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魔界の勇者~魔界で勇者として幼馴染みと冒険します~  作者: ろくみっつ
第三章 ≪黒≫の目覚め
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四十五話 嘲笑する蛇

活動報告のほうでも少しだけしゃべりましたが、最終話までもう少しになります

最後までお楽しみいただけたら幸いです

振り返った先にいたのは整った顔を醜悪に歪めて笑う白木だった。


「ふふふ、無駄なことするんだな」


声色は白木のもの、だが、その言葉は全く別の誰かの言葉で、こちらを嘲笑しているのが明らかだった。

なにが可笑しいのか、にやにやとしている。そのことが俺の虫の居所を悪くさせる。


「うるせぇよ。さっさとその体、白木に返せよ」

「あぁ?それは出来ないなぁ、なんせ、久々に現界したばかりだし、なにより、この体は意外と使い勝手が良いんだよ。返すわけが無いだろう?ひひひ」


そう言って、地面に突き刺した杖を引き抜き、もてあそぶ。

尚も笑いながら、言葉を投げてくる。


「にしても、すごいなぁ、お前。まさか、無理矢理魔方陣刻んで、親和させるなんてなぁ。しかも陣の形が変わるなんて、普通あり得ないぜ?ハハハ。

まぁ、無駄なことには、変わりないがな。お前も、その魔王とかいうのもさっさと処分してやっからさ」


狂ったように笑う白木、いいや、白木に巣くう『赤き蛇(マサエル)』か。

言動の端々で、俺の逆鱗に触れてくるマサエル。ダンジョンから感じていた嫌な予感も相まって、怒りや不快感を抑え切れそうにも無い。


「てめぇのやりたいことなんて知るかよ……。それなら、俺がてめぇを白木の体から引っ張り出してやるよ。そこで黙って待ってろよ!」


言葉と共に刀を抜き、マサエルに向かって走る。

さっき、メノスへと流した魔力は決して少なくはなかった。だが、残りの魔力のことなんて一切考えずに全身の魔法陣に魔力を行きわたらせる。

過剰ともいえる魔力に反応し、陣はこれまで以上の力を発揮する。

刹那ともいえる速さでマサエルに接近し、刀を振る。


だが、いざ目の前に白木の顔がそこにあると、心が、揺らいでしまった。


「ざぁんねん。甘ちゃんだなぁ、お前はッ!」


マサエルはその動揺を利用し、回し蹴りを放ってくる。

いつの間にやら脚には金属のような何かで武装されており、辛うじての防御は意味をなさず、俺は吹き飛ばされた。


「いやぁ。惜しかったなぁ、クロガネ?ていうのか。ヒヒヒ。ほんと惜しかったよ。まぁさかあそこまでのスピードとは!いや、違うか、その魔法陣が優秀なのか。あぁ、ほんとにすげぇと思うぜ?

ただ、非情になり切れてねぇなあ。愛する奴でも敵になったら殺す覚悟ってのを持たなきゃなぁ。ヒヒヒヒハハハハハ」


狂ったように嗤いながら、こちらへとゆっくりゆっくり歩む寄るマサエル。


「うるせぇ、黙れっつってんだろ」


攻撃された、脇腹に魔力を流し、手早く『蜥蜴座(ブレーザー)』の陣を描き、回復を図りながら、起き上がり、マサエルを睨め付ける。


「おっほぉ。こえぇなぁ、ひひひ。そんなにこの体の持ち主が大好きなのかぁ?

やっぱ人間ってのは面白れぇなぁ。勝てる望みもない相手に、好きな奴のために殺されに突っかかれるんだからよぉ。」


俺には理解できねぇぜ。と呆れるように呟くマサエル。

そして、杖を構え、またしゃべり始める。


「色々と人間を見てきたけどよぉ。やっぱりお前みたいなのは珍しいんだよなぁ、ひひ。大体のやつは、よわっちぃ奴は、こんなの夢だぁ。とか言って現実逃避しだすんだぜぇ?ハハハ。まぁ、人間にしては強い奴らはお前みたいに挑んできては無様に死んでいくんだがなぁ。

さぁて、お前はどうなんるんだろうな。これまでのやつと同じように無駄死にかぁ?それとも他の行動でも見せてくれるか?まぁ、俺を殺すってのは、絶対に無理なことだけどなぁ。ヒヒヒ」


「ベラベラと汚い言葉並べてんじゃねぇよ。お前は俺が消すんだよ。絶対にな!」


「あぁ?フヒ、ヒヒヒ、アヒャヒャヒャヒャ!面白れぇ!面白れぇなぁ全くよ!!!

俺を消すだぁ?ハハハハハ無理だって言ってんだろうがよぉ!龍や精霊だって俺を殺すことができなかったんだぜ!?お前みたいなちっぽけな人間如きが、出来るわけないだろ?ハハハハハハ!

