二十話 影は一つ、だけじゃない。
すいません、遅れました。
ペースが一向に早くなりませんが、しっかり投稿していくのでよろしくお願いします。
「はぁ……。疲れた……。『ベビーヘビモス』倒しただけでこんなに騒がれるのか……」
「まぁ、仕方ないですよ。秘境ボスの子供ですし、しかも『ベヒモス』系の魔物は常時地面から吸い上げている魔力を宝石に変換するという能力を持っていますから。
本体の素材以上に儲かるものでなのです」
ということらしい。
それに『ベビーヘビモス』は準秘境ボスとも呼ばれるほどの強さを持っており、1パーティーで討伐できるような魔物ではない。
だからこそ、あれだけ騒がれたのだ。
その騒動はギルドマスターが直々に、しかも少しばかり慌てながら収めてくれなかったら、まだ続いていたことだろう。
その後ギルドマスターに執務室まで呼ばれ、討伐時の話を聞かれ、やっとのことで宿へと戻ってきた。
そのころにはすでに宿にも『ベビーヘビモス』討伐の詳細が知れ渡っていた。
「お客さまってすごい方なんですね!かっこいいです!!」
宿屋の息子、マーチにもその話は届いており、本来なら子供は寝ててもいい時間帯でも寝ることなく、俺に話を聞かせてくれとねだられた。
話している途中で眠りこけてしまったが、子供だから仕方ないといったところか。
「やっと、休めるか。いい加減寝ないと明日のダンジョン攻略に支障がでそうだ……」
「流石に疲れたな……。明日は秘境ボスである『ベヒモス』を倒したら宿に戻るのか?それとも進むのか?」
「そうだな……。正直なところ進みたいとは思うが、今日の感じからして、進もうとしても非効率になる気がするから、すぐ戻ると思うぞ」
「そうなのですか。では、今日はもう寝たほうがよろしいですね、おやすみなさい」
「あぁ、しっかりと休めよ」
ティシスとフィリアが部屋から出ていく。
俺はそれを見送り、ベッドへと倒れこむ。流石に一日で二階層踏破と強敵の撃破はキツかったようだ。
補助魔法の効果が無くなる前ならば、まだ動いていられそうだが、効果を切っている今では、四肢が熱を帯びて少しけだるい。
そのまま横になると、瞼が重くなってくる。
俺はそこで意識を手放し、心地よい眠りへつく。
◇◇◇
『ふむ、この気配は……。そうか、奴がこの地まで……。
また同じ時を繰り返さなければよいのだがな。だが、それもまた、縁者にゆだねるべきものか。
我が袂まで来ればよし、来なければ物語が閉じるまで。
さぁ、縁者は何故この地まで来るのか。見極めなければな』
ひっそりと、塔の上で大きな影が動く。
それに合わせ、少しだけ塔が振動する。影が頭を上げ、一つの方角を見据える。
その方角からも、こちらを見える視線が感じられる。
『アレも気づいているようだ。
さて、天運はどう動くのか。あの時の結末をなぞるのか、はたまた新たに紡ぐのか。
長きに世を観ていれば、面白い動きも見えてくる。楽しみなものだ』
そう言って影は元の体勢へと戻っていく。
瞼を閉じ、思考する。また起ころうとする出来事を、どのように動くのかを予想する。
昔紡がれた、あの物語をもう一度思い出しながら。
◇◇◇
「ガアアアアアアア!!!アガ、ガアアガガガガッガガアガガガ!!」
暴れる、暴れる、暴れる。
その女は体から何かを追い出すように身をねじり、腕をひっかき、地団太を踏む。
狂気に染まったように、暴れる。
時折人の言葉を発しながら、されど、ほとんどは咆哮となり宵闇に消えていく。
「ふむ、まだ調整が終わりませんか。陣は取り込ませたはずじゃがぁ……。まぁよいか、時間は有限じゃが、この程度ならば、すぐに終わるじゃろう。
はやく馴染めばんでもらいたいものだがなぁ、なぁ『赤き蛇』よ」
狂乱を見ながら老人がつぶやく。
「ガガガガガ!!アアアアアアアアアアア!やめ、、、ガアガガガアアガガ!!」
女は静まらない、頭に入ってくる、黒い意思と機械のように冷たい気配。
精神はゆっくりと凍りつき始めているのが分かっている。だからこそ、それを止めたいがために、体を動かす、無意味なこととわかってはいても、止めることはない。
背にある陣が蠢く。蛇の蜷局がまるで百足のように這いながら背に円を描きながら動く。
それがまた気持ち悪く、身を倒し地面にこすりつける。皮膚が剝がれよとも構うものか、と。
だが、陣は消えない。
この風景が続く。何日も、何日も、何日も。
女はそれでも抵抗を続ける。次第に肉体は自傷で傷だらけ、精神は黒い意思によりボロ雑巾のようになっていく。
それでも抵抗する。いつかはこと切れてしまうが、その時まで必死に。
「たす…ガアアガアアギィィィイイ……」
狂乱は、狂宴は、まだ続く。




