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姫様を助けたのは失敗だったが、割と好き勝手に生きています。  作者: 井田六
第七章 異世界生活編03 魔術師の街
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< 09 魔術師の街04 >


転移で、宿が集まっている一角いっかくへ来た。


今夜は宿に泊まろうと思っていたからね。

この街でやろうと決めていた事の一つだ。

宿の相場を知る為にね。

しかし、まだ日が高い。

チェックインには、まだ時間が早い気がするな。

でも、一応チェックイン出来るか訊いてみるか。

中程度ちゅうていどおぼしき宿に行く。

「すいません。一人なんですが、きは有りますか?」

「有りますよー。」

「では、一泊お願いしたいんですが、いくらになりますか?」

素泊すどまりですか? 二食付けますか?」

「えーっと、二食付きで。」

「じゃあ、一泊二食付きで銀貨6枚ですね。」

銀貨6枚は有るが、銀貨の残りが少なくなってしまうな。

金貨でお釣りをもらおう。

「えーっと、銀貨があまりなくて…。金貨でお釣りもらえますか?」

「いやぁ、金貨だとお釣りは無いねぇ。」

あれ?

金貨1枚の価値は、銀貨10枚だと思っていたんだが、もっと価値が高いっぽいな。

「じゃあ、銀貨を用意して出直して来ますので、部屋を取っておいていただけますか?」

「え? ああ、いいよ…。」

何か驚いたっぽい反応をされたのは、何なんですかね?

俺は一度、宿を離れた。


俺は歩きながら、銀貨を得る方法を考える。

さて、どうするかな?

この街の中をうろついて、変なのに会いたくないからなぁ。

昨日行った隣街まで転移で移動して、昨日の魔道具屋で魔石を買ってもらうのが、一番(らく)で、一番早く済むかな?

うん。そうしよう。

俺は隣街の魔道具屋の近くに転移した。

ちなみに、転移の目印は【目玉(仮称。魔法で作られた目)】です。

あの街で魔石を売れない事に気付いてから、念の為に【目玉(仮称)】を配置しておきました。【多重思考さん】が。

物陰ものかげでコッソリと、【無限収納】から【マジックバッグ】にゴブリンの魔石30個を移す。

そして、魔道具屋で買い取ってもらって、銀貨9枚を手に入れた。

これで、宿代やどだいが払えるね。

この街に他の用事は無いので、さっさと元の街に転移で戻った。


さっきの宿に戻り、チェックインした。

『チェックインするには時間が早いかも?』とか思っていたはずなのに、すっかり忘れて、普通にチェックインしていました。

普通にチェックイン出来たから、それで良いんだけどね。(苦笑)

馬車で街にやって来た商人や冒険者たちの為に、一日中チェックイン出来る様になっているのかもしれないね。

部屋は2階の右側の奥の方とのこと。

階段を上がり、右側に向かう。

長い廊下が在った。

この宿の建物は奥に長い様だ。

きっと、左側も同様で、上から見ると”コ”の形をしてるのだろう。

思いのほか、長かった廊下を歩き、部屋に入った。

部屋に入ると、一直線にベットへ行って、ごろんとした。

歩き回ったから疲れているかと思ったが、そうでもなかった。

今日も【疲労耐性】さんが、良い仕事をしてくれたのだろう。ありがたいね。

それはそれとして。

この世界に来てから、初めてのベッドだ。

優しい感触に体の力が抜ける。

「ふあぁぁぁぁ、ベッドはいいなぁぁぁぁ。」

そんな声が、自然と出た。

初日は地面の上で寝たからなぁ。

二日目は枯れ葉の上に毛皮を被せた寝床だったし。

俺は、普通のベッドに寝ただけで感動した。


しばらくのんびりしてから、今後のことを考える。

この街で、のんびり過ごす事は出来るのだろうか?

無理っぽいよね。

魔術研究会と魔術局とかいう組織のどちらにも入る気が無いから、これからも何度も勧誘されそうだ。

下手へたを打つと、両方からの勧誘合戦なんて事態も起こり得る。

鬱陶うっとうしいよね。

魔石を買い取ってもらおうとしても、冒険者ギルドか魔術局でないと、魔石を買い取ってもらえないというのも問題だ。

魔石を売るのが一番の収入源になるだろうからね。

この街で暮らすのは無理だよね。

うん。

明日は、次の街へ移動しよう。


東の隣の街は、王都だ。

南東の方角にも街が在る事は【目玉(仮称)】で調べて知っているが、王都の方が近いので、次は王都に行ってみよう。

王都の方が治安が良いだろうしね。

そう、次の方針を決めて、ベッドの上でゴロゴロダラダラした。


ゴロゴロダラダラして、ふと、この街の魔術師たちの事を考えた。

素行そこうに問題が在る魔術師が多い気がした。

あと、魔術師を”至高の存在”とか”選ばれた者”とかのたまう馬鹿も居たよね。

魔術師の評判が悪くなると、魔術師は暮らしにくくなるよね。

この街だけでなく、他の街であっても影響が有るかもしれない。

俺自身の為に、この街の魔術師たちの事を、何とかした方が良いのかな?

