十話 ダンジョンへ行くために?
私はルーガルム王国の首都、スコルティアにあるギルドのしがない受付嬢。
今日も朝の忙しい時間を何とか終えて、ほとんど人のいない、仕事のない時間を迎えることができた。
さて、本でも読もう。と思い立ったときに私の目の前に現れたのは一人の青年だった。
「おい、冒険者登録をしたいんだが?」
新人か・・・・・・めんどくさいな。という思いが表に出て事務的に対応してしまう。
「あ、すいません。新規登録ですね。こちらに必要事項を書いてください。
その後料金を頂きまして。登録の完了となります」
青年はスラスラと文字を書き私に料金と紙を渡してくる。
文字もわからない馬鹿ではなくてよかった。そう思ったのも束の間。
この言葉を今聞きたくはなかった……と思うことになった。
「あー、じゃあ今からダンジョンに行こうと思うのだが、ダンジョンってのは入るのに制限とかかかっているのか?」
自分の無知を晒すような、そんな言葉を発したら後ろのパーティーにどういう行動をされるのか考えてほしかた……。そう思った瞬間やはり青年の後ろのパーティーから笑い声が聞こえてくる。
このままでは争いが起きる!やばい!と思い、青年のほうを見る。
青年は、怒りを感じてはいなかった。しかし焦りの色が少し見え隠れしていた。
そのためなのかバドルの言葉に売り言葉に買い言葉でダンジョンへと行くために喧嘩をしようとする。
訳が分からないまま結局ギルドの修練場へと案内することになってしまった。
そんなことは露知らず、俺たちが案内された場所はいわゆるコロッセオのような場所だった。
人は全くおらず、綺麗にに均されたグラウンドを連想してしまう。
「はぁ、とりあえず準備をしてください。終わったら中央に向き合ってください。
審判は私が取ります。判定基準は降参させるか、戦闘不能になるかの二つです。
殺さない程度の傷で、低級ポーションで治せない攻撃は反則とします」
淡々とどこか不機嫌な声で受付嬢が説明してくる。
下級ポーションならば治せるのは良くて肉が少し切れる程度の傷と打撲だけだ。
注意しなければならないのはそこだけだと思うので、上着を脱ぎ体のマークを確認して中央に立つ。
「オイ、ガキ。Bランクパーティーに喧嘩売ったことを後悔するなよ?」
「そうだな、ガキとか新人とか侮って負けないように注意しろよ?」
「ッけ。気合十分ってか?まぁいい、さっさと始めようぜ」
「それで、勝負。開始!!」
『我が躰よ、星を煌めかせよ。能力上昇』
最初に動いたのはあちら側の中肉中背の若い男だった。
ショートソードを腰から引き抜きながら横なぎにしてくる。
俺はそれをいなす。そのあと何合か打ち合う。
あちらは少し驚きながらも隙を見せることは少ない。
しかたないので相手の剣の動きに合わせ上に弾く。
そのまま懐に飛び込む左手で胸ぐらをつかむ。驚いた顔と苦しそうな顔が混じる。
あとはこいつを壁に向かって投げるだけ、これで一人ダウンした。
「へー、口だけではないってか?まぁあいつをダウンさせた程度で強がってもらってもこまるけどなっ!」
そのまま後ろの大剣を引き抜きゆっくりと迫ってる。後ろの女も杖を地面に立てて呪文を紡ぐ。
大振りだが隙を見せずに剣を振るう。腕力だけでなく全体の筋肉をしなやかに使うので意外と速い。
一撃も重いためうまくいなすことが難しい。それでもあちらの呪文が発動し終わるまで待つ。
呪文のほうは岩の玉だった。大きさは頭より一回り小さいくらいだった。
『岩よ、わが杖の前で玉となれ。我が敵は我が目線の先にある。
岩弾!』
速度は目で見える程度だが、バドルと呼ばれた大剣使いが回避を阻害する。
これでは俺の顔面に直撃のコースだが、当たるつもりは毛頭ない。
ブラフとして左に避けようとする。それにつられバドルは剣を切り上げようとする。
その剣を自分の剣で滑らせ勢いそのままにバドルの開いた足を潜り抜ける。
岩は俺が下に行ったことで、軌道を下方修正する。その位置にはちょうどバドルの後頭部があった。
バゴン!と音がした後「うぐぇぇ」と聞こえバドルが倒れる。
「さて、これでいいか?それともまだやるか、魔法使い?」
「………さすがにここからの形勢逆転は無理だと思う、降参する」
「勝者、ユウト」
これでダンジョンに挑む許可が下りる。ほっと息をつく。
「ダンジョンの挑戦許可は下りるんだよな?」
「はい、許可を出しますが手続きがあるので三日後にまた来てくれればいいです」
「わかったよ」
そのままギルドをあとにしようとする。すると後ろから受付嬢に声をかけられる。
「なんで、そんない焦ってるんですか?」
「……受付嬢に言って解決するようなことだったら、早いんだけどな」
俺は今度こそ、ギルドから立ち去った。
次目指すのはデリトリウスです。
ダンジョンの構成がまだまとまってないので、ダンジョン攻略は先になります
すいません