第0話-プロローグ-裏
上京してからすでに3年。
3年も住んでいるこのワンルームマンションの一室は相変わらずだ。
俺、葛西 柳太郎は地元が千葉で東京よりだったため、それほど期待していた訳ではないがそれなりにテンションは上がった。
でも今ではすっかり社会人生活に慣れ、その喧騒が日常になった。
つーか。現実逃避してるけど、さっきから相手してるコイツら日本人じゃないっすわ。
事は10分前
このあいだ発売されたラノベの新刊を読んでいた中、インターホンが鳴った。
「誰か来るっけ?...」
今日は休日だ。友人は基本連絡してから家に来るはずだが...。誰か友人でも来たのだろうか?
すぐに玄関に行きドアを開けると まず最初に降りかかってきたのは女の怒鳴り声だった。
「待ちくたびれたじゃない!入るわよッ!」
そして今に戻る
ずんずんと奥に入っていったそいつを
俺は慌てて追いかけるが、彼女はソファをみつけ そこにどさっと座った。
「とりあえず、靴脱いでくれないか?ついでにフード。」
女と表現するしかなかったのは、彼女の顔がフードで見えないというのに原因があるのだが。
「イヤよ。」
「フードはまだしも靴脱がないと家から追い出すが?」
俺の言葉にハッとしたかのようぬ息をのむソイツは悔しそうにしながら靴とフードを脱ぐ
(「意外と素直なんだ.....って...え?」)
「何よ?」
そこにはヒョコヒョコと動く狐耳が...
動きが自然過ぎて本物としか思えない。
ヤバイ見惚れてしまう。
「な、何見てんの...話してもいいでしょ?」
ツンデレなのかどうなのかと考えながら了承の意を伝える。
「ああ、だが一つ聞かせてくれ。」
「何よ。」
「その頭の付けケモミミ。どう動かしてるんだ?」
「何が"付け"ケモミミだ!本物よ!」
何かマズイ部分に触れてしまったのかギャーギャー騒ぎ出したのでとりあえずお茶出して静めておく。
「コホン。本題から言わさせてもらいますわ。"異次元"の世界に来て助けていただけません?」
何言ってるか分からないが、とりあえず異次元ってそりゃそうでしょうリアルケモミミですもの。そんな事を考えながら黙っていると見兼ねたような声が聞こえた。
「時間が無い、向こうで話すぞ」
「し、師匠でも...」
突然話に入ってきた若者は眼鏡をかけていて、いかにも学者という感じだったが師匠とうい割には若く見えた。
「オイ、チョット待て。他人の家に不法侵入してるそこの眼鏡もそうだが両方名乗れよ!」
「五月蝿い。面倒なので省略だ、無詠唱『次元転移』掴まれ、座標がズレる」
そして、俺はいろいろ手順飛ばされた様な気がするが、異次元に拉致られた。
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「やはりズレたか...逃げるぞ」
「はい、師匠!」
3人が走り、その後ろをゴブリンが駆け抜ける。
どうしてこんな事になってるのかというと先程の転移魔法が原因だ。行使した本人が無詠唱と言っていたように、この転移魔法は無詠唱でも魔力さえあれば発動出来るそうだ。(しかし、術者がデタラメな実力の時に限る。)
もちろん、無詠唱という事はもちろん代償がありそれが正に今起こった"到着座標のズレ"である。
3人は座標がズレた結果、何故かゴブリンの集落に落ち、3つぐらいの集落のゴブリンをトレインし、派手な逃走劇をしながら帝都に辿り付くまで続く事になる。
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「久しぶりに楽しかったな。」
と眼鏡野郎
「ふざけんな、どこが楽しいんだよ。お前バトルジャンキーか おかげで異世界ってのに納得したが。」
「師匠を悪く言わないでください。安全の為に街に入る直前に"全滅"させたではないですか。」
実際メガネ野郎は街に入る前に広範囲型の魔法(?)を使い全滅させていた。
(ちゃっかり素材も集めていて、話を聞くと後で研究に使うそうだ。)
それを見ていた街への門の衛兵達は唖然としていたが、行使した人物に気づくと眼鏡野郎は有名人らしく勢い良く敬礼をしていた。
そして、紆余曲折 今は彼のラボも兼ねた事務所にいるという流れだ。
