】の結界はダメでしょ。【スリープ】が効かなくなるから。」

『大丈夫です。魔法を掛ける方法が在りますので。』

「いやいや、魔法を掛ける方法が在るんだったら、【魔法無効】の結界を張る意味が無くなっちゃわない?」

『今の【目玉】を使えば、【魔法無効】の結界を無視して魔法を掛けられます。』

「え? そうだったっけ?」

………。

ああ、そうか。

”今の【目玉】”は、”空間魔法を使った結界魔法”の中に居るから壁とか通り抜けられるからね。

「【目玉】を対象の体に重なった状態にして、その【目玉】を通して対象の体の内側から魔法を掛けるってこと?」

『その通りです。』

そうか、そういう魔法の使い方は考えていなかったけど、確かに出来るね。

そうかー、【魔法無効】の結界を無効化できるのかー。

その手段が存在する事を知って、俺は怖くなった。


以前俺は、ステータスの値を変えられる魔法の存在を知って、『魔法ヤバイ。』と思った。

その時は、【魔法無効】の結界で防げることを知って、安堵した。

今、俺は、【魔法無効】の結界を無効化できる方法が在る事を知った。

ふりだしに戻った。

「魔法ヤバイ。」

「魔法マジヤバイ。」

「うひゃーーーー。」


魔法がマジヤバイって事は、ひとまず置いておこう。

うん。

ひとまず置いておく。

シルフィの体にも俺と同様に結界を張って、シルフィの身を守ろう。

って言うか、そもそもシルフィに渡す魔道具で結界を張るつもりだったのだから、『初めにやれよ。』って気もするね。

そして、【偽装情報発信】の結界。

これも重要だね。

俺が値をいじったシルフィのステータスを他の人に見られない様に、これは必須だ。

一目ひとめ見て、不自然だと分かる値だからね。

【ステータス】の魔法は悪用すると、すごくヤバイ。

だから、【ステータス】の魔法を俺が使える事は知られない様にしないといけない。

他人ひとに知られてはいけない事が多い気がしますが、今は考えないでおきます。


俺は、サクッとシルフィに結界を張った。もちろん【目玉】を通してだ。

結界には有効時間が在り、それは約一日だ。

俺の場合は【多重思考さん】が結界を張り直してくれている。

シルフィの体に張った結界も、シルフィの護衛をしている【多重思考さん】たちにお願いしよう。

よろしく頼む。


自分勝手な自己満足だが、シルフィのためになる事が出来たので、俺は満足した。


設定

一般人のステータスの値は、だいたい15~25くらいです。

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