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姫様を助けたのは失敗だったが、割と好き勝手に生きています。  作者: 井田六
第七章 異世界生活編03 魔術師の街
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< 08 魔術師の街03 >


露店での買い物を終えて、街をブラつく。

しばらくブラついていたら、【多重思考さん】に話し掛けられた。

頭の片隅かたすみに別の視界の映像を写されながら、『あとを付いてくる男が居ます。門のところで勧誘してきた男です。』と、言われた。

そして、『魔法を使う時は慎重にお願いします。実力を知られるのは避けた方が良いでしょう。』とも言われた。

ああ、そうだね。

たいして実力の無い魔術師を勧誘するのに時間を使うのは、もったいないもんね。

引き続き監視をお願いして、街をブラつき続けた。


『そろそろお昼かな?』という時間になった。

ブラついていて見付けた、食事をするお店が集まっている場所に行く。

この世界に来てから、この世界の味付けがされた食事というのは初めてだ。

楽しみだね。

お店に入る。

カウンター席とテーブル席の在る、日本にも在りそうな割と普通のお店だった。

客のりは半分ほど。

カウンター席に座り、女性の店員さんに、おすすめの物を頼む。

銅貨4枚を先払いとのことだったので、「お釣りお願いします。」と言って、銀貨1枚を渡す。

少し驚いた顔をされたが、ちゃんとお釣りの銅貨6枚をもらえた。

チップを寄越さないケチな客だと思われたのだろうか?

「この街に来たばかりなの?」

女性の店員さんに、そう訊かれた。

「ええ、そうです。今朝来たばかりですけど、何か変でしたか?」

丁寧ていねいな言葉遣いをする魔術師は、少なくなったから。」

そう言って、その女性は厨房ちゅうぼうに注文を伝えに行った。

この街には、露店に居た様な変な魔術師が多いのだろうか?


待っている間にまわりの客が食べている物を見る。

この世界の食べ物に興味があったので。

パンとスープというのが多い様だ。

ステーキを食べている冒険者っぽい人も、ちらほら居るが。

一分も掛からずに、頼んだ”おすすめの物”が出て来た。

パンとスープだ。

スープは野菜と肉が多めに入ったコンソメスープの様な見た目だ。

それが、やや大き目などんぶりみたいなうつわに入っている。

パンをちぎる。

硬い。

ちぎるのに少し力が要る。

ちぎったパンを少しかじってみる。

硬い。

あと、口の中の水分が奪われる。

パッサパサだよ。(笑)

まわりの人たちが、パンをスープにひたして食べているのに納得した。

スープを一口飲んでから、ちぎったパンをスープに浸して食べる。

うん、美味しい。

スープの味はコンソメスープっぽかった。

パンをちぎって、スープにひたし食べる。

時々スプーンでスープの具を食べ、完食した。

味も量も満足できる物だった。

かよってもいいと思えるお店だったね。

うん。美味しかった。


お店を出て、引き続き街をブラつく。

お店を出てすぐに、【多重思考さん】に話し掛けられた。

『後を付けている男が仲間と合流しました。』

「男は、【鑑定】でステータスが見えなかったので、後を付けていた様です。』

『一時的に【魔法無効】の結界を解除するのが良いと思います。』

『あの男が【鑑定】を使ったのは、街に入ってすぐの門のところでしたので、街に入る時に警戒して【魔法無効】の結界を張っていたと思わせましょう。』

『目に見える魔法に対しては、見付け次第結界を張ります。精神的な魔法は【精神魔法耐性】を付与しましたので、これで防げると思います。』

そう【多重思考さん】に言われた。

うん。ソレデイインヂャナイデスカネー。

【多重思考さん】が有能で助かります。

俺は、”要らない子”なんかぢゃないですよー。

いや、自分の一部だから、”有能で”とか言うのはおかしいね。

後を付けている人たちに偽装したステータスを【鑑定】で見てもらって、”たいして実力の無い魔術師”だと思ってもらえればいいね。


街をしばらく歩いた後、公園に入った。

後を付いて来ている男たちが、何かしたがっている様に感じたから。

接触する気が有るなら、ここで接触してくるだろう。

後を付いて来ている男たちの事は、既に【目玉(仮称。魔法で作られた目)】を通して【多重思考さん】たちが【鑑定】を済ませて、たいしたレベルでないと分かっている。

危なくなったら、【目玉(仮称)】を通して【多重思考さん】たちが気絶させてくれるので、安心です。

近付いてきたのは五人。全員、魔術師の様な服装をしている。

「こんにちは。我々は魔術研究会の者です。」

「我々魔術研究会は広く門戸もんこを開き、多くの魔術師たちを受け入れています。」

「君も知っていると思うが、この街は”魔術師の街”をうたい、魔術師たちにとって楽園の様な街です。」

「魔術研究会に入れば、様々な形で優遇され、支援してもらえます。」

「君も、我々の魔術研究会に入りませんか?」

男たちに、笑顔でそう勧誘された。

「組織って馴染なじめませんので、お断りします。」

「私なんかにかまうより、もっとレベルの高い人を勧誘した方が、その研究会の為になりますよ。」

そう言って断った。

しかし、男は特にかいしていない様子だ。

断られるのに慣れてるんですかね?

