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姫様を助けたのは失敗だったが、割と好き勝手に生きています。  作者: 井田六
第九章 異世界生活編05 生活基盤を整えよう編
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< 20 (王都10日目 午後) 拠点で料理03 料理をストック それと新魔法披露 三回目 >


食材を買い足してから、拠点で色々と料理を作って過ごした。

フライドポテト、コロッケ、猪の肉のトンカツ、熊の肉の龍田揚げ、ナスの天ぷら、魚の干物のフライ、小魚の干物ひものじる、猪の肉と野菜のスープなどが、【無限収納】に時間停止状態で仕舞われている。

【無限収納】が凄く便利で助かります。

作った料理の”揚げ物(りつ)”が少し高い気がしますが、”揚げ物は正義”なのだから仕方が無いよね。(ニッコリ)


今日も午前中を料理を作る時間にてて、作った料理を【無限収納】に仕舞った。

昼食を済ませ、後片付けをして、ソファーに座る。

【無限収納】から、紅茶の入ったポットとカップを出して、食後の紅茶を飲みながらくつろいだ。


紅茶を飲みながら考える。

この拠点は、十分じゅうぶん生活が出来る状態になった。

寝るのも、お風呂も、料理も、問題無い。

外にゴミ捨て場も作ったし、他にやる事は無くなったかな?

いや、料理の味付けの問題が残っているか。

醤油と味噌が有ればいいのだが、見付からなくて塩味が多くなっている。

買って来たソースと、作ったマヨネーズが有るが、味付けの種類が少ない。

何とかしたいよね。

あと、米も欲しいが見付かっていない。

魚とご飯で食事をしたいのだが、米が無くてそれが出来ない。

買って来た魚の干物は、焼いて大根おろしと一緒に食べたが、パンにはまったく合わなかった。

結局、魚の干物のほとんどを、パンと合う様にフライにしてしまった。

早く米を見付けたいね。

それと、イグサも見付かっていなくて、畳を敷く予定の部屋がそのままになっていたね。

イグサも早く見付けたいね。

うーん。

まだ、欲しい物がいくつか残っているね。

でも、食材の備蓄さえ有れば、ここにもれる状態になったね。

うん。まだ俺の求めるレベルにはあと一歩足りないが、俺の望む”ごとけて、のんびり過ごす”生活には、十分な状態になったね。

うん。俺はこの拠点がここまでの状態になり、一区切ひとくぎり付いた事に満足した。

そして、一つの決断をする。

それは、呼び名の変更だ。

今まで、ここを”拠点”と呼んでいた。

”拠点”と呼ぶと、何かの活動の中心地(てき)なイメージがある。

しかし、俺が望んでいるのは、引き篭もる事だ。

”拠点”と言う呼び名は、しっくりこないよね。

だから、呼び名を変える。

かく”と!

うん。良いよね、かく

ひびきと言うか、イメージと言うか、そんな物がね。

うんうん。

俺は、”かく”と言う呼び名に、感動に近い喜びを感じた。


俺が喜びを感じながら”にまにま”していたら、頭の中で【多重思考さん】に言われた。

『STR(Strength)のあたいを上げましょう。』と。

舞い上がっていた俺は、一瞬、何の事を言われたのか分からなかった。

ああ、そうか。

王都に来る前の街で、『ステータスの値を上げておきましょう。』と言われて、色々なステータスの値を上げてたね。

その中でSTRだけは、一気に値を上げたら歩きにくくなったので、値を少し上げただけで、その後そのままにしていたね。

今のSTRの値に慣れたから、値を上げてもいいよね。

うん。STRの値を上げておくか。

【ステータス】の魔法でSTRの値を見たら”54”になっていた。

50だったはずだと思ったが、レベルが上がった事により、STRの値も上がっていた様だ。

【多重思考さん】たちが、どこかで魔法を使っていたりするので、いつも俺の想像以上に早くレベルが上がっています。(苦笑)

