第三十九話 狂々たる足取り、勇然たる背中
遅くなりました!めっちゃ短いですがよろしくお願いします!
その人は歩く、目的の場所を目指して、目的の場所にいる人物を目指して。
足取りはしっかりと、しかし、纏う雰囲気は狂ったものだ。
目に灯す光は淀み、濁り、しかし視線は彷徨わない。
体からは蜃気楼のようにうねる魔力が滲み出る。
しかし、周囲の人間は異常に気付かいない、気付けない。
その人の頭で声が響く。しわがれた、老人の声で。
『魔王を倒せ』『彼の者の血を流せ』『我らが神を解き放つために』『貴様は道具だ』『成すべきことを成せ』
呪詛のように反芻される、何度も何度も何度でも。
その度に違う声が響く。
『嫌だ』『もう嫌だ』『もう、何も、傷つけたくない』『私は、勇者なんかじゃない!』
『あの人が、待ってるから』
抗う声は、その人のものだ。しかし、段々小さくなる。
その声を消すのは、人ならざる声だ。
『我の血を受け入れろ』『我の物となれ』『我が肉となり、我が血となれ』『我を解き放ち、神をも解き放て』『忌々しい龍を討つために』
そして、その声のたびに、魔力が濃くなる。
門をくぐる。
この先に、魔王が居る。魔界を統べる王が居る。
その人__白木の意思を押し殺し、その歩みは確実に進んでいく。
◆◆◆
その報せはいつも唐突だ。
ドタドタと騒がしい足音が聞こえ、ノックもなしにいきなり扉が開かれる
メノスは、視線を突然入ってきた者へと向ける。
「メノス様!勇者が、勇者が魔人領へと侵入した模様で……す?」
そう、声と息を荒らげて告げるのは、この城のメイドだ。
しかも、こちらをしっかりと見えると、怪訝な顔をす。
「あぁ、わかっておる。こちらへ一直線に向かってきているのであろう?」
そう聞き返すと、メイドはキョトンとする。
たぶん、その報せを知っているとは思っていなかったからであろう。
「知って、おられたのですか?」
案の定だ。言われることは分かっていたので、事実を伝える。
「おじい様がお目覚めになられて、そのことを私に知らせてくださったのだ。先程から勇者を出迎える準備をしておる」
そう、今のメノスは鎧を着ていた。
とはいっても動きの阻害されるフルプレートのものではなく動きやすいような軽装鎧だった。
極めて黒に近い紫の鎧は、肩や膝、肘等の関節、胸部と首そして腰のみに装備されていた。
普通ならもう少しカバーする部分は多いのだが、その鎧はそれらの部位にのみ有る。
武器の類は無く、鎧の下に来た服も少し耐久性に優れた普通の服だ。
そんな少しちぐはぐな武装を見てメイドは疑問を持つが、すぐに理由に思い当たり、その意味を理解し、また声を荒らげる。
「まさか!あれをお使いになるつもりですか!?」
「そうなるな。まぁそうでもしないと、勝てそうに無いからな。最初の時は私の慢心もあったが片腕を一本持って行かれた。前回はクロガネにより私に被害はなかったが、それでも『制限解除』を使うほどだ。しかも、今回に至ってはあちらさまも相当無茶をしているようでな。普通に当たれば勝ち目はないのが現実なのだ」
そう説明するが、メイドは納得いく様子はない。
それに少し呆れし、そこまで自分の身を案じてくれることをうれしくも思う。
「心配するな。私一人で奴と当たるわけではない」
「と、言いますと・・・・・・彼が戻ってこられるのですか?」
「ギリギリになりそうではあるがな。それでもこの魔界と呼ばれ、忌み嫌われている場所を共に守ってくれるというのだ。ありがたいものだろう?」
そう言って、椅子に駆けていた全身を隠すような外套を羽織り、部屋を後にしようとする。
その直前、一言だけメイドがつぶやく。
「絶対に、ここへ帰ってきてください」
そんな言葉に頬が緩むのを感じ、気を引き締めて返す。
「当たり前だ。私は魔王だぞ?ここは誰にも渡さんよ」
メノスは馬も使わず城を出立する。
その後ろではメイドが頭を下げて見送っていた。
本当は40話も出したかったのですが少し間に合いそうにないので明日くらいになるかと思います




