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姫様を助けたのは失敗だったが、割と好き勝手に生きています。  作者: 井田六
第九章 異世界生活編05 生活基盤を整えよう編
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< 13 (王都4日目) マジックバック対策(ニッコリ) >


魔道具屋さんで【マジックバック】を手放てばなすように助言された翌日。

俺は、朝から王都の街中まちなかを歩いていた。

【マジックバック】()()()袋を片手に持ってね。


【マジックバック】は、昨夜、中身を【無限収納】に移してから、【魔法破壊】で”ただの袋”に戻した。

手放す為にね。

普通に手放すのは、俺が面白くなかったので(←ココ重要)、昨夜、手放す方法を【多重思考さん】たちと考えた。

俺たちが考えた”手放す方法”が上手くいくといいな。(悪い笑顔)


今、王都の街中まちなかで俺がしているのは、”釣り”だ。

獲物が釣れるのを期待して、朝から歩いている。

しかし、”外道げどう”ばかりが掛かる。

パーティーに勧誘してくる無礼で強引な冒険者たち(=外道)は、【バレット】でぶちのめす。

少々派手にね。

その様子を見た他の冒険者たちが勧誘を諦めてくれるのを期待して。

初めからこうしておけば良かった様な気がして、溜息が出た。

決して、自分のした所業を後悔しての事では無い。(←おい)


しばらく、ストレス発散(←ハッキリ言うな)をした後、狙っていた獲物が近付いて来た事を、頭の中で【多重思考さん】が教えてくれた。

姿を現したのは、男が三人。

「武器は持っていない様です。逃走を手助けする役の者が他に居る為、武器を持っていないのでしょう。」と、頭の中で【多重思考さん】が教えてくれる。

武器を持っていないのは、こちらの手間が掛からなくて助かるね。

逃走を手助けする役の者にはあまり興味が無いので、どうでもいいや。

さぁ、やるぜ。


三人の男たちが近付いて来る。それぞれ別の方向から。

背後から来た男が俺にぶつかる。

「ウワ!(棒)」と言って、俺は倒れる。

俺が手に持っていた袋が、少し離れた場所に落ちる。

俺にぶつかった男が、倒れた俺と袋の間に割って入り、膝を付いて「大丈夫ですか?」と、訊いてくる。

その男と二言三言ふたことみこと話した後、立ち上がって、離れて行くその男と別れた。

袋は別の男が既に持ち去っている。

俺はその場でオロオロする演技をした後、守衛所に駆け込み、「【マジックバック】を奪われた。」と、訴えた。

「犯人は二人組の男。」、「一人が後ろからぶつかって来て、もう一人が落とした【マジックバック】を奪って行った。」と、必死の演技で伝えた。

「有力な情報がなければ捜査に人を出せない。」、「別件の捜査で盗品が出て来れば、戻って来るかも。」などと言われたので、凄く落ち込んだ演技をして、俺は守衛所をあとにした。


昨夜まで【マジックバック】だった”ただの袋”を持ち去った男たち。

「簡単な仕事だった!」と、笑いが止まらない。

すぐにアジトへ”戦利品”を届けに行った。

”戦利品”を受け取った窃盗団のリーダーが確認をする。

ただの袋だった。

リーダーは激昂し、怒鳴り散らす。

「この無能共がっ!」、「もう一度行って来いっ!」、「ちゃんと依頼品をって来るまで帰って来るなっ!」

男たちはリーダーにそう言われて、アジトから蹴り出された。


街の片隅で、これからの作戦を話し合う、リーダーに蹴り出された男たち。

標的の”あの男”を探す方法を話し合った。

あの男は、”ローブを着た”、”袋を無造作に持つ”、”若い男”だった。

”偽物”を用意していたところから想像すると、再び同じ姿で街中に現れる事は無いのではないか?

