不動
私は今、仰向けになって地べたに寝転がっている。
空は変わることのない澄んだ青を映し、風も泳ぐことをやめ、草木も歌うことなく静かに並ぶ。
このまま時間だけが流れればいいのにと、そう思った。
今、この瞬間、この空間は静かで安心ができる。
かさかさと葉の擦れる音がした。
今、この瞬間、この空間は静けさと安心が消えた。
先までは自分の呼吸と心臓の鼓動しか聞こえなかったのに、今この場所はたくさんの音が聞こえる。
あぁ、なんて恐ろしいのだろう。
世界が私に牙をみせた。
このまま寝転がっていたら、空から雷や酸の雨が降るかもしれないし、風が遠い土地の毒素を運んでくるかもしれないし、草陰の毒蜘蛛に噛まれて死んでしまうかもしれない。
立ち上がって逃げたところで、安心できる場所がある保証もない。
結局、私はこの場所に寝転がったまま動かなかった。
そうすることを選んだ。
私はいつまでもこの場所で未来の見えない恐怖に怯え続けるのだ。