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姫様を助けたのは失敗だったが、割と好き勝手に生きています。  作者: 井田六
第八章 異世界生活編04 王都までの道程
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< 02 盗賊と捕らえられていた人たち01 発見と救出 >


新魔法披露(二回目)を終えた。


王都の近くに【転移魔法】で移動しようと思ったら、頭の中で【多重思考さん】に話し掛けられた。

「この先に盗賊のアジトが在り、らえられている人たちが居ます。どうしますか?」

盗賊たちを倒す方法を頭の中で考える。

盗賊たちを”恐ろしい【ステータス】の魔法”で気絶させる様子を想像した。

【目玉(仮称。魔法で作られた目)】たちにしてもらえばいいので、俺には何の危険も無いよね。

「よし、助けよう。」

特に躊躇ためらいも無く、助けることに決めた。


盗賊のアジトを見付けた【目玉(仮称)】を目印に、すぐに他の【目玉(仮称)】たちを転移させた。

現場には十個の【目玉(仮称)】たちを送り込み、準備に取り掛かからせた。

【多重思考さん】が指示してね。(てへ)

「盗賊たちを気絶させる準備が出来ました。」という報告を受けて、すぐに気絶させる様に指示した。

盗賊たち全員を気絶させたという報告を受けた俺は、盗賊のアジトに転移した。


目の前に粗末そまつな建物が在る。

街道から北に外れた薄暗い森の中だ。

建物の玄関前に、二人の男が倒れている。

アジトの見張りをしていた盗賊たちだろう。

そいつらを無視して、開いているドアから建物の中に入った。


建物内の広さは八畳ほどだ。あまり広くはない。

そこに十人ほどの盗賊たちが倒れている。

そいつらも無視して、奥に進む。

奥にドアの残骸が在る。

斬撃で破壊された様な見た目だ。

「気絶させる対象を目視出来ないと、魔法が使えませんでしたので♪」とのことだ。

「絶対、魔法を使いたかったからだよねっ。転移魔法でいけるよねっ。」

【風属性魔法グループ】の人(?)が「ヒャッハー!」している情景が目に浮かびます。

「はぁ。」

溜息ためいきを一ついてから、ドアの残骸を踏み越え、次の部屋に入った。


次の部屋にも盗賊が二人倒れていた。

それと、縛られている人が九人居た。

縛られている人たちは、おびえたような目で俺を見ている。

説明が面倒なので、取り敢えず無視して、更に奥の部屋を目指す。

ここでもドアの残骸を踏み越えて、次の部屋に入った。


「ここが一番奥の部屋です。」と、頭の中で【多重思考さん】が教えてくれた。

この一番奥の部屋でも、盗賊が倒れていた。三人。

盗賊は全員気絶している様なので、縛られている人たちのところに戻った。


縛られている人たちは、怯えた様な目で俺を見ている。

「盗賊を見付けたので助けに来ました。」

俺がそう言うと、「あぁ。」とか「ふぅ。」とか「ふぉ。」とか「何をしている、さっさとロープを解かないか! 私を誰だと思っている! さっきはよくも無視したなっ!」なんて言う安堵の声が聞こえた。

俺は縛られている人たちのロープを解くことにした。

「グズグズしやがって! 何様のつもりだ貴様は!」とか「早く街まで連れていけ!」とか「サボらずに護衛しろよ!」とか「腹が減った、食べ物をよこせ!」とか言っている人が居たが、無視してロープを解いていく。

俺に掴み掛かろうとした人が居たっぽいが、【多重思考さん】が【シールド】を張ってくれたので、無視して他の人たちのロープを解いていった。

ロープを解くと「ありがとうございます!」とか「助かったぁ。」とか「あなたは命の恩人です!」とか、感謝の言葉を掛けてくれる。

全員のロープを解いて、軽く事情を聞いた。

事情を聞き終わったら、奥の部屋から人が出て来た。

(うるさかった)最初にロープを解いた人だ。

両手に重そうな袋を持っていた。

あと、服と顔に血が付いていた。

ロープを解いた時には血が付いていなかったので、奥の部屋で気絶させられていた盗賊たちを殺したのだろうか?

頭の中で【多重思考さん】が、俺の思い付きを肯定してくれた。

その人は俺の持つ袋を指差し、「そいつを寄越せ!」と言う。

「嫌ですよ、そうしたら窃盗の共犯になってしまうでしょ。」

俺はそう言って断った。

「盗賊がどこかから盗んできた物だ。それを…受け取っても犯罪にはならない!」

「受け取っても」とか言ってるよ、この人。

この人も窃盗と思ってるよね。あるいは強盗かな。

そんな事してもいいのかな?

ステータスに何か記載されてしまわないのかな?

身分証が無い人が街に入る際にステータスを確認する理由は、犯罪者を街に入れない為だと思うんだが。

そう仮定すると、何か犯罪を犯すと、ステータスに記載されてしまいそうな気がするんだけどな。

「いいから、寄越しやがれ。」

手に持っていた袋を奪われた。

【シールド】にはじかれると思っていたのだが、【シールド】の範囲から微妙に外れていたっぽいな。

しかし、強盗との遭遇率が凄いよね。

この世界、どうなってんの?