そうなると、”若い男”くらいしか有力な情報が無く、その情報から探さなければならない。

「そんなの無理だろ…。」

早くも諦めムードだ。

「いや、あの男の顔を見ているだろ。」

一人がそう言い、「そうだ、まだ大丈夫だ。」と、安堵する男たち。

あの男の気を引く為にあの場で話をした男に、あの男の顔の特徴を訊いた。

「あれ? え? ………思い出せない。」

驚き、戸惑った様子で、そう言う男。

あの男の着ていたローブに【認識阻害】の魔法が掛かっていた為なのだが、男たちがそれを知るはずもなく、口論こうろんとなった。

「一人で出し抜くつもりか!」

「この裏切者が!」

「いや、違う! 本当に思い出せないんだ!」

そんな言い訳に満足してくれる訳が無く、口論が続いた。

一人が「この裏切者が!」と、男を殴った。

すると、殴られた男は、あっさりと死んでしまった。

あまりにもあっさりと死んでしまった事に驚く二人の男たち。

しばらく呆然としていたが、そうしていても仕方が無い。

元仲間の死体を隠して、標的の”あの男”を探す為に、二手に分かれて街中に向かった。

しかし、彼らが再びあの男を見付ける事は出来なかった。

二人とも、その日の内に転んで死んでしまったのだから。


無能な部下たちを蹴り出した窃盗団リーダーは、依頼主と会っていた。

「もしかしたら、何とかなるかもしれない。」と、淡い期待を持って。

リーダーの前に座る依頼主は、リーダーの持って来たその袋を見て、大喜びしていた。

リーダーには、特に何の特徴も無いただの袋に見えたのだが、「依頼主は実物を見た事があったのだろう。」と思い、「これは何とかなるな。」と、心の中でほくそんだ。

リーダーは、ただの袋を”依頼の品”として披露した。

依頼主は気前きまえ良く、残りの報酬を支払い、”ただの袋”を胸に抱いて笑顔で帰って行った。

リーダーは、上手く行き過ぎた事に驚いたが、「たまには、こんな美味うまい仕事が有っても良いだろう。」と思い、上機嫌でアジトに帰ったのだった。


その家具屋の店員は、店長の部屋から聞こえて来たその声を聞いた。

「今度は何だろう?」と、呆れながら思った。

店長は”あの時”から、【マジックバック】に異様に執着する様になった。

「あれは自分の物だ。」、「俺は大商人になるんだ。」と、ブツブツ言うのを聞いた事も、一度や二度ではない。

「お客様の持ち物を「自分の物だ。」とか言う様なおひとではなかったのだが…。」

そんな事を呟きながら、念の為、店長の様子を確認しておこうと、店長の部屋に向かった。

ノックして部屋に入ると、店長が机に突っ伏して、何やらブツブツと言っていた。

よく聞くと、「だまされた。」、「おしまいだ。」なんて声が聞こえた。

見たら、店長の右手には袋が握られていた。

”あの時”に見た【マジックバック】のように見えた。

それでさっした。

「ああ、騙されたのか。」と。

店員は、店長の才能を信じていたので、「今回の事を教訓にしてくれれば大丈夫。」と思い、そっと部屋を出て自分の仕事に戻ったのだった。


報酬を受け取り、上機嫌でアジトに帰り着いた窃盗団のリーダー。

今日の稼ぎを金庫に仕舞う。

金庫の中身を笑顔で眺め、金庫を撫でるのだった。

次の瞬間。

リーダーは屋外に居た。

撫でていた金庫と一緒に。

何が起きたのか分からない。

驚いて、まわりを見回みまわす。

すると、すぐそばには、驚いた顔でこちらの見る数人の男たちが居た。


仕事が不調で、しょんぼりしながら帰路に就いていた五人の盗賊の男たち。

いきなり目の前に現れた、その男と大きな金庫に驚いた。

驚いている様子のその男と、扉が開いたままの大きな金庫を見る。

金庫の中の大金に歓声を上げ、金庫と一緒に現れたその男を押し倒し、縛り上げた。

縛られて喚くその男を、仲間の一人が蹴った。

蹴られたその男は、それっきりおとなしくなった。

大喜びで、金庫の中のお金を手持ちの袋に入れていく盗賊の男たち。

全てのお金を袋に入れ、すぐそばのアジトに向かう。

しかし盗賊の男たちは、何故かその場で全員寝てしまうのだった。


盗賊の男たちの一人が目を覚ました。

まわりには、寝ている仲間たちと、縛られている男と、大きな金庫が見えた。

何だか嫌な予感がして、すぐに仲間たちを起こした。

起こした仲間たちと話すと、皆、「急に眠たくなって寝てしまった。」と、言った。

皆で袋に入れた大金を探す。

無かった。

金庫がそこに在るのだから、あの大金は夢ではないはずだ。

いったい、何が起きたのか?

