始まりの吐露
寝転がったまま膝を抱える。
今まで見た事がない、女らしい動作。
「お前には全部話す。死線を抜けて、お前が私にとって一番大切だと分かった」
浅田は背を向けたままでいる。
「まず、お前をここに連れて来たのは寂しかったからなんだ」
「え?」
「今ではすまなかったと思っている」
少しの沈黙が流れる。
しかし、僕には言うべき言葉が見つからない。
「本当は、能力を持っていても俗世で暮らしている連中はいる」
「ただ、悪い人間が能力を持った場合にだけは、そいつを好きにして良いという取り決めがあるんだ」
「私は、その曖昧な基準を利用して、お前を強制的にここへ連れてきた」
「すまなかった」
浅田は言い辛そうに、申し訳なさそうな声で謝ってくる。
僕は、浅田に対して何も怒りを感じていない。
最初は腹が立ったが、今では浅田に連れて来られて良かったと思っている。
「浅田と一緒にいられて僕は良かったよ」
その言葉を聞いているのか聞いていないのか、浅田はまたしばらく黙り込む。
そしてまた再び口を開く。
「私は、今年で30になる」
「30? 何が?」
「年だ、年齢だ」
「……嘘でしょ?」
「本当だ、これも今話そうと思う」
「まず、能力を持つ人間と言うのは年を取らない、不老不死になるんだ」
「とはいっても、殺されれば死ぬから、年を取らなくなると考えるのが一番簡単だ」
「原因は分からない」
年を取らない。
それはとても魅力的な反面、何か、得体の知れない不気味さのような物を感じる。
「私はお前に嘘を吐いていて、そして、今年で30になるおばさんだ、それでも私の事が好きか」
「好きだよ」
僕は躊躇なく肯定する。
「そうか」
浅田はよりいっそう強く膝を抱いて小さくなった。