STRの値をいじって、”80”にしてみた。

部屋の中を歩いてみる。

やはり、体が軽く感じる。

ちゃんと走れるか、荒野に行って確認するか。

いざという時に、走って逃げられないと困るからね。

荒野に居る【目玉(仮称。魔法で作られた目)】の一つを【多重思考さん】に教えてもらい、俺はそれを目印に転移した。


荒野に来た。

次の瞬間、頭の中で【多重思考さん】の声がした。

『新魔法披露っ 三回目ですっ!』

「………………。」

目の前のボッコボコな地面を見ながら、『よくもだましたなっ。』と、頭の中で【多重思考さん】に文句を言う。

『その前に少し走って、体の状態を確認しましょう。』と、頭の中で【多重思考さん】にサラリと言われた。

ちょっとだけ、こぶしがプルプルする。

ちくしょう、舞い上がって油断していたぜ。

「はぁ。」

一つ溜息ためいきいて、周囲を少し走って体の状態を確かめた。


体の状態を確かめた俺は、ボッコボコな地面を見渡みわたせる場所に立つ。

頭の中で【多重思考さん】の声がする。

『新魔法披露 三回目です。今回は【空間魔法グループ】です。』

『2キロほど前方をご覧ください。』

えらい遠いな。

目線を先にやると、空中に”↓”と”このあたり”と言う文字が浮かんだ。

【闇魔法さん】、いつもありがとうございます。

さらに”侵入不可”と”減音”という文字が浮ぶのが見えた。

それぞれの結界を張った様だ。

『いきます。』

頭の中で【多重思考さん】の声がした。

少しして、目線の先で砂埃が上がったのが、小さく見えた。

前例が前例だったので色々身構みがまえていたのだが、少々拍子抜けした。

遠くに上がった砂埃が高さを増していくのが見えるのだが、結界を張った意味がよく分からなかった。

そのまま砂埃が高さを増していくのを眺めていたら、地面を這う様に近付く、別の砂埃に気が付いた。

かなりの速さで近付いて来る。

そう思ったら、「ドンッ!!」って言う大きな音と共に、砂埃が【侵入不可】結界に激しく当たるのが見えた。

半球状の結界の外で、砂埃が激しく舞っているのが見える。

それを見ながら、先ほどの大きな音が衝撃波だった事に気が付いた。


頭の中で【多重思考さん】が、今の魔法の説明をしてくれた。

岩を高いところから落とし、それを【ゲート(入口)】で受ける。

その岩を、高いところに置いた【ゲート(出口)】から出して、さらに落とす。

それを、下に置いた【ゲート(入口)】で受けて、再び高いところに置いた【ゲート(出口)】か出して、さらに落とす。

それを繰り返して速度を増し、空気抵抗が大きくなりすぎる前に大気圏外に場所を移して、そこでも星の引力を利用して、さらに速度を上げた。

最後に目標目掛けて【ゲート(出口)】から出すと、凄い速度で目標にぶち当たる。と。

『今回は音速を余裕で超えていたので、衝撃波が発生しました。てへぺろ。』

『てへぺろ。』は、いらんやろ。

そして、相変わらず破壊力の大きそうな魔法(の使い方)だね。

これを使う状況って有るのか?

むしろ、これを使う状況って、どんな状況だよっ。

なんで皆、使いどころの無い物騒な魔法ばかり作るのかなー。どうしてかなー。

「はぁ。」

溜息が出た。


岩を落とした場所に来た。

砂埃は収まっている。

砂埃が収まっている事を不思議に思ったら、【分離】魔法さんで宙をただよう砂埃を取り除いたそうだ。

すげぇ。

そんな使い方も出来るのか。

驚いていたら、作ったばかりの拠点の中に埃が舞っていなかったのも、【分離】魔法さんのお陰だった事を【多重思考さん】が教えてくれた。

【分離】魔法さん、ありがとうございます。マジ最高です。


改めて、岩を落とした場所を見る。

「………………。」

クレーターが出来ています。

うん。クレーターが出来ています。

直径50mぐらいの。

やりすぎだよね。

この魔法の使い道って無いよね。

破壊力が攻城兵器を超えてるよね。

”戦争で使う”どころか、”戦争を終わらせる”レベルだよねっ。

「はぁ。」

また溜息が出た。


精神的に疲れた俺は、お風呂に入って忘れようと思い、拠点…、ぢゃなくて、かくに転移した。




< 西端の街の衛兵 >


「ドーン!」と言う大きな音がした。

ビビッて、体を強張こわばらせる。

遠くで「何の音だ!」と怒鳴る同僚の声が聞こえる。

何の音なのか?

どこから音がしたのか?

まったく分からない。

外壁の上から街の外を見渡みわたすが、街の外に異常は見当たらない。

街の中を見ると、多くの人が足を止めてキョロキョロとしていた。

よく分からない出来事に、『また調査に行かないといけないのかな?』と、不安になる。


前回は、突然()えたデカい木の調査に行かされた。

その時は、上司に「そんな訳があるか。」とか、「今まで何を見ていたんだ? 仕事をサボっていたのか?」とか言われると思い、どう報告しようか悩んだものだ。

さいわい、突然生えたデカい木の近くを、木が生える前後に通った冒険者たちが居て、彼らの証言を得られたことで、ことなきをたが。


今回はどうなるんだろう?

変な痕跡が有ったら困るが、何も見付からないのも困る。

調査に派遣されるのが俺でない事を、祈るしかない。


俺の祈りは無駄だった。

現場らしき場所に来た。

さいわいなのか、そうでないのかは分からないが、痕跡こんせきらしきものが見付かった。

爆発でも起きたかの様な痕跡だ。

その痕跡を調べる事にした。


一通りの調査を終えた。

痕跡を調べて、妙な事が分かった。

爆発の中心部と思われる場所が、盛り上がって高くなっていたのだ。

爆発の中心部ならば、一番低くなるのではないだろうか?

俺には理解できなかったが、俺の仕事は調査だ。

判断するのは俺の仕事じゃない。

そのまま報告する事に決め、帰路に就いた。


帰り道。

奇妙な場所が在った。

妙にボコボコな地面に、無数に有る焦げた様な跡や、溶けた様な跡。

端が綺麗に切り落とされている岩なんて物も有った。

「………………。」

今回の調査目的とコレは、関係有るのだろうか? 無いのだろうか?

目の前のコレは、どう報告したら良いんだろうな…。

異様な光景を目の前にして、俺はしばらく立ち尽くした。


俺は、見なかった事にして、先を急ぐ事にした。

そして、祈った。

「俺と関わる事が有りません様に。」と。


また何かが起きそうな、そんな予感を感じながら、俺は街に帰った。


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