5. 猫又語り:使い魔控え部屋 うざい白猫
吾輩は猫又である。
ラズピリス嬢の机で昼寝を楽しんでいたのに、教室を追い出されることになった。
別に吾輩が悪さをしたわけでは無い。
教室にいた小動物全てが一緒に別部屋へ移動させられたのである。
橙色の凹凸女が「夏休みの宿題の確認は終わったから、授業の邪魔になる使い魔達は控え部屋に移動させろ」という内容の事を言っていたような気がする。
眠りながら聞いていたのでうろ覚えであるが。
それにしても、奇妙な小動物達と一緒に部屋に閉じ込められるというのも変な気分である。
何が気になるかといえば、小動物達の奇妙な造作の外観よりも、生気の乏しい様子が勘に触るのだ。
粘度細工で作った置物のようにしか見えないのである。
匂いも薄い。
とはいっても、吾輩に害を与えないのならば関係の無いことだ。
部屋の中を見回して、昼寝に良さそうな場所を探す。
本を置いてある棚の隙間辺りが良さそうだ。
吾輩は素早く棚に登り、体を潜り込ませた。ほどよい狭さが心地よい。
この場所は当たりだと思ったら、目の前に白い猫が現れた。
猫とはいっても、体には羽が付いており、額には短い角まである。
首回りには光る石のようなものがついた首輪。
この部屋の中にいる小動物の中では、吾輩以外で生気を感じる猫もどきだった。
やたらと体を飾っているが、
だが、この場所は先に吾輩が確保したのである。
譲るわけにはいかない。
シャー(さっさと去れ)
みゃー(ちょっと、酷いじゃない。話ぐらい聞きなさい!)
なんと、吾輩と会話ができるようだ。
この無駄な飾りの多い白猫も妖しの類なのであろうか。
ニャア(何の用だ。吾輩は眠いのであるが)
みゅう(あんた、何者よ。あたしの様に『簡単・誰でも作れる超高級使い魔セット』で創生されたにしちゃ匂いが変よ)
ニャー(吾輩は猫又である。名前はマタタマ)
みゃう(あら、これはご丁寧に。あたしはシロヒメ)
フウー(用が済んだのなら、どこかへ行くがよい。吾輩は昼寝をしたいのだ)
しゃー(ちょっと、誤魔化さないで。猫又ってなによ。聞いたことがないわ)
スヤア(すやあ)
ふぎゃー(こら、起きなさいっ!、無視するなあ)
煩い白猫である。
仕方ないので眠気を払って相手をしてやる。
どうやらこのゴタゴタした有角羽付白猫は、ラズピリス嬢と同じ教室の子供の使い魔ということだった。
ご主人様は凄く偉い方なのよ、とドヤ顔で自慢するのがうざい。
それはよかった凄いなお休み。と適当に流して寝ようとするとギャンギャン騒いで、わずらわしい。
白猫のご主人様とやらが、この国の王子様だとか言って自慢しているが、吾輩は猫又である。人の世の事などどうでもいい。
そうしたら、ラズピリス嬢の使い魔なんだから関係あるに決まっているでしょと、言い出す。
あたしのような『簡単・誰でも作れる超高級使い魔セット』で創生された高級で高貴な使い魔に声を掛けて貰っているのだから、光栄に思いなさい。と言われても知らぬ。
そもそも、吾輩にはよく判らぬが、夏休みの宿題とやらは『初めての使い魔セット』を用いるのでは無かったのではないか?
白猫のいう『簡単・誰でも作れる超高級使い魔セット』を使うのはインチキだと思うのであるが。
そのあたりを突っ込むと、目を白黒させてソッポを向く。
ふみゃ(ああ、これ秘密だったのに。ご主人様、申し訳ありませんー)
シャー(秘密にしておいてやるから、どこかに行け。吾輩は寝たいのだ)
まったく、仮にも猫型をしているのであれば、昼寝の素晴らしさと大切さを理解できぬはずが無かろうに。
シロヒメとかいう白猫は、猫として失格である。
駄白猫と憶えておこう。




