< 04 事件03 >
俺は、隠れ家のソファーに座って【多重思考さん(多重思考された人(?)たちのリーダー)】から、【多重思考さん】のした行動の説明を受けている。
その説明によると、俺が【多重思考さん】に促されるまま体の操作のすべてを任せた後、メイドさんに掴まれていた腕を【風刃】で切断して、【転移魔法】でこの隠れ家に逃げたんだそうだ。
そして、切断した腕は霊薬を使ってすぐに回復させた。と。
うん。かなり頭のおかしい行動だよね。
間違い無く、王宮で騒ぎになっているよね。
こんな事をしでかした理由を、キッチリと説明してもらおう。
【多重思考さん】曰く。
『これで、行動を制限しようとする人が居なくなる。』
うん。そうだね。
こんな頭のおかしい行動をされれば、危険人物扱いだよね。
近付くことさえ躊躇われるよね。
それどころか、目を合わせることすら避けられちゃうかもね。(泣)
『ダンジョンを攻略するのに掛かる日数分の、自由な時間が得られる。』
うん。そうだね。
むしろ、早く帰ったら、余計に説明が面倒になりそうだよね。
正直に『霊薬を持っていました。』なんて言ったら、すごく怒られそうだね。
『メイドさんたちをダンジョンに派遣することになると思われるので、メイドさんたちがダンジョンを攻略の手助けをして霊薬を手に入れさせれば、恩を売ることが出来る。』
うーん。
霊薬を国が持っているというのは良いと思う。万が一の時の備えとしてね。
でも、それをしたとしても、『恩を受けた。』と思ってもらえないかもしれないね。
それどころか、ダンジョンに人を派遣させた事について、危険手当とかを要求されたりするかもね。
霊薬を持ち帰る事で、起こした事件の衝撃を弱める効果が有るかな? 有るといいな。
『ダンジョンでメイドさんたちに能力の高さを見せ付けて、不興を買う様な行動をさせない様にすることが出来る。』
既に危険人物扱いだから、それはもういいよね。(泣)
【多重思考さん】がしでかしたことの効果は聞いた。
次に霊薬について訊く。
「いつ、手に入れていたんですかね? 霊薬。」
結婚式のあった日の翌日に手に入れていたんだそうです。
ダンジョンを攻略して。
びっくりだね。
俺が王宮でいっぱいお勉強をさせられていた頃に、【目玉(もうこれが正式名称でいいや)】たちを使ってダンジョンを攻略していて、無事に攻略できたんだそうだ。
「何で黙っていたんですかね? ダンジョンの事も霊薬の事も。」
『霊薬を持っている事を知っておかしな行動をされても困るので、黙っていました。』
「その”おかしな行動”をした人(?)に言われてもなっ!」
「とんでもなく説得力が有る言葉だよっ!」
俺はソファーでガックリした。
次に、今後の行動について【多重思考さん】に意見を聞く。
かなりの日数が空くからね。
ダンジョンを攻略するのに掛かる日数だよね。
「ダンジョンって何階層あったの?」
『50階層ありました。』
「50階層か…。」
1日1階層とすると50日か。
いや、俺が【転移魔法】を使える事はガッツリと知られているから、1日3階層くらいかな?
1日3階層とすると17日か。そのくらいの日数の間、王宮に帰れないよね。
『新魔法の披露が捗りますね。(ニッコリ)』
「それは要らない。(バッサリ)」
【多重思考さん】から追加で報告があった。
王宮ではシルフィが泣き崩れていたとのこと。
その為、シルフィを【スリープ】で眠らせたとのこと。
シルフィの護衛として付けている【目玉】を通して【スリープ】の魔法を掛けて。
「シルフィには申し訳ないことをしてしまったな…。」
眠らせたシルフィには【精神魔法グループ】の者を付けていて、良い夢を見させているとのこと。
今、俺がシルフィにしてあげられるのは、そのくらいの事しかないか…。
よろしく頼む。
それと、俺が10日くらいでダンジョンを攻略して戻ると思われているとのこと。
50階層だから、1日3階層とすると17日。1日5階層なら10日だが…。
「1日5階層も攻略できる?」
『下の階層へ行く階段を見付け出す手間が有りますので、初見では不可能ですね。』
『既に霊薬を持っていたと思われたのかもしれません。』
「………。」
「え? それってやばくね? 帰ったら怒られるよね?」
でも、”既に霊薬を持っていた”と思われているなら、10日っておかしいよね?
霊薬を飲んで腕を治して、すぐに帰れるからね。
「”10日”って何処から出て来たの? 本気で1日5階層も攻略できると思ってるのかな?」
『『姫様の為に10日で帰って来い。』というメッセージかもしれません。』
「………。」
「あれ? メッセージって事になると、シルフィの護衛の為に【目玉】を付けているってバレてない?」
『そうかもしれません。』
「………。」
色々バレすぎぢゃないですかね?
色々バレすぎぢゃナイデスカネー。
どうしてこうなった。
やばくないですかね?
帰ったら怒られるよね?
メイドさんたちを怒らせたら俺ヤバイよね? 死ぬよね? 死ぬかな? 死ぬな。
うん。
オワタ!! \(^o^)/
いやいや、結界が在るから大丈夫か。
結界が在るから大丈夫だよね。
それに護衛役の【多重思考さん】たちも居るから、【シールド】の魔法で守ってもらえるし。
うん。大丈夫だ。
少し落ち着こうか、俺。(びくびくぶるぶる)
10日で帰れば、『精一杯、全力全開で頑張ったと見做して許してあげます。』ってことなのかな?
そうだといいな。
うん。そうだといいなっ。(切実)
シルフィの様子を考えれば、あまり長くは放っておけないし。
うん。10日で帰ろう。
それ以外にも、何か”ゴマを擦るモノ”が必要なんぢゃないかな?
何か考えないといけないね。
「はぁ。」
溜息が出た。
何だか、”自由になる時間を得る”どころの話ぢゃ無くなっちゃってないかい? 【多重思考さん】。
どうしてこうなった。
ほんと、どうしてこうなった。
俺は隠れ家で頭を抱えた。
設定(裏話)
【目玉】は正式名称になりました。
【目玉(仮称。魔法で作られた目)】から進化して【New目玉(仮称。空間魔法を使った結界魔法の中にいる目玉。触れない見えない魔力検知もされない)】になったので、「【New目玉(仮称)】はどうしたものか…。」となり、「もう【目玉】でいいや。(ナゲヤリー)」となりました。
王宮でガッツリとお勉強させられて、フラフラになっていた頃の出来事でした。




