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姫様を助けたのは失敗だったが、割と好き勝手に生きています。  作者: 井田六
第九章 異世界生活編05 生活基盤を整えよう編
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< 08 (王都3日目 朝) 冒険者に絡まれた03 >


朝。

俺は拠点の寝室で目を覚ました。

昨夜は、初めてこの拠点で寝た。

ぐっすり眠れて満足です。


トイレを済ませ、顔を洗い、着替えを済ませる。

この拠点も、大分だいぶ生活が出来る様になった。

昨日は、お風呂にも入れたしね。

あとは、キッチンで料理が出来る状態になれば、ここに引き篭もれる状態になるね。

俺は、この拠点が生活出来る様になっていく事を、嬉しく思った。


脱いだパジャマと寝具に【クリーン】の魔法を掛け、ベッドを整えて外出の準備を終える。

よし、朝食を食べに王都に行くか。


そう思ったら、頭の中で【多重思考さん】に、「今日は、ごとけて、のんびり過ごしましょうね。」と、言われた。

冒険者たちに絡まれるのが鬱陶うっとうしかったので、その対策をどうするか、昨夜【多重思考さん】に丸投げしていたね。

【多重思考さん】てきには、「避けられる揉め事を避けないのが悪い。」と言う結論になった様だ。

「向こうから絡んで来るんだから仕方が無いよね。」と、言いたくなったが、聞いてくれそうにないと思ったので、「…はい。」と、返事をした。

決して、自分の行動をかえりみた訳では無い。(←おい)


王都に行き、適当に入った宿の食堂で、食事をする。

変なのに絡まれない様に、なるべく食事をする食堂は変えています。

変な奴が多いからね。この王都も。

色々な味付けの物が食べられるので、これはこれで満足です。


朝食を食べ終えたところで、頭の中で【多重思考さん】に言われた。

「冒険者たちが待ち構えています。冒険者ギルドに連れて行こうとしている様です。」

「何の為に冒険者ギルドに連れて行こうとしているのかは、分かりません。」

やって来るごとに備える為に、頭の中で【多重思考さん】と打ち合わせをする。

今朝、拠点で【多重思考さん】に、「今日は、ごとけて、のんびり過ごしましょうね。」とか言わたのだが、向こうからやって来るんだから仕方が無いよね。

まだ、今日の予定を何も考えていないのにね。

「はぁ。」

溜息が出た。


食堂を出たら、十人近い冒険者らしき男たちが近付いて来た。

しかし、こんな朝早くから絡んでくるなんて、冒険者って暇なんですかね?

「昨日は、ウチの仲間に舐めた事をしてくれたそうぢゃねぇか。」

男たちの中で一番大柄なボスっぽい男に、そう言われた。

昨日あった、冒険者らしき男たちに絡まれた出来事を思い出す。

昨日は3件くらいあったっけか?

「昨日は、冒険者らしき男たちに絡まれたのが3件くらいあったんですが、どの件ですかね?」

「それを教えてもらえないと、返事のしようが無いんですが。」

頭の中で【多重思考さん】が、心底しんそこ呆れた様に「けェ…。」と、言っていますが、俺、悪くないよね?

「ちょっと、付き合ってもらうぜ。」

そう言われて、取り巻きの連中にかつげられて、運ばれることになった。

頭の中で【多重思考さん】が、「やはり冒険者ギルドに連れて行こうとしている様ですね。」と、言ってくる。

取り敢えず今は、身の危険は無さそうなので、おとなしくかつげられておく。

もっとも、担ぎ上げられている俺に対して何かしようとした男たちには、【多重思考さん】の張った【侵入不可】の結界に付与された【リフレクション】の効果で、”手の造形を変えよう。無料体験コース”を、体験していただきましたが。(てへ)

これを切っ掛けに、芸術家として目覚めてくれればいいですね。(ニッコリ)


俺をかつげて運ぶ男たちの向かう場所は、【多重思考さん】の言っていた通り、冒険者ギルドの様だった。

何でこんなところに連れ行こうとするんだろうね?

【多重思考さん】にも理解できない理由は、俺が冒険者ギルドに興味が無かったので、【多重思考さん】も冒険者ギルドの建物内を調査していなかったからだ。

まぁ、既に調査を始めている様だから、きっと上手く切り抜けられるだろうと、安心しているけどね。

みんなー、頼んだよー。(←この丸投げ感よ)

俺をかつげた男たちは、冒険者ギルドに玄関から入り、奥へ奥へと進んで行く。

そして、訓練場みたいな場所まで行くと、俺をポイッてした。

すかさず、【多重思考さん】が【フライ】の魔法を使い、俺をちゃんと立たせてくれた。

ありがとう。


俺はその場に立ち、まわりを見回す。

客席っぽいのが周りを囲む、訓練場みたいな場所だった。

ギルド職員っぽい人が近くに居たので、訊いてみる。

「ここって何ですか?」

「え? えっと、ここは模擬もぎ訓練場です。」

「模擬訓練場?」

「はい。」

「模擬訓練場って、何ですか?」

ギルド職員さんが説明してくれた。

武器を使った実戦そのままの模擬戦が出来る施設で、体が欠損したりしても、訓練場から降りれば無傷の状態に戻り、致命傷を受けても、自動的に訓練場の外に出されて、無傷の状態に戻るんだそうだ。

痛みを軽減する働きも有るのだそうで、安全に実戦そのままの模擬戦が出来るんだそうだ。

「凄い施設だな…。」

思わず、そうつぶやいた。

それに気を良くしたのか、ギルド職員さんは、「怪我を気にせずに、頑張って下さいね。」と言った。

暢気のんきなギルド職員さんだな。

あなた、俺がここに担ぎ込まれたの見てたよね?