まぁ、奪われた袋はすぐに取り返したけどね。

気絶させて。

こいつ馬鹿なんぢゃないの?

誰が盗賊たちを気絶させたと思ってたんだろうね。

「はぁ。」

あまりの馬鹿っぷりに、溜息が出た。

こいつは縛って、盗賊と一緒に転がしておこう。(黒い笑顔)

そう思ったが、先ほどまで縛られていた人たちが、そいつを縛ってくれた。

手間てまはぶけたね。

ありがとう。

そして、そいつを縛った人たちは、そいつを奥の部屋に引きずって行く。

「?」

何をするのか気になったので、俺もあとを付いて行った。

血を流して死んでいる盗賊たちの隣まで、そいつを引きずって行くと、そいつの顔に付いている血を拭いた。

そして、床の血溜まりに指を付け、何か文字を書いている。

縛られた、そいつの顔に。

書き上がった文字は、”盗賊のボス”だった。

うん。いいね。(ニッコリ)

いい仕事っぷりに、皆、笑顔になった。


ここを出て、歩いて王都に向かう事を話し、ここで、ここに在る食料を使って食事をすることにした。

らえられていた人たちに食事の支度したくをお願いした。

ちなみに、捕らえられていた九人の内訳はこうでした。

商人二人、冒険者二人、冒険者(少年)四人。それと”盗賊のボス”が一匹ね。


俺は玄関からおもてに出た。

表にも二人、盗賊が居たのを思い出したからだ。

こいつらもロープで縛っておかないとね。

アジト内から持って来たロープで、気絶させていた二人を縛る。

そして、頭の中で【多重思考さん】と今後の相談をした。

街道に出るまでの道とか所要時間とか、王都までの所要時間とか、盗賊の扱いをどうするかとかね。


部屋に戻ると三人が食事の準備をして、残りの人たちは盗賊たちの身ぐるみをいでいた。

訊けば、「戦利品です。」とのこと。

たくましいね。

しかし、盗賊たちのお宝には手を触れてはいない様だ。

そこは、モラルがあるのかな?

話を聞いたら、ちょっと違った。

そちらの回収は、食事の準備をしている人たちを含めた全員でやるそうだ。

モラルェ…。


みんなで食事をする。

俺以外は、皆そわそわワクワクしている。

お宝が気になるのかな?

マジ、たくましいな、この人たち。

そんな皆に訊く。

「盗賊の持ち物とは言え、持ち帰ったら窃盗になっちゃって、罪に問われたりしないの?」

少年の冒険者の一人が答えてくれた。

「盗賊の被害者は、盗賊を返り討ちにしたり、その盗賊の持ち物を持ち帰っても罪にはなりません。」

そう、教えてくれた。

「ふーん、そうなんだ。」

と、なると、俺は被害者ぢゃないから、手を出しちゃいけないって事になるな。

今後も同じ様な事があるかもしれない。

うっかり、窃盗になってしまわない様に気を付けないとな。

ん?

今食べてる食事はどうなんだろう?

俺が料理した訳ぢゃないからセーフかな?

被害者たちが作った物を食べさせてもらっているから、セーフだよね。

ステータスを確認したら、変な物は書かれていないから、セーフみたいです。

危なかった。

マジ、気を付けよう。


食事が終わったら、俺以外の皆で仲良くお宝を集めて、分配ぶんぱいしていく。

俺は椅子に座って、彼らが分配を終えるのを待つ。

皆、にこにこしている。

マジ、たくましいな。

ちょっと前まで、盗賊にらえられていたのにね。

この世界の人たち、たくまぎんだろ。

きっと、この世界の”世紀末度”が高過たかすぎるのが原因だろうな。

”平和な世界”だと聞いていたのになー。

「はぁ。」

俺は、たくまし過ぎる人たちを見て、溜息を吐いた。


さて。

少々、分配に時間が掛かってしまって、昼くらいの時間になってしまった。

なので、皆と相談する。

王都まで、徒歩で半日以上掛かりそうだから。

今からここを出発して、途中で野営して、王都に行くのか?

それとも、今日はここにとどまり、明日の早朝に出発するのか?

それを相談した。

全員が、すぐにここを出発することを望んだので、さっさと、出発することになった。


出発する前に、盗賊たちに【スリープ】の魔法を掛けた。

盗賊たちがこの後どうなるのか気になったので、ここには【目玉(仮称)】を一つ置いていく。

だから、盗賊たちが目を覚ましても、すぐに対処ができる。

しかし、捕らえられていた人たちが、追い掛けられる心配をしなくても良い様にと思って、皆の目の前で【スリープ】の魔法を掛けた。

そんなヤワぢゃない気が、凄くしたけどね。(苦笑)


