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姫様を助けたのは失敗だったが、割と好き勝手に生きています。  作者: 井田六
第八章 異世界生活編04 王都までの道程
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< 01 街と街の間 新魔法披露 二回目 >


街を出て東に向かって歩いている。

この先に在るのは王都だ。

王都ならば治安は良いだろう。

ここまでの二つの街は、治安に問題が在った。

安心して暮らせる街で、のんびりと過ごしたいです。

俺は、日本を懐かしく思った。


時々、振り返りながら東に向かって歩く。

【転移魔法】を使う為に、門番から見えない場所まで歩く必要があるからね。

時々、走って、体の調子を確認した。

今朝、ステータスの値をいじって、体が軽くなっていたからね。

いざという時に、走って逃げられないと困るから、確認は大事だいじです。

体の確認を終えたら、頭の中で【多重思考さん】に話し掛けられた。


「恒例になりました、第二回 新魔法披露です。」


「………………。」

「恒例なの?」とか、「また頭のおかしい魔法を見せられるの?」とか、「三回目以降もあるの?」とかいうセリフが、頭の中に浮かんだ。

「でも、頭のおかしい魔法であっても、正しく使えばいいだけの話だよね。」と、むりやり自分を納得させた。

すると、「何で”頭のおかしい魔法”と決め付けられているのでしょうか?」と、若干じゃっかん呆れた様な感じで、【多重思考さん】に頭の中で言われた。

前科が前科だからねー。

きっと今回も、”頭のおかしい魔法”だろうと、俺はそう確信している。

門から十分に離れている事を確認した後、不安な気持ちになりながら、俺は荒野に転移した。


荒野に来た。

昨日も来た場所だ。

地面がボッコボコです。(笑)

その現実から目をらしながら(←おい)、【多重思考さん】をうながして、新魔法披露を始めてもらう。


「最初は【土属性魔法グループ】です。前方にご注目下さい。」

見ると、空中に”↓”と”このへん”の文字が見えた。

【闇魔法さん】の仕業しわざですね。

相変わらず、気配りの出来る人(?)です。


見ている先に、ゴブリンが一体現れた。

【転移魔法】で連れて来られたのだろう。

まわりをキョロキョロと見回している。

すると、「ドンッ!」と音がして、勢い良く地面が円柱状に盛り上がり、体を折り曲げられたゴブリンが、高く打ち上げられた。

「!!」

俺、ビックリ。

円柱状に盛り上がった地面の天辺てっぺんに、先の尖った杭が何本もえる。

あれらの杭で、落ちて来たゴブリンを突き刺すのだろう。

エグい殺し方だ。

何本もの杭に刺し殺されるゴブリンを想像して、「うげぇ」って気分になる。

すると、杭のえているあたりに、モザイクが現れた。

【闇魔法さん】の仕業しわざだね。ありがとうございます。

ゴブリンが落ちて来る。

前転する様に、少し回りながら。

ドサッ

ゴブリンが落ちた。

地面から盛り上がり、天辺に杭を生やした円柱の、その隣の地面に。

「………………。」

「………………。」

グサッ

地面から杭が伸び、ゴブリンの体を貫いてトドメを刺した。

モザイクさんは、間に合いませんでした。

「うげぇ。」


頭の中で、今の魔法の説明を受けた。

【落とし穴】の魔法を魔改造して、逆に地面を盛り上げる魔法を作ったとのこと。

対象の魔物を上に打ち上げて、杭を生やした円柱の上に落として殺すという、えげつなく、回避困難な凶悪な魔法だった。

よくこんな凶悪な魔法を思い付いたものです。(呆れ)


ちなみに魔法の名前は【打ち上げ台】。

”落とし穴”の反対にしたとのことです。


これは回避困難な凶悪な魔法だよな。

「これ、俺回避できるのかな?」と、思ったら、すかさず【多重思考さん】が「【転移魔法】でも【フライ】でも【レビテーション】でも回避できますよ。」と教えてくれた。

ああ、そうか。そうだよね。

どうやら、凶悪な見た目にビビッてしまって、思考が止まってしまっていた様だ。

危険な状況におちいった時に冷静な判断をするのは、俺には難しいのかも知れないな。

平和な国で暮らしていたからだろう。

いざという時は、【多重思考さん】が対処してくれることに期待しよう。

頼んだよー。

「お任せ下さい。」

そう頭の中で言われた。

今日も【多重思考さん】が頼もしいです。(笑顔)


さて。

思い描いた通りに行かなくて、ゴブリンが円柱からズレた位置に落ちた理由を考えようか。

上に打ち上げられた時に、ゴブリンの体が折り曲げられた状態になっていた。

下からの加速を受けた時に、キッチリとした直立姿勢でなかった為に、体が折り曲げられたのだろう。

その為、体が前転し、斜め上に打ち上げられた事で、少しズレた位置に落ちた。

そんな感じだと思う。


これに対処しようとすると、筒状に結界を張る必要が有るのかな?

