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姫様を助けたのは失敗だったが、割と好き勝手に生きています。  作者: 井田六
第八章 異世界生活編04 王都までの道程
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< 03end 盗賊と捕らえられていた人たち02 王都到着 >


テントの中で目を覚ました。

外は既に明るくなっていた。

あれ? 見張りは?

テントから出たら、大人たちは既に起きていた。

「おはようございます。」

「「「「おはようございます。」」」」

「えーっと、見張りは?」

「いえ、助けていただいたのに、見張りまでしていただくのは、ちょっと…。」

「あー、そうでしたか。ありがとうございます。」

気を使ってもらったらしい。

ありがとうございます。


井戸へ行き、顔を洗う。

戻って来て、少年たちの寝ているテントを見る。

「んごごご」と、いびきが聞こえた。まだ爆睡している様だ。

大人たちは笑っている。

王都までどのくらいの時間が掛かるか訊いた。

土地勘が有るっぽかったからね。

王都に着くのは昼過ぎくらいになるだろうとのことだった。

予想していたよりも時間が掛かるな。

急ぐ訳ではないから、いいけどね。


食事の用意を(俺以外の大人たちが)していたら、少年たちが起きてきた。

顔を洗いに行かせ、戻って来てから食事となった。

リーダーが言う。

「これが最後の食事だ。食料はもうこれで終わりだ。」

「昼過ぎには王都に着く。腹が減っても我慢だ。」

少年たちが、やや少な目の食事を見て、「え? これで終わり…。」とつぶやく。

少年の一人が俺を見て言う。

「盗賊から助けた人が、責任を持って街まで送らなければいけません。食料も何とかしてください。」

「え? 俺?」

そんな事を言われてもな…。

「隣の街に移動する途中で、腹をかせた同行者が八人も増えるなんて思わないし、その分の食料を事前に用意をする奴なんて居ないだろ。」

「本当にそんな義務が在るのか? 盗賊にらえられている人が居ても、見殺しにするのが正解の様に思えるぞ。」

少年たちは、俺が食料を持っていない事に納得したのか、食事に集中することにした様だ。


食事を終えて、片付けをしたら、すぐに出発した。

既に遠くに見えている王都に向けて歩く。

トテトテと。黙々と。ガシャガシャと。

王都が近付くにつれて、皆、安心した表情を見せる様になった。

途中で三回休憩をして、昼過ぎに王都に到着した。

ふう、やっとだよ。

【転移魔法】なら、すぐに着いていたのにな。

俺は、寄り道をした事をすごく後悔した。

盗賊にらえられていた人たちを見付けて、人助けをしたら、すごく面倒な事になったね。

得る物も何も無かったし。

余計な手間以外は。(苦笑)