のんびりし過ぎぢゃね?

一般人が冒険者に拉致されてここに連れ込まれる事って、割とよくある事なのかな?

「物騒な場所に連れてこられちゃったね。」と、俺は思ってるんだけどね。(ワクワク)

ちなみに俺は、ギルド職員さんの説明を聞きながら、【多重思考さん】からも情報を貰って、対策を話し合っていました。


さぁて。

今後、俺が揉め事に巻き込まれず、のんびり過ごす為に、この状況を利用させてもらいましょうか。(悪い顔)


「心の準備は出来たか?」

その声に、俺はゆっくりと振り返る。

離れた場所に、先ほどのボスっぽいのが居た。

状況は分かっていたのだが、取り敢えず訊く。

「ここで何をするんですか?」

「ふっ。ここでお前をぶちのめすんだよ!」

そう言って、剣を抜きながらこちらに走って来る。

ズパパ

ドサーッ

そんな音がして、ボスっぽいのが転んだ。

「うわああぁぁ!」

ボスっぽいのが、そんな悲鳴を上げる。

【多重思考さん】が【風刃】で、ボスっぽいのの両足を足首の辺りで切断したからだ。

これで終わりにしてくれると、いいんだけどね。

「終わりでいいですか?」

俺は、そうボスっぽいのに訊いた。笑顔で。(←おい)

「ふざけるなっ! まだだっ!!」

ボスっぽいのは、激昂して剣を振り上げた。

ズパ

ガシャン ドサ

【多重思考さん】が【風刃】で右腕を切断した。

「うおぉぉ…。」

ボスっぽいのがうめく。

もう一度、「終わりでいいですか?」と、訊こうとしたら、誰かのつぶやきが聞こえた。

「無詠唱…。」

あ、しまった。

(鬱陶しい)冒険者たちに勧誘されない為には、レベルを低く見せておいた方が良いよね。

どうしよう。どうしよう。どうしよう。

焦る。

「今の無し!」

気が付いたら、そう言っていた。

そして魔法を放つ。詠唱をして。

「【風じィェん】。」(←噛んだ)

ズバ

ドサ

ボスっぽいのの残っていた左腕を切り飛ばした。

「うおぉぉ…。」

ボスっぽいのは、先ほどからうめき続けている。

「………………。」

「………………。」

場には、何とも言えない沈黙がりた。


「終わりでいいですよね?」

自分でも分かるほど落ち込んだ声で、ボスっぽいのに訊いた。

ボスっぽいのから返事が無かったので、肯定こうていと受け取って、俺は模擬訓練場から降りた。

そして、担ぎ上げられて運ばれて来た通路を、玄関を目指して歩いて行く。


模擬訓練場の上では、ボスっぽいのに下っ端たちが群がり、模擬訓練場の外に引きずって行こうとしていた。

しかし、重くて上手くいかない様だ。

一人が慌てて斧を手にした。

致命傷を受ければ、自動的に訓練場の外に出されて、無傷の状態に戻るからだ。

引きずれないのなら、その方が早い。

斧が振り上げられる。


その様子を【目玉(仮称。魔法で作られた目)】を使って見ていた【多重思考さん】たち。

魔法を発動した。

でっかい魔道具の内側で。

そこに転移させておいた別の【目玉(仮称)】を使って。


ボスっぽいのの首に、斧が振り下ろされた。

首が転がる。

ボスっぽいのの体は、そのままそこに在る。

「………………え?」

何も起こらない事に、戸惑う声が上がる。

異常に気付いた下っ端が、「どうなってるんだ?」と、仲間に訊く。

「おい! ギルド職員! どうなってるんだ!」

別の下っ端が怒鳴る。

ボスっぽいのの体のまわりで、下っ端たちが騒ぎ始める。

大騒ぎになった。


騒ぎを遠くに聞きながら、俺は玄関から冒険者ギルドを出た。

頭の中で【多重思考さん】たちが報告してくれる。

「でっかい魔石でしたよ。15cmくらいありました。」

「窃盗になってしまいますから持って来れませんでしたが、あれって何の魔物の魔石なんですかねぇ?」

「稼働中の魔道具から魔石を抜き取れるなんて、【分離】魔法さん、マジ凄いですねぇ。」

うん。【分離】魔法さん、マジ凄い。


俺は満足しながら、今、起こした騒ぎと、この後の影響を考える。

”俺に絡んだ冒険者がエライ目に遭う”→”俺に絡むのを止める”という流れを期待していた。

冒険者ギルドで騒ぎになったので、多くの冒険者へ情報が伝わるだろう。

しかし、”模擬訓練場で死亡事故が起きた”としか伝わらないかもしれないね。

何か他に、もう一押し、二押しが必要だよね。

俺が冒険者たちに絡まれない様にする、他の何かが。


じっくり考えようと思い、俺は拠点に帰る事にした。

買い物をしようにも、まだ時間が早いから、お店が開いていなさそうだしね。

俺は、いつもの様に【隠蔽】と【人除け】の結界を張ってから【転移魔法】で拠点に帰った。


頭の中で【多重思考さん】に、「街中まちなかを歩いている時も【隠蔽】と【人除け】の結界を張っていれば良いだけですよね?」、「そうすれば、冒険者たちに絡まれませんよね?」、「どうして、そうしないんですか?」とか言っていますが、どうでもいい事だよね。(良い事をしたと、スッキリした顔)


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