< 12 (王都4日目 朝) 冒険者に絡まれた06 副ギルドマスター視点 >
冒険者ギルドの模擬訓練場で死亡事故があった翌日。
俺は、朝一番でギルドマスターに報告した。
模擬訓練場で死者が出たこと。
原因が魔晶石が外れた事であること。
外れた原因が不明であること。
ロープで固定する事で対策をし、他のギルド支部へ連絡済みである事を報告した。
ギルドマスターは渋い顔だ。
前例の無い事故とは言え、施設の維持管理の不手際だ。
ギルドの責任は重いと言わざるを得ない。
もう一つの問題も報告した。
死んだ冒険者が、丸腰の一般人を模擬訓練場に上げて、剣で切り掛かったこと。
その一般人が魔術師で、【風刃】で勝利したこと。
その場に居たギルド職員が、一般人と気付かずに止めなかったこと。それどころか応援したこと。
これらを報告した。
次に、彼に話した内容も報告した。
冒険者たちへの処罰。
同じ事が起きない様にする為に、施設を利用する際にギルドカードを確認すること。
そして、彼に支払った謝罪金を報告した。
ギルドマスターは深く溜息を吐いて、俺の報告を了承した。
ギルドマスターは、魔術師について訊いてきた。
やはりギルドマスターも、気になった様だ。
彼が、無詠唱で魔法を放ったと、見ていた者たちが証言した事を伝えた。
「その魔術師は、【マジックバック】を持っていたか?」
謝罪金の金額で気が付いたか。
金貨900枚は、かなりの量だ。
冒険者ならば、持ち歩かずにギルドに預けていく。
しかし、彼は一般人だ。持ち帰ることになる。
ギルドマスターにバレるくらいなら、彼に要求された通りの金貨1,000枚を白金貨一枚にして渡しておけば良かった。
俺は正直に「【マジックバック】を持っていた。」と答えた。
さらにギルドマスターは、「彼は裕福そうに見えたか?」と、訊いてきた。
「裕福そうには見えなかった。」と、俺が答えると、ギルドマスターはまた深く溜息を吐いて、一言「残念だ。」と、言った。
短かったので、明日もアップします。