はぁ……興醒めだっての。その魔力すっからかんの体じゃあ、俺に攻撃さえ当たんねぇよ」


その場で腹を抱えて嗤うマサエル。ひとしきり嗤い終えたあとは、一気に雰囲気を暗くして首を振る。

心底呆れたような顔をして俺を見る。

それが、また、ものすごく俺を苛つかせる。


しかし、俺の魔力は、魔方陣を維持できなくなるほどに底をつきかけている。現に、さっき発動させた陣も満足に機能していない。

でも、それを回復できないわけではない。


だから、

「お前のその呆れたっていう面を、驚嘆に染めてやる。まずは、そっからだ。

 『我が背に宿りしは、88の天体。

星の力を我が物とせん

制限解除リミッターオフ』!!!」


その言葉に反応して、魔方陣が再び、輝く。


そして、今までに無い、音が響く。バキンという、何かが壊れた音だ。


直後には、魔力が溢れ出す。

それらは全身を巡り、肌を黒く染め、魔方陣を星のように輝かせる。

それだけに留まることは無く、余剰の魔力が体から溢れる。その魔力に反応し、威圧が制御不能なまでに強くなる。そして、ラインの繋がっているメノスにまで、流れていく。

それでも、魔力の放出が止まることは無い。


「っ!ッフフ、ハハハハハ!なんだそれ!?今の一瞬で魔力が回復してやがる!いや、それ以上だ!なんだそれ!どこに隠してやがったよ!ハハハハハ、おもしれぇ体じゃねぇか!」


呆れた顔は一変し、驚嘆と、そしてそれ以上に喜びに染まった表情になる。


「さぁ、これで、一歩だ。てめぇの眼中には入ったぜ。龍も精霊もお前を消せなかった。

なら、俺が、勇者が、お前を消す」


「アハハハハハ!本ッ当に、おもしれぇぜ!やってみろよ、ならやってみろ!どうせ出来もしない、その無様な夢を!叶えようと足掻け!俺は、それを踏みにじってやる!ヒヒヒ、ハハハハハハ!」


俺とマサエルは、どちらとも言わずに駆ける。

俺は、白木を助けるために、こいつを消すために。

マサエルは、自らの欲望のために、俺の意志を砕くために。


『白縫』と荒ぶる風を纏う杖が交差する。

陣によって強化された拳と、業火の如く燃ゆる拳が

一閃とも言える蹴りと、強固な装甲となった土で覆われた脚が

あらゆる陣を駆使し、酷使し繰り出される技という技と、四属性の極まりし術という術とが交差し、衝突し交錯する。


この状態の俺の目には魔力の核が見える。

それをもってしても、ギリギリ術の起動時に核が見えるかどうか。絶妙なタイミングで術を発動し、別の術を隠し、そして惑わせる。


奴の目には俺の攻撃の軌跡が見えているだろう。

だが、それ以上に、質と量と、なにより速さで圧倒する。


互いの攻撃をいなし、ぶつけ、避ける。

どちらか一方のミスが、致命的となる。それほどまでに緻密で、複雑な攻防。


だが、その均衡は、簡単に崩れ去った。


「フフフ、ハハハ。楽しいな!もっとだ!もっと、もっともっともっと魅せてみろ!お前の、力を!」


「こんな状況で、笑えるお前の気が知れねぇ。さっさと、くたばれ!」


「これなら、貴様なら、お前なら、勇者ならば!ただのヒトでないならば!まだ、いけるか?」


その言葉を聞いた瞬間、ゾワリと背が震えた。

そして、


「全腕四翼、解放。解き放て、英知の神呪」


俺の本能が、警報を鳴らす、離れろ。と。

思わず後ろへと飛び退き、マサエルを睨み付ける。


その姿は、先ほどよりもなお凶悪になっている

背から、四本の腕と黒白一対の翼が二枚生えていた。

全てが魔力で出来ている、それらに核は見当たらない。

なにより、その全てのモノに別の属性の魔力が宿っていた。

爆裂、零度、重力、大地、闇、光。

翼は白い翼に光の魔力、黒い翼に闇の魔力が宿っていた。


「さぁ、さぁさぁさぁ!お前は龍や精霊の越えられなかったこの状態の俺に!勝てるのか!越えられるのか!さぁ!さぁさぁさぁ!」


そしてまた、俺とマサエルは同時に駆け出す。

また対峙する。

魔力を限界まで込めた『白縫』と杖とは思えないほどの一撃を持った杖。

陣と、無限とも呼べるほどの魔力で強化された拳と、そこにある一切合切を塵に変える爆発を撒き散らす拳が。

瞬に幾重にも繰り出される蹴りと、あらゆる地から生える無数の鞭が。

交差する。


だが、次第に、それらの対等だった攻防は傾いていく。

マサエルの圧倒的な魔法の技量。それを持って覆されていく。


「ハハハ!これで終わりか!本当に楽しかったぜぇ!それじゃあ、消えな!!」


狂喜の雄叫びとともに、最後の一撃は放たれた。


それは、真っ黒な闇の炎だった。





今回はこれで以上!

次回、次々回で終わりになります。

最後までお付き合いください

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