二度と人助けはすまい。

そう心に決めた。


門に着くと、俺はいつもの様にステータスの確認をされて、銀貨一枚を預けて、王都に入った。

他の人たちは、自分たちの身分証を回収できていた様で、身分証を見せるだけで、王都に入れた。

俺とリーダーは、盗賊の話をする為に詰所に残る。

他の人たちとは、ここでお別れだ。

改めて感謝され、別れの挨拶をして、彼らとは別れた。


詰所で盗賊とそのアジトについて話をした。

アジトの場所については、俺はうろ覚えだったのだが、リーダーが目印なる物を良く憶えていたので、しっかりと伝える事が出来た。

リーダーすげえな。

アジトの周りはほとんど木ばっかりだったのに。

アジトに人を派遣して、捕らえてきてくれるとのことだった。

後日、報酬がもらえるとのことだったので、楽しみにしておこう。

盗賊たちには、しっかりと罰を受けて欲しい。


詰所を出て、リーダーと一緒に食事に行った。

盗賊たちとの事で、黙っていた事が有ったと、食事をしながら色々話してくれた。

「盗賊の被害者は、盗賊を返り討ちにしたり、その盗賊の持ち物を持ち帰っても罪にはならない。」と、少年が言っていたが、間違いではないが、全てではないとのこと。

盗賊の持ち物は、誰が奪っても罪にはならないとのことだった。 

あれ? それだと俺も分け前が貰えたって事だよね。

ぐぬぬぬぬ。

それと、「盗賊から助けた人が、責任を持って街まで送らなければいけない。」と、少年が言っていたが、そんな義務は無いとのこと。

そんな義務を負わせたら、俺が言った通り、見付けても見殺しにするのが正解になってしまい、助かる人も助からなくなる。

「これからも盗賊に捕らえられている人が居たら、助けてあげて欲しい。」と、お願いされた。

「すまなかった。言い出したのはあの少年たちだが、安全に街に帰る為には、あの時はあれが最善だと思ったんだ。」

”ぐぬぬ顔”をした俺に、リーダーから布袋が渡された。

「俺たちからの謝礼と、騙した事のお詫びです。受け取って下さい。」

重い布袋だ。かなりの金額が入ってるっぽい。

さらにリーダーは話を続ける。

「嘘を吐いた少年たちのことを、悪く思わないでください。」

「あのくらいの年齢の時は、あのくらいでないと、生き残れないと思うので。」

マジかよ。

ハードモードなんだな、この世界。

”平和な世界”とか、神さまに言われた様な気がするんだがなっ。

リーダーから、二人の冒険者と二人の商人の連絡先が書かれた紙を貰った。

商人の一人がこの王都に住んでいる以外は、他の街に住んでいる様だ。

「皆感謝しています。機会があったら訪ねてあげてください。」

そう言われ、リーダーと別れた。


今回は貴重な経験をさせてもらったな。

油断できないね、この世界の人たちは。

平和ボケした日本人がのんびり過ごすのは、この世界では難しいと思うな。

引き篭もるのが正解だろうね、きっと。

魔石を売ったり、買い物をしたりする時だけ、街に来ればいいよね。

【転移魔法】があるから簡単だし。

うん。そうしよう。

俺は森の中に作っている拠点を快適にして、引き篭もる事に決めた。

のんびり過ごせる街を求めて、せっかく王都まで来たのにね。

人生って、ままならないものだよね。


この異世界に来た事も含めてなっ!



< とある人たちの会話 >


「なんだか良いニオイがする。」


庭を見下みおろすテラスでお茶をしていたら、私の婚約者がそんなことを言った。

彼女を見ると、目を閉じて少し顔を上げて、くんくんとしている。

私もそれにならい、くんくんとする。

しかし、彼女の言う”良いニオイ”らしきものは感じられなかった。

「それは、どんなニオイなの?」

そう訊くと彼女は、「うーーーん。」と、しばらく考えてから、「土っぽい、良いニオイ。」と言った。

「土っぽい、良いニオイ……。」

彼女の言ったその言葉から、どの様なニオイなのかを想像する。

しかし、どの様なニオイなのか、私には想像することが出来なかった。

そもそも、”土っぽい”と”良いニオイ”が、繋がる気がしなかった。

くんくんしている彼女を放置して、目を閉じ、しばらく想像してみた。

だが、やっぱりその二つの単語は、私の中で繋がってくれることは無かった。


彼女を見ると、また、くんくんとしていた。

そのかわいらしい顔を見ながら、お茶をいただく。

彼女は、言動が妙に子供っぽいところがある。

先ほどの私には理解できない表現も、メイドさんたちが「残念かわいい。」と言っている、普段の彼女らしさがあらわれたものなのだろう。

そんな彼女のことを微笑ましく思いながら、私は今日も彼女の休憩時間が終わるまで、こうして二人のお茶の時間を楽しむのだった。


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”平和な世界”とは、神さまに言われてないですね。

「戦争はほとんど無く、宗教はほとんど力を持っていない。」「魔王も居ないし、勇者も必要とされていない。」とは言われましたが。

神さま自身は”平和な世界”と思っています。戦争がほとんど無いので。

神さまが世界を放置気味なので、神さま自身、この世界で暮らす人たちの様子を詳しく知らなかったのです。


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