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(3-4) 緑髪のメイドは悩む

連続投稿、一旦終了。

 私、ミランダが、レトライド伯爵家のラズピリスお嬢様の専任メイドとなってから、既に5年が経過しております。

 ラズピリスお嬢さまは、わずか10歳でありながら、大変優秀な魔術師の素質をお持ちになっております。

 私も、王立魔術学園を優秀な成績で卒業した実績がありますので、自身の才には相応の自負があったのでありますが。

お嬢様の才能の前にはわが身の非才を嘆くばかりです。

 もっとも、お嬢様は豊富な才能を持て余しておられるため、学園での成績は今一つではありますが。

 なんといいますか。拙いたとえでありますが、例えば、石を投げて10m先の的に当てる競技があったとします。

 他の人は全力で投げて、辛うじて10m先の的に命中させるのです。そして、その石が的のどこに当たったかに一喜一憂するでしょう。

しかし、お嬢様は的に命中させることが出来ません。

代わりに投げた石が1000m先まで飛んでドラゴンを打ち落とす。そんなことを仕出かす程の才能をお持ちなのです。


そんな、お嬢様が夏休みの宿題を達成したと、嬉しそうにおっしゃいました。

お嬢様の年齢ですと、夏休みの宿題は使い魔の創生となります。

 『初めての使い魔セット』を用いて、練習用の使い魔を創生するという宿題です。

 練習用だけあって、この『初めての使い魔セット』で創生された使い魔は、淡く儚い存在です。

 どれだけ大切に扱っても、一か月程度で消えてします程度の存在力しか持っておりません。この宿題の主旨は、使い魔の創生そのものでは無く、使い魔というを通して魔術の制御力を磨くことにあるのですから。

 実用となる使い魔は、数年後の宿題となる『魔術師のための使い魔セット・中級編』から手に入れる物なのです。

 

 ですので、私がお嬢様の喜ぶ声に誘われて見た猫を拾い猫だと思ったのも当然でありましょう。

 その黒白猫は、存在力が強すぎました。これは、『初めての使い魔セット』で創生できる使い魔の存在力では有り得ません。

 魔術で創生されたものは、使い魔に限らず存在力が薄いのが常識です。

 しかも、その猫は、どう見ても普通の猫と変わりありませんでした。

 更に、お嬢様がお持ちになった『初めての使い魔セット』の導本に書かれていた魔法陣は、お嬢様の魔力に耐え切れずに焦げていたのです。

 過剰な魔力をお持ちのお嬢様にはよくあることですが、魔法陣がそのようになっているのであれば、正常に魔術が行使できている訳が無いのです。

 ですので、お嬢様の指さす黒白猫は普通の猫に違いありません。

 

 そう指摘する私を睨む目がありました。

 お嬢様では有りません。まるで、私の話を理解したかのように不機嫌な目つきで黒白猫が私を睨んだのです。

 次の瞬間、私は目を疑いました。

 只の猫だと思っていた黒白猫の尻尾が、二つに割れたのです。

 

「あ、あら、尻尾が2本ありますね。申し訳ありません、お嬢様。

 たしかに、創生された猫のようですわ」


 私はそう言うのが精いっぱいでした。とりあえず平静を保ちましたが、内心は動揺しておりました。

 身体の変形は、『上級使い魔セット』で創生される使い魔であるなら、行うことが可能になる能力です。

 『初めての使い魔セット』で創生された使い魔に出来ることではありません。

 いえ、きっと、私が最初に見間違えたのでしょう。そうに違いありません。

 最初から二つの尻尾を持つ猫型の使い魔だったのでしょう。

 そういえば、存在力の強い使い魔が『初めての使い魔セット』と使っても出来ることがあると、学園に就職した友人が言っていた記憶があります。

 たしか、10年に一度くらいある現象だと彼女は言っておりました。

 興味深いので、研究目標の一つであるとも。

 私の友人ではありますが、研究熱心なことは傍から見ると奇人なのですが。

 それはともかく。

 お嬢様なら、それぐらいの偶然は引き起こしても不思議ではありません。

 たとえ、マタタマと名付けられた使い魔が、自分で餌を食べていたとしても、きっとそれも稀によくある現象なのでしょう。

 普通、使い魔は主人の魔力だけを糧にするのですが。

 

 お嬢様は、本当に何を創生してしまったのでしょうか。

 私は、ふてぶてしい黒白猫を横目で眺めながら、この先、騒動が起こらぬように祈るばかりであります。

 少なくとも、私に、とばっちりだけは来ませんように、と。

 


次からは少し時間を置いてからの投稿になります。

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