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姫様を助けたのは失敗だったが、割と好き勝手に生きています。  作者: 井田六
第十一章 異世界生活編06 新生活編
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< 01 結婚式終了 >

成り行きで助けた人が姫様だった。

その後、色々あって、助けた姫様と結婚することになった。

これからは、王宮でのんびり過ごします。

…のんびり過ごせるよね?


< ナナシ付きのメイドさん視点 >


姫様とナナシ様との結婚式が終わりました。

今日で、失敗の許されない、もの凄く忙しい日々から解放されることでしょう。

もっとも、まだしばらくは忙しい日々が続くのですが…。


静けさを取り戻しつつある王宮の一室。

ナナシ様のお部屋でベッドメイクをしつつ、ホッと一息ひといききます。

そんな時に、ふと、気が付いた事が有ります。

そう言えば私、ナナシ様に名前を呼ばれた事が有りませんでした。

ナナシ様に最初にお会いした時に、自己紹介をさせていただいたと思います。

ですが、ナナシ様自身、ここに長居する事になるとは思っていなかったのでしょう。

その為、私の名前を憶えてくださっていない様に思います。

改めて自己紹介というのもおかしいと思い、『どの様に名前を呼んでもらいましょうか?』と、考えます。

そう言えば、今夜からナナシ様のお部屋が移動になりましたね。

今までは姫様のお部屋の隣の隣でしたが、ご結婚を機に姫様のお部屋の隣になりました。

それと同時にナナシ様の担当をするメイドも一新いっしんされ、私も今までの”部屋付きのメイド”から”ナナシ様付きのメイド”に変わりました。

引き続きナナシ様のお世話をさせていただけるのは嬉しいのですが、同僚となる者たちを見ると何とも言えない気分になります。

皆、あの部分がつつましかったので…。

この人選はきっと、姫様に甘い王妃様の意向でしょうね。

ナナシ様の目が、胸の大きなメイドたちの方へ行かない様にする為に、そうされたのでしょう。

私自身、大きくはないとは思っていましたが、つつましいがわに入れられてしまったという事実にガックリします。

『そう言えば、この部屋付きだった方は胸がオオキカッタデスネー。』

余計な事を思い出して、さらに何とも言えない感情が湧き上がってきて、落ち込んでしまいます。

いえいえ、落ち込んでいてはいけません。

引き続きナナシ様のお世話をさせていただけるのです。

その事を喜びましょう。

『鎖骨ばんざい。』

うんうん。

しかし、お部屋が移動になったのは良い機会です。

改めて自己紹介をして、ナナシ様に私の名前を憶えていただき、名前で呼んでいただけるようにお願いしましょう。


お部屋の前でナナシ様のお帰りを待ちます。

帰って来られました。

姫様の部屋の前で姫様と別れ、こちらに歩いて来られます。

人形の様な歩き方です。

目が死んでいます。

これはダメな状態ですね。

この様な状態は、最近よく見られます。

姫様とのご結婚の為に、今日まで様々な教育を受けておられていました。

公爵家との勝負が終わった日からずっと。

一日の休みも無く、一日中。

毎晩、ベッドに直行しておいででした。

今のナナシ様の状態は、私の名前を憶えていただくどころの状態ではありませんね。

ナナシ様の腕を取って、ベッドに誘導します。

「さぁ、脱ぎましょうねー。(喜)」

「「自分で出来るから。」とかおっしゃらずにー。(喜)」

結界を張られました。

真っ黒なヤツを。

ちっ。

「私の鎖骨がー。」orz

今夜も駄目でしたか…。

なんで、あんなに疲労困憊ひろうこんぱいなのに、簡単に魔法を使えるんでしょうね。

何でなんですかね?

まぁ、考えても仕方が無いですね。

普通ではないお方ですし。

鎖骨には明日の朝に再挑戦しましょう。

朝の方がガードがゆるいですからね。(にやにや)

…鎖骨の他にも何か有りましたよね?

