十五話 動き出す黒い影?
結局、一日と少し掛けて村に到着した俺たち。
ティシスの体力が持たなかったため、少しずつ休憩を入れたため一日と少しという結果になった。
夕暮れに村に到着したためか、周りには仕事帰りの農夫がちらほらと見受けられた。
宿は村の中心よりも少し外れた場所にあるようだ。
一国のお姫様が泊まるべきではない宿ではあるのだが、本人は気にしていないようなので気にしなくてもいいだろう。
「さて、それではクロガネ様。貴方様の目的や事情をお聞かせ願いますか?」
「……。どこまで話したものかねー。まず、前提として、お前は俺が異世界人だっていうのは解ってるんだろ?じゃあ、白木との関係からかな。
俺は白木とは幼馴染だったんだよ。一年位前にあいつが失踪するまでは、ね」
「失踪……。ですか」
少し雰囲気が暗くなったが俺は構わずに事情を話し出す。
一年間あいつを探し回ったが誰も覚えていなかったこと、一か月くらい前に突然転移させられて魔界をさまよっていたこと(にした)、白木と会って話をしたけど途中で転移魔法を使う老魔法使いに邪魔されたこと。
そして、
「俺があいつに掛けられている洗脳を解く、そのために手掛かりを探しにダンジョンへ行く」
「そうですか。ほぼほぼ私と同じ意見のようですね」
「そうだな。だからさっさと見通しを立てて行動を起こしたいんだよ。
洗脳ってのは基本、時間を置けば置くほど深く強くなってしまうからな」
「ならば、どう動けばよろしいでしょうかね?
ダンジョンへ行くルートや、ダンジョンの内部の構成の把握。そして、攻略にかける時間等も話し合っていたほうがよろしいですかね?」
結局日が沈み、女将からの夕食の時間が終わってしまう。と言われるまでこれからの事を話していた。
ダンジョンへ行くルートは俺がアピゴレムを出る時に考えていたルートで行くことになった。
ダンジョン攻略のための準備はそのダンジョンのある街、ディクティウスに着いてからのほうが楽だろうと判断したため、保留してある。
夕食を食べながら俺は考える。このお姫様と騎士を信用してもいいのか、を
最初にあったときは話だけ聞いて一人でダンジョンに行くつもりだった。それがなぜか一緒に攻略することになってやがる。まぁ、別に悪いことだけではないのだがそれでも、やはり不安要素は残る。
ティシアの師匠が白木を操っていた。ならば、ティシスやフィリアもそうなのか?
そんなことになっていれば俺はそうとう危険な状況だろう。だが、俺は二人を信用することにした。
白木のことを話していた時のティシスはどう考えても操られているように見えなかったから。
悶々と考えてしまう頭を晴らすために夕食を咀嚼する。
(そういえば、ティシスの師匠がなんかの末裔っていってたが、それを聞いてなかったな。
後で聞くか)
そう思ったときには夕食であった肉料理とパンは俺の胃袋に収まった後だった。
「さて、そろそろ寝るとしましょう。女性の夜更かしはお肌の天敵ですし」
微笑みを浮かべ少し茶化しながらティシスがいう。
「そうだな、いい加減俺も疲れたし寝るか。明日は朝飯食い終わったらさっさと出発したいし」
そういいながら二手に分かれ部屋に入っていく。
ベッドに潜り込み一日の整理をしながら意識を手放していく……。
◇◇◇
ある部屋に後ろ手に縛られ、猿轡を嚙まされた女が転がっていた。
その女の鋭く、殺意の乗った目線の先にはある老魔法使いが部屋に設置されている魔法陣に魔力を注いでいた。
魔力を注がれていく魔法陣はどす黒く悍ましい紋様が陣をなぞるように蠢いていた。
「ふぉっふぉっふぉっふぉ。まさか、私の魔法が忌まわしき魔人種の小僧ごときに破られるとはのぅ。
少しは意識を保たせて怪しまれないようにしようとしたのが失敗じゃったかのぅ」
「んんんー!!!ん!んんんん!!!」
「ふむ、猿轡のせいでなにを言いたのかがさっぱりじゃの。まぁ貴様の様な勇者なんぞに喋るかちなんぞあるわけがないがな。
さて、貴様の仕事は引き続きアピゴレムへの進行じゃ、精々我等の悲願のための道具となってくれよ。異世界人よ」
そういうと魔法陣にさらに魔力を注いでいく。
魔力は上限を知らないのかどんどん魔法陣の構成を複雑に、幾何学的に組み上げるために消費されていく。
「『偉大なる我等が唯一の神のために
貴様に巡る永久の力を機関とし、道具と化せ
傀儡木偶』」
老魔法使いが詠唱すると、今まで所在なく蠢くだけだった紋様が一斉に陣をなぞりながら女へと向かう。
一瞬にして黒い繭のように女を覆った紋様は次第に人の形を成していく。
そこに立つの女の背には部屋にあった魔法陣が現れていた。
大きな蜷局を巻く黒と白の鳥のような翼を持ち、三対の腕を生やす所々包帯を巻く蛇の陣であった。
「なんなりと、お申し付けを、マイマスター」
そう言って深々と頭を下げる女――白木 咲の成れの果てとも言える姿がそこにあった。
後半は白木のお話でした。
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