でも、何か出来る事なんて有るかね?

何かを変えるとしたら、えらくなって上から命令しないといけないかな?

組織に所属する気なんて無いのに、何を言ってるんだろうね、俺は。

別の良い方法なんて有るかなぁ? 無いよね?

そんな事を考えていたら、頭の中で【多重思考さん】に言われた。

『魔術師が問題を起こすのが問題なら、魔術師でなくしてしまえばいいんですよ。(ニヤリ)』

考える。

考えるが、【多重思考さん】に言われた事が、よく分からなかった。

もう一度、頭の中で【多重思考さん】に言われた。

『MPを”1/1”にしてしまえば、魔法が使えなくなりますよ。』と。

あー、今日も使った、あの恐ろしい【ステータス】の魔法か。

確かに、MPを”1/1”にしてしまえば、二度と【ファイヤーアロー】とか撃てなくなるだろうね。

馬鹿が【ファイヤーアロー】を撃とうとしているところを気絶させた様子を、頭の中で思い出す。

うん。いいね。

それで行こう。(黒い笑顔)

別に馬鹿な魔術師たちにムカついた訳ぢゃナイデスヨー。

これは、俺がごとけて、のんびり過ごす為に必要な事です。

うん。そうです。


でも、あの恐ろしい【ステータス】の魔法の存在が知られていれば、魔法を無効化する魔道具とか結界とかで防いでいるよね。

でも、魔術研究会とやらに勧誘してきた男たちは、そんな魔道具を持ってなかったよね。

何でだろう?

しただからかな?

魔道具が高価なら、したが魔道具を持っていなくても、おかしくないよね。

組織のえらい人たちは、魔道具とかで防いでいるだろうね、きっと。

したの人たちのMPを”1/1”にしたら、えらい人たちに気付かれてしまうよね。

先にえらい人たちからやって、気付かれない様にする?

いや、ステータスを見る魔道具が在るのだから、すぐに気付かれるか。

うん、気付かれるのは仕方が無いね。

やったのが俺だと気付かれなければいいか。

そうだね。

やったのが俺だと気付かれなければいい。

その様に実行する事に決めて、俺が疑われない方法を考える。

俺がこの街を出て数日()ってから、この街に残した【目玉(仮称)】を通して、MPを”1/1”にしてしまおう。

そうだね。

これでいいね。(黒くてスッキリしたイイ笑顔)


一段落したら、【多重思考さん】に【魔法無効】の結界の問題点を指摘された。

街に入る時に、水晶玉に触れてステータスの確認をされた。

そのことから、『【魔法無効】の結界は、接触されると効果が無い』ことが、分かったとのこと。

そう言われてみれば、そうだね。

普通に【鑑定】されていたよね。

気が付かなかったよ。(てへ)

また、離れた場所から【鑑定】をされた際に、偽装した低いレベルのステータスを見せる事が出来ていれば、追い掛けられる事も無かったかもしれない。

『これらの対策を考えましょう。』と、【多重思考さん】に言われた。

うん、確かに考えないといけないね。

対策を考えよう。


【多重思考さん】たちと相談して、以下の対策をした。

まず、【結界魔法グループ】さんにお願いして、【偽装情報発信】の結界を作ってもらった。

そして、【侵入不可】と【偽装情報発信】の結界を追加して、結界を四重に張ることにした。

張る結界は、内側から【侵入不可】、【魔法無効】、【物理無効】、【偽装情報発信】だ。

【偽装情報発信】の結界により、離れたところから【鑑定】をされた時に、偽装したステータスを返す事が可能になった。

しかし、これだと新たな問題が起きる。

【鑑定】する水晶玉に触れる前に、球状に張った【偽装情報発信】に触れてしまい、鑑定結果が表示されてしまうことになる。

そうなってしまうと、不正を疑われてしまう。

その対策として、今まで球状に張っていた結界を、体の表面に沿う様に張ることにした。

こうする事で、水晶玉に手を触れて【鑑定】されている様に見せる事が出来る様になった。

結界の変形は、もともと結界に有った機能だ。

”結界は球状に張るもの”だと思い込んでいたので、今まで気付いてませんでした。(てへ)

【侵入不可】の結界は、”接触”により魔法を使われるのを防ぐ目的で追加した。

この結界は、例外を色々と設定できる様で、空気とかはちゃんと通してますよ。

【多重思考さん】が色々と設定してくれました。『丸投げした』とも言う。(てへ)

これで問題点の対策をキッチリと出来たかな?

しばらくの間は、問題が無いか、気にしていないといけないかもね。

頼むよー、【多重思考さん】たち。(←丸投げです)


そんな事をしていたら、日が暮れていた。

よし、食事をしに行こう。

1階に降りる。

1階のカウンターの前が食事をするスペースになっている。

ラノベでよくある、宿屋兼飲み屋の造りだ。

カウンターに居る、チェックインの時にお世話になった女性に食事を頼み、テーブル席に座った。

階段を背にした席だ。

逃げやすく、全体が見える席が良いと思ったから。

全体が見える席にしたのは、食事の作法とか知りたかったからです。

何かが起こるとか考えていた訳では無いですよー。

一日に、そう何度もトラブルが起こる訳ないよね。

そう考えていた時期が、私にも有りました。(遠い目)


「酒だー!、酒持って来い!」

そう言って男が入って来た。

その後ろに三人の男たちを連れている。

全員ローブを着ているね。

魔術師かな?

