02 メイドさんたち、ナナシについて報告する
ナナシ様の採寸を終えた私たち。
採寸の結果を書き込んだ用紙を別の仲間に渡して、仕事の一つを終えます。
次に、私たちは会議室に集まり、もう一つの仕事のまとめを行います。
先ず、私が報告します。
「ナナシ様を【鑑定】しました。【ステータス】は一般人レベルの値でした。」
「MP(Magic Point)の値が、先日の報告内容と掛け離れています。あと、魔術師レベルが”1”でしたのでこちらも同様です。【ステータス】が【偽装】されていると見てよいかと思います。」
「ただ、【偽装】されているかは、【鑑定】では分かりませんでした。これは、【偽装】の魔法を掛けた魔術師のレベルがかなり高かったからだと思われます。」
「【偽装】した後の数値が明らかに低くて不自然に見えてしまう一方、【偽装】をした魔術師のレベルが高いという、ちぐはぐでよく分からない状態になっています。」
「それと…。【鑑定】をした事がバレたと思われます。」
私の報告の最後の一言で、それまで静かだった室内にざわめきが起きました。
リーダーのマリーさんがナナシ様の注意を引き付け、【鑑定】している事に気付かせないという作戦でしたから。
上手く注意を引き付けていた様に、私には見えていたのですが…。
マリーさんと同期のケイティさんが、マリーさんを『あんたが真面目にやらないからよっ。』というオーラを出して睨んでいます。
確かに楽しんでいましたよね、マリーさん。
次に、リーダーのマリーさんが報告します。
「イイ筋肉でした。(喜)」
いい笑顔です。
隣に座るケイティさんが、肘打ちをします。
が、読んでいたのでしょう。その肘打ちをブロックしました。
「でも、不自然だった。」
マリーさんのその一言で、再び室内に緊張感が戻りました。
「鍛えたにしては首や肩の筋肉が少な過ぎる。どうやって、何をして付いた筋肉なのか分からない。」
「あの筋肉の付き方は変だ。」
筋肉に興味の無い私には、よく分からない報告内容でした。
「それと、鎖骨が素晴らしかった。(喜)」
は?
何をおっしゃっているのでしょうか?
「あの鎖骨は、神の造形だわー。一見の価値が有るねっ。(喜)」
…はぁ、そうですか。
室内に変な沈黙が降りました。
ごきゅ
…何か音が聞こえた気がしました。
ですが、私は気にしません。
マリーさんが”黒い笑顔”を浮かべてケイティさんを見ていた様な気がしますが、私はナニモミテイマセン。
報告する内容を文章にまとめます。
調べたら余計に謎が出てきてしまいましたね。
判明した事は、『イイ筋肉』だという事と、『鎖骨が素晴らしい』ことくらいでしょうか。
………………。
助けを求めて、マリーさんを見ます。
ですが、そのマリーさんが、「上の人が判断すればいい事だ。」とおっしゃったので、そのまま書きました。
………よかったんでしょうか?
上司に報告書を提出し、マリーさんが説明しています。
マリーさんが筋肉の事を熱弁した所為で過剰な接触がバレて、マリーさんにナナシ様への接近禁止が命じられました。
ですが、報告書の内容には満足してもらえた様でした。
既に他にも調査がされていたのかもしれません。
ですが、本当にアレでよかったんでしょうか?
悩みます。
報告を終えたは私たちは、その場で解散して、いつもの仕事に戻りました。