そもそも、男と金庫が現れた事からして、おかしかった。

「何だったんだ…。」

盗賊の一人が、そうつぶやいた。


いつの間にか死んでいた男と金庫をその場に残し、盗賊の男たちはアジトに向かった。

アジトでは大騒ぎになっていた。

アジトに置いておいた金と武器と防具が、全て無くなったと言うのだ。

わめき、まわりの者たちに当たり散らすおかしらを見て、先ほどの夢の様な出来事を、どう報告しようかと考える。

アジトで起きた事と、関係が無いとも、関係が有るとも言えない出来事なのだが、物が現れたり、消えたりした二つの出来事は、無関係ではない様な気がした。

大騒ぎするおかしらを見て、先ほどの出来事をどうやって報告したら良いのか、盗賊の男たちは頭を悩ませるのだった。


俺は拠点の居間でソファーに座ってくつろいでいる。

頭の中で【無限収納】のリストを見ながら、一人ほくそむ。

俺から【マジックバック】を盗もうとした者たちへの報復は終わった。

実行犯たちは死んだ。

依頼主は、俺がした事では無いが、騙されて大損した様なので、それで満足した。


そして、それ以上に満足した事が有る。

予定外の出来事で、偶然発見した”盗賊の利用方法”だ。

”盗賊の持ち物は、誰が奪っても罪にはならない”

そのルールを、咄嗟とっさに利用させてもらった。

窃盗団のリーダーだった男。

そいつを、そいつの金庫と一緒に盗賊のところに転移させた。

【目玉(仮称。魔法で作られた目)】を通して【転移魔法】を使ってね。

そして、金庫の中身を盗賊に奪わせた。

その”盗賊に奪わせた金庫の中身”は、俺が奪っても罪にはならない。

盗賊の持ち物になっているからね。

盗賊たちをサクッと眠らせて、【目玉(仮称)】を使って【無限収納】に仕舞わせてもらいましたよ。(イイ笑顔)


もし、金庫だけを転移させていたら、その時点で窃盗になってしまっていただろう。

だが今回は、金庫を金庫の持ち主と一緒に転移させた。咄嗟にね。

金庫を金庫の持ち主と一緒に転移させたから、その時点では窃盗にならなかった。

そして、盗賊に奪わせた後で俺が奪っても、窃盗にならなかった。

完全犯罪だった。


いつか盗賊たちの持ち物を奪ってやろうと、盗賊を探して、【目玉(仮称)】で監視していて良かったね。

金庫の中身を眺める窃盗犯のリーダーを(【目玉(仮称)】を通して)見て、咄嗟に思い付いた事だったが、凄く上手くいった。

やったね。(ニッコリ)

俺は、【無限収納】のリストに表示されている大金を見て、ほくそ笑んだ。

「ふへへへへへ。」

訂正。

笑いが止まらなかった。

「ふへへへへへ。」


【無限収納】のリストには、大金の他にも武器や防具がいくつか有る。

盗賊のアジトから【目玉(仮称)】を使って【無限収納】に仕舞った物だ。

ただの”ついで”です。(てへ)

巻き込まれた盗賊たちには「ご愁傷様。」としか言い様が無いね。

でもいいよね。盗賊だったし。

これらの武器や防具の利用予定は、今のところ無い。

ただ、「盗賊たちが困るだろうな。」と思って、【無限収納】に仕舞っただけのことだ。

盗賊たちが困るのならば、一般人にとっては歓迎すべき事だよね。

うん。

良い事をしたね。(ニッコリ)

【多重思考さん】からツッコミが無い事が、ちょびっとだけ気になりましたが、良い事をしたと満足しました。(えへ)


ちなみに、”あの袋”は、回収させてもらいました。

ゴミ箱に捨てられていたからね。

特に何の特徴も無いただの袋だけど、神さまに貰った物だしね。

この先ずっと【無限収納】の奥に仕舞ったままになると思いますが。


俺は、もう一度【無限収納】のリストに表示されている大金を見て、ほくそ笑んだ。

「ふへへへへへ。」

訂正。

笑いが止まらなかった。(イイ笑顔)


ひとりごと

ナナシにちょっかいを出すと酷い目に遭うと言う、ただそれだけのお話でした。

別に楽しみながら書いてなんてイマセンヨー。(ゲス顔)


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