「とりあえず、自己紹介をさせていただこう。僕はルケーノ・テオ 帝都の魔導ギルドのギルドマスター及び魔導ギルド協会、冒険者ギルド協会の長の一人だ。そしてそこにいるナージャの師匠をしている。」
ギルドマスターの部屋に移動した一行はそれぞれソファにどさっと座り込む。
「ともかく、説明を始めよう。ナージャ投影機を出してくれ。」
「投影機って何だ?」
「ルータローだっけか?「りゅうたろーだ」すまん、リュータローか。こっちに来てから向こうと似たような物が多いのには気づいているな?その一つだよ。丁度プロジェクターに当たるものだね。」
実際彼の言う通り、道では乗用車(魔導四輪)を 空には飛行船.(マギ・バルーン)を 店先ではトースター(簡易魔導窯)をといった風に誠に地球くさい物が溢れていた。
「では、何故このようになったのか。それはざっと××年前そちらの西暦1950年頃にこちらと向こうをつなぐゲートを創り出す魔導が発見されたのが原因だ。」
「かなり昔からあるのになんで向こうでは知られて無いんだ?」
「答えは簡単だ。魔法が無い、いや、魔法もしくは魔導という概念が無いからだ。ちょうどナージャが持ってきたし説明するとしよう。」
振り返りナージャの持ってきたものを見ると、それは投影機と呼ぶにはいささか大きく火器と呼ぶにはいささか無骨すぎる物だった。ナージャがそれを置くと眼鏡はそれをいじり、壁に写真(?)を映した。
「君達の世界にも錬金術があったのは知っているだろう?魔術と科学はそこで別れたんだ。簡単に言うと、金を作る途中に魔法という概念が出来ててしまったのがこっち、金を作る途中に科学が出来てしまったのがあっちという感じだ。」
彼の言葉と共に映し出される画像が変わっていく。そしてある画像、魔法陣の画像になった時それが止まった。
「そして、これが先ほどのゲートをつなぐ魔法陣だ。ここからが本題なんだが、呼んだのは君だけじゃない。」
「は?」
「だから、君以外にもこっちに来るというか時間が経てば"来れるようになる"が正解か。」
「どういう....ことだ?」
「ゲートを乱用したあまりに向うとこちらが繋がりかけてるのだよ。時空やら何やらを歪ませすぎたせいでね。」
その答えに、俺は言葉が続かなかった。そもそも、その答えが理解出来なかった。
「今は理解できないだろうけど、これは絶対だ。だから君の"会社"を含めいろんな者達にその時の衝突を減らす手伝いを申し出てるんだ。ともかく、よろしくね。」
次の瞬間、視界が真っ白になった。
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目を開けたらそこは、楽園...
ではなく、自分の部屋だった。
さっきまで自分の遭っていた光景が現実なのか、と疑っているとテーブルの上に見覚えの無いものがあった。
手紙のような、それは明らかに日本語では無かったが何故か読めた。
それによると、
1.一応、俺の会社には連絡がいっている
2.その気になれば、ゲートで戻れる
3.4日後に迎えに行く
といった事が書かれており、さっきまであちらに行っていたというのは本当のようだった。
つーか、拒否権無しですね、これ。
そして、手紙には書いてあるが一応確認しなければならないので俺は会社に向かう事にした。
改めて思うが、よろしくね(強制)かよ。
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人が一人減った部屋の中、二人の人影が少し俯くように座っていた。
「彼らはしっかりと戦ってくれるかな?」
「師匠が見込んだ方々です、大丈夫でしょう」
「そうだといいのだが...」
「そもそも、師匠も師匠です。"壁に映した"魔方陣を使って彼を向こうに帰還させるなんて、いくらなんでも無茶です。下の階が静まってしまっていますよ。」
「それも...そうだな。」
柳太郎を引き込んだ彼らも再び戦いへと歩を進める。そして、時は彼らの悩みすら無視して進み続ける。
ちょっと先の近未来。それぞれの世界で数々の傭兵の集団が世界中に誕生していた。
誤字 脱字あれば連絡お願いします。