男たちは、笑顔でさらに話を続ける。

「我々は、崇高すいこうな使命の為に魔術師を集めています。」

おお。”崇高な使命”とか言い出したぞ。

別にワクワクとかシテマセンヨー。(ワクワク)

「魔術師とは、選ばれた者たちなのです。我々魔術師こそが、愚民ぐみんたちを正しく導くことが出来るのです。」

「我々魔術師が、この街から世界を変えるのです。あるべき姿に。」

「あなたも我々と共に、この世界をあるべき姿にただしましょう。」

へぇー。

魔術師が”選ばれた者”とか、無いわー。

「魔法が使えるのは個性の一つですよ。」

「「足が速い者が偉い。だから足が速い者が世界を支配するのだ!」とか言われて、「はいそうですか。」とか、ならないでしょ。」

「あなた方とお仲間になりたいとは思いません。お引き取り下さい。」

一人が血相けっそうを変えて怒鳴どなる。

「貴様、魔術師を愚弄ぐろうするのか!」

この程度で”愚弄”とか言われちゃうのか。(呆れ)

「おかしい事をおかしいと言っただけですよ。」

「勧誘するのなら私ではなく、あなた方に賛同する(頭のおかしい)人たちにするべきなのでは?」

そう言ったら、一人がキレた。

「我々を愚弄ぐろうしおって!」

沸点低いなー。(呆れ)

キレた男が魔法の詠唱を始めた。

他の男たちは、その男を止める気は無い様だ。

露店での出来事を知っているのかもしれないね。後を付けられていたらしいし。

詠唱を始めた男に対して、俺は何もしないで待つ。

【多重思考さん】が【魔法無効】の結界を張ってくれたから、安心です。

「【ファイヤーアロー】。」

はい、おなじみの【ファイヤーアロー】さんでした。

こちらに向かって来ます。

露店で騒ぎを起こした男のより、威力が高そうに見えます。

もちろん、【魔法無効】の結界で消えてしまいましたが。(てへ)

【ファイヤーアロー】を放った男は、驚いている様だ。

さらに二人が加わり、三人で詠唱を始める。

何なんですかね、この人たち。

勧誘を断られたぐらいで、複数で攻撃魔法をぶっ放すとか。

理性とか無いのかな?

疑問だ。

詠唱が終わり、三人同時に【ファイヤーアロー】を放つ。

これらも、もちろん、【魔法無効】の結界で消えましたよー。(てへ)

「「「………。」」」

もう諦めてくれないかなー。(←なげやり)

諦めずに三人で詠唱を始める。

最初に【ファイヤーアロー】放った男は、いか心頭しんとうって感じで、魔力を込めてるっぽいです。

詠唱の待ち時間が手持ても無沙汰ぶさたです。(呆れ)

我慢して待っていると、【ファイヤーアロー】が放たれた。

これらも、もちろん、【魔法無効】の結界で消えますぅー。(てへ)

「「「………。」」」

もう諦めようね。

君たちは頑張ったよ。うん。

最初に【ファイヤーアロー】放った男だけが、また詠唱を始めた。

先ほどより、さらにいか心頭しんとうって感じで、魔力を込めてるっぽいです。

せいぜい頑張って下さい。(←他人事ひとごとかよ)

頭の中で【多重思考さん】が話し掛けて来た。

『MPが一桁になったので、MPを”0”にします。』

これは、事前にちょこっと打ち合わせをしていた事だ。

いきなりMPを”0”にすると、俺が何かしたと気付かれる恐れがあるので、魔力切れっぽく見える様に、MPが一桁になったら”0”にすると決めていました。(てへ)

そして、詠唱をしていた男が倒れた。

うん。これなら、魔力を使い過ぎて倒れた様に見えるね。

ムキになって魔力を込めてたからねー。

「そろそろ、帰らせてもらいますね。」

俺はそう言って【不可視】の結界を張り、姿を消す。

それと同時に、【侵入不可】結界を張った【目玉(仮称)】に、男たちの間を退ける様に、すり抜けてもらった。

「逃げたぞ!」

退けられた男二人が声を上げて、【目玉(仮称)】が通り抜けた方向を向いて走り出す。

「くそ! 見えない!」

「どこへ行った!」

「追え!」

男たちはバタバタと公園から出て行った。

「ふう。」

やれやれだね。

俺は姿を消したまま、東の門の近くの宿が集まっている一角いっかくへ転移した。


その場には気絶した魔術師が一人取り残されたのだった。

仲間が回収してくれればいいですね。(黒い笑顔)


(一部修正しました。2019.11.24)

ルビの追加と、「」の一部を『』に変更しました。

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