好転
言われて少し体を動かしてみると、確かに体中が痛くて重い。
「しかし、明日はまた訓練だからな、休みは一日置きだ、分かったな」
「……わかった……けど……」
僕は一日でこの筋肉痛が治まるかどうか不安に思った。
もし、この痛みが取れないまま、また昨日のような訓練をする事になれば、それはとんでもない地獄だ。
考えたくもない。
洗濯物を干し終わると浅田は少し出かけて、すぐに帰ってきた。
手にはタンポポの花が握られている。
「な、なあ、お前」
珍しく歯切れが悪い。
「何?」
「……これ、綺麗だと思わないか?」
そう言って何の変哲もないタンポポを見せてくる。
「……普通じゃない?」
僕がそういうと浅田は顔を真っ赤にした。
怒っているのとも恥かしがっているのとも、何かが違う表情になってからタンポポを抱いて僕に背を向ける。
「……馬鹿が」
そう呟いて、浅田はまた外に出て行ってしまった。
次の日の朝、僕の不安は現実の物になっていた。
「起床ぉぉぉぉおおおおおおお!!!!!!!!!」
浅田はまた鍋を打ち鳴らして僕の周りを騒がしく歩き回る。
今日は横から蹴られて布団から放り出された。
僕の体はまだ筋肉痛から回復していなかった。体が重い。
「貴様、起きろ」