でも、どうせ結界を張るのなら、上に平らに張るか、空中に【ブロック】を置いたりして上下で挟めば、それで終わるよね。

「………………。」

あれ? 凶悪度が増してない?

これ、俺回避できるのか?

【多重思考さん】が無言なのが気になります。すっごく。

「頭のおかしいのは”本体さん(=俺のこと)”だよね。」という、そんな感情を頭の中に感じますが、私の気の所為せいだと信じています。

なんとも言えない空気が場に満ちてしまいました。



「次は【光魔法さん】です。先ほどのゴブリンにご注目下さい。」

【多重思考さん】が、むりやり場の雰囲気を変えた。

俺もそれに乗っかる事にした。(てへ)


地面に倒れているゴブリンを見る。

「結界を張ります。」

【多重思考さん】のその言葉に、全身に緊張が走る。

昨日の、爆発し、四散した岩を思い出して。

空中に”減光結界”の文字が見えた。【闇魔法さん】だね。ありがとうございます。

”減光結界”か…。

【侵入不可】の結界の設定をいじって、強い光を通さない様にしたモノだろうか?

それとも、”光”だから【不可視】の結界をいじったモノだろうか?

結界の設定は【多重思考さん】たちにお任せなので、よく分かりません。(てへ)

「いきます。」

頭の中でそう声がした後、ゴブリンが光った。

ゴブリンが光った事に驚いていると、次の瞬間にはゴブリンが燃え尽きていた。

「………………。」


頭の中で、今の魔法の説明を受けた。

【ゲート】の魔法を沢山使い、光をゴブリンの体に当てた。

その際、ただ光を当てるのではなく、【光魔法さん】が光を曲げて収束させた。

収束させた為に強い光になり、ゴブリンの体が光った様に見え、その後すぐに燃え尽きた。

しかも、【ゲート】の入り口側は大気圏の外に在るそうで、大気で減衰していない”紫外線マシマシ”の強い光が使われる為、威力が半端はんぱないそうです。

さらに、【ゲート】を設置して、光を曲げるだけだから、それほど魔力を消費しないそうで、コスパも半端はんぱないそうです。

「………やべぇ。」

説明を聞いて、思わずそんな声が出た。


気になった事が有ったので訊く。

「どうやって大気圏外に【ゲート】を作ったの?」

返答は意外なモノだった。

「【目玉(仮称。魔法で作られた目)】を大気圏外まで派遣して、【ゲート】を作りました。」

「ええぇぇぇぇ!!」

驚いた。

めっちゃ驚いた。

「【目玉(仮称)】って大気圏外まで行けるの?!」

訊いたら、「行ってみたら行けちゃいました。(てへぺろ)」とのことだった。

【目玉(仮称)】すげぇ。

でも、実体が無いから、不思議な事では無いのかな?

【目玉(仮称)】の能力の一面を、新たに発見することになった。


「大気圏外に居る【目玉(仮称)】は、普段何をしているの?」

思い当たるモノが有るが、一応訊いてみた。

「雲の動きを観察しています。台風が発生しても気が付きますよ。」

想像していた通りの答えが返って来た。

台風の接近が事前に分かるのは良いよね。

雲の動きの観察は、引き続きしてもらう様にお願いした。


さて。

気になった事があったので、新魔法の評価が後回しになっちゃっていたね。

【光魔法さん】がねていなければ良いのだが…。

「大丈夫です。」

大丈夫だそうです。良かった。(ホッ)

この魔法は、威力が高くて、コスパも良いのがいいね。

良い魔法だと思います。

頭の中に、喜んでいる様子が伝わってくる。

でも、”この魔法を使うのが最適”っていう状況が思い浮かばないな。

いや、一つだけ思い浮かぶんだけどね。

「ヤキツクセー」っていう状況なんて起きないよね。起きないよねっ。


俺は、ごとけて、のんびり過ごすことに決めているのだから。


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