六話 勇者の本気?
「どれだけの力を隠していたのやら。
一瞬で魔力総数が跳ね上がってるじゃない」
(それになんだか精神的な圧迫感が増してる?
殺りづらいわ。)
「流石にあれ以上やられると死にかねないからね。
抑えてたもの全てを出させてもらうよ」
全身に88の星座が顕れる。
しかもそれだけでなく肌の色が合わせるように青黒くなっていた。
星座が体の至ることろに広がっているため、宇宙や夜空を連想させてしまう。
「これって自分の力全てを使っちゃうから終わったら全身がパンプアップしちゃって動けなくなっちゃうんだけど、そうもいってられないだろう?」
「じゃあ時間切れを狙えばいいのかしら?
簡単に自分の弱点を言っちゃうなんて、余程の馬鹿か自信満々のアホね。あなたはどっちかしら?」
「どちらかって言われると後者の方だな。
今の状態なら負けねぇよ。
っと雑談はこれくらいにしてさっさと終わらせようか。少し確認したいこともあるしな」
「ふ~ん、簡単に言うわね。まぁいいわ次は手加減なしで行かせて貰うわよ。
『風と火の加護よ、我が怨敵を打ち滅ぼす火の竜巻をいまここに』」
女の左右の手に火と風の魔力が集まったかと思うとその魔力が一瞬で膨れ上がる。
左右を合掌し手を離していくと左右の手には魔力の代わりに小さな火災旋風が出来ていた。
小さいからといって侮ると死にかねないほどの濃い魔力が宿っていることが分かる。
「喰らいなさい、思う存分にね。
『轟炎の嵐』!!!」
俺は剣を持ち直し竜巻の原力である魔力がどこにあるかを一瞬で見抜く。
それを断ち切るために普通の人間では見抜けない速度で剣撃を加える。
魔力の供給が途絶えた竜巻は無霧する。
「くっ!魔力をただの剣で断つとか、反則としかいいようがないじゃない」
「こうでもしないと勝てそうにもないんでね!」
全身に星座の『魔法陣』が的確な位置に散らばっているせいで、黒鉄の下がっていた実力が元に戻るだけではなく、それ以上に、何倍も何十倍も膨れ上がっている。
どんどん女を押し返していく。目的の場所まであと数歩分。
剣の威力と威圧で後退していく女にはその部分は見えていない。
「さぁ!これで最後だ!!」
相手の回避を誘発させるように剣を振るう。女は予想通り跳躍しそれを避ける。
着地点は俺が誘導していた場所だった。
「!?足が!!!」
女は自分が最初にしかけた沼に足を取られバランスを崩し尻もちをつく。
両手で受け身を取ろうとするがそれも沼に嵌ってしまう
「よし、これで勝負ありかな?
動きずらそうだけど我慢しろよ。取りあえず、お前の仮面の中身が知りたいんだ。
俺の予想と違っていたら、良いんだけどな……」
そういいながら女に近づき仮面に手を伸ばす。
「……やっぱりか、最初の違和感はこれだったか…。」
最初から違和感があった。背丈も声色も似ていた。髪の色はなぜか真っ白になっていたが……。
仮面を取って確信に至った、至ってしまった。
人間側の勇者の正体が、俺のよく知っている奴だということに。
「なぁ、お前は元の世界の事を、例えば学校のクラスメイトの名前を言えるか?勇者よぉ…」
「……?何を言い出すかと思えばそんなことか、簡単だろう?
私のクラスメイトの名前など……かん……た……!?」
言葉が途切れる、次第に勇者の顔が訝しげになっていく。
「なぜ!?どうして……思い出せない!?ぐぅ、頭が……痛い……」
突然もがきだしたと思うと、操り人形の糸が切れたかのようにその場に崩れる。
「どうした!?大丈夫か!おい白木!しっかりしろ!」
勇者が倒れたことで取り乱す俺。
慌てて駆け寄り抱き上げようとするが、背後からいきなり殺気の混じった打撃が襲い来る。
衝撃に合わせるように左に派手に飛んでダメージを受け流す。
「ふぉっふぉっふぉ。完全に油断をついたと思ったのですがねぇ」
そこに立っていたのは黒い魔法使いのような恰好をした老人だった。
老いた体に似合わないほどの魔力を乗せた殺気を周囲に放っている。
「てめぇ、誰だ。
どこに隠れていやがった。」
予想外の攻撃と勇者が倒れたことでの混乱で言葉が荒くなる。
「私はしがない転移魔法使いですよ。クソッタレの魔人種ゥ。
そこに無様に転がっている勇者を回収に来ました」
そういいながら女を小脇に抱える。
女とはいえある程度武装している人間を老人が抱えるという普通ならばありえないであろう光景だ。
「そいつにはまだ聞きたい事があるんだよ。返してもらおうか?」
「ふぉっふぉっふぉ、私もこの勇者にはやらせたいことが山ほどあるのでね。
渡すわけにはいきませんよ」
「じゃあ、あんたから奪い返せばいいってことかっ!」
俺は言葉を紡ぎ終える前に低姿勢で走りだす。
制限が解除してあるため一瞬で老人に詰め寄る。腕を伸ばし勇者を回収しようとする
が
「まだまだ動きが荒いですなぁ。それでは私の魔法の発動速度には追いつけませんぞ?」
後ろから声が聞こえる。
すぐに後ろを向くと同時に頭の上に人間二人分くらいの質量が乗る。
「ほう、この頭は乗り心地がいいですな」
「ふっざけるなあああ!」
老人の足をつかもうとするが空を切る。
また背後から声がする。急いで振り返ると悠々と腰を折っていた
「もうわかりましたかな?今のあなたでは私には勝てませんよ。
私は急ぐのでひかせてもらいますので、悔しかったら追いかけてください」
そいういうと顔をあげ勝ち誇ったように嘲笑をこちらへ向けてその場から消え去る。
「くそがああああああああああ!!!」
老人がさっきまでいた場所に向かって剣を投げつける。
いないと分かっていてもやらずにはいられなかった。
「はぁ、はぁ、はぁ……しら、き……」
俺はその場に倒れてしまった。
最後の終わり方が急だったかもしれません。
次は過去の回想が先に入ると思います。




