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6. 猫又語り:うざい白猫の主もうざい

 吾輩は猫又である。

 ラズピリス嬢にマタタマという名を貰っており、どうやら吾輩の扱いは使い魔という事になっているらしい。

だが、吾輩には使い魔だという意識は無い。

吾輩は自由気ままな猫又なのである。


 初めて学園に連れて来られてから、十数日が経過した。

 もっとも、吾輩は使い魔控え部屋とやらで、ひたすら昼寝するだけの生活である。

 縄張りの巡回が夜間にしか行えないのが問題であるが、既にラズピリス嬢の家の周りの猫は締め上げている。吾輩が少々顔を見せぬでも、縄張りを侵したりはせぬであろう。

 それよりも、やたらと駄白な猫が絡んでくるのがうざい。

 こやつのことは、吾輩と類似の猫と認めたくない。

 なので、以降は駄白と呼ぶことにする。

 他の小動物に絡めばいいものをと思っていたのだが、奇怪な小動物達は日が過ぎるにつれてどんどんと消滅していった。

 『初めての使い魔セット』じゃ、仕方ないのよね。と語る駄白猫は少しさびしそうであったが、吾輩からすればどうでもいいことだ。

 今では、残っているのは吾輩と駄白猫だけである。

 やたらと話しかけてきて吾輩の睡眠を邪魔する駄白のお蔭で、吾輩もこの学園や国の事について知ることができた。

 良い餌と睡眠さえ確保できれば満足な吾輩には不要な知識であるが。

 どうやら、この国立魔術学園とやらは、魔術師を育てるために国が創立した学園らしく、魔術師の素質がある貴族以上の子弟を集めて教育をする施設らしい。

 東京にもあった学校の類ではないかと思っていたが、やはりその通りのようだ。

 魔術というものはよく判らぬが、きっと陰陽術の様なものの事であろう。

 吾輩が今まで住んでいたところとは違って、この国では妖しの術がおおっぴらに使われているようである。

 こちらは、科学とやらが発達した平成東京よりも、吾輩が生まれたころの元禄江戸に近い文化基準であるように思えるのだが、魔術というものが公に存在するだけ、人の世も便利にはなっているのかもしれない。

魔術とやらで、カリカリを作ってくれればもっと便利なのだが。

 ラズピリス嬢も魔術という物を勉強しているようだ。

 駄白のご主人さまとやらも、同じ教室で学んでいるらしい。ご主人さまの方が、ずっとずっと優秀なのよっとか言っている。

 少し、苛つく。

 こんな駄白猫のご主人さまなら、きっと同じくうざい奴に違いないだろう。

 

 

 悪い予想というものは当たるモノである。

 他の使い魔という小動物達が消えて暫くたったあと、消えずに残っている吾輩と駄白はラズピリス嬢たちのいる教室に残るようになった。

 あの控え部屋の棚の隙間が気に入っていたので残念である。

 それはさておき、今、吾輩の目の前で駄白のご主人さまらしき男の子供がラズピリス嬢に絡んでいるのだ。


「おかしいだろ。何故、ラズピリスの使い魔は消えてないんだ。『初めての使い魔セット』で創生した使い魔なんて、長持ちしないのが当然なのに。どんなインチキしているんだよ」

 

 などと言って、ラズピリス嬢を貶している。

 この国の王子様らしいが、躾と礼儀のできていない只の糞ガキのようだ。

 

「そんなことしてないわ。ちゃんと、『初めての使い魔セット』で創生したもの。

 アルメットの使い魔だって、消えてないじゃない」

「ぼ、僕は王族なんだから当然さ。本気を出せば、お前なんかよりずっと凄い魔術師なんだから!!」

「アルメット程度の魔力で消えない使い魔を作れるんだから、わたしのマタタマが消えないのも当然よっ!!!」

「お前は、制御が全く出来てないじゃないか。魔力だけはあっても、使えない魔術師どまりが精々の癖に!」

「そんなことないもん」


 子供の喧嘩であるな。

 それにしてもアルメットとかいう金髪バカ王子はよくいうものである。

 自分は、『初めての使い魔セット』ではなくて、『簡単・誰でも作れる超高級使い魔セット』を使ったインチキをしているくせに。

 なにしろ、使い魔の本猫である駄白から聞いたのである。間違いない。


「大体、たかが伯爵家の娘が生意気なんだよ。僕は第三王子だぞ。

 お前なんて、僕の前で膝まづいてりゃいいんだ」


 ついには、親の権威を借りだした。本気のバカである。周囲の冷たい視線に気づかないのだろうか。

 駄白の話では、学園内で自分の身分を嵩に着る行為は禁止されていると言っていたのだが。 

 まあ、そんなことはどうでもいい。

 問題なのは、吾輩が寝ている机の傍で大声を出していることである。

 眠れないではないか。

 吾輩は、丸まった体をほぐして顔を上げた。

 金髪バカ王子に向けて、妖術を使う。

 猫又である吾輩は数種の妖術を使えるのだ。

 もっとも、威力と効果は大したことが無い。所詮、猫又だし。

大妖怪とされる連中から見ると遊びみたいな威力と効果しかない妖術ではあるが。

今回使ったのは、妖術“不気味な風”。

背筋がぞっとするような、不安感と不快感を与える妖術だ。

黒板を爪で引っ掻いた音ぐらいの効果があり、迷惑な子供を追っ払うのには丁度良い程度の妖術である。

爪で直接引っ掻いて悪がき共を怪我をさせると、保健所とかいう対猫捕獲屋が現れるので、平和な公園を維持するのに使っていた術である。


金髪バカ王子は、泡を吹いて失神した。


あれ?この金髪バカ王子、精神までとことん脆弱だったのであろうか。

まあ、命に別状はあるまいから気にしない事にする。

吾輩がやったとは、誰も気づいていないだろうし。

金髪バカ王子が勝手に興奮して失神しただけだ。本当に傍迷惑な輩である。


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