表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

短編まとめ

マーメイド

作者: 猫面人

 幼なじみの彼女は人魚だった。両足が一本に繋がった少女。小さい頃から車椅子で過ごしていた。

 ある時彼女は言った。

「私の足はどうしてみんなと違うの?どうして歩けないの?」

僕は答えた。

「それは君が人魚だからだよ」

 それ以来、僕の中で彼女は人魚になった。


 彼女は泳ぐのが上手かった。足をくねらせ華麗に水中を踊った。僕はその時彼女の足が、まるで魚の尾のように見えたんだ。

 水から揚がって人魚は言った。

「私、歩きたいの。自由にいろんなところに行ってみたい」

僕は答えた。

「それは無理だよ。君は人魚じゃないか」


 それ以来、人魚は地上で歩く練習をした。彼女は跳ぶようにして地上を移動した。ある時人にぶつかって殴られてしまった。

 人魚は倒れた。

「痛い。どうして私は殴られたの?」

僕は言った。

「わからないよ。その痛みもわからない」

彼女は涙を流してして言った。

「きっと私が人魚だからなのね」

僕は頷いた。

「きっとそうなんだろう」


 震えた声で彼女は言った。

「私、泣いても良いかな?」

「いいよ。もう泣いてるじゃないか」

人魚は僕の胸に顔を押し付けた。冷たいものが肌を伝った。僕の着ている真っ白なYシャツは悲しい色に変わってしまった。

 その中で、彼女は言った

「私、海を創るわ。自分だけの海。そこで精一杯泳ぐの」

僕は答える。

「その海で、君は浮き上がれないと思う」

「どうして?」

人魚は顔を上げた。そこには海が出来ていた。

「君は人魚だから、涙の中じゃ泳げないんだ」

「人魚にも泳げないところがあるの?」

「そうだよ」

彼女は俯いて言った。

「私、そこで沈んでいたい」

僕は笑って言った。

「いいよ。何度でも引き上げてあげるから」

彼女は震えた声で言った。

「ありがとう」

僕を見上げた彼女の海は干上がって、川が出来ていた。その川の下に、貝殻みたいな笑顔があった。

 僕は彼女に言った。

「君は人魚で良いんだ。僕はそんな君を見ていたいから」

彼女は人魚だから、僕は海でいたい。


なんか本棚あさってたら人魚姫って絵本見つけて、それ読んでたら思い付いた話。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