俺たちは王都に向けて出発した。

俺を先頭に一列になって、森の中を歩いて行く。

まず森を抜けて、街道に出ないといけない。

何の目印も無い、初めて来る森の中だが、【目玉(仮称)】たちの道案内が有るので、迷子になる心配は無い。

ありがたいね。


俺たちは、森の中を一列になって歩いている。

頭の中で【多重思考さん】から、「冒険者の少年の一人が、森の中に何かを投げ捨てました。」と、報告があった。

捨てられたモノが何なのか、確認をお願いした。

投げ捨てられたモノは、”盗賊のボス”の身分証だった。

立派な身分証で、貴族の物らしいとのことだった。

よっぽど嫌われていたんだね、あの”盗賊のボス”は。

分からないでもないけどな。

でも、身分証なんて、彼の第二の人生には必要無い物だよね。

彼には第二の人生を楽しんでもらいたい。塀の中で。

少年には「ぐっじょぶ。」と、心の中で言っておく。


しばらく歩いて、ようやく森を抜けた。

少年たちが休憩を要求したので、休憩にする。

体力が無いのと、”戦利品”が重いのが原因だろう。

少年たちはブカブカの革鎧を身に着けている。

自分たちの革鎧の上から。

そりゃ重いよね。

呆れる気持ちもあるが、捨てろと言っても聞く気がしないね。

まわりの大人たちも何も言わないので、皆、そう思っているのだろう。

俺も少年たちを見守ることにする。

生温なまあたたかくね。(笑)


休憩を終えて、森を背に歩く。

少し歩くと街道に出た。

この街道を東に行けば王都に着くのかと思ったが、王都へ真っ直ぐ行く街道はまだ先だとのこと。

さらにしばらく歩き、王都へ行く街道に出たところで休憩にした。


休憩を終えて、街道を東に向けて歩く。

トテトテと。黙々と。ガシャガシャと。

しばらく歩いたら、また休憩を要求された。

もちろん少年たちからだ。

他の人たちの反応は、生温なまあたたかい。

自分たちも経験が有ったりするのかもしれないね。

「ここ、で、親切、な、馬車、を、待ちま、しょう。」

少年の一人が、バテバテになりながら、そんな都合の良い事を言っている。

九人も居るんだぞ。ソンナノムリダロー。(苦笑)

ちなみに俺は疲れてません。

【疲労耐性】があるからね。(てへ)


休憩を終えて、また街道を東に向けて歩く。

トテトテと。黙々と。ガシャガシャと。

最後尾の少年たちが、馬車が来るたびに何かアピールをしているが、疲れるだけに終わっている。

早く”疲れるだけに終わる”と、気付いてほしいものだ。

陽が傾いてきたので、歩きながら冒険者さんたちと相談する。

どこで、どのタイミングで野営するのかをね。

少し先に野営する場所が設けられているとのこと。

「陽が沈む頃には着くと思う。」とのことだったので、そこを目指す。

もう一度休憩をはさんでから、その場所に着いた。

そこそこ広い、さくかこまれた場所が在った。

魔物からは守ってくれそうにない貧弱な柵だ。

馬を繋いだり、洗濯物を干したりくらいしか役に立たなさそうに見える。

逆に言えば、魔物が出る心配が少ないということなんだろう。

まぁ、魔物が出たところで、俺は困らないけどね。

【多重思考さん】たちが守ってくれるからね。(てへ)


「ここをキャンプ地とするっ。」と、言いたかったけど、誰にも分からないから、「ここで野営です。」とだけ、皆に言った。

少年たちは、既に地面と一体化している。

俺は、冒険者の一人にリーダー役をお願いした。

こういった場所での作法さほうとか、余所よその人たちとのやり取りとか、さっぱり分からないからね。

こころよく引き受けてくれたので、彼に任せて、俺はのんびりとする。

リーダーは、火を起こしたり、テントを張る指示を出したり、食事の準備の指揮を執ったりと、ガッツリと働いてくれた。

助かります。

ありがとうございます。


食事の用意が出来たので、地面と一体化している少年たちを起こす。

足を引っ張ったら、ブカブカの革鎧からスポッと抜けそうに見えたが、自重して普通に起こしました。

少年たちは、起き上がる体力が残っていないのか、体を起こさずにブカブカの革鎧からズリズリと出て来た。

足を引っ張ってあげた方が良かったかもね。(笑)

さぁ、皆で食事だ。

食事をしながら、リーダーが夜の見張りの順番の話をする。

少年たちが「俺たちは無理です。」と言う。

確かに無理そうだよね。

あっさり爆睡しそうです。

少年たちに見張りをさせた方が危険な気がするよ。

「盗賊から助けた人が、責任を持って街まで送らなければいけないんですよ。」

「だから、見張りもお願いします。」

そう、少年たちに言われた。

「そんなルールが在るのか…。面倒だね。」

諦めてそう言うと、少年たちが、「「「「うん、そうなんだよ。」」」」と言った。

大人たちがちょっと目を逸らした気がしたが、特になんとも思わなかった。

疲れていないから、見張りぐらいたいしたこと無いし、【多重思考さん】たちが警戒してくれるからね。

無問題モウマンタイです。


食事を終えて、後片付けをした。

少年たちは、テントを立てて、すぐに寝た。

俺の見張りの順番は最後なので、それまでリーダーのテントで寝かせてもらうことになった。

おやすみなさい。


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