基本技術
僕は苦悩した。
この状況でどうすれば良いか。
能力は通用しない。
このままでは殺される。
物干し竿程度で、浅田の攻撃を受け切れるとは到底思えない。
僕は死ぬしかないのか。
僕の能力よ、答えてくれ。
そう自分の能力に感情を込めた瞬間、浅田の動きがかすかに鈍くなった。
飛び掛ってくる浅田の足を物干し竿でなぎ払う。
浅田は地面に倒れこんだ。
「はぁ!はぁ!!」
僕は緊張で止まっていた息を吹き返す。
浅田は倒れた姿勢のまま、少し顔を起こしてこう言った。
「それが、破魔の基礎だ、能力に感情を込めろ、色をつけるんだ」
少し落ち着いてから居間に上がって、浅田の説明を聞いた。
「破魔は、相手の能力の感情が冷めている場合にだけ、熱の色で相手の能力を打ち消す事ができるんだ」
「大抵の素人の場合は感情を込めていない、冷めているんだ」
僕が黙って聞いていると浅田は続けた。
「素人は能力に感情を込めるという事を知らないからみんな冷めている」
「だから打ち消す事は簡単なんだ」
「しかし、少し経験のある奴なら感情を込める事を知っているから、能力を打ち消す事はできない」
「まぁ、本当に素人相手の技なんだよ」
僕は浅田が話し終わった事を感じた。
「なるほど」
「わかったか」
浅田は嬉しそうな顔で笑った。
「僕にそれを教える為にあんな狂ったような感じになったんだ」
「狂ったって言うな、本気を出せば誰でもあんな風になるだろ」
「なんないよ」
「なるだろ」
閑古鳥が鳴いた。