< 19 外伝 【多重思考さんの一人(?)】の或る日の活動 盗賊のアジト編 >
これは、ナナシとリーダーが、王都の詰所で盗賊のアジトについて報告をした後の、アジトでのお話。
”私”は、盗賊のアジトで、縛られて転がっている盗賊たちを監視しています。
もちろん【目玉(仮称。魔法で作られた目)】を使ってです。
この【目玉(仮称)】、良いですよね。
どこにでも行けて。
ふと、自分自身の体が【目玉(仮称)】であるかの様に錯覚してしまう時があって、困惑しますが。
それはそれとして。
床に転がる一人の男を見て、”私”は考えます。
盗賊たちと一緒に転がっている”盗賊のボス”が、詰所に連行されて、自分が貴族であると話す。
そして、家の者が呼ばれて貴族だと確認されると、厄介な事になるのではないか? と。
”本体さん”は、報酬を貰えると言われて喜んでいる様ですが、報酬を貰うどころの話ではなくなるかもしれません。
あの”盗賊のボス”は、やたら偉そうにしていました。
とんでもない揉め事になる予感がします。
仲間に頼んで、貴族の情報を集めてもらいましょう。
そして、対策が必要なら、その対策を考えましょう。
貴族のことを調べてもらいました。
やはり、貴族の持つ権力は軽視できない様です。
あの”盗賊のボス”に逆恨みをされる状況は、避けなければなりませんね。
”本体さん”が、揉め事を避けて、のんびり過ごす為に。
さて、”盗賊のボス”をどうしましょうか?
仲間たちと相談します。
衛兵がこの盗賊たちを捕らえに来る前に、死んでもらいましょうか?
それとも、【転移魔法】でどこかにポイッてしてしまいましょうか?
しゃべれない状態にするという手もアリですかね?
仲間たちと一緒に考えます。
結論が出ました。
『死んでもらうのが、一番問題にならないだろう。衛兵が来る前に、盗賊たちに殺されてしまう様に仕向けよう。』と。
幸い、(する必要が無かったので)猿轡をしていませんので、眠らされている状態から回復すれば、勝手に口喧嘩を始めてくれるでしょう。
”盗賊のボス”は、口と性格が悪かったですし。
腕と足が縛られていますが、両足を揃えて蹴る事は出来ますし、”盗賊のボス”のHPの値を”1/1”にしておけば、口喧嘩の末、蹴られて死んでくれるでしょう。
いいですね。
これでいきましょう。
早速、”盗賊のボス”のHPの値を”1/1”にしました。
【スリーブ】の魔法が解けて、盗賊たちが起きるのを待ちます。
盗賊たちが、一人、二人と起き出します。
縛られている事に気付いて、騒ぎ出しました。
その騒ぎに、やがて全員が起きました。
騒ぐ盗賊たちを見て、”盗賊のボス”が、偉そうに言い放ちます。
「私の家の者たちが、すぐに助けに来るだろう。そうなれば貴様たちは終わりだ。」
「貴様らを、死ぬまで扱き使ってやるぞ。俺様の役に立てることに感謝するんだな!」
頭がおかしい人ですね。
彼を助ける意思が有ったのなら、縛って置き去りにされたりしないでしょうに。
どうして、助けを呼んでくれていると思えるのでしょう。
馬鹿なんですかね?
馬鹿なんでしょうね。
口喧嘩が始まります。
罵倒し合います。
聞くに堪えません。
盗賊の一人が、”盗賊のボス”を蹴りました。
縛られた両足を揃えて、ドガッと。
”盗賊のボス”は、「ぐっ」と言った後、倒れました。
死んだ様です。
計画通りです。(ニヤリ)
危機は去りました。
後は、衛兵にお持ち帰りいただいて、お金に変わっていただくだけです。
『世の中の為に良い事をした。』と、イイ気分になり、”私”は上機嫌で盗賊たちの監視を続けます。
………うるさかったので、MPを”0”にして気絶させました。(てへ)
衛兵が到着しました。
盗賊たちを叩き起こします。
建物の外に出し、一列に並べてロープで繋ぎ、森の中を歩かせます。
死体は、盗賊たちに運ばせます。
重そうです。
「もたもたするな。」と、棒で叩いて歩かせます。
盗賊たちが強制労働をさせられる未来が見える様です。
街道に出て、荷馬車に乗せられて王都に連れて行かれました。
取り調べを受けて、”刑”と”金額”が確定していきます。
全ての”刑”と”金額”が確定し、別の部署に書類が送られます。
”私”は、その書類の後を追います。
お金の匂いがする様な気がしたので。
書類を受け取った人は、その書類をカバンに入れ外に出ました。
後を追うと、衛兵たちの本部の様な建物に来ました。
書類を渡し、重そうな袋を受け取ります。
お金の匂いがする様な気がします。
その人は重そうな袋を詰所に持ち帰り、金庫に仕舞いました。
”私”は、盗賊を捕らえた報酬が用意された事を報告します。
”私”に与えられた仕事は、これで終わりました。
次は何をしましょうか?
”魔術師の街”に行きましょうかね?
あそこは、面白そうな事が始まっている様ですし。
そうしましょう。(ニヤリ)
”私”は、”魔術師の街”に行ってお手伝いをすることを報告し、”魔術師の街”に居る仲間の【目玉(仮称)】を目印に、自分の【目玉(仮称)】を転移させました。




