< 21 (王都15日目 午後) 盗賊退治01 >
俺は、隠れ家で、まったりと過ごしている。
俺の望む”揉め事を避けて、のんびり過ごす”生活です。
ソファーで寛いでいたら、頭の中で【多重思考さん】に『盗賊退治をしましょう。』と、言われた。
何故、そんな事を言われたのか分からなかった。
まだ、お金はたんまりと有るからね。
そう思ったら、『武器や防具が欲しい。』との事だった。
そう頭の中で言われたのだが、何故、武器や防具なんかが欲しいのかが分からない。
さらに聞くと、以前、盗賊のところから奪った剣などは、溶かして鍬や金床にしたとの事だった。
ああ、『武器や防具が欲しい。』って言うのは、『何かを作る為の素材が欲しい。』って事ね。
どんだけ創作意欲に溢れてるんだよ。
いつの間にか隠れ家の前には畑が出来ていたしなっ。
頭の中で【多重思考さん】に、捕らえられている人が居なくて、剣とかを沢山持っている盗賊が居るか訊く。
『ちょうどいいのが居ますよ。』とのことだったので、【多重思考さん】の要望通りに盗賊退治をする事にした。
王都からかなり東に離れた場所に来た。
今、俺は、盗賊たちが”仕事”をする街道を、高い位置から眺めている。
眺めているのは、盗賊たちの仕事を見る為だ。
この先、盗賊退治が収入の柱になりそうだったので、盗賊たちの仕事の仕方を見学しておこうと思ったのだ。
既にあちらこちらに【目玉(仮称。魔法で作られた目)】を配置している。
被害が出ない様に介入しながら、盗賊たちの仕事の仕方を見学させてもらうつもりだ。
ちなみに今の俺の状態は、空中に足が乗る程度の小さい【ブロック】を置いてその上に立ち、【不可視】の結界で姿を隠しています。
【フライ】よりも、こっちの方が魔力の消費が少ないのでね。
街道を一台の馬車がこちらに向かって進んで来る。
護衛らしき者も見えるが、盗賊たちはあれに仕掛けるのだろうか?
俺は様子を窺う。
盗賊の一人が何やら合図を送っているのが見えた。
街道に丸太が置かれた。
あの丸太で、馬車の足止めをするんだろう。
盗賊たちは、あの馬車に仕掛けるようだ。
盗賊たちの仕事を見学させてもらおう。
< 護衛の冒険者たち >
「馬車を止めろ!」
馬車の行き先に丸太が置かれているのを見て、俺は声を上げた。
荷台から飛び降りる仲間たちの気配を感じる。
俺も御者台から飛び降りた。
馬車の左手側には疎らに木が在る。
そちらから矢が飛んで来た。
しかし、飛んで来た矢は、かなり手前で落ちた。
そして、矢を撃った者なのか、木から人が落ちるのが見えた。
『素人なのか?』と、疑問が頭に浮かんだが、盗賊に容赦する気は無い。
そんな事をすれば、痛い目を見るのは俺たちだからだ。
仲間の二人が剣と盾を構えそちらに向かう。
隠れていた数人の男たちに囲まれ、戦闘になった。
俺はここに留まり、馬車と依頼主を守る。
男が一人こちらに来たが、難なく切り伏せる事が出来た。
既に傷を負っていたのだろう。
丸太が置かれている方からも、男が二人、近付いて来た。
俺は馬の前まで移動し、そいつらを迎え撃つ。
一人が俺に近付きながら剣を振り上げる。
しかしそいつは、剣を振り上げてよろけた。
素人っぽい動きだった。
そのスキに一撃喰らわせ、そいつを切り伏せた。
もう一人の男も剣の重さに慣れていないようだった。
簡単に切り伏せる事が出来た。
仲間たちも優勢に戦えているようだ。
襲って来た男たちを全員切り伏せて、仲間たちが戻って来た。
まだ他にも気配が在るが、襲って来る様子は無い。
二人に馬車と依頼主を任せて、俺は道を塞いでいる丸太を退かす。
周囲を警戒しながら馬車を進め、俺たちはその場を後にした。
< 再びナナシ視点 >
「ふう。」
馬車が遠ざかるのを見送って、俺は安堵の溜息を吐いた。
戦闘中に【ステータス】の魔法で盗賊たちのHPやSTR、さらにDEXとAGIの値を”1”にした。
そのお陰で盗賊たちは、護衛の男たちに一蹴された。
木に登って弓矢で狙っていた男たちは、木から落ちないようにするだけで精一杯だった。
一人、木から落ちたのが居ましたが。
一人も被害者が出なくて良かったね。(←盗賊たちはカウントされていません)
残っている盗賊たちは、全員MPの値を”0”にして気絶させた。
【スリープ】の魔法は範囲魔法としても使えるので、そっちの方が手間が掛からなくて良いかなと思ったのだが、『興奮状態だと掛からない恐れがあります。』と【多重思考さん】に言われたので、気絶させることにした。
この場に居る盗賊たち全員の剣やナイフを、【無限収納】に仕舞っていく。
それを終わらせ、次に盗賊のアジト向かう。
【転移魔法】で盗賊のアジトに来た。
ここに居る盗賊たちは、既に【多重思考さん】たちにより気絶させられている。
俺は、置かれている金目の物や武器や防具を、サクサク【無限収納】に仕舞っていく。
それなりの金額を持っていました。
引き篭もり生活が捗るね。(ニッコリ)
素材(=武器や防具)もたんまりで、【多重思考さん】たちも喜んでくれるだろう。
ちなみに、盗賊たちにトドメを刺したりはしません。
盗賊が絶滅したら、盗賊退治が出来なくなるので。(悪い笑顔)
俺は笑顔で、隠れ家に帰った。
次回投稿は1/3です。
よいお年を。




