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空白

しかし、僕はあきらとの再会の喜びを感じても、浅田を失った事の空虚さを半分も埋める事ができなかった。

実家に帰ってくる事ができて あきらと再会する事ができて、浅田を失った僕の心は少し、癒される事ができた。

しかし、それでも、浅田が僕の心の中に居座っていた場所はまだとても大きな物だった。

全てを司る心の中に空いた大きな空白は、いつになってもなくなる事は無いような気がしている。

浅田はまだどこかで生きているんじゃないだろうか。

あの後、僕の知らない所で鬼に勝利して、どこかで元気に刀を振るっているんじゃないかと、いつまでもそんな考えが頭を離れない。

浅田ともう一度会いたい、浅田との過激で、それでいて強い力に守られていた、楽しい日々を、もう一度、一緒に過ごしたい。

僕は深くそう思っていた。

 僕はここ3ヶ月間の事を、覚えていない事にした。

浅田の事や隠れ里の事を、俗世の誰かに知られるのが嫌だったのと、俗世の人達には知る必要のない事だと考えたからだ。

もちろん父や母は、僕が嘘を付いていると疑って、僕から本当の事を聞きだそうとしたが、僕は覚えていないで突き通した。

あきらは僕の事を気遣ってあまり問い詰めてくる事はしなかった。

 僕は実家に居るのに、くつろぐ事ができなくなっている。

もう、僕の体は浅田との前時代的な暮らしに適応していた。

そして、それが現代の生活等よりもとても素晴らしく感じている。

浅田という存在があったからそう感じるのかもしれない。

僕は今、実家に戻ってきて、何か、燻る様な、痒い所に手が届かないような、そんな感覚を持っている。

 いつの間にか外で過ごす時間が多くなっていた。

近所の山へ行き、刀に重力を込める修行を動けなくなるまでして、そしてそのまま野宿をする。

雨が降っても、雷が鳴っても、気に留めず、泥だらけになりながら休息を取る。

家に帰るとあきらはそんな僕を見て悲しそうな顔をするのだった。

 ある日、あきらは僕の修行に付いてきた。

僕はあきらに自分の能力を見せるべきかどうか迷った結果、あきらには全てを話す事に決める。

あきらは、僕を気遣って、僕の為に何も聞いて来なかった。

そんな正直さには自分も正直でぶつかるべきなのだ。

あきらが不安そうに僕を見つめる中、僕は袋から浅田の形見である刀を取り出す。

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