「今日もオレのオゴリだー!」

「「「ありがとうございます。」」」

羽振はぶりのいい男だな。

男たちは一番奥のテーブル席に座り、ふんぞり返る。

厨房ちゅうぼうから出て来た女性が、彼らに近付いて言う。

「あんたら、お金を払う気なんて無いだろ! お金を払わない奴は客じゃないよ! 出て行きな!」

おお、強気つよきな人だな。

でも、男たちは特にどうじていない様子だ。慣れているのかな?

「この街は”魔術師の街”だ。 魔術師さまが一番偉いんだよ。お前たちは俺たちに尽くせばいいんだよ!」

「「「そうだ、そうだ。」」」

クズばっかりだね、この街の魔術師は。

「あんたらに出す物なんて無いよ! とっとと出て行きな!」

そう言って、さっさと厨房に戻る女性。

男たちは大声で文句を言っている。

うるさいね。

何か言う男たちが、バタバタと倒れた。

もちろん気絶させたからです。【多重思考さん】たちが。(てへ)

何も指示を出していなかったのだが、俺の考えを読んでくれた様だ。

すかさず、男たちが気絶している場所に【隠蔽いんぺい】と【人除ひとよけ】の結界が張られた。

もちろん【多重思考さん】たちがしてくれた事です。

これで、誰も男たちに意識が向かないかな?

いや、騒いでいた男たちが急に静かになったら、何事なにごとかと思うよね。

失敗したかな?

しかし、目をそむけていた他の客たちは、誰も気にしていない様子だ。

上手くいったのかな?

先ほどの女性が厨房ちゅうぼうから出て来て、俺の前に食事を置いてくれた。

そして、さっき男たちが騒いでいたあたりを見て、不思議そうな顔をしている。

違和感を感じている様だ。

しかし、違和感が何なのか分からなかった様で、厨房ちゅうぼうに戻って行った。

ふう。

初めて使った魔法だったのだが、狙った通りの効果を発揮してくれた様だ。

そして、意外と効果が高かった事に驚いた。

街の中で【転移魔法】を使う時なんかに、重宝ちょうほうするかもしれないね。

さて、食事だ。


運ばれてきた食事は、ステーキとスープとパンだ。

早速さっそく食べる。

豚肉っぽいステーキには、トマトケチャップっぽいソースが掛けられていて、まぁまぁの味だった。

この世界にもトマトが在るのかもしれないね。

そう思ったら【多重思考さん】に、『トマトは在ります。他にネギ、ジャガイモ、ニンジン、ナス、ニンニク、ショウガが在りました。』と、教えてくれた。

【目玉(仮称)】を使って収集した情報なのだろう。

スープのほうは、よく分からない味だった。

何味なにあじなんだろうね? これは。

うーん、分からん。

”よく分からない味”と、しておこう。

パンは、やっぱりかたかった。

なんちゃら菌とかを使って発酵はっこうさせたりしていないんだろうね。

王都に行けば、柔らかいパンが在ったりするのかな?

あまり期待できない気もするが、ちょこっとだけ期待しておこう。


ちなみに、騒いでいた男たちは【転移魔法】で街の外にポイッてしました。

俺が食事をしている間に。【多重思考さん】たちが。(てへ)


食事を終えて、食器を片付けてもらう。

カウンターに移動し、女性にこの街の事を訊いた。

この街で見た魔術師たちが、好き放題にしていたので。

なんでも、領主の方針で、魔術師たちを優遇して、魔術師たちをこの街に多く集めているとのことだった。

大勢おおぜいの魔術師たちがこの街に移住して来た事で、街の景気は良くなったそうだ。

領主の夫が商人だったので、『街の景気を良くする為にそんな事をしたのだろう。』とのことだった。

初めのうちは、魔術師たちは普通に振舞ふるまっていたのだが、次第しだいえらそうにしだした。

『魔術師は至高の存在だ!』とか言い出して、好き勝手に振舞ふるまう者が多くなっていったそうだ。

街の衛兵は、魔術師たちを取り締まったりしないらしい。

魔術研究会とかの言いなりになっている様だ。

苦情を受け付ける窓口も押さえられている様で、『領主も街の現状を知らないのではないか?』 とのことだった。

あと、『あんたみたいな、まともな態度の魔術師は珍しいよ。』と、言われた。

『魔術師にしておくのは、もったいないよ。』とか言われると、反応に困るよね。


この街の魔術師たちは、想像以上にひどい様だ。

俺は、さっさとこの街を出る事に決めて、部屋に戻って、寝た。


(一部修正しました。2019.11.24)

ルビの追加と、「」の一部を『』に変更しました。

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