ああ、私の名前を憶えていたただくのでしたね。

うーん。

ナナシ様の今の状態を考えたら、しばらくは無理かもしれませんね。

明日以降も国賓の方や貴族の方とのパーティーやご挨拶がありますし…。

しばらくは様子見ようすみですね。


姫様がいらっしゃいました。

新しく作られた直通の扉を通って。

姫様に礼をします。

姫様は、ベッドを覆う結界を見て、戸惑っていらっしゃいます。

姫様に誤解を与えてしまわない様にご説明します。

ナナシ様が姫様を拒絶している様に思われてはいけませんからね。

「お召し物のお着替えをして差し上げようとしましたら、「自分で出来るから。」とおっしゃって結界を張られてしまいました。」

私は姫様に説明しながら、結界に手を触れます。

ぷにょんぷにょんして、中に入れません。

姫様も結界に手を触れます。

姫様の手はそのまま結界の中に入りました。

姫様は、そのまま結界の中に全身を入れました。

ちゃんと姫様は結界の中に入れるのですね。

少し驚いてしまいましたが、当然ですよね。

新婚初夜に結界を張って姫様を拒絶してしまっては、大問題になりますからね。

ちょっとだけ意外に思ってしまったのは秘密です。

姫様が結界から顔だけ出されました。

そして、イイ笑顔で「お休みなさい。」とおっしゃられ、結界の中に入られました。

私は、「お休みなさいませ。」と言って、礼をしました。


ナナシ様のお部屋を後にします。

自分の部屋に向かいながら、ナナシ様に改めて自己紹介をして名前を憶えてもらう様子を、頭の中で思い描きます。

しかし、しばらくは無理そうですね。

ナナシ様がのんびりできる状況になるまで、お預けですね。

そんなことを考えながら、その日が来るのが少し楽しみに思いました。



< ナナシ視点 >


結婚式が終わった。

疲れた。

凄く疲れた。

もう何もしたくない。

まぢそう思った。

「この後は晩さん会ですかー。アーソーデスカー。」

「………。」

俺は、あとの事を【多重思考さん(多重思考された人(?)たちのリーダー)】に代行してもらう為に、体の操作とかのすべてを任せて、こっそりと眠ることにした。


目を覚ました。

俺はベッドに仰向あおむけで寝ている様だ。

頭の中で【多重思考さん】から、俺がこっそりと眠っていた間の出来事の説明を受けることにする。

【多重思考さん】に体の操作とかのすべてを任せていたからね。

公爵家との勝負の後、毎日毎日やたらとお勉強させられて、かなり俺は”いっぱいいっぱい”な状態だった。

だから、時々【多重思考さん】に体の操作とかのすべてを任せて、俺自身はこっそりと眠るなんて方法を取っていた。

徐々にその時間が長くなって、最近では半日以上【多重思考さん】に任せて眠っていた気がするな。

疲れていたのだから仕方がないよね。

出来る方法で対策するのは悪い事ではないと思います。うん。

自己弁護を終わらせて、【多重思考さん】から頭の中で、俺がこっそりと眠っていた間の出来事の説明を受ける。

結婚式の後、晩さん会があって沢山の方々からお祝いの言葉を貰ったとか、先王せんおう様のズラがずれてしまって緊張が走ったとか、俺の部屋が姫様の部屋の隣になったとか、部屋付きのメイドさんが(今日も)着せ替えをさせたがっていたが結界を張って防いだとか、そんな話を聞いた。

ズラの話も気になるが、それよりも大事なことを訊かないといけない。

『もう一つ、話すことがあるんぢゃないの?』と、頭の中で訊く。

『もちろん姫様です。』と、簡潔な返事が返って来た。

うん。知ってる。

それは分かってる。

でも、それだけぢゃないでしょ。

『何もされていませんし、何もしていませんよ。』

そう、頭の中で言われて安心した。


仰向あおむけで寝る俺の上に、誰かが乗っている。

結婚式当日の夜なんだから、シルフィ(我が妻)だよね。

それ以外は有り得ない。

シルフィ以外だったら大事件だよね。

それに、”足りないふにょん感”もシルフィだと告げているしね。(←おい)

『それにしても…。』と、俺は思う。

シルフィは俺の体の上に乗って、俺に抱き着いている。

両手両足で。

その様子は、小学生が電柱に抱き着いて「セミの真似まねー。」とか言っている様子を思い起こさせる。

色気いろけなど、まったく感じない。

『”少し残念な姫様”とは思っていたが、ここまでだったとは…。』

シルフィの残念度は、俺が思っていた以上だった様だ。

思わず、「さすがだ…。」って声が出た。

何が”さすが”なのかは分かりませんが。

まだ、夜明けまで時間が有る様だったので、俺はもう少し眠る事にした。


『もう少し眠るつもり。』だったのだが、次に気が付いたら昼近くになっていた。

結局この日も、半日以上こっそりと眠っていました。(てへ)


設定(裏話)

王妃様とも相談して、子作りはまだしないことになっています。

シルフィが「胸なのっ? 胸なのねっ?」とか言って荒ぶりましたが、スルーされました。(←ひでぇ)

王様は始めからスルーされて、話し合いの席にも呼ばれませんでした。

王様